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中