障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】   平成29年11月   内閣府障害者施策担当 全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合う共生社会の実現のためには、合理的配慮の提供をはじめ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)で求められる取組やその考え方が、幅広く社会に浸透することが重要です。 障害者差別解消法が施行され、障害のある人とない人が実際に接し、関わり合う機会が増えると考えられます。こうした機会を通じて相互理解を深めていくことが、共生社会の実現にとって大きな意味を持ちます。 そのための一助として、障害のある人も社会参加しやすくするための合理的配慮の提供等の事例(想定事例を含む。)を、関係省庁、地方公共団体、障害者団体などから収集・整理し、事例集として取りまとめました。 この事例集を活用し、合理的配慮の提供をはじめ、障害者差別の解消に向けた取組の裾野が更に広がるとともに、障害者差別解消法の意義や趣旨などが、社会全体に一層浸透していくことを期待しています。 ただし、障害の種類は多様で程度も様々であり、この事例集に掲載されている事例に類似した出来事であっても、そこで適切となる合理的配慮の提供等は掲載されているものと異なることがあります。この事例集を参考としつつも、実際の事案においては柔軟な対応が求められますので、個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断してください。 ※ 雇用・就業については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによります。   〜目次〜  1.合理的配慮の提供事例 (1)視覚障害 (2)聴覚・言語障害 (3)盲ろう (4)肢体不自由 (5)知的障害 (6)精神障害 (7)発達障害 (8)内部障害、難病に起因する障害 (9)重症心身障害  2.環境の整備事例 (1)視覚障害 (2)聴覚・言語障害 (3)盲ろう (4)肢体不自由 (5)知的障害 (6)精神障害 (7)発達障害 (8)内部障害、難病に起因する障害 (9)重症心身障害  参考 ○障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(抄) ○同一場面における不当な差別的取扱い/合理的配慮の提供/環境の整備に当たる事例 ○不当な差別的取扱い/合理的配慮の不提供に当たらない事例 ○合理的配慮の提供における留意点 ○社会モデルとは    1.合理的配慮の提供事例  合理的配慮の提供事例 障害者差別解消法(第7条第2項、第8条第2項)は、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うこと(合理的配慮の提供)を求めています。 これは、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものです。 合理的配慮の提供は、行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要があります。 ○事例紹介の見方 上段:障害者が困っていることや合理的配慮の提供の申出などを記載しています。 下段:どのように合理的配慮を提供したのかを記載しています。   1(1)視覚障害  【生活場面例:行政】  1-(1)-1 役所に申請手続に来たが、慣れない場所なので、どこで受付すればよいのか分からない。 驚かせることのないように、正面から「私は○○ですが、何かお手伝いしましょうか?」と声をかけて受付窓口まで案内した。  1-(1)-2 視覚障害者にとっては、代筆・代読もコミュニケーション手段として欠かせない。 視覚障害者が一人で役所に来られたときには、本人の希望を踏まえて、職員が代読・代筆をするようにした。特に代筆の場合には、複数の職員で確認するようにしている。  1-(1)-3 フォーラム当日のパンフレット配付では、何が書いてあるのか読めないので、フォーラムの内容が分かりにくくなってしまう。 事前に連絡があり、またパソコンの読み上げ機能を使えるということだったので、パンフレットの電子データを提供した。  1-(1)-4 図書館を利用するときに、蔵書の検索機を操作できず、書架のレイアウトも分からない。 要望に沿って職員が検索機を操作したり、本を代わりに取ってくるなどの配慮を行った。  1-(1)-5 図書館で借りた本を点字化して読みたいので、作業のために貸出期間を延長してほしい。 その本の貸出頻度を考慮しつつ、通常よりも延長した期間の貸出しを行った。  1-(1)-6 博物館施設の見学イベントがあるので参加したい。直接触れることのできる展示物があるとありがたい。 展示物に触れることは禁止されているが、差し支えないと思われるものについては触れてもよいこととした。  1-(1)-7 警察官が巡回連絡に来ると、本当に警察官なのか確認できなくて不安になる。 初回は点字を付したCR名刺(※Community Relations名刺:巡回連絡などで配付している)を渡し、その後は同じ警察官が訪問するようにした。  【生活場面例:教育】  1-(1)-8 入学当初は特に、教室、階段、トイレの位置などが分からず、学校内の移動が不安になる。 入学の際に学校内の移動訓練を行った。  1-(1)-9 後で復習するときに使いたいので、授業を録音させてほしい。 授業の録音は禁止されているが、障害の状況から合理的配慮の提供に当たると判断し、録音機器の使用を認めることとした。  1-(1)-10 黒板に書かれている重要な箇所について、赤色のチョークで強調されると、色覚障害があるため分からなくなってしまう。 強調したい箇所があるときは、他の見やすい色のチョークを用いたり、カラーチョークではなく波線によって強調したりするなど、黒板の書き方を工夫することとした。  1-(1)-11 通常のテスト問題用紙では、印刷された文字が小さくて、弱視なので読むことができない。 拡大文字を使ってテスト問題用紙を作成した。また、拡大鏡などの補助具を使用できることとした。  1-(1)-12 拡大文字を使う配慮の提供を受けているが、教材が大きくなり机からはみ出してしまう。 座席配置を変更して、その学生が2つの机を使えるようにした。  【生活場面例:雇用・就業】  1-(1)-13 就職当初は職場環境(職員の配置、共用品の置場所や使い方など)に関するオリエンテーションがないと、その後の業務が円滑に行えない。就職当初だけでなく、配置換えなど環境変化があった場合も同様。 口頭で説明するだけでなく、実際に移動しての位置確認を行った。また、電話機・シュレッダー・湯沸器などの共用品を実際に操作しながらの説明も行った。  1-(1)-14 視覚障害者本人や周囲の職員が人事異動した場合には、適切な業務分担のあり方が互いに分からず戸惑うことがある。 視覚障害者と業務上関係のある職員とが情報・意見交換する時間を設け、十分な意思疎通を図った。また、必要に応じてジョブコーチなど専門家の支援を受けることとした。  1-(1)-15 パソコンの読み上げソフトを使って業務を行いたい。 その職員との業務上のやり取りは、可能な限り電子媒体を用いることとした。  1-(1)-16 決裁書類や出張届などの定型書式が決まった書類では、紙媒体ではなく電子媒体であっても記入が難しい場合がある。 必要事項が記載されたテキストファイルを提出してもらい、定型書式には他の職員が記入するようにした。  1-(1)-17 いつもは物が置いていない通路に物があると、つまずいて転倒する危険がある。 通行の妨げになるような場所に物を置かないようした。また、年度末などの一斉整理の時期などに物を置かざるを得ないときは、視覚障害者にその旨を伝えて注意を促した。  1-(1)-18 研修を受ける場合に、通常の内容では受講が難しいことがある。例えば、パソコンスキルであれば、画面の読み上げソフトの使用を前提にしていない研修を受けても理解が困難。 視覚障害者向けの研修を受けられるよう配慮した。また、必要に応じて公共職業訓練(在職者訓練など)を活用することとした。  1-(1)-19 業務の一環として技術向上のための外部研修を受けることができるのだが、視覚障害に対応した研修がなかなか見つからず、他の職員と比べて研修の機会が少なくなってしまう。 視覚障害者団体に相談して該当する研修の実施情報の提供を受け、職員の研修の機会を確保できた。  1-(1)-20 職場ですれ違うときの挨拶などで、誰が発言者か分からないことがあって困る。 「おはようございます、○○です」というように、挨拶などと合わせて発言者が名乗るようにした。  1-(1)-21 職場のミーティングにおいて、途中で参加者の出入りがあると把握できない。 ミーティングを始めるときに今回の参加者を伝えるとともに、途中で出入りする者は「○○参加します/退席します」と声に出して知らせるようにした。また、ミーティング中に発言するときも毎回名乗ってから発言するようにした。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  1-(1)-22 まず整理券を取り、受付の順番になると整理番号がモニターに表示される仕組みであったが、表示されても気づくことができない。 受付の担当者が整理番号を把握しておき、順番になったときには声かけを行った。  1-(1)-23 列に並んで順番待ちをする場合には、並ぶべき列の終端や徐々に進んでいくタイミングが分からない。 店員が順番について把握しておき、順番となるまで列とは別のところで待機できるようにした。  1-(1)-24 盲導犬を連れたお客が来店したところ、他のお客から犬アレルギーだという申出があった。 双方にご了解いただいた上で、お互いが離れた位置になるよう配席を変更した。  1-(1)-25 盲導犬と温泉施設へ来たが、入浴している間に盲導犬が待機している場所はあるだろうか。 浴室や脱衣所に盲導犬の待機場所はないので、入浴している間は事務室で預かることとした。  1-(1)-26 定食など複数の食器に分かれて盛り付けられている料理では、どこに何があるのか分かりにくい。 店員が配膳するときに、食器の位置や料理内容について説明する配慮を行った。  1-(1)-27 買いたい商品があるのだが、陳列棚のどこに置いてあるのか、また価格はいくらなのかが分からない。 商品が置いてあるところまで案内し、価格や機能などの表示情報を読み上げてお伝えした。  1-(1)-28 弱視のため商品をタブレットで撮影・拡大して確認したいのだが、店内での撮影は禁止されている。 視覚障害を補うための撮影は認めることとした。  1-(1)-29 自分の好みに合う衣料品を購入したい。 衣料品の形状や色について口頭で説明し、布地に触れて肌触りを確かめていただいた。  1-(1)-30 銀行のATMや食堂の券売機などを使用したいときに、タッチパネル式になっていると操作できない。 (ATMについては暗証番号を聞くことについてご了解いただいた上で)店員がATMや券売機などのタッチパネル操作を代行した。  