• 総合トップへ
  • ふじのくに魅力情報
  • 音声読み上げ
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • ふりがな表示 ふりがな非表示
  • 組織(部署)から探す
  • Other language
  • ホーム
  • くらし・環境
  • 健康・福祉
  • 教育・文化
  • 産業・雇用
  • 交流・まちづくり
  • 県政情報

ホーム > 組織別情報 > 危機管理部 > 静岡県地震防災センター > 調べる > 防災関係資料 > 静岡県住宅耐震改修等促進方策検討委員会報告書

  • 地震防災センター トップ
  • トピックス
  • 知る・学ぶ
  • 調べる
  • 施設案内
  • アクセスマップ
  • サイトマップ

調べる

調べる

開館情報

開館時間 9時00分~16時00分
休館日 月曜日・年末年始
入館料 無料

ここから本文です。

更新日:平成28年12月26日

静岡県住宅耐震改修等促進方策検討委員会報告書

静岡県住宅耐震改修等促進方策検討委員会名簿

(アイウエオ順)

委員長坂本 功 東京大学工学部建築学科教授
委員 愛野 明宣 静岡総合研究機構防災情報研究所副所長
青山 巖 静岡県都市住宅部建築住宅総室長
今村 純子 磐田市社会教育委員(自主防災組織活動推進委員)
漆畑 伸 (社)静岡県建築士事務所協会(理事)
大塚 岩雄 静岡市建設部専門監
倉田 昭殆 熱海市自主防災連合会役員(自主防災組織活動推進委員)
小林 恭一 静岡県防災局技監
重川 希志依 富士常葉大学助教授
柴田 泰男 静岡市消防本部次長
原田 昭一 静岡県商工労働部研究企画室長
芳野 卯芽夫 静岡県木造建築工業組合長

目次

はじめに

  1. 既存住宅の耐震措置についての基本的な考え方
  2. 県内の既存木造住宅の耐震対策の現状
  3. 耐震診断、耐震改修等が進まない理由とその解決の方向
    (1) 耐震診断は何故進まないのか
    (2) 建て替えや耐震改修は何故進まないのか
    (3) それではどうすれば良いのか
  4. 具体的な対策
    (1) 耐震措置が必要な住宅の効率的な把握と耐震診断の推進
    (2) 耐震改修実施のための障壁の除去
    (2-1) 簡便で安価な耐震措置の開発
    (2-2) 助成制度の検討
    (2-3) 専門家による相談体制の整備
    (3) 広報と情報提供
    (4) 自ら耐震措置ができない人達への配慮
  5. 既存木造住宅の耐震改修等を促進させる20の提案

おわりに

別表 耐震措置に関するフロー図(PDF:12KB)

はじめに

平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災では、死者の8割が倒壊した家屋や転倒した家具の下敷きになることにより発生しており、地震による人的被害を軽減するためには、住宅の耐震性の確保が極めて重要であることが改めて明らかになった。

また、住宅を失った人たちは、避難所や仮設住宅で困難な生活を余儀なくされ、建設資金の不足などの様々な理由から住宅再建が遅れることも多く、生活の再建が進まないばかりでなく、地域コミュニティの崩壊や地域経済の復興の遅れの一因になるなど、被災地の復興に大きな影響を与えた。多数の住宅が失われたことに伴い、応急仮設住宅や災害復興公営住宅の建設などに多額の財政負担を発生させたことも見逃すことができない点である。

このような事実を見れば、あらかじめ地震に強い住宅づくりを行っておくことが、人命を守るという視点からはもちろん、生活や経済の再建などの視点からも極めて重要であるということは論を待たない。

20余年前から東海地震発生の切迫性が指摘されてきた静岡県では、既存住宅の耐震性の向上を図るため、県や市町村が中心になって、主として木造住宅を対象に耐震診断や耐震改修の促進に努めてきた。

また、阪神・淡路大震災後に制定された「静岡県地震対策推進条例」においては、あの震災の被害を教訓として、県民は家屋の耐震診断及び耐震改修など地震対策に万全を期すよう努めなければならないとし、住宅の耐震性の確保を県民の責務として規定している。にもかかわらず、現在のところ、様々な理由から既存住宅の耐震性の確保は期待どおりに進んでいないのが実状である。

