先輩職員の声(派遣) 鈴木 安由子

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ページID1032888  更新日 2023年1月27日

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写真:鈴木 安由子1

鈴木 安由子

所属 内閣官房 東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局(派遣)
職種 行政
入庁年 平成25年


※掲載している職員の所属や業務内容は、令和2年11月現在の情報です。

現在、どんな組織でどんな仕事をしていますか?

「まさか本当に延期になるなんて!」
自分の耳を疑った。3月の頭には、まだ延期論にも現実味はなかった。たった半月でここまで事態は変わるものなのか。一体これからどうなってしまうのだろう。

平成31年4月より、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局へ研修生として派遣されています。研修1年目は、オリンピック・パラリンピック担当大臣の広報担当となりました。研修当初は、大会自体が延期になるなんて、夢にも思っていませんでした。

令和2年3月24日。オリンピック・パラリンピック史上初となる、東京2020オリンピック・パラリンピックの延期が合意されたあの日のことは、決して忘れられません。昼過ぎに「今夜、安倍総理(当時)とIOCのバッハ会長が電話で会談する」「大会組織委員会会長や都知事も同席する」との一報が飛び込んできました。

前日未明にIOCが「大会の開催可否を含めて4週間以内に判断を示す」と公表してはいましたが、思った以上に速い展開に頭がついていきません。慌ただしくあらゆる調整が行われます。広報担当も、電話会談後に行われる橋本聖子オリンピック・パラリンピック担当大臣、そして政府の考え方を正確に伝えるための場としての「囲み取材」の調整業務に追われました。

まずは、囲み取材の日時・場所について、関係各所と交渉です。この日の電話会談後には、橋本大臣だけでなく、組織委員会会長や都知事への囲み取材も行われることになったため、それぞれの組織の広報担当と連携しながら、取材場所を確保したり、開始時刻をずらしたりと、プレス側のムービー・人繰りも考慮しながら詰めていきます。

話がなんとか固まったら、一刻も早く担当記者への連絡を行わなければなりません。連絡漏れになってしまう社が出ないよう、スマートフォンのSMSなどを駆使して20人以上の記者とやり取りを続けました。

オリンピック・パラリンピック担当大臣の広報として、常に心に留めていたことは、「自分の発言が政府の公式発言となる」ということです。次々に記者からの電話が鳴り響く中でも、誤った情報を発信してしまうことがないよう、慎重に言葉を選んでいました。

真夜中に突然海外ニュースが飛び込んでくる緊張感の中、2~3時間しか眠れない日々が半月近く続きましたが、延期後の大会日程決定まで、広報としての役割を全うすることができたことは、県庁では決してできない、貴重な経験だったと思います。

研修2年目の現在は、「ホストタウン」として登録されている自治体の支援業務を担当しています。ホストタウンとは、全国各地の自治体において、オリンピック・パラリンピック選手の事前キャンプの受け入れや、相手国・地域と文化・スポーツ・経済等、色々な形での交流等を進め、大会終了後も国際交流を継続していこうという取組です。

令和2年12月現在、全国には513のホストタウン自治体がありますが、コロナ禍によって、事前キャンプの受入れや海外との交流が厳しい状況に追い込まれています。国からの財政面を含めた支援により、なんとか実現に漕ぎつけたいと、これから調整が始まろうとしているところです。

派遣先で経験した印象深い出来事、また派遣研修により得たものについて、具体的に教えてください。

写真:鈴木 安由子2

内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局は、構成員約80人の時限組織です。自治体からの研修生が3分の1、省庁からの出向者が3分の1、そして残りの3分の1が民間大手企業からの出向者で構成されています。

内閣官房の一員となって最も印象深かったことは、出向元による働き方や考え方の違いです。古代オリンピックが開かれていた紀元前4世紀のギリシャを舞台にした「ヒストリエ」という漫画に出てくる「文化がちが~う!」という台詞があります。内閣官房にはプロパーの職員がいない分、まさしく毎日が「文化がちが~う!」の連続で、日々異文化交流をしているような感覚です。

民間企業からの出向者は、効率よく仕事をバリバリこなして、育児のためにサクッと退庁します。一方、省庁からの出向者は、朝8時から明け方5時まで仕事をしていたり、今日は早く帰ったなあと思っても、飲み会から戻ってきてまた仕事を始めたりします。同じ霞が関の住人でも、出身省庁によるカラーの違いもあります。

様々な分野で活躍されている方々と日常的に仕事の話や雑談ができる環境は、本当に得がたいものです。県庁という組織の中だけでは出会えなかった価値観を、いくつも肌身で知ることができた経験は、私の視野を大きく広げてくれました。

静岡県職員を志した理由は何ですか?