1-(1)-31 トイレの場所を聞いたときに入口まで案内してくれたのだが、複数の便器があるトイレだったので中で困ってしまった。 同性の店員がいる場合には、トイレの中まで案内するようにした。  1-(1)-32 インターネットの通信販売で商品を注文したところ、PDF形式の確認書類が電子メール送付されてきたが、その記載内容が画像として情報認識されており、読み上げソフトを使用することができない。 印刷した確認書類をスキャナーで読み込んでPDF形式に変換していたが、テキスト情報が残るように、パソコン上で形式変換したものを送付することとした。  1-(1)-33 駐車場から店舗までの通路にある点字ブロック上に、他のお客の自転車が置かれており立ち往生してしまった。 店舗まで店員が案内するとともに、点字ブロック上の自転車は駐輪場へ移動させた。  【生活場面例:災害等】  1-(1)-34 避難所のレイアウトに慣れておらず、一人ではトイレに行くことが難しい。 避難所のスタッフがいない間もトイレに行けるように、トイレまでの動線が分かりやすい場所を割当スペースとした。  1-(1)-35 弱視により障害者向けの配慮を受けていたところ、他の被災者から「見えているのに不公平ではないか」と非難されてしまった。 本人の希望を踏まえて、弱視も視覚障害であることについて、周囲の理解を得られるように説明を行った。  【生活場面例:その他】  1-(1)-36 ペット禁止のマンションで盲導犬と暮らしていたところ、他の住民から違反しているという苦情があった。 補助犬はペットの定義から除かれる旨を住民に周知した。   1(2)聴覚・言語障害  【生活場面例:行政】  1-(2)-1 大きな会場で開催されるフォーラムでは、手話通訳者がいても見えにくい場合がある。 会場全体から手話通訳者の手話が見えやすいように、高さ60cmほどの台を用意し、手話通訳者を見やすい前の席を希望者向けに確保した。また、拡大スクリーンも設置し、後の席からも見やすいようにした。  1-(2)-2 左耳のほうが聞き取りやすいので、参加予定の講習会では、講師に向かって右側の位置に配席してもらいたい。 希望に沿う位置に配席した。  1-(2)-3 会議の傍聴時にパソコンによるノートテイクを行いたいが、パソコンの持込みが禁止されている。 一律にパソコンの持込みを禁止するのではなく、個別に判断して必要と認められる場合には持ち込めるようにした。  【生活場面例:教育】  1-(2)-4 難聴がある影響で、授業を聞くこととノートを書くことの両立が難しいときがある。 授業の撮影は禁止されているが、障害の状況から合理的配慮の提供に当たると判断し、黒板の撮影を認めることとした。  1-(2)-5 出席点呼を聞き取れないが、他の生徒と同じように返事をしたい。 出席点呼をするときには、口頭だけではなく身振り・指文字・手話などを加えて、その生徒に自分の順番となったことが伝わるようにした。  1-(2)-6 難聴のため、音楽の授業で扱う曲について、当日初めて聴くと内容がよく分からない。 学習予定曲のCDを貸し出し、事前に聴いておくことができるようにした。  1-(2)-7 英語の試験にリスニングがあるが、聴覚障害により受験することができない。 代替試験を設けて点数を補えるようにした。  【生活場面例:雇用・就業】  1-(2)-8 補聴器を使っているが、業務連絡の放送が聞き取りにくく、放送自体に気づかないこともある。 対応が必要と思われる業務連絡の場合には、同僚が確認の声かけを行うようにした。また、業務連絡を電子メールでも行うこととした。  1-(2)-9 多人数の参加者がいる会議では、難聴により誰が発言しているのか区別しづらく、会議の流れが分からなくなってしまう。 複数の発言が交錯しないように一人ずつ発言することとし、発言前にはその都度手を挙げて名乗るようにした。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  1-(2)-10 病院の待合室で診察順を待っているとき、呼び込まれても分からない。 通常は診察室から次の受診者の名前を呼んでいるが、待合室の座席まで呼びに行くようにした。  1-(2)-11 食券制の飲食店で、呼ばれたらカウンターまで自分で取りに行く仕組みになっていた。 呼ばれても分からないという申出があったので、身振りによって料理ができたことを伝えた。それでも気づかなかったようなので、店員が座席まで配膳した。  1-(2)-12 飲食店ではメニュー表への指差しで注文しているが、細かい希望を伝えることが難しい。 麺類を扱っているお店で、これまでは注文された麺類を出すだけだったが、筆談ボードを使うことによって、「固い麺か柔らかい麺か」、味付けについて「辛口か甘口か」などを店員が聞けるようになり、他のお客と同じように細かい注文にも対応できるようになった。  1-(2)-13 イベント開催時に手話通訳者が配置されていたが、会場が薄暗くて手話がよく見えない。 スポットライトを調整し、手話通訳者の立ち位置が明るくなるようにした。  1-(2)-14 口話を用いたいが、店員がマスクをしているので読み取れない。 マスクを外し、早口にならないように話をした。  1-(2)-15 会員登録の内容を変更したいのだが、受付が電話のみのため手続を行うことができない。 受付用ではないが他の業務で使っているFAXがあったので、そちらに新しい登録事項を連絡してもらい変更手続をした。  1-(2)-16 検定試験の開始前に監督者から注意事項が述べられるそうだが、口頭だと内容が分からない。 注意事項を文章にしたものを配付した。  【生活場面例:災害等】  1-(2)-17 避難所で弁当の配給時間などのアナウンスがあっても、聞こえないので情報を得ることができない。 掲示板やホワイトボードなどを用いて、アナウンス内容を文字化してお知らせするようにした。  【生活場面例:その他】  1-(2)-18 地域で開催される住民行事(球技大会)に、聴覚障害のある子供も参加できるよう配慮してほしい。 事前に行われるルール説明会において、聴覚障害のある子供も参加する旨を伝えるとともに、他の参加者と一緒に競技できるよう音声ではなく視覚的に伝える工夫について話し合って合意形成を図った。   1(3)盲ろう  【生活場面例:行政】  1-(3)-1 会議に出席したときに、資料の事前送付がなく、当日は点字化した資料が用意されていなかった。また、長時間の会議であったが、休憩時間が設けられていなかった。 資料を事前送付するとともに、資料の概要を点字化して会議で配付することとした。議事進行については、適時休憩を挟むこととした。  1-(3)-2 通訳・介助者を同行して会議に出席したが、通訳・介助者については、座席が決まっておらず、配付資料も準備されていなかった。 盲ろう者と意思疎通しやすい位置に、通訳・介助者の座席と配付資料を準備するようにした。  1-(3)-3 会議の終了予定時間が夜になっており負担が大きい。また、介助者は障害者を送迎してから帰宅することになるので、更に遅い時間になってしまう。 夕方までに会議が終了するよう開催時間を変更した。  【生活場面例:教育】  1-(3)-4 大学入試(面接、小論文)の際に、通訳・介助者の派遣制度を利用したい。 面接では、事前に関係者(面接官、盲ろう者、通訳・介助者)で面接方法や会場レイアウトなどについて打合せを行ってから実施した。小論文では、通訳・介助者が同席したほか、時間延長やパソコン使用許可などの配慮を行った。  【生活場面例:雇用・就業】  1-(3)-5 就職試験において、筆記が困難なためパソコンを使用させてほしい。 受験者の障害に対応しているパソコンの持込みを認め、電子データを用いて出題・解答を行った。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  1-(3)-6 飲食店に入ったが、混雑状況や空席状況が分からない。店員が声をかけてくれても聞きとれないことがあり困ってしまう。 店員がそばまで行き、手のひらに「○」(空席がある)」か「×」(空席がない)かを指で書いてお知らせした。また、空席がある場合には、店員がそこまで案内した。  1-(3)-7 受付窓口などでは、名前を呼ばれたり番号を電光掲示板に表示されたりしても分からない。 そばまで行って直接合図して受付窓口へ誘導した。  1-(3)-8 難聴のため筆談をお願いしたが、弱視でもあるので細いペンや小さな文字では読み取りづらい。 太いペンで大きな文字を書いて筆談を行った。  1-(3)-9 聴覚障害者向けのイベントに参加したところ手話通訳者が配置されていたが、弱視でもあるので手話が読み取りづらい。 手話通訳者の直近の位置に配席した。  1-(3)-10 聴覚障害者向けのイベントに参加したところ舞台上のスクリーンに要約筆記が表示されていたが、弱視でもあるのでスクリーン上の文字を読み取りづらい。 本人が所持していたパソコンと要約筆記者のパソコンをつなぎ、手元のモニターにも要約筆記が表示されるようにした。  1-(3)-11 聴覚障害者団体の活動に参加しているのだが、視覚障害向けの配慮がなく、会報誌やイベント案内などの配布物を読むことができない。 必要に応じて点字や拡大文字を用いた配布物を作成したり、配布物の電子データを提供した。  1-(3)-12 電話リレーサービス利用に関する問い合わせをしようとしたが、ホームページからメールフォームに入力する方法となっており、盲ろう者は使うことができない。 問い合わせを電子メールでも受け付けることとした。  【生活場面例:その他】  1-(3)-13 障害者スポーツ大会に参加するのだが、弱視難聴の盲ろう者なので、スタート合図が分かりにくい。 スタート合図者の一番近くのレーンに配置し、スタート合図はピストル音と光の両方を使って行った。   1(4)肢体不自由  【生活場面例:行政】  1-(4)-1 車イスを使用しているが、庁舎の玄関に大きな段差があって通れないので、携帯スロープを架けてほしい。 その庁舎では携帯スロープを準備しておらず、また重量のある大きな車イスのため職員が持ち上げて段差を乗り越えることもできなかったが、通常は職員専用である段差が小さい通用口へ案内することで、庁舎に入っていただくことができた。  1-(4)-2 申請書類の受付窓口が庁舎の2階にあるのだが、エレベーターがないため上がることができない。 使用していない会議室など1階の適宜の場所まで担当職員が移動し、臨時に受付を実施することで対応した。  1-(4)-3 申請書類に記入したいのだが、設置されている記帳台が高すぎて使うことができない。 記帳台に代わるものとして、バインダーをお貸しした。  1-(4)-4 手続の受付時間が指定されていたが、朝一の時間になっており、通勤で混雑する時間帯と重なってしまい移動の負担が大きい。 混雑する時間帯を避けて移動できるように、受付時間の調整を行った。  1-(4)-5 頸髄損傷により体温調節機能が損なわれているが、出席する会議の部屋の冷房が不調で、室温が高い状態になっている。 会議の部屋に扇風機や氷枕型保冷剤を用意した。  1-(4)-6 図書館を利用するときに、蔵書の検索機を操作できないので、どこに本があるのか探しづらい。 要望に沿って職員が検索機を操作したり、手が届かない位置にある場合は代わりに取ってくるなどして、読みたい本を探せるようにした。  