本委員会は、以上のような認識のもと、既存住宅の耐震改修等の促進方策を検討するため、静岡県防災局に設置された。
本委員会においては、東海地震の切迫性が一層強まってきているのではないかという専門家の指摘なども踏まえ、住宅の倒壊から「生命を守る」ことを基本理念として、既存木造住宅の耐震性の確保を早急に推進するための具体的な促進策を検討するとともに、住宅の倒壊からとりあえず人命を守るための多様な方策等についても検討を行った。

本報告は、その集約としてとりまとめたものである。

平成13年1月

静岡県住宅耐震改修等促進方策検討委員会 委員長
坂本 功

1 既存住宅の耐震措置についての基本的な考え方

阪神・淡路大震災における建築物の被害状況をみると、建築基準法に新しい耐震基準(いわゆる新基準)が採用された昭和56年6月以降に建設された建築物には被害が少なかったのに対し、それより前の基準(いわゆる旧基準)で建設された建築物、とりわけ老朽化した木造住宅に被害が集中し、これらの老朽住宅の倒壊が多くの死傷者を出す要因となったことがわかる。

このような事実を踏まえれば、遠からず東海地震の発生が予想されている静岡県では、老朽木造住宅など耐震性が低いと考えられる住宅については、新基準に基づいて早急に建て替えていくことが最も望ましいことである。しかしながら、建て替えには相応の費用が必要になるなど様々な課題があるため、多数の老朽木造住宅等を短期間に建て替えることは、実際には困難である。

一方で、旧基準で建築された木造住宅であっても、相当の耐震性を有しているものも少なくないと考えられる。

そのため、旧基準で建築された木造住宅については、一定の耐震性を有すると考えてよいものか、何らかの耐震措置が必要なものかを、まず、その住宅の居住者自身がきちんと認識することが大切である。

その上で必要があれば、居住者自身が、建て替え、耐震改修、耐震補強などの必要な耐震措置を講じることになる。

この場合、住宅の耐震性の確保はまず居住者自身の生命の問題であると認識し、費用などの問題から建て替えや本格的な耐震改修が難しい場合には、最低限居住者自身の命だけは守れるよう、部分的な耐震補強、場合によっては就寝中の身体を守る防災器具なども視野に入れ、耐震措置について居住者が多様な選択が可能になるようにしていく必要がある。

2 県内の既存木造住宅の耐震対策の現状

静岡県内には、現在、約108万棟の住宅があるが、その6割弱の60万棟は昭和56年6月より前に建築された木造住宅である。その中には新基準に照らすと耐震性が不十分とされるものが相当数あると考えられ、これに加えて、建築年次の古いものについては経年劣化によってさらに耐震性が低下している可能性が高いと推定されている。

静岡県では20数年の間、東海地震に備えて、既存住宅の耐震性の確保を図るため、「わが家の耐震診断」などの冊子を配布して、県民自ら自宅の耐震性のチェックを行い必要なものについては耐震改修を行うよう、様々な機会をとらえて啓発活動を行ってきた。

また、市町村やボランティアの建築士などと協力して、建築の専門家が直接個人の住宅に出向く出前耐震診断を実施したり、専門家による精密診断を行う場合にはその費用について補助する制度を設けるとともに、改修費用については融資制度を設けるなど、住宅の耐震化について様々な促進策を実施してきている。

さらに、平成8年4月に施行された「静岡県地震対策推進条例」では、阪神・淡路大震災の際に住宅の倒壊により多数の方が亡くなったことから、耐震診断及び耐震改修などの事前の対策を行い、地震対策に万全を期すよう努めることを県民の責務として位置づけるとともに(第12条第2項)、旧基準に基づいて建築された建築物の所有者に対し、「地震による建築物の倒壊を未然に防止するため、当該既存建築物について耐震診断及び必要に応じた耐震改修を行うよう努めなければならない」とする努力義務を課して(第15条第1項)、既存住宅の耐震性の確保について、その推進を図っている。

しかしながら、県民アンケート調査によると、「東海地震が発生すれば自宅は被害を受ける」と予想する人が65%と多数に上るにもかかわらず、耐震診断の実施率は約9%に留まるなど、耐震診断、耐震改修が進んでいないのが実状である。

また、古い住宅については一定の割合で新しい住宅に建て替えられて来ているが、昭和36年から53年までに建設された住宅については比較的順調に建て替えが進んできているのに対し、より耐震性に問題があると考えられる昭和35年以前に建てられた老朽化した住宅の方がむしろ建て替えが進んでいないことが、耐震性の確保という視点から見ると大きな問題である。

