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ホーム > 組織別情報 > 文化・観光部 > 文化・観光部/総務企画課(富士山総合調整担当)/富士山ポエム大賞/入賞作品紹介(最優秀賞)

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更新日:平成22年3月26日

「富士山ポエム大賞」入賞作品紹介

「富士山ポエム大賞」<最優秀賞>

「富士山が見える」

塚越文子(埼玉県)

とびっきり冷たい朝だから

きょうは富士山がよく見える

驚くほどくっきりと見える

あのお山の向こう側にあるのは

とびっきりの私の故郷だ

そんな富士山の近くにありながら

故郷からは富士山が見えない

南アルプスへと連なる山々が

村をすっかり取り囲んでいて

山また山の峰ばかりが

視界の先を遮っているからだ

幼い日の私にとって富士山といえば

仏間の鴨居に掛かった額絵にある

只々美しいだけの山にすぎなかった

ある日

山仕事に行くという父に連れられて

獣道のような坂を登った

コナラやクヌギの雑木は葉を落し

明るい冬の日差しが

黒いズック靴に射し込んでいた

父は棒っ切れを手にして

この谷川が…

あの大きなカヤの木が…

ホレ、そこの窪みが…

あの杉山の峰が…

自分の山と他人との境界の目印だ

などと

白い息を吐きながら話しかける

私はといえば

崩れかけた道の斜面に

ほの青い蝋石の欠片をひろったり

椿の小枝を手折ったり

目白の番いを目で追ったりしながら

息を弾ませていった

突然、先を行く父が足を止めた

慌てて顔を上げると

この眼に飛び込んできたのは

どでっかい富士山の頂だった

果てしない青空を背にして

真っ白に雪化粧したその姿まるで

白い髪を垂らしたダイダラボッチが

突然ヌーッと覗き込んできたように

そのあまりにも衝撃的な山頂の姿に

私は立ちすくんだ

父は私の顔を覗きこんで

どうだ、すごいだろうと

満足そうに笑っていた

それが、富士山と私との出会いだった

あれから何度眺めたことだろう

遠足に行った山の上から…

静岡の美しい町並みの向こうに…

女子高の教室の窓から…

昼休みの職場の屋上から…

東京に嫁ぐ新幹線の窓から…

そして今、

遠く埼玉の地から望めるのは

秩父連山の彼方にみえる

晴れた冬の日の富士山だ

「富士」は「不死」であり

「不尽」とも呼ばれていたという

幾多の噴火を繰り返しながら

その高さゆえに美しさゆえに

永遠の命の象徴として

常に人々のあこがれだった

「福地」と呼んでは豊かさを

「富慈」と呼んでは優しさを

「不慈」と呼んでは厳しさを

「不二」と呼んでは

その美しさに畏敬の念を抱いている

日本列島を眺めて見れば

あまねくお富士さんが翻した

衣の裾であったとでもいうように

羨望を集めて夏も冬も

私たちの心を捉えて放さない

富士山には登って見るのがいい

三百六十度パノラマの

雲海の中に立って見るのがいい

比類稀なる富士山であり続けるために

山肌を転がり落ちる火山岩の欠片を

吹き上げ吹き上げようとするのを

エクボのような雪渓に

天をも恐れぬ先人たちの足跡を

閉じ込めておこうとするのを

穏やかな表情で

己の広げた衣の裾の隅々まで

見守るかのような雄大な富士の姿を

だが恐れよ!

地中に今も眠りつづけている

巨大なマンモスたちが記憶しているのは

激しく吹き上がる噴煙と

灼熱の溶岩を容赦なく降り注いだ

荒々しい山の勇姿なのだ

繰り返し培われた天地の営みと

あらゆる自然の驚異の中で

命が芽生え命が滅び

長く激しく美しく哀しく

そして何万年…

今、富士山は深い眠りのなかにいる

見つづけてきたことを

遣り続け遣り残してきたことを

語るでもなく驕るでもなく

怒るでもなく飽くでもなく

ただこんこんと湧き出る命の水を

惜しげもなく与え続け

奥深い樹林にはひっそりと

あまたの生命を宿しているのだ

そんな富士山を私たちは

心ならずも欺いていないだろうか

恥ずべき行為で報いていないだろうか

謝すべき言葉を忘れていないだろうか

そこここに浮かぶ小島の一つを

静まり返った火口にポイと放り込む

そんな恐れを知らぬ大胆不敵を

共に許していないだろうか

そうでなければいい

そうでなければ富士山もまた

マンモスと共にあった頃のように

のびのびと自由気侭な己に戻りたいなどと

思うこともないだろうから

たぶん…

霜枯れた関東平野の彼方に

まさかと思えるほどくっきりと

亡母と同じ名前の山がそびえている

刈田の株根に伸びたか細い蘖に

赤城颪の空っ風が吹き渡っていく

だから

あすの朝も美しい富士山が見えるだろう

いや、きっと見える



お問い合わせ

静岡県富士山世界遺産センター 

〒418-0067 静岡県富士宮市宮町5-12

電話番号:0544-21-3776

ファックス番号:0544-23-6800

メール:mtfuji-whc@pref.shizuoka.lg.jp

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