1-(4)-7 平らなところは歩けるが、段差や傾斜があると負担が大きい。フォーラム会場は自由席とのことだが、何らかの配慮をしてほしい。目立つような配慮をされると恐縮してしまうので、できるだけ自然な配慮をお願いしたい。 会場内の段差がない区域に「関係者席」として座席を確保しておき、そちらへ案内した。  1-(4)-8 歴史的建造物の見学イベントに参加したいが段差が多い。車イスで移動可能な範囲だけでも見学させてほしい。 当日のスタッフの一部を案内役へ変更し、車イスでも移動可能な順路で別途案内した。  【生活場面例:教育】  1-(4)-9 教室移動に時間を要することなどによる遅刻を認めてほしい。 障害に起因する遅刻を認めることとし、成績評価においては、出席基準の緩和やレポート提出などの代替手段を設けた。  1-(4)-10 試験中にトイレへ行けるようにしてほしい。トイレは多機能トイレを希望する。 試験会場を多機能トイレの近くにある部屋にするとともに、座席についても部屋の出入口の近くを割り当てた。  1-(4)-11 課外授業に参加したいのだが、移動時に乗車予定のバス路線が車イスに対応していない。 学校の校用車を随行させ、車イスを使用している生徒は校用車で移動することとした。  1-(4)-12 下肢装具を着用しているが、皆と修学旅行に参加したい。現地では他の生徒と一緒に行動したい。 下肢装具を着用していることを前提として、移動ペース、休憩場所、ホテルの部屋割りなどを検討し、できるだけ他の生徒と一緒に行動できるよう計画した。  1-(4)-13 子供の運動会を見学したい。車イスを使用しているのだが、車イスのまま見学できる場所はあるだろうか。 保護者が見学する場所は先着順の自由スペースであり、車イスでは移動しにくい位置もあることから、車イスのまま見学しやすいスペースを別途設け、そちらへ案内した。  1-(4)-14 公共交通機関での通学は負担が大きい。自分で障害対応車両を運転することができるので、大学へのマイカー通学を認めてほしい。 学生のマイカー通学は禁止されているが、合理的配慮として認めることとした。  【生活場面例:雇用・就業】  1-(4)-15 満員電車での通勤が困難だ。 オフピーク通勤や在宅勤務を活用し、満員電車の時間帯を避けて通勤できるようにした。  1-(4)-16 職場の机が車イス使用者には低すぎて、膝が当たってしまい着席できない。 机の脚の下に板を敷いて嵩上げしたことで、車イスのままで着席できるようになった。  1-(4)-17 仕事中も休憩中も、常に車イスに座っている状態で就労していたところ、床ずれができてしまった。 パーテーションで仕切ったところに簡易ベッドを設置し、車イスから降りて休憩できるようにした。  【生活場面例:公共交通】  1-(4)-18 車イス使用者がタクシーに乗るときはリフト付タクシーを手配することになっているが、台数が少ないので希望時間に沿わないことがある。私の車イスは軽量・折畳式なので、セダンタイプのタクシーの荷台にも収納することができる。 セダンタイプのタクシーでも対応できる場合には、そちらも配車するようにした。  1-(4)-19 旅客船のタラップが階段状になっているため、車イスのままでは乗り込むことができない。 貨物用の搬入口が平らであったことから、本来は貨物用であることをご了解いただいた上で、そちらから乗船していただいた。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  1-(4)-20 商業施設の2階にある店舗へ行きたいのだが、エレベーターが故障しており上がることができない。 裏口にある従業員用のエレベーターを使って2階まで上がっていただいた。  1-(4)-21 店舗の出入口が押し引きして開けるドアのため、一人で出入りするのが難しい。 出入口に着いたところで電話をかけてもらい、店員がドアの開閉を行った。  1-(4)-22 商業施設で他のお客が多すぎて、通路を通れなかったり、エレベーターに乗れなかったりする。 目的の売場まで店員が誘導を行った。  1-(4)-23 飲食店へ行ったときに、まだ空きはあったのだが、車イスのまま利用できる入口付近のテーブルは、すでに他のお客が使用していた。 入口付近のテーブルを使用していたお客にご了解いただいた上で、車イスのお客も利用できるよう配席を変更した。  1-(4)-24 飲食店で車イスのまま着席したい。 机に備付けの椅子は片付けて、車イスのまま着席できるスペースを確保した。  1-(4)-25 飲食店で車イスから備付けの椅子に移動して着席したい。 移るときにふらつくことのないよう椅子を押さえたり、車イスを空きスペースで預かったりした。  1-(4)-26 大型の車イスを使用しており、また、貧血防止のためフットレストを上げたりリクライニングを倒したりすることがあるので、飲食店での配席時に配慮してほしい。 飲食店で配席するときに、後方のスペースが広く、テーブルの脚がない位置へ案内した。  1-(4)-27 人工呼吸器を使用しており、外出中はバッテリーで駆動しているので、もし可能であれば充電させてほしい。 飲食店で配席するときに、コンセントに近い場所へ案内し、コンセントを使用していただいても構わない旨をお伝えした。  1-(4)-28 半身麻痺はあるが、フォークやスプーンを使って一人で食事をすることができる。しかし、皿を支えることができずに動いてしまい、食べにくいことがある。 滑りにくい素材のマットがあったので、それを敷いて皿が動かないようにすることができた。  1-(4)-29 通常の盛り付けでは食べづらい料理がある。 料理を食べやすい大きさにカットし、取りやすさに加えて見ばえも考慮しながら盛り付けを行った。  1-(4)-30 ホテルに宿泊したときに、大広間へ移動して食事をすることになっていたが、体調不良のため、なるべく移動する機会を少なくしたい。 バイキング形式であったが、およそ一人前の料理を取り分けて客室まで運び、移動せずに食事できるようにした。  1-(4)-31 ホテルに宿泊したときに、バスルームで使えるシャワーチェアーが備えられていなかった。 「代用できるためパイプ椅子でも構わない」という申出があったので、事務用にあったものをお貸しして、シャワーチェアーの代わりとしていただいた。  1-(4)-32 ホテルの大浴場を利用したいが、広いスペースと介助、複数枚のタオルが必要になるので気が引けてしまう。 事前に相談があったので、当日は通常よりも早く大浴場の準備を整え、本来の開放時間までの間に占有して入浴できるようにした。また、タオルも複数枚を準備しておいた。  1-(4)-33 申込書類に自分で記入することができず、同行者もいないので、店員に代筆してほしい。 十分に本人の意向を確認した上で、店員が代筆による記入を行った。この際、記入内容について後で見解の相違が生じないように、複数の店員が立ち会った。  1-(4)-34 自動精算機の順番待ちにおいて、行列が折れ曲がるように配置されていると、車イスでは並べないことがある。 自動精算機ではなく、有人の窓口で精算を行った。  1-(4)-35 障害により指を動かすのが難しく、会計のときに財布から小銭を取り出すのに手間取ってしまう。 申出があったことから、本人によく確認しつつ、店員が代わりに小銭を取り出して会計を行った。  1-(4)-36 購入したい商品があったので車を自分で運転して向かったが、目的の店舗の駐車場が小さくて、車イスを降ろして店舗内へ入れるスペースがない。 駐車場から店舗に電話があったので、店員が商品を駐車場まで持って行き、その場で代金もいただいた。  1-(4)-37 体温調節機能の障害により、テーマパークなどで炎天下に長時間並ぶことが困難だ。 スタッフが順番について把握しておき、順番となるまでは室内で待機できるようにした。  1-(4)-38 スポーツ観戦のため訪れたスタジアムで、マイコップの持込みが禁止されていた。障害特性で手の震えが強いため、スタジアム内で提供される紙コップでは中身をこぼしてしまう。 持参のプラスチック製の蓋付き容器を使用できることとした。  1-(4)-39 セルフ式ガソリンスタンドが増加しているが、障害により自分で給油することができない。 セルフ式ガソリンスタンドにも給油監視するスタッフはいるため、手が空いているスタッフがいるときには給油を手伝うようにした。  1-(4)-40 資格取得のための実技講習において、身体の一部に麻痺があるので配慮してほしい。 一定の配慮があれば資格取得できる状態であったことから、定期的に受講相談を行い、対応可能な内容については配慮を提供した。  【生活場面例:その他】  1-(4)-41 住んでいるマンションの駐車場は、定期的に抽選で場所替えを行っているが、車イスの乗降に適さない場所がある。 車イスを使用している住民向けの駐車場は、一般の抽選枠とは分けることとし、乗降に適切な場所となるよう配慮して別途指定した。   1(5)知的障害  【生活場面例:行政】  1-(5)-1 役所が公表した調査報告書を読みたいのだが、平仮名しか読むことができないので、振り仮名を付けてほしい。 ページ数の多い調査報告書であり、全ての文章に振り仮名を付すことは作業量が膨大となるので、要点を抜粋した概要ペーパーを作成して振り仮名を付すこととした。  1-(5)-2 選挙の投票を行う際に、次々と他の投票者が来ると、急がされたような気持ちになってパニックを起こしてしまう。 他の投票者を止めることはできないが、他の投票者が少ないと予想される時間帯を前もってお知らせした。また、実際に来場したときには、他の投票者に間隔を空けてほしい旨をお願いした。  【生活場面例:教育】  1-(5)-3 学習活動の内容や流れを理解することが難しく、何をやるのか、いつ終わるのかが明確に示されていないと、不安定になってしまい、学習活動への参加が難しくなる。 本人の理解度に合わせて、実物や写真、シンボルや絵などで活動予定を示した。  1-(5)-4 言葉だけでの指示だと、内容を十分に理解できないで混乱してしまうことがある。 身振り手振りやコミュニケーションボードなども用いて内容を伝えるようにした。  1-(5)-5 咀嚼することが苦手であり、通常の給食では喉に詰まらせてしまう可能性がある。 大きな食材については、小さく切ったりミキサーで細かくしたりして、食べやすいサイズに加工することとした。  1-(5)-6 触覚に過敏さがあり、給食で使うステンレスの食器が使用できず、手づかみで食べようとする。 シリコン製やポリプロピレン製など、学校にある素材の食器のうちから受け入れやすい触感の食器を用いることとした。  1-(5)-7 多くの人が集まる場が苦手で、集会活動や儀式的行事に参加することが難しい。 集団から少し離れた場所で本人に負担がないような場所に席を用意したり、聴覚に過敏があるのであれば、イヤーマフなどを用いることとした。  1-(5)-8 聴覚に過敏さがあり、運動会のピストル音が聞こえると、パニックを起こしてしまうかもしれない。 ピストルは使用せず、代わりに笛・ブザー音・手旗などによってスタートの合図をすることとした。  1-(5)-9 卒業式での証書授与の際に、どこで立ち止まり、どこを歩くのかを理解するのが難しい。 会場の床に足形やテープなどで動線と目的の場所を示すことで、どこを歩くのかを理解しやすいようにした。  