耐震診断、耐震改修等が進まない理由とその解決の方向

3 (1) 耐震診断は何故進まないのか

これまでの耐震診断の進め方は、基本的には「呼びかけ方式」である。まず県は、耐震診断の必要性と県民が自分で出来る簡易耐震診断方法及び自分で行った耐震診断の結果をどう活用するかなどということをやさしく解説したパンフレット(わが家の耐震診断)を作成する。県や市町村は、広報などの際に機会をとらえては耐震診断・耐震改修の重要性を解説し、役場や出先機関などの要所にそのパンフレットを備えておく、というのが基本的な方法である。簡易耐震診断パンフレットを直接県民に配布することなども一部に行われたようだが、基本的には、県民は繰り返し流される広報を見て、役場などにパンフレットを取りに行き、自ら耐震診断を行い、その結果に応じて、さらに精密診断を行ったり建て替えや耐震改修を行ったりすることが期待されている。

しかしながら、このような方法論では耐震診断が進まなかったことは事実が示しているとおりである。

老朽住宅に居住している県民にしてみれば、耐震診断などしなくても、自分の住んでいる住宅の耐震性能に問題があるかも知れないことはある程度承知している。耐震診断をすることにより、建て替えや改修の費用の工面をはじめとする面倒な問題が改めて顕在化することが予想されるため、一方で東海地震の切迫性などに今ひとつ確信が持てないこと、東海地震については予知が出来るのではないかとの期待もあることなどもあって、役場に足を伸ばしてまで耐震診断を行う気になれないことは、ある意味では無理からぬところであろう。このように耐震診断を億劫に感じる気持ちは、老朽住宅の所有者に限らず、旧基準で建築された住宅所有者の中に多かれ少なかれ存在するものと考えられる。

このため、県や市町村の建築部局が中心となり、木造住宅密集地域や避難地避難路沿いの住宅などに機会をとらえて耐震診断に出向く「出前診断」などにも取り組んできたが、行政職員や建築士のボランティアのみではマンパワーに限界があり、これによって行うことが出来た耐震診断の数にも自ずと限界があった。

3 (2) 建て替えや耐震改修は何故進まないのか

耐震診断によって建て替えや耐震改修が必要であるとされたり、住宅の老朽化が激しくなって耐震性に問題があることがいよいよ明らかになってきたりした場合には、住宅の所有者は何らかの耐震措置を行うかどうか、決断しなければならないことになる。

この決断は、通常、以下の6つの要素の兼ね合いで行われることになると考えられる。

  1. 住宅の老朽化の度合いと耐震性能の程度
  2. 耐震措置に要する費用
  3. 耐震措置を行う際の煩わしさの度合い
  4. 気軽に相談できる身近な専門家の有無
  5. 居住者の経済状況、年齢、家族の状況など
  6. 東海地震の被害の甚大性やその切迫性についての認識の度合い

耐震措置に要する費用は、建て替えの場合はもちろん耐震改修を行う場合でも相当の費用になると見込まれること、居住している住宅を建て替えたり改修したりするには面倒が多いことなどのため、その実施は、普通の人なら人生の中で何度もない大事業である。

高齢者世帯の場合は、費用の点もさることながら、「今更そのような大事業に取り組むのは億劫だ」と考える人が多いことも見逃せない点である。

また、「耐震措置」が必要なものでも、建て替えが必要なほど老朽化が進んでいるものと耐震改修で済むものがある。耐震改修にも柱の交換や筋交いの補強などの本格的な工事が必要なものもあるし、金物で補強する程度で一定の耐震性能が確保出来るものもある。その基準が一般の人にはよくわからないため、専門家に耐震診断と耐震措置についてのアドバイスを頼んでも、その処方が正しいのかどうか素人では判断できない。

従来は、普段から住宅の修理や改修などを頼み、自分の住宅の様子などもよくわかっている「出入りの大工さん」などの身近な専門家を持っている人も多く、気軽に相談出来る場合も多かったが、最近ではこのような人は少なくなってきている。このため、耐震改修の必要性を感じた時に、対処方法を相談したり、工面できる費用の範囲内でとりあえずの措置を頼んだりすることが難しく、見知らぬ工務店などに見積もりを頼むと建て替えや本格的な改修を勧められて相当の費用を提示されるのではないか、それが本当かどうかわからなくて困ることになるのではないか、との危惧などもあって、ついそのままにしてしまいがちになる人も多いものと考えられる。