写真:鈴木 安由子3

大学は文学部を卒業したものの、入学前からずっと自分が何をやりたいのか分からない状態が続いていました。そこで、就職活動前に、接客業から事務補助まで様々なアルバイトを経験するとともに、民間企業・公務員それぞれについて幅広く業界研究を行いました。最終的に、自分の価値観に最も合致する県庁職員の道を目指すことに決めました。

リサーチの過程では、文部科学省のインターンシップにも参加しました。短い期間のインターンでしたが、国の仕事の大変さに驚いたことを覚えています。その後、「静岡県庁仕事スタディツアー」に申し込んだところ、後に直属の上司となる方から業務説明を受ける機会があり、「この職場なら自分の価値観と合致する! ここで働いてみたい」という思いを抱くことができました。

県庁には、スポーツ振興から用地買収まで、仕事のデパートとも呼べるくらい、多様な業務があります。自分が何をやりたいのか分からない、でも人の役に立てるような公益性の高い仕事をしたい、自分の生まれ育った地域に貢献したいという人は、もしよろしければ県庁を志望してみてください。

終業後や休日の過ごし方について教えてください。

写真:鈴木 安由子4

コロナ禍の下ではありますが、菅総理御用達とされるホテルニューオータニのパンケーキを食べに行ったり、フィギュアスケートのNHK杯や全日本選手権を観に行ったりと、業務の参考になりそうな場所や話題になっている場所にできるだけ、「自分の目で見て、体験してみよう」と考え、足を運ぶようにしています。

東京赴任前までは、伊豆の下田に住んでおり、当時は毎週末のように温泉や観光地巡りをしていました。実家が浜松なので、「次の異動先は下田」と宣告された日は絶望しましたが、東京に引っ越した今となっては、贅沢な時間だったと懐かしく思い出します。農林事務所勤務でしたので、「石部(いしぶ)の棚田」での農作業に参加させてもらうなど、珍しい体験もできました。

これから目指す県職員像、今後やりたい仕事等をお聞かせください。

国・地方自治体といったそれぞれの立場の違いから生じる見解の相違を踏まえ、問題の本質的な解決につながるよう働きたいと日々考えています。具体的には、自治体側の困っていることや実態を整理し、両者を有機的につなげることができるような職員になりたいと思います。

内閣官房の一員となって分かったのは、国と地方では同じ事柄でも見えている「光景」が全く違うということです。ひとつの難題をクリアするために、国は統一的な見解や対応方針を示さなければなりません。いわば「鳥の目」で俯瞰し、膨大な情報を集め、関係各所との折衝を行い、全てが固まった段階でようやく情報を公表することができます。誤解を恐れずに申せば、「鳥の目」で俯瞰することにより、少数の差異は切り捨てられる傾向が出てきます。

一方、地方は現場に近い「虫の目」で現実に直面しています。とにかく早く情報が欲しいですし、目の前で困っている人を助けるために動きたいという強い思いがあります。さらに、地方が直面している現実は、日本全国津々浦々で異なります。自治体のサイズひとつとっても、県とあまり変わらない規模の政令指定都市もあれば、ひとりの職員が複数の業務を掛け持ちで回している小さな自治体もあります。誤解を恐れずに申せば、「虫の目」で現実に直面することにより、近視眼的なものの見方が強くなる傾向が出てきます。

派遣研修を経験するまでは、国の内情が分からず、なぜこんなに通知が遅いのだろう、市町にも迷惑が掛かるのにと、歯がゆい思いをしたことが何度もありました。今、理解していることは、官僚の人たちも寝る間を惜しんで働いていて、与えられた業務をしっかりやっているということです。プライベートの過ごし方でも触れましたが、「自分の目で見て体験すること」の重要性を痛感しています。

県庁には、農林事務所のように県民・住民との距離がものすごく近い、市町とほとんど視野の変わらない職場がある一方、国と市町をつなぐ架橋のような機能を果たさなければならない業務も多くあります。今後、県庁に戻った際、国の対応に違和感を覚えることがあっても、あるいは市町から国の施策への反対の声が上がってきたとしても、国の人たちが眺めているだろう「鳥の目」と、市町の人たちや県庁が持っている「虫の目」をそれぞれ想像しながら業務を進めれば、関係者の皆がそれぞれに納得し、県民・住民のためになることを実現できるのではないかと考えています。

このページに関するお問い合わせ

人事委員会事務局職員課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-2275
ファクス番号:054-254-3982
shokuin@pref.shizuoka.lg.jp