1-(5)-10 外部で行われる体験学習に参加したいが、学校内と同じように配慮をしてほしい。 体験学習先と内容や所要時間などについて打合せをし、外部でも同じような配慮を提供できるように調整した。  【生活場面例:公共交通】  1-(5)-11 パニック障害があるため、必ず介助者の隣に座りたい。 ほぼ満席になっており隣り合った空席がなかったが、他の乗客のご了解を得て座席を変更し、隣り合って座れるよう調整した。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  1-(5)-12 契約時の要望などを自分で説明することが難しいため、同行する介助者から話を聞いてほしい。 個人情報にも関わることなので通常は本人から聞くことになっているが、必要に応じて介助者から説明を聞くこととした。  1-(5)-13 初めて行く歯科医院だと、極度に施術を怖がってしまう。 事前に相談があったので、施術室の椅子に座って歯磨きの仕方に関する話をするなど、施術をしないで場に慣れるだけの機会を設けた。  1-(5)-14 子供が買物の会計時に待つことができず、動き回ったり騒いだりしてしまう。 会計場所に椅子を持って行き、「ここに座って待っていようか」と声をかけ、親の会計が終わるまで話し相手となった。いつも同じ場所に椅子を置くようにしたところ、その後は会計が終わるまで1人で椅子に座って待っていられるようになった。  1-(5)-15 レジでの会計の際に持ち金が不足しており買いたいものが買えないときは、不満が折り合えるまで会計を待ってほしい。 家族があきらめるように説得していたが、順番を待っている他のお客から「早くしてくれ」と催促があったため、事情を説明した上で他のお客は別のレジで対応した。   1(6)精神障害  【生活場面例:行政】  1-(6)-1 申請書類の記入に長い時間を要するので、役所へ行ってからその場で記入するのは気が引けてしまう。 外部に持ち出しても問題の生じない内容であったことから、事前に申請書類を送付しておき、役所に来るときに記入済みのものを持参していただくことにした。  1-(6)-2 大勢の人がいるところでは、どうしても周囲が気になってしまい落ち着かず、待合室での順番待ちが難しい。 別室の確保が困難であったため、待合室の中で、比較的周りからの視界が遮られるようなスペースに椅子を移動させ、順番待ちできるよう配慮した。  【生活場面例:教育】  1-(6)-3 障害の状況によっては、授業中に情緒不安定になってしまうことがある。 情緒不安定になったときには、落ち着くまで一人になれる場所へ移動して休むことができるようにした。  【生活場面例:雇用・就業】  1-(6)-4 主治医が決まっており、外来の診察日が指定されているが、勤務のシフトとなかなか合わず、予定の日に受診できないこともある。 通院・受診の妨げにならない勤務体制を組むようにし、やむを得ない場合は、通院・受診のために休めるようにした。  1-(6)-5 1時間以上連続して業務を行うと強いストレスを感じ、業務効率も落ちてしまう。 休憩時間の配分を調整し、1時間おきに休憩できるようにした。  1-(6)-6 周囲の同僚が、障害のある人とどのように接すればよいのか分からず、お互い話しかけづらい職場の雰囲気になってしまった。 本人の希望を踏まえて、障害の内容や必要な配慮などについて職場で説明を行った。  【生活場面例:公共交通】  1-(6)-7 考えていたことと違ったことや通常とは異なる場面への対応が苦手で、パニックになる場合がある。電車やバスなどを利用している際に、事故発生で止まったり遅れたりするなどの異変が生じたときは、状況が理解できるよう丁寧に伝えてほしい。 障害特性を理解して、アナウンスする場合は、分かりやすく丁寧なアナウンスを心掛けた。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  1-(6)-8 異性とのコミュニケーションに負担を感じてしまうことから、同性に接客対応してほしい。 同性の店員がいる場合には、その者が接客対応するようにした。   1(7)発達障害  【生活場面例:教育】  1-(7)-1 文字の読み書きに時間がかかるため、授業中に黒板を最後まで書き写すことができない。 書き写す代わりに、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット型端末などで、黒板の写真を撮影できることとした。  1-(7)-2 マークシート選択式の試験は通常どおりに受けられるのだが、自由記述式の試験では書字が乱れてしまう。 自由記述式の試験では罫線のある解答用紙を使うようにした。  1-(7)-3 教員の話を聞いて想像することが苦手なため、内容を理解することができない。 絵、写真、図、実物などを見せることで、授業内容や活動予定を理解しやすいように配慮した。  1-(7)-4 周囲の物音に敏感なため気が散ってしまい、集中して学習に取り組むことができない。 教室内での耳栓使用や、別室への移動により、静かな環境で課題に取り組めるようにした。  1-(7)-5 パニックを起こしてしまうことがあるので、授業中に問題の回答者として指名しないでほしい。また、指名しないことを他の生徒には伝えないでほしい。 各授業の担当教員が事前に情報共有しておき、他の生徒は気づかないように指名対象から外す配慮を行った。  1-(7)-6 先を見通すことが苦手なため、初めての活動に対して不安になり、参加することができない。 活動を始める前に、これから活動する内容や手順について説明して確認することで、安心して取り組めるよう配慮した。  1-(7)-7 時間の見通しが持てず、活動の切替え時に混乱してしまうことがある。 時計やタイマーなどを使って時間の見通しを持てるようにした。  1-(7)-8 触覚過敏があり、肩を叩かれて呼ばれるなどの対応に驚いてしまうことがある。 なるべく直接体に接触しないようにし、やむを得ない場合には、事前に十分に予告をしてから接触するようにした。  1-(7)-9 触覚過敏があり、新しい素材に触れるとパニックになってしまう。 本人の意に沿わない場面で対象物に触れることを強要しないようにし、どうしても新しい素材に触れることが必要な場合には、緩和される手立てを検討するようにした。  1-(7)-10 絵画の授業時にいつもパニックになってしまうので、落ち着いて授業参加できるようにしてほしい。 パニックの要因が色覚過敏であることが見込まれたため、色味の薄い用紙や色鉛筆の使用許可などを配慮し、落ち着いて授業参加できるようになった。  1-(7)-11 集団で行動する授業に適応できずにいるが、本人の希望としては参加したいと思っている。 無理のない形で段階的に移行することとし、徐々に集団で行動する時間を増やしていく授業スケジュールを計画した。  1-(7)-12 もの忘れをする傾向があり、頻繁に宿題などがあることを忘れて未提出になってしまう。 宿題などの提出物があるときには、保護者にも連絡して知らせるようにした。  【生活場面例:雇用・就業】  1-(7)-13 聴覚過敏のため人の話し声が気になってしまい、仕事が手につかないことがある。 人の行き来が少ない部屋で勤務できるようにするとともに、勤務中に耳栓やイヤーマフの使用を認めることとした。  1-(7)-14 一度に多くのことを理解して行動するのが苦手である。 「仕事の内容を一つずつ簡潔に指示する」「複雑な指示内容はメモなどで示す」など、仕事を行うときの配慮について部署内で個別性に合わせた業務指示を行うこととした。  【生活場面例:サービス(買物・飲食店など)】  1-(7)-15 資格取得のための講義において、座学での読み書きや筆記テストに難がある。 タブレットの使用許可など、学校で行われることが想定される合理的配慮に準じた対応を行った。  1-(7)-16 プール施設でスイムキャップ着用が義務づけられているが、帽子類の着用を嫌がってしまい、スイムキャップもすぐに外してしまう。 衛生面や循環装置への影響を考えてスイムキャップ着用としているが、配慮すべき理由がある場合には、非着用でも利用を認めることとした。  【生活場面例:災害等】  1-(7)-17 長時間並んで待つのが苦手であったことから、避難所で配給の列に並べず、お弁当をもらうことができなかった。 障害者・乳幼児・高齢者など、長時間並ぶことが困難な人を対象に、別途配給するようにした。   1(8)内部障害、難病に起因する障害  【生活場面例:教育】  1-(8)-1 定期的な通院が必要であることから、授業や試験を欠席することが多くなってしまう。 担当教員の間で授業や試験における配慮について情報共有を行い、欠席が多くなる場合には、レポート提出などの代替手段を設けることとした。  1-(8)-2 生徒が学校にいる間も定期的に薬を飲む必要があるが、うっかり飲み忘れてしまうことが何度もあった。 生徒本人がアラーム機能付きの時計を持つようにしたほか、担当教員も一緒に時計のアラーム時間を設定して、薬の飲み忘れがないよう声をかけるようにした。  1-(8)-3 試験中に薬と水を机上に置くことと、試験中に服薬することを認めてほしい。 試験監督者が事前に確認を行った上で、机上に置いて試験中に服薬することを認めた。  1-(8)-4 症状の特性などについて、クラス担任の教員だけではなく、各教科担任の教員にも知っておいてほしい。 クラス担任が聞いたことは教科担任へも伝え、関係者全体で情報共有するようにした。  1-(8)-5 マラソンなどの体育の授業は、体力が落ちてきており難しい。 参加が難しい競技は見学し、そのレポートを提出することで成績評価することとした。  【生活場面例:雇用・就業】  1-(8)-6 薬を服用したいのだが、1回に飲む数が多いので、他人の眼が気になってしまう。 使っていない会議室などを使用して服薬できるようにした。  1-(8)-7 定期的に通院する必要があるため休暇取得日数が多くなり、同僚に対して気が引けてしまう。 本人の希望を踏まえて、内部障害があることや必要な配慮について職場で説明を行うなど、本人が休暇を取得しやすい職場の雰囲気づくりを行った。  1-(8)-8 日によって体調が変動するので、一律に定められている就業時間・休憩時間では、業務を行うことが難しい日がある。 体調不良の日には、就業時間内でも休憩室を利用できることとした。  1-(8)-9 部署異動の話があったが、異動先は長時間の立ち作業を伴う業務なので、体調との関係で対応できるか不安だ。 本人の意向も聞きながら異動先を再検討し、体調の変動が少ないと思われる業務内容の部署への異動とした。   1(9)重症心身障害  【生活場面例:行政】  1-(9)-1 来庁者用の駐車場が玄関から離れているが、重度の障害により長距離の移動は負担となるため、玄関の近くに駐車させてほしい。 庁舎の玄関の近くにある空きスペースにカラーコーンを置いて、臨時の駐車場とすることで、駐車場から玄関までの移動距離が短くなるようにした。  【生活場面例:教育】  1-(9)-2 学校では仰向け姿勢や後傾椅子座位でいることが多いので、天井灯の光が視野に入り、眩しさから目を閉じてしまう。 天井灯の手前に白い布などを広げて吊るし、光が直接目に射しこまないようにしたところ、以前よりも目を開けることができるようになった。