このため、耐震措置の実施に踏み切るかどうかは、多くの場合6の「東海地震の被害の甚大性やその切迫性についての認識の度合い」が左右することになると考えられるが、東海地震は「いつ起こっても不思議ではない」と言われるようになって20年以上も経つのにまだ発生していないため、「学者はああ言うけれど、まだ当分地震は起こらないのではないか」、「東海地震が発生しても、わが家が大きな被害を受けるとは限らないのではないか」、「地震予知が出来れば生命は助かるはず」などという考えに傾きがちになるものと考えられる。

結局、「耐震性に問題あり」とされる住宅に対する耐震措置として「耐震改修」が選択されるのは、身近な専門家に相談でき、住宅が建ってからそう年数が経たないため建て替えまでにはまだ間があり、住宅の基本的な構造部材もしっかりしていて多少の改修で相当の効果が見込まれる場合であって、かつ、住宅の所有者が東海地震について強い危機感を持っており、経済状態にも余裕があるという場合に限られるのではなかろうか。

その結果、建て替え又は耐震改修などの耐震措置が早急に必要な住宅であっても、居住不可能なほど老朽化が進むとか、親子世帯の同居や定年退職などの人生の転機をきっかけにするなど、耐震措置の必要性以外の様々な要因から「建て替え」が必要になるまでは、何の対策もとられないことになる。そして、このようなきっかけのない高齢者世帯の住宅などは、建て替えるチャンスを失って取り残されることにもなると考えられるのである。

横浜市などでかなり手厚い耐震改修助成制度を実施しているにもかかわらずその利用者が極めて少ないという事実や、昭和35年以前に建てられた老朽住宅ほど建て替えが進んでいないという事実は、以上のような仮説から考えればむしろ当然のことかも知れない。

3 (3) それではどうすれば良いのか

以上の分析から考えれば、耐震措置を促進するためには、耐震措置に要する費用を下げ、工事に伴う面倒を軽減するとともに、信用のできる専門家に気軽に相談出来るルートを創設するなど耐震措置の実施に踏み切るのに障害になっている障壁を出来るだけ低くする一方、東海地震の発生の切迫性と地震に伴う自宅の倒壊の蓋然性及び倒壊によって受ける被害の甚大性等を認識させ、耐震措置の実施を決断するインセンティブを出来るだけ強くしてやればよいことがわかる。インセンティブの方が障壁よりも強くなれば、自ずと耐震措置の実施は進んでいくことになるはずである。

また、耐震診断については、診断実施以後に建て替え、改修などの人生の大事業に直面することが予想されることが、耐震診断の実施を億劫がらせている大きな原因であると考えられるので、上記のように耐震措置の実施をはばむ障壁を低くするとともにインセンティブを上げれば、耐震診断の実施も並行して進むものと考えられる。

しかしながら、東海地震の切迫性が強まっていることを考えれば、これまでの「呼びかけ方式」から一歩進めて、行政としてより能動的に耐震診断を進めていく方策を考えることが必要である。

4 具体的な対策

4 (1) 耐震措置が必要な住宅の効率的な把握と耐震診断の推進

住宅の耐震診断、耐震改修の実施は、県民個人個人の責務であると同時に県と市町村が積極的な役割を果たさなければならないことは、地震対策推進条例第15条にも定められているとおりである。条例でこのように規定されているのは、人命を守ることが地方公共団体としての基本的な責務であるからというばかりではない。

阪神・淡路大震災では、倒壊した住宅が消防車の活動を妨げたり、倒壊家屋の下敷きになった住民を助けるために貴重な消防力を割かなければならなくなったりするなど、被害の拡大を助長したからでもある。また、多数の人が住宅を失えば、震災の後も、応急仮設住宅の建設、復興公営住宅の建設などに多額の財政負担が生じ、住民生活の再建、地域コミュニティの再生、地域経済の復興など、県や市町村が取り組まなければならない震災後の地域の復興に重大な影響があると考えられるからでもある。

このような点から考えれば、県や市町村は、耐震診断についても、これまでの「呼びかけ方式」から一歩も二歩も踏み出す必要がある。

県民が、耐震診断によりその後の面倒な問題に直面することを予想して、その実施に二の足を踏んでいるのであれば、県や市町村は、より積極的に耐震診断の実施を推進していくことが必要である。