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  1-(9)-3 嚥下障害があるため、外食時に通常メニューの食事ができないが、できるだけ家族で同じメニューの食事をしたい。 予約の際に希望の食形態を聞き取り、それに合わせて可能な限り再調理対応し、なるべく元のメニューに近い食形態で提供した。また、専用のスプーンや食器を持参されたので、洗ってお返しした。  1-(9)-4 食事をする部屋がテーブル席だったため、寝かせる姿勢をとることができなかった。 和室タイプの部屋もあり空いていたので、そちらに変更した。  1-(9)-5 車イスがリクライニングタイプのため、スーパーの会計時にレジに並ぶこともレジ横を通ることも難しい。 レジにおいて、会計の順番が来るまで店員が買物カゴを預かり、順番になったときに声をかけるようにし、それまでは広いところで待てるよう配慮した。  1-(9)-6 デパートの多目的トイレには、成人用のおむつ交換用ベッドがないので不便だ。 おむつ交換が必要になったと申出があったので、救護室のベッドを利用していただいた。  1-(9)-7 プール施設を利用したいが、着替え用のスペース(ベッド)が無いため利用できない。 着替えるときのプライバシーを保護できるように、人目につかず横になって着替えられるスペースへ案内したり、周囲をつい立で囲った簡易ベッドを用意したりした。    2.環境の整備事例  環境の整備事例 障害者差別解消法(第5条)は、行政機関等及び事業者に対し、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者などの人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上など)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしています。 新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待されます。また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修などのソフト面の対応も含まれることが重要です。 ※ 合理的配慮の提供は、環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置です。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の提供の内容が異なることとなります。 ○事例紹介の見方 上段:障害者が困っていることや環境の整備の申出などを記載しています。 下段:どのように環境を整備したのかを記載しています。   2(1)視覚障害  【生活場面例:行政】  2-(1)-1 庁舎の広い玄関ホールに案内となるものがなく、どちらへ進めばよいのか分かりにくい。 玄関ホール内に出入口付近から通路方向へ誘導する点字ブロックを設置した。  2-(1)-2 弱視のため階段の上り下りで段差を見誤ってしまうことがある。 階段の縁に目立つ色の滑り止めを設置し、弱視でも段差を認識しやすいようにした。  【生活場面例:教育】  2-(1)-3 教科書などの教材が紙媒体で読むことができない。 教材を電子テキスト化して提供する体制を整えた。  2-(1)-4 試験や受験の当日には合理的配慮の提供を受けられるが、日常の勉強で使える障害に対応した練習問題が少ない。 過去問などを電子テキスト化し、パソコンの読み上げ機能で使える問題集を作成した。  2-(1)-5 電子テキスト化のほかに、点字化もしてほしい。 学校に点字プリンターを導入した。  2-(1)-6 所属クラスをはじめ音楽室や美術室など様々な教室を利用することになるが、教室を移動するときに迷ってしまうことがある。 教室の用途が分かるように、各教室のドアのところに点字ラベルで教室名や教室番号を表記するようにした。  【生活場面例:雇用・就業】  2-(1)-7 視覚障害者の就労を支援するための機器が職場にない。 読み上げソフト、音声点字携帯情報端末、拡大読書機などの支援機器を導入した。  2-(1)-8 社内の情報システムが旧式で障害に対応できない。 社内の情報システムをリニューアルする際に、グループウェアなどはアクセシビリティ対応のものを調達した。  2-(1)-9 通常のパソコンではモニター画面が小さいので、弱視では読み取りづらくて作業に支障を来している。 大型モニターと、画面を明るく照らすデスクスタンドを導入した。  2-(1)-10 担当している業務の性質上、どうしても人的な支援を必要とすることがある。 必要に応じて補助者を配置できる制度を導入した。  2-(1)-11 根本的にアナログな作業を前提とした業務フローになっており対応できない。 障害があっても作業できるように、業務フローの全体を見直した。  2-(1)-12 大きな会社なので、社内を移動するときにも、どこに何の部屋があるのか分かりづらいことがある。 エレベーターの操作盤や会議室の標識などに点字を追加した。  【生活場面例:公共交通】  2-(1)-13 バスに乗車してからは車内放送で行き先が分かるが、乗る前には分からないので、運行時間にずれがあると乗り間違えることがある。 バスの乗降口にスピーカを設置し、そこからドア開閉時に行き先について放送を流すようにした。  2-(1)-14 通学経路にある信号機は歩行者横断の時間設定が短くて、視覚障害により周囲の状況に注意しながら歩いていると渡りきれないことがある。 交通状況と信号機周期を検証し、通学時間帯はより長い横断時間を確保できるように時間設定を変更した。  2-(1)-15 歩道などに敷設されている点字ブロックについて、破損や凸凹が多数生じている。また、駅から公共施設までの間の点字ブロックに一部未設置の箇所があり、そこで迷ってしまう可能性がある。 道路保全を担当している機関において、視覚障害者団体などからヒアリングを行い、得られた意見等を反映させて点字ブロックの整備を行った。  2-(1)-16 道路工事の期間中は、そこで点字ブロックが途切れてしまっていることがあって危ない。 日中は交通誘導員を配置し、夜間はゴムマット状の誘導ブロックを敷設することとした。  2-(1)-17 駅のホームや通路の白線表示が消えかかっており、弱視では識別しづらくなっている。 白線表示を引き直すとともに、一部は点字ブロックに改修した。  2-(1)-18 視覚障害があるのでタンデム自転車を使いたいが、現在住んでいる地域の交通規則ではタンデム自転車での公道走行が禁止されている。 タンデム自転車での公道走行が可能となるように交通規則を改めた。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  2-(1)-19 受付方法が、モニターを見ながら自分で入力する仕組みになっているため、利用することができない。 視覚障害のある人も利用できるように、新たにハンドセット付きの受付機器を導入した。  2-(1)-20 ATMなどでカードを挿入するときに、前・後・表・裏が分かりづらい。 手触りでカードの方向を識別できるように、カードデザインに凹凸を追加した。  2-(1)-21 飲食店では、墨字(印刷された文字)のメニューしかないため、何を注文していいか分からない。 これまでは店員がメニューを読み上げて対応していたが、忙しいときには難しいため、好みのメニューを注文してもらえるように点字のメニューも用意した。  2-(1)-22 これまでに何度も補助犬を連れて入店していたのだが、先日は「ペットは不可ですから」と入店を断られてしまった。 店員の中に、補助犬とペットの違いを理解していない者がいたことによる入店拒否であった。店員の研修に補助犬に関する事項を追加し、今後の再発を防ぐこととした。  2-(1)-23 契約書類などにおいて、同行者が代筆できるようにしてほしい。同行者がいない場合には、店舗スタッフに代筆してほしい。 重要な書類のため代筆に躊躇してしまうという意見が店舗スタッフからあったので、同行者が代筆する場合と店舗スタッフが代筆する場合のそれぞれについて、どのように対応するのかを具体的にマニュアルで定め、研修を実施した。  2-(1)-24 商品パンフレットの文字について、同じような輪郭のものだと、弱視のため区別しにくい。 今後の商品パンフレットは、ユニバーサルデザインフォントを使って作成することとした。  2-(1)-25 点字ブロックのすぐ近くまで商品が置かれており、たびたび商品にぶつかってしまう。 点字ブロックと商品の間が十分に空くようにしたり、陳列位置に柵を設置したりするなど、店舗レイアウトを変更した。  2-(1)-26 商店街の通路が煩雑としている。視覚障害があっても利用しやすい商店街にしてほしい。 視覚障害者団体の方と一緒に商店街を回り、通路沿いにあるイートインスペースや鉢植えのレイアウトを見直すなど、各種意見を伺って反映させた。  2-(1)-27 ホテルのホームページがリニューアルされ視覚的な演出が増えたことにより、視覚障害者がホームページから入力して宿泊予約するのが難しくなってしまった。 視覚障害者の意見も聞きながら、視覚的な演出と視覚障害者にとっての使いやすさが両立するホームページに再構成した。  【生活場面例:災害等】  2-(1)-28 避難所ではラジオから情報収集することになるが、周囲からうるさいので止めてほしいと言われてしまう。 ラジオと合わせてイヤフォンも備蓄することとした。   2(2)聴覚・言語障害  【生活場面例:行政】  2-(2)-1 受付窓口が整理券方式なので、番号が呼ばれるまで担当者の口元をじっと見つめているか、自分の前の番号の者が呼ばれたら、受付窓口に近づいてスタンバイしなければならない。 視覚的にも順番が分かりやすいように、整理番号が表示される電光掲示版を設置した。  2-(2)-2 受付窓口に手話通訳者を常駐させてほしい。 予算面から常駐は難しかったので、定期的に手話通訳者が受付窓口に派遣される仕組みを設けるとともに、派遣される日を広報することとした。  2-(2)-3 通常の対応時間外の訪問では、インターホンで警備室に連絡してドアを開けてもらうようになっており、入館することができない。 カメラ・モニター付きのインターホンを設置し、身振りや筆談なども伝わるようにした。  2-(2)-4 ホームページに掲載されている施策の広報動画について、音声が聞こえないので内容がよく分からない。 新しい広報動画を作成するときには、字幕を表示できる機能を追加するようにした。  2-(2)-5 配偶者からの暴力に悩んでいるが、相談窓口への連絡先が電話番号だけなので、通報も相談もできない。 FAX番号やメールアドレス及び電話リレーサービスの連絡窓口も示して、通報や相談を受け付けられるようにした。  【生活場面例:教育】  2-(2)-6 補聴器を使っているが、授業で聞き取りにくいことがある。 携帯できるFM音声送信機を導入し、話し手はそれを装着して授業を行うこととした。また、本人から申出があれば、ノートテイカーを配置できるようにした。  2-(2)-7 頻繁に丁々発止の議論をするゼミ形式の授業なので、議論のやり取りをフォローするのが難しい。 筆談などにより議論のやり取りを素早く伝えるのは困難であったことから、手話通訳者と派遣契約をし、授業の補助員として配置した。  2-(2)-8 理工系大学のため化学反応などを伴う実験を行うことになるが、もしものときに危険を察知しづらい。 非常時の警報が視覚化されるように、回転灯で知らせる装置を実験室に設置した。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  2-(2)-9 受付の順番となって呼ばれていたとしても分からない。声に出して呼ぶ以外の方法はないだろうか。 順番になると振動してお知らせする機器を導入した。  2-(2)-10 難聴のため聞こえにくいが、筆談をするほどではない。 受付窓口に指向性の対話支援機器を備え、店員が話したことを聞き取りやすいようにした。  2-(2)-11 現在は筆談でやり取りしているが、より簡単に意思疎通できるようになるとありがたい。 タブレットを導入し、店員が話した内容が文章に自動変換されるアプリをインストールした。  2-(2)-12 窓口に手話通訳者を常時配置してほしい。 全ての店舗の窓口に手話通訳者を常時配置することは難しいので、事前に連絡をいただいて基幹店舗から派遣する仕組みを設けた。  2-(2)-13 TVショッピングで買いたい商品があっても、電話受付だけなので買うことができない。 電話受付のオペレーターに加え、FAXや電子メールによる受付のオペレーターも配置することとした。  2-(2)-14 劇場で演劇など鑑賞するときには、聞こえている人と同じように楽しみたい。 ポータブル字幕機器を導入し、希望者への貸出しを始めることとした。また、劇場に磁気ループを設置し、補聴器や人工内耳へ音声を送れるようにした。  【生活場面例:災害時】  2-(2)-15 警報は音声によるものが多く、聴覚障害があると気づきにくい。 災害情報を登録された電子メールのアドレスへ配信する警報システムを導入した。また、普段は業務のお知らせなどを表示している電光掲示板に、災害時には緊急速報などの情報が表示されるようにシステム改修を行った。  2-(2)-16 災害などがあってもアナウンスが聞こえないので状況判断が難しく、周囲の動きを見て行動するしかない。せめて聴覚障害があることを示すものがほしい。 公的機関などで配布されている『災害時バンダナ』(耳が聞こえないことを示すバンダナ)を取り寄せて、非常時に着用できるようにした。   2(3)盲ろう  【生活場面例:行政】  2-(3)-1 会議で通訳・介助者による指点字通訳を受けているが、通訳を受けている間は手がふさがってしまい、自分で記録することができない。 会議の事務局において、通訳・介助者とは別に記録担当者を配置するようにした。  2-(3)-2 フォーラムで聴覚障害者向けの手話通訳者が配置されているが、視力が弱いため手話が読めず、話がよく分からなかった。 フォーラムの参加申込書に配慮してほしいことを記載する欄を設けることとし、記載内容に基づき手話通訳者のすぐ前に座席を設けるなどの配慮を行いやすいようにした。  【生活場面例:雇用・就業】  2-(3)-3 業務に常時従事するためには、通訳・介助などの支援者が必要になる。 職務遂行に必要な支援者を職場に配置する制度を導入した。  【生活場面例:公共交通】  2-(3)-4 視覚障害や色弱のある盲ろう者は、信号機の赤と青の見分けができず、音響信号の音も聞こえない。 信号が赤か青かを振動でも知らせるように、触知式信号補助装置を設置した。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  2-(3)-5 電話リレーサービス利用に関する問い合わせをしようとしたが、ホームページからメールフォームに入力する方法となっており、盲ろう者は使うことができない。 盲ろう者にとっても使いやすいホームページとなるよう改善していくことにした。   2(4)肢体不自由  【生活場面例:行政】  2-(4)-1 庁舎の玄関にスロープが設置されているものの、傾斜が急すぎて上がるのに苦労している。 スロープを改修し、より緩やかな傾斜に変更した。  2-(4)-2 庁舎に多目的トイレが設置されているが、手すりが横向きのものだけなので、立ったり座ったりする基本的な動作が行いづらい。 縦・横両方の機能を備えたL字型の手すりに改修した。  2-(4)-3 新庁舎の建設予定があるが、障害のある人もない人も同じように利用できる施設にしてほしい。 設計段階から障害当事者や関係団体の意見を取り入れ、ユニバーサルデザインの採用などにより、新庁舎のバリアフリー化を図った。  【生活場面例:教育】  2-(4)-4 学校施設にエレベーターがないので、1階の教室でなければ移動時の負担が大きい。 エレベーター設置の見通しが立たないため、その生徒が所属するクラスが1階となるように校舎の教室配置を変更した。  2-(4)-5 医療的ケアが必要な生徒については、パート勤務の看護師が対応しているが、勤務時間に制限があるため、親も付き添っていなければならない。 常勤の看護師を配置し、親の付添いがなくとも医療的ケアを提供できる環境を整備した。  2-(4)-6 一人で通学できるものの、教材や文房具などの毎日の持ち運びが負担になっている。 学校に大きめのロッカーを設置し、そこに学校生活で必要なものを収納しておけるようにした。また、必要があれば教材を2セット渡し、持ち運ばなくとも学校と家で使えるようにした。  2-(4)-7 支援学級の教室の床で、足を滑らせそうになってしまう。 ケガなどを未然に防止できるように、床に滑りにくいコルクボードを敷き詰めた。  2-(4)-8 来年度に入学予定の生徒について、通常のトイレを使用することが難しいという旨の連絡があった。 トイレの一部を改修し、多目的トイレを設置した。  2-(4)-9 パソコンを使う授業では、手が不自由なためマウス操作が難しい。 タッチパネルで操作できるタブレット端末を導入した。  2-(4)-10 休み時間などに多数の学生が通る廊下があり、そこでは車イスの先端が交差する廊下の陰から出てくる学生とぶつかってしまうことがある。 見通しの悪い交差箇所にミラーを設置して、お互いの死角ができないようにした。  2-(4)-11 普段は一人で移動できるが、積雪があると難しい。 教室移動などの動線について検証し、動線に当たる校舎間の除雪を重点的に行うようにした。  2-(4)-12 排水溝に網状の蓋(グレーチング)が置かれているのだが、網目が大きくて車イスのタイヤがはまってしまう。 蓋を置き換えるのは費用負担が大きいことから、よく通る箇所の蓋の上にゴムマットを敷いて防止することとした。  2-(4)-13 自宅からだと遠距離通学となるので、学生寮に入りたい。 学生寮は障害者の生活に対応していなかったので、段差解消や手すり設置などのバリアフリー化の改築を行った。  2-(4)-14 現在のスクールバスの巡回ルートでは、乗車から学校到着までの時間が長いため、体調面での負担が大きい。 短い時間での送迎を可能とするため、スクールバスの増車と巡回ルートの見直しを行った。  2-(4)-15 特別支援学校まで親が送迎しているが、遠方のため時間がかかってしまい負担が大きい。 学校と教育委員会で検討し、より近い場所に分校を立ち上げた。  2-(4)-16 電車の乗り降りでは携帯スロープによる移動支援が必要となるが、入学予定の学校の最寄りは無人駅だった。 関係者で話し合った結果、鉄道会社は携帯スロープを無人駅に常時配備し、学校の職員や学生が駅での移動支援を行うこととなった。  【生活場面例:雇用・就業】  2-(4)-17 握力が弱いので会議室などのドアノブが円形だと開閉が難しい。 ドアノブをレバー式に改修した。  2-(4)-18 握力が弱いので、電話対応のときに受話器を持ち続けていることが難しい。 ヘッドセットを導入し、それを使って電話対応できるようにした。  2-(4)-19 障害対応車両を運転できるので一人でマイカー通勤しているが、駐車場から職場へ移動する間に雨が降ると、傘がさせないので濡れてしまう。 障害のある社員向けの駐車場を出入口の直近に設けた。  2-(4)-20 外回りの業務も担当したいのだが、社用車が車イス対応ではない。 車イスでも乗り込める車両を社用車として導入した。  【生活場面例:公共交通】  2-(4)-21 バス乗車時に、運転手が車イスの固定方法を知らなかったため、「車イスのブレーキで対応してください」と言われてしまった。バスが大きく揺れるたびに、転倒するかもしれないとヒヤヒヤした。 車イスの固定方法などの研修について、定期的に全ての運転手を対象として行うこととした。  2-(4)-22 電車の駅で、降車予定駅の駅員と連絡が取れるまで乗車させてもらえない。それにより到着している電車を見送ることになる場合もある。 駅員に連絡したり携帯スロープを架けたりしなくとも、いつでも車イスに乗ったまま自力で乗降できるように、各駅を改修してホームと電車の間がバリアフリーとなる乗降スロープを設置した。  2-(4)-23 空港まで電車や車イス対応バスが乗り入れておらず、誰かに送迎してもらうかタクシーでなければ利用できない。その空港は遠隔地のためタクシーだと高額料金になってしまう。 車イス対応のリフト付バスを導入した。  2-(4)-24 多くの障害者が利用している福祉施設の前の道路が一方通行となっており、自動車で通って乗降する場合にはその都度大回りしなければならない。 周囲の通行量などを検証した上で、福祉施設の前は一方通行にならないように交通規制を変更した。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  2-(4)-25 店舗の入口が乗り越えられない段差になっており、車イスを使っていると入店できない。 スロープ設置工事や携帯スロープ購入をすぐには実施できないので、当面の間は頑丈な木の板を購入して対応することとした。  2-(4)-26 出入口が片開き式のドアになっている店舗では、一人で開閉するときに難があり、重厚なものだと出入り自体できない。 店舗の出入口をスライド式のドアに改修した。  2-(4)-27 スロープがタイル貼りになっているが、雨が降って濡れると滑りやすくなってしまい危ない。 滑りにくい材質を用いたスロープに改修した。  2-(4)-28 休日専用のATMコーナーの出入口が階段になっており、車イスでは使用できなくなっている。 休日専用の出入口を改修してバリアフリー化を図った。  2-(4)-29 車イスに座ったままで申込手続などを行えるようにしてほしい。 受付窓口の1つをローカウンターに改修した。  2-(4)-30 飲食店のカウンター席が固定椅子であるため、車イスのままでは着席できない。 カウンター席の一部を改装し、入口に近い位置にある席の一部を可動椅子に変更した。  2-(4)-31 よく使っているホテルが改修されるので、その際に障害者用トイレにベッドを設置してほしいと要望した。 要望を取り入れて、障害者用トイレにはベッドも設置することとした。  2-(4)-32 既存の駐車場では、隣のスペースに他の自動車が止まっていると、幅が狭くて乗り降りできなくなってしまう。 駐車場の一部(店舗の出入口に近いもの)について、区切りの見直しを行って車イスの乗り降りにも対応できる駐車場とした。  