具体的には、県内60万棟の旧基準による木造住宅を対象に耐震診断を行い、耐震措置が当面不要のものと早急に必要なものとを峻別することが第一である。市町村はその結果を出来るだけ把握し、しかる後に、後者に対して集中的に耐震措置の実施を働きかけるという、戦略的な施策を実施に移す必要がある。
このため、県と市町村が協力し、網羅的に耐震診断を実施する計画を立てる必要がある。この場合、老朽木造住宅密集地域や狭い避難路沿いの老朽住宅、高齢者世帯の住宅などについては出前診断を計画的に行っていく必要がある。

また、簡易耐震診断は多少の指導で小学校高学年の児童から実施可能であるので、自主防災組織はもちろん、学校、職場などの多様なチャンネルを利用してその実施件数を増やすことも考えるべきである。

さらに、消防機関は、住宅の耐震性の確保が地震発生時における消防・救助・救急のニーズを減らすことになること、特に消防団員は地域の一員であるとともに地域の中で防災専門家として頼られる立場にあることを考えれば、耐震診断の実施に当たっては、より積極的な役割を果たすべきである。

このような多様なチャンネルで簡易耐震診断を行った結果は、市町村でリストや住宅耐震地図のような形で集約し、その後の指導につなげていくことが、網羅的な耐震診断を計画的に実施する効率的な方法である。しかしながら、60万棟に及ぶリスト等の作成は、市町村にとってはかなりの負担になると考えれられ、プライバシーの問題など乗り越えるべき課題も多いため、簡易耐震診断の結果を申告させてリストを作成することだけを網羅的な耐震診断の実施の大前提とすることは必ずしも得策ではない。

耐震措置が特に必要と考えられる昭和35年以前の老朽住宅は、簡易耐震診断をしなくても、とりあえず何らかの耐震措置の必要性があるものと分類して差し支えないと考えられるし、外観だけから耐震性に問題があることがわかるものも少なくない。また、簡易耐震診断の結果が「措置不要」となったものは、リストに掲載することにあまり抵抗がないかも知れない。

このように、早急に耐震措置を実施すべき対象を様々な手段により出来るだけ把握して効率的に耐震措置の実施を推進することを目標に、市町村ごとにその実態に合わせて柔軟に手法を工夫することが望ましい。

また、県は、必要に応じて助成制度を設けるなど市町村の取り組みを積極的にバックアップするとともに、耐震措置を実施すべき対象の把握が県全体として進むよう進行管理することなども大事な役割である。

4 (2) 耐震改修実施のための障壁の除去

4 (2-1) 簡便で安価な耐震措置の開発

耐震改修が人生の大事業になってしまうのは、一つは相当の費用がかかるからであり、もう一つは今住んでいる住宅を改修することが大変だからである。

確かに、老朽住宅を新基準に照らしても遜色ないレベルにまで耐震改修しようとすれば相当の費用と相当の工期が必要になり、「それくらいなら、もう少し待って建て替えよう」ということになってしまう。このような「完全な」耐震改修は、もちろん最も推奨すべきであるが、費用が高く工期が長ければ耐震改修が進まないことも確かである。

このため、耐震改修が「人生の大事業」にならない程度に簡便で安価な耐震改修工法を開発することが必要である。現在開発されている耐震改修工法や耐震補強方法を「簡便で安価」という視点からもう一度見直すとともに、全国から知恵を結集して、新たな工法の開発を促進する努力も必要である。

「完全な」耐震改修が可能でかつ「人生の大事業」にならない程度に「簡便で安価」な工法が理想であるが、自ずと一定の限界があると考えられる。このため、寝室のみの耐震改修とか、倒壊しても一定の空間が確保できるような補強方法など、「改修の効果には限界はあるが「簡便で安価」というメリットの大きい」工法も開発の対象とすべきである。また、購入して据え付ければ一定の効果が期待できる防災器具(防災グッズ)や防災家具なども視野に入れるべきである。このような「完全ではない」方法は、地震後の行政ニーズを減らすという効果は少ないが、「最低限人命だけは守る」という基本に帰れば、次善の策として欠かせない視点であると考える。

このようにして、住民のニーズに応じて十万円台から数百万円まで、耐震措置方法に関する多様なラインアップを揃えることが、耐震措置の促進にとって是非とも必要である。

4 (2-2) 助成制度の検討

耐震措置について「費用」という障壁を下げるためのもう一つの方法は、耐震改修等に公的な助成制度を導入することである。これまでも、耐震改修に対する融資制度はあったが殆ど利用されて来なかったため、補助制度なども含めて検討する必要がある。