2-(4)-33 下半身に障害があるが運転免許を取得したい。 手動でアクセルとブレーキも操作できる教習車両を導入した。  【生活場面例:災害時】  2-(4)-34 高層階で勤務しているが、自力では階段の上り下りができないので、エレベーターを使えない災害時に速やかに外へ避難することが難しい。 階段避難車(歩行困難な方を上層階から階段を使用して避難させることができる機器)を職場に備えることとした。  2-(4)-35 避難所となった学校施設には、着替えやトイレができるスペースもつい立もなかった。 仮設トイレとは別に、本人と介助者が余裕をもって入れる広さの部屋を確保して、ポータブルチェアトイレ、簡易便器、ベッドを置き、着替えやトイレができるようにした。   2(5)知的障害  【生活場面例:教育】  2-(5)-1 発語はないが、実物や指差し、発声で要求や援助を伝えることができる。しかし、明確に相手に伝わらないことも多い。 本人の理解度や操作能力に合わせて、絵カードやタブレット端末、音声ペンなどの補助手段を導入した。  2-(5)-2 危険性の予知が難しく、校舎の窓から外へ出ようとすることがある。 落下を防ぐため、やや高めの窓手すりや柵を設置した。  【生活場面例:雇用・就業】  2-(5)-3 他の社員となかなか馴染むことができない。 障害者とのコミュニケーションについて、専門家による社員研修を実施した。  【生活場面例:災害時】  2-(5)-4 予定外のことなどで不安になったり、パニックになったりすることがあり、災害時にも同様のことが予想される。 避難場所や避難する際の注意などを分かりやすく伝えるための視覚的な手がかりを用意した。また、学校内の避難経路は分かりやすいように、生徒の目線の位置に目印を設置し、避難訓練の際もそれを手がかりにして避難するようにした。   2(6)精神障害  【生活場面例:教育】  2-(6)-1 障害により講義に集中できないときがあり、単位の取得が難しくなっている。 生徒の希望と症状の診断結果を考慮して、一部の講義にチューターをつけて修学支援することとした。  【生活場面例:雇用・就業】  2-(6)-2 細かい作業の段取りがなかなか覚えられず、急な手順の変化などには対応できない。 作業手順などを示した業務マニュアルについて、分かりやすい内容となるよう工夫して作成した。また、説明や指示は具体的に行うように職場スタッフに周知した。  2-(6)-3 調子が悪い場合に薬を飲んだり少し休みたいときがあるが、職場で周囲の目があると気が引けてしまう。 気兼ねなく服薬と小休止ができるように別室を設け、必要に応じて別室での休憩を認めることとした。また、本人の希望を踏まえて、障害の状況について理解を促すための職場研修を行った。  2-(6)-4 業務や職場での悩みを相談したい。 関連ケア資格を取得した者を相談員とし、悩んでいることを相談できる機会を設けた。   2(7)発達障害  【生活場面例:教育】  2-(7)-1 周囲に多数の生徒がいる環境だと集中できなくなってしまう。大教室で行われる講義については、別室で受けられるようにしてほしい。 大教室にカメラ、別室にモニターを設置し、別室において受講できるようにした。  2-(7)-2 大きな音に敏感な児童への対応が求められた。 椅子の引きずる音を減少させるため、全ての机と椅子の脚に防音加工を施した。  2-(7)-3 休憩時間から授業への気持ちの切替えに時間がかかるため、授業に集中できない。 休憩時間に好きな活動をしている途中でも授業への気持ちが切り替えやすくなるように、チャイム前に合図となる音楽を流すようにした。  2-(7)-4 黒板の横などに掲示スペースがあると、視界に入る掲示物が気になって授業に集中できない。 掲示スペースを教室の後ろ側へ移設した。   2(8)内部障害、難病に起因する障害  【生活場面例:教育】  2-(8)-1 気管切開で吸引処置が必要な生徒が来年入学することになった。 学校でも吸引処置を行えるように、養護教諭が手技を習得して対応することとした。  【生活場面例:雇用・就業】  2-(8)-2 症状が悪化している時期には、1日8時間・週5日の勤務だと、体力が持たない場合がある。 時短勤務や在宅勤務など、柔軟に変更できる雇用制度を導入した。  2-(8)-3 定期的な通院が必要だが、通常の休暇制度では日数が足りなくなってしまう。 年次休暇とは別に、通院のために使用できる休暇制度を導入した。  2-(8)-4 勤務時間中に休憩する場合、自席では周囲の目が気になってしまい、十分に休むことができない。体調不良が著しい場合には、横になれるスペースも整備してほしい。 職場とは区切られたところに休憩スペースを設け、横になるときに使えるように簡易ベッドも備えた。また、本人の希望を踏まえて、障害の状況について理解を促すための職場研修を行い、休憩しやすい職場環境を整えた。   2(9)重症心身障害  【生活場面例:行政】  2-(9)-1 公共施設内のトイレにはベビー用のオムツ交換台はあるが、成人でも利用できる大きなシートが設置されていない。そのため外出時は自家用車に戻るか、多目的トイレの床に敷物を敷いてオムツ交換をしていた。これが外出を躊躇する一因になっている。 トイレに成人でも利用可能な壁取付型折りたたみ式オムツ交換シートを設置した。  【生活場面例:教育】  2-(9)-2 近隣の特別支援学校への通学を希望したが、医療的ケアがあるため、遠く離れた肢体不自由学校、病弱児学校を勧められてしまった。 本人及び保護者の希望に沿った形で近隣の学校へ通学が可能となるように、看護師の巡回などの体制・設備の整備を行った。  2-(9)-3 学校では医療的ケアを受けられるが、スクールバスの中では受けられないので利用できず、保護者が毎日送迎している。 看護職員などの医療的ケアに対応できる者もスクールバスに乗車するよう勤務時間を変更した。  【生活場面例:公共交通】  2-(9)-4 複数路線の乗換ターミナルであったり商業施設を伴ったりする大規模な駅では、バリアフリーの経路が複雑で迷ってしまう。商業施設の閉店時間には、バリアフリーの経路が遮断されてしまうこともある。 バリアフリーの経路について検証し、どの時間帯でもなるべく分かりやすく利用できるようにスロープ、エレベーター、迂回路などの動線の整備を行った。  【生活場面例:サービス(買物、飲食店など)】  2-(9)-5 エレベーターの規格が小さく、重症心身障害児者の車イス(ストレッチャータイプ)では利用できない場合があり、車イスを担いで階段を移動しなければならず危険だった。 ストレッチャータイプの車イスでも利用できるエレベーターを設置した。  2-(9)-6 理髪店で散髪をしたいのだが、調髪椅子に移れないため利用することができない。 調髪椅子の一つを可動式にし、車イスに座ったまま散髪できるようにした。  【生活場面例:災害時】  2-(9)-7 在宅人工呼吸器使用者について、大規模な停電時に使える医療用電源を確保してほしい。 人工呼吸器等のバッテリーに充電するための発電機やインバーターを整備した。また、大規模な停電時には医療用電源ステーションを立ち上げる仕組みを整えた。  2-(9)-8 嚥下機能障害のある人の災害時の備蓄食料として、普段食べている形態かそれよりも容易に食べられる形態のものを用意する必要性がある。 災害時の備蓄食料に、ペースト食・ソフト食・トロミ剤などを加えた。    参考   障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)抄  (社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備) 第五条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。【環境の整備】  (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) 第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。【不当な差別的取扱いの禁止】 2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。【合理的配慮の提供】  (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。【不当な差別的取扱いの禁止】 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。【合理的配慮の提供】  行政機関等 不当な差別的取扱いの禁止:義務 合理的配慮の提供:義務 環境の整備:努力義務  事業者 不当な差別的取扱いの禁止:義務 合理的配慮の提供:努力義務 環境の整備:努力義務 ※ 雇用・就業については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによります。   同一場面における不当な差別的取扱い/合理的配慮の提供/環境の整備に当たる事例  公共施設を利用したいのだが、車イスを使っているため出入口にある段差を乗り越えることができないので、職員に手伝ってほしい。 <不当な差別的取扱い> →正当な理由なく障害者の利用を拒む。 <合理的配慮の提供> →職員が段差を乗り越える手伝いをする。 →段差に携帯スロープを架ける。 <環境の整備> →携帯スロープを購入する。 →改修工事により出入口の段差を解消してバリアフリー化する。  申込手続を行うときに、視覚障害があるため自筆では書類に記入することができないので、店員に代筆してほしい。 <不当な差別的取扱い> →正当な理由なく障害者の申込みを拒む。 <合理的配慮の提供> →本人の意向を確認しながら店員が代筆する。 <環境の整備> →申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う。 ※ おおよその考え方としては、一定の設備や組織・人員等の環境のもとで、個別の求めやあらかじめの申出に応じて対応するものが合理的配慮の提供であり、不特定多数向けに、設備や組織・人員等の確保など対応体制面の事前の改善措置を行うものが環境の整備です。   不当な差別的取扱い/合理的配慮の不提供に当たらない事例  <総合的・客観的判断> Q 障害者が不当な差別的取扱い/合理的配慮の不提供を受けたと感じた場合には、それをもって常に不当な差別的取扱い/合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 障害者側からの感じ方のみで不当な差別的取扱い/合理的配慮の不提供に当たると決まるのではなく、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することとなります。  <行政サービス@> Q 年金給付や生活支援などの行政サービスについて、障害者が希望する金額や回数などの水準を満たさない場合には、不当な差別的取扱いとなるのでしょうか。 A 行政サービスは、議会の議決を経た予算や法令により定められた審査などに基づいて決まりますので、その結果として障害者の希望と合わない点があっても、不当な差別的取扱いには当たりません。 ※ 申請手続などの行政サービスの目的・内容・機能を損なわないものについては、必要に応じて柔軟な運用を検討してください。  <行政サービスA> Q 地方公共団体が独自に取り組んでいる行政サービスについて、A市とB市で適用条件や内容などが異なっている場合には、不当な差別的取扱いとなるのでしょうか。 A 各地域独自の行政サービスは、適用条件や内容などが他の地域のものと異なっていても、不当な差別的取扱いには当たりません。  <障害者割引> Q 障害者割引について、身体障害者と知的障害者には適用され、精神障害者には適用されない場合には、不当な差別的取扱いとなるのでしょうか。 A 障害者割引は、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)となりますので、一部の障害種別のみを対象にしたものであっても、不当な差別的取扱いには当たりません。 ただし、正当な理由なく障害種別によって取扱いに差が生じることは望ましくありませんので、精神障害者に対する割引への理解と協力を得て、より多くの事業者で取組が広がっていくことが期待されます。  <接客態度> Q 接客態度について、挨拶がなかったり丁寧でなかったりする場合には、不当な差別的取扱いとなるのでしょうか。 A 障害の有無とは関係のない普段の接客態度に至らない点があっても、不当な差別的取扱いには当たりません。 ※ 障害の有無によって接客態度を変えているのであれば、不当な差別的取扱いに当たります。  <相談/問い合わせ> Q 相談/問い合わせについて、時間や回数などを制限した場合には、合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 相談/問い合わせの制限は、一律に合理的配慮の不提供に当たるのではなく、それが当たるのか否かを具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することとなります。 ※ 例えば一人が相談し続けていることで他の相談者たちが長時間待っている場合などは、対応に区切りをつけたとしても合理的配慮の不提供には当たりません。  <職員等配置> Q 学校教員や店舗サービススタッフなどの職員等について、障害者が希望する人数や有資格者などを配置しない場合には、合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 職員等配置は、環境の整備となりますので、障害者の希望と合わない点があっても、合理的配慮の不提供には当たりません。 ただし、恒常的に障害者への対応に支障を来しているのであれば、増員などの環境の整備に努めてください。 ※ 例えば車イスで段差を乗り越える手伝いをするために他フロアのサービススタッフも呼んでくるなど、一時的な職員等配置の変更については、合理的配慮の提供に当たります。 ※ 学校の入学を断る理由が職員等配置である場合には、その状況について不当な差別的取扱いに関する観点(正当な理由に相当するのか)も検討してください。  <スロープ/エレベーター> Q スロープ/エレベーターについて、役所や店舗などに設置されていない場合には、合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A スロープ/エレベーターの設置は、環境の整備となりますので、それらが設置されていなくとも、合理的配慮の不提供には当たりません。 ただし、恒常的に障害者への対応に支障を来しているのであれば、施設改修などの環境の整備に努めてください。  <身体介護> Q 飲食店での食事介助や温泉施設での入浴介助など、身体介護に当たる行為を求める旨の配慮の申出があった場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 身体介護に当たる行為は、それを事務・事業の一環として行っている場合を除き、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。 ※ 例えば学校における身体介護に当たる行為など、どのようなものが事務・事業の一環となるのかについては、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することとなります。  <送迎> Q 障害により移動困難な方から、自宅や最寄り駅などへ送迎してほしい旨の配慮の申出があった場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 自宅などへの送迎は、それを事務・事業の一環として行っている場合を除き、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。<インターネット中継> Q 障害により移動困難な方から、開催されるイベントを自宅のパソコンなどにインターネット中継してほしい旨の配慮の申出があった場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 自宅などへのインターネット中継は、それを事務・事業の一環として行っている場合を除き、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。 ※ 新たに設備や通信ネットワークなどを準備して行うインターネット中継については、合理的配慮の提供ではなく、環境の整備として実施を判断することとなります。  <担当者変更> Q 「主治医をA氏にしてほしい」「相談員からB氏を外してほしい」といった担当者変更を求める旨の配慮の申出があった場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 担当者変更は、現担当者の業務遂行などに問題がないのであれば、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。問題があるのであれば、そもそも障害の有無に関わらず対処すべきことなので、合理的配慮ではなく通常行うべきこととして変更を検討してください。 ※ 異性と話すことができないなどの特殊な理由があるときは、担当者変更が合理的配慮の提供に当たる場合もあります。  <他の障害種別向けの配慮> Q 聴覚に障害のない障害者が文章でのやり取りを求めたり、体温調節機能に障害のない障害者が室温変更を求めたりなど、他の障害種別向けの配慮を求める旨の申出があった場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 他の障害種別向けの配慮は、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。  <不適切な言動> Q 暴言や器物破損などの不適切な言動について、障害によるストレスや情緒不安定などが影響している場合には、許容しないと合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 不適切な言動は、障害による影響を考慮することが望ましいですが、過度なものを許容しなくとも、合理的配慮の不提供には当たりません。  <料金設定> Q 演奏会などの料金設定について、例えばA席5,000円/B席2,500円、車イス使用者がB席を希望、車イスに対応できるのはA席のみであった場合には、A席を2,500円で購入できるようにしないと合理的配慮の不提供となるのでしょうか。 A 等級が分かれている料金設定は、まず希望等級のものを選択できるように合理的配慮の提供を検討してください。その結果として希望等級のものを選択できないのであれば、別等級への変更を勧めても、合理的配慮の不提供には当たりません。 ただし、正当な理由なく障害の有無によって選択肢に差が生じることは望ましくありませんので、いずれの選択肢においても対応できるようにすることが期待されます。 ※ 例示の場合には、まずB席を2,500円で購入できるように合理的配慮の提供を検討し、B席では対応できないという結果であれば、A席を5,000円で購入することを勧めても合理的配慮の不提供には当たりません。   合理的配慮の提供における留意点(対話の際に避けるべき言葉)  「先例がありません」 →障害者差別解消法が施行されており、先例がないことは断る理由になりません。  「特別扱いできません」 →特別扱いではなく、障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的です。  「もし何かあったら」 →漠然としたリスクでは断る理由になりません。どのようなリスクが生じ、そのリスク低減のためにどのような対応ができるのか、具体的に検討する必要があります。  「その障害種別ならば」 →同じ障害種別でも程度などによって適切な配慮が異なりますので、一括りにしないで検討する必要があります。(盲/弱視、ろう/難聴、全身/半身 など)   障害者からの配慮の申出について、合理的ではないものや過重な負担があるものについては、その提供をお断りすることができます。 ・膨大な分量の資料の全文読み上げを求められた ・筆談で十分対応できる簡潔なやり取りに手話通訳者の派遣を求められた ・必要性がないのに買物中は常に店員が同行することを求められた ・個人的な外出予定に沿うよう公共交通機関の時間変更を求められた ・否定されるとストレスで症状が悪化してしまうからと過度な要望であっても否定せずに実行することを求められた など   【社会モデルとは】 ○障害者差別解消法においては、「医学モデル」ではなく「社会モデル」を取り入れています。 ○この社会モデルによると、障害はどこにあると考えられているでしょうか? ○例えば階段しかないと、車イスでは2階に上がれません。 →障害がある (作業者注:階段と車いすの方、2階への矢印とバツのイラスト) ○しかしエレベーターが設置されれば、車イスでも2階に上がれます。 →社会モデルでは障害が解消された (作業者注:エレベーターと車いすの方、2階への矢印と丸のイラスト) ○この事例の車イス使用者は何も変わっていませんが、周囲の環境が変わったことで障害が解消されました。 ○社会モデルでは、障害とは、本人の医学的な心身の機能の障害を指すもの(医学モデル)ではなく、社会における様々な障壁(社会的障壁)との相互作用によって生じるものだと考えられています。 ○社会モデルに基づくと、誰にでも障害はあり得るとも考えられます。 ○断崖絶壁では、2階に上がれません。 →障害がある (作業者注:断崖絶壁と歩行者、2階への矢印とバツのイラスト) ○ハシゴを持ってくれば、2階に上がれます。 →障害が解消された(合理的配慮の提供) (作業者注:断崖絶壁と歩行者とはしご、2階への矢印と丸のイラスト) ○階段を設置すれば、いつでも2階に上がれます。 →障害が解消された(環境の整備) (作業者注:階段と歩行者、2階への矢印と丸のイラスト) ○このように障害のない人も、周囲の環境などの社会的障壁しだいで、できる事とできない事が変わってきます。 ○つまり社会モデルでは、程度の差があるだけで、障害のある人もない人も同じ前提なのです。 ○障害のない人に対しては、すでに多くの社会的障壁が取り除かれています。障害のある人に対しても、合理的配慮の提供や環境の整備などによって社会的障壁を取り除いていきましょう。 →障害の有無によって分け隔てられない共生社会の実現へ!