これについては、「私有財産に対する補助は行わない」というのが原則であり、安易な補助制度の創設を控えるべきことは当然であるが、老朽住宅の耐震改修には、(1)で述べたような公共的な側面があることも確かである。地震対策推進条例第15条第6項で、「県は、既存建築物の耐震診断及び耐震改修を促進するため、必要な財政上の措置を講ずることができる。」としていることを踏まえ、県や市町村は、耐震改修の公共的側面に着目した助成制度について、従来の制度の充実や新たな制度の創設を図ることを検討すべきであると考える。

これまで検討してきたように、助成制度だけで耐震改修が進むものではなく、前述のような「利用しやすい耐震措置」との組み合わせで初めて一定の効果が期待できると考えられるので、あくまでも耐震措置促進策全体の一つのメニューとして検討していくべきものと考える。

また、共同住宅居住者に対する助成制度との均衡をとることなども、助成制度の充実を図る場合に配慮すべき重要な視点であろう。

なお、助成制度については、その利用が活発になれば静岡県や県内市町村だけでは対応しきれない可能性もある。日本列島は世界の中でもとりわけ地震活動が活発な地域にあり、また、近年地震活動が活発な時代に入ったとも言われていることから、老朽住宅に対する耐震措置の助成制度については、静岡県だけでなく、国全体の制度としても検討していく必要があると考える。

4 (2-3) 専門家による相談体制の整備

住宅の修理や保守等について気軽に相談できる身近な専門家を持っている人が少なくなって来ていることが、耐震改修が進まない大きな原因であると考えられるため、気軽に安心して専門家に相談できる体制を早急に整備することが耐震措置の早急な推進にとって不可欠である。

何らかの耐震措置を行う必要があると感じた住宅所有者等が、自分で簡易耐震診断を行わなくても、気軽に「どうしたら良いか」を相談出来ることや相談を受けた専門家の処方が信頼できる一定の方式に基づいて行われることなどは、「安心して」相談できる体制を作るために、是非配慮してほしいことである。

また、簡易耐震診断を行うと、「耐震性あり」と「要改修」以外に、「専門家に相談する必要あり」という結果になる場合も多い。また、(2-1)で述べたように、十万円台から数百万円まで様々な耐震措置のメニューが揃い、助成制度も充実し、一方でその耐震措置は必ずしも「完全」なものではないということになると、住民が多様なメニューの中から自分のニーズに合った最適の耐震措置を選択することはかえって難しくなると考えられる。住民が気軽に耐震措置等について相談できる仕組みを作ることは、このようなことからも不可欠であろう。

一定の知識のある建築の専門家であれば、住宅構造の状況、居住者の耐震措置にかけられる予算、生活や家族の状況などを勘案し、最善のメニューをその限界性も含めてアドバイスすることは可能であるが、そのアドバイスが普遍性のある一定の方式で行われることが信頼性の確保にとって不可欠である。このため、アドバイスのためのマニュアル等を整備するとともに、講習会を実施することなども行うべきである。

また、このような相談窓口は、市町村に置くことも必要であるが、民間の建築専門家の協力を得ることも考えるべきである。この場合、住民が安心して相談できるよう、登録制度などを整備するとともに、県や市町村、民生委員、自主防災組織、町内会などと連携する仕組みを工夫すべきである。

4 (3) 広報と情報提供

「東海地震が切迫していること」、「その被害は阪神・淡路大震災をはるかに上回ると考えられること」、「耐震性の低い住宅は倒壊する危険性が極めて大きいこと」、「住宅が倒壊すれば生命に直結すること」、「自分だけでなく近所の人達にも大きな迷惑をかけること」、「地震後の生活の再建は極めて困難であること」、「簡便で安価な耐震措置メニューが揃い比較的「気楽に」耐震措置が実施できること」、「気軽に相談できる仕組みも整備されていること」、「だからまず自分の住宅の耐震性についてチェックする必要があること」、……などということを、県民が真に理解しなければ、耐震診断や耐震措置は進まない。

このため、県や市町村は、機会をとらえて広報と情報提供に努める必要がある。県や市町村は、これまでも折りに触れて広報に努めてきたが、「住宅の耐震診断と耐震措置の実施は住民自身が行わなければならない最大の課題である」との視点から、統一的な広報を繰り返し行うとともに、インターネットなど多様なメディアの活用により、関係情報の積極的な提供を図ることが是非とも必要であると考える。

4 (4) 自ら耐震措置ができない人達への配慮

以上のような措置を講じたとしても、高齢者世帯、低所得者世帯など、自ら耐震措置を講ずることが困難な人達がある程度残ってしまうことが予想される。

県や市町村は、出前耐震診断の機会などを通じてこのような人達を把握し、公営住宅への住み替えなど、現に住んでいる住宅への耐震措置以外の方法も視野に入れて対策を検討する必要がある。この場合、コミュニティとのつながりを残すなど、対象者の希望にも十分配慮した対応をとっていくことが必要である。

また、高齢者世帯が老朽住宅に住んでいる場合などは、地域の住民は日頃から自主防災活動の重点対象として位置づけ、それを意識した救助資機材の整備や救助訓練の実施なども、これまで以上に充実していく必要があると考える。

5 既存木造住宅の耐震改修等を促進させる20の提案

基本目標

耐震措置の実施を妨げる障害を低くし、一方で耐震措置を実施するインセンティブを強めるような施策を実施するとともに、県内の全ての旧基準で建てられた木造住宅(約60万棟)について、耐震措置が必要なものを網羅的かつ計画的に把握して重点的に耐震措置の実施を促進する。

A. 網羅的・計画的な耐震措置の実施や耐震相談の充実

(耐震診断の促進)

提案1 自主防災組織を初め、学校、職場、消防団など様々なチャンネルを活用し、網羅的に耐震診断を実施する。
  • 実施の説明会や診断カルテ、実施方法の説明書等の用意、診断結果のチェック、集約等の実施体制の整備が必要である。
  • 県と市町村の役割分担等の整理が必要である。
提案2 高齢者や寝たきり老人等、災害弱者等の住宅は行政が出前診断を重点的に実施する。
  • 災害弱者等の把握は、市町村の福祉サイドや民生委員との連携が必要である。
  • 福祉政策の観点からも重要である。
  • 消防機関による住宅防火の指導などとのリンクが可能か検討する。
提案3 防災上重要な地域は、行政が主体で簡易診断を実施する。
  • 老朽木造住宅の密集度が高い地域等について優先的に耐震診断を実施する。
  • 実施に際し、建築士会の協力等により出前診断(簡易診断を基本)を実施する。
提案4 地元の自主防災役員、民生委員及び町内役員などと連携する。

(気軽に安心して相談できるルートの確立)別表参照(フロー図)

提案5 わが家の耐震改修等について気軽に安心して相談できるよう、専門家による相談ルートを確立する。
  • 「出入りの大工さん」に相当する相談体制の整備が必要である。
  • 簡易診断の結果、精密診断(補強工事をどの程度実施するかに必要)を実施する体制の整備が必要である。
  • 補助制度(補助率3分の2)があるものの精密診断費用(標準の住宅で約5万円程度の個人負担)が重荷であるとの意見もあり、精密診断を実施しなくても補強の促進につながる体制の確立も必要である。
  • 個々の住宅の補強方法やグッズなどの耐震措置が多様化する(提案8から10)ため、総合的な専門家の相談体制の整備が必要である。
  • 専門家によるアドバイスの普遍性と信頼性を確保するため、マニュアルの整備と講習会の実施が必要である。民間の専門家については、登録制度の整備も検討する必要がある。

(進行管理)

提案6 市町村は網羅的かつ計画的に耐震措置の必要な住宅を把握して重点的に耐震措置の促進を図るため、リストの作成など、施策を効率的に進めるための工夫を行う。
提案7 県は、市町村から定期的に報告を受け、進行管理を行う。

安価で簡便な耐震措置の開発と全国の知恵の結集

(耐震措置の開発)

提案8 新たな改修工法、寝室等1室のみの補強工法や防災器具(防災グッズ)などの開発を推進する。
  • 居住環境への悪影響が少ない改修工法の開発を目指す。
  • 工期が短く、住んだまま工事ができる工法が望ましい。
  • 部分補強による費用の低減と補強の評価方法を確立する。
  • 耐震改修以外の簡便な防災器具を開発する。(最低限の方策)
提案9 安価で簡便な、県民ニーズにあった耐震措置を目指す。

県民への普及を考慮すると

  • 耐震補強の工事費の目安;100万円から200万円程度
  • 防災器具(防災グッズ)の費用の目安:10万円から50万円
提案10 ベッド、クローゼットの活用やエアーバッグ(自動車参考)など多様な方法を検討する。

防災器具(防災グッズ)の条件は

  • 日常生活で使用
  • 低コスト
  • 工事が不必要(少しの工事)住環境の悪化なし(少ない)

(全国の知恵の結集)

提案11 耐震措置の開発及び施策の推進のため、専門家を含む全国民の知恵や情報を静岡に結集する仕組みを考える。
  • 提案8、9、10に係るアイデアコンペを全国的規模で実施する。
  • コンペの実施にあたっては、建築業界、家具業界などのほか、工業高校や大学などに参加を呼びかけたり、防災行事の一環としてアイデアを募集するなど、多数の応募を得られるよう工夫するとともに、報道機関の協力を得た様々なPRが必要である。
  • 良い提案には知事等の名で表彰を実施する。目標金額、要求耐力、最低限の性能等の要求条件を設定する必要がある。

(評価条件の設定と同様)

提案12 常時、新たな技術情報などを収集し、普及する方策を進める。

インターネットなどを活用したシステムを検討する。

耐震措置の助成制度などの拡充、創設

提案13 経済的な理由からも耐震措置が進まないことから、耐震改修に対する、新たな助成制度の創設や融資制度を検討する。
  • 助成制度の拡充、創設にあたり、消防・消火活動や救助・救出活動など防災面からの公共性にも留意する。
  • 助成制度は、多くの人に利用しやすいものとする。
  • 助成制度は、耐震措置の各メニューに対応したものとする。
提案14 地方のみの制度でなく、国の制度としても考えるべきである。

建て替え促進策と高齢者等への対策の実施

提案15 耐震性の低い住宅の建て替え促進策を推進する。

倒壊の危険性が高い建物の建て替えが促進されるよう、優遇策(融資制度の拡充、助成制度創設、その他)を検討する。

提案16 高齢者等で所得が低いなどの理由から補強や建て替えが進まないない人のため、住み替え対策などの新たな対策を推進する。
  • 公営住宅などへの住み替えに当たっては、従来のコミュニテイの維持などに配慮した検討を行う。
  • 民間賃貸住宅への住み替え補助制度の検討を行う。
提案17 耐震診断結果の情報を活用し、福祉部局と連携し一人暮らしの高齢者等災害弱者に対する安全対策を実施する。

一人暮らしの高齢者等災害弱者が倒壊の危険性の高い住宅に住んでいる場合、緊急時に避難誘導などを実施できるような対策を推進する。

PRの促進と早期対策の実施

提案18 耐震診断、耐震改修の必要性、耐震改修等への助成制度や、耐震措置の情報について、これまで以上に統一的戦略的なPRを実施する。
  • 各イベント、巡回建築相談、行政の相談窓口の充実等が必要である。
  • インターネットなどの活用を図る。
提案19 改修工法や、耐震ベッドなどの耐震措置の現物の展示を行うなど、効果的PRに努める。
提案20 東海地震の切迫性を考慮し、実行可能なものから逐次実施する。

おわりに

最近、東海地震の想定震源域において「地震活動の静穏化現象」が明瞭になっており、御前崎の沈降が鈍化しているのではないかとの指摘や、伊豆諸島の火山活動や地震活動の活発化などとも合わせ、過去の海溝型巨大地震前の状況との類似性から、東海地震の切迫性を危惧する専門家も少なくない。

本委員会では、各委員の真摯で具体性に富んだ意見や指摘を整理し、静岡県内の住宅の耐震性の確保を早急に推進するため、「20の提案」を含む報告書という形でとりまとめた。

東海地震の切迫性についての上述のような状況を考慮すると、本委員会の「20の提案」の各施策は、逐次出来ることから早急に実施に移すとともに、実効性のある対策を継続して実施することが必要である。

また、住宅の耐震性の確保は、地震国日本にとって国民全体の問題でもあることを認識し、国との連携やマスコミを通じた全国民との連携も図りながら実施していくことが必要であると考える。

今回は、阪神・淡路大震災で最も被害の目立った「旧基準で建設された木造住宅」を対象として検討したが、鉄筋コンクリート造など木造住宅以外の旧基準で建設された建築物についても、耐震性の向上について別途様々な施策の推進が必要であることは申し添えておきたい。

本委員会の提案が、静岡県民はもとより全国民を地震災害から守るための一助となれば幸いである。

別表 耐震措置に関するフロー図(PDF:12KB)

Adobe Readerのダウンロードページへ

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

お問い合わせ

静岡県地震防災センター

〒420-0042 静岡市葵区駒形通5丁目9番1号

電話番号:054-251-7100

ファックス番号:054-251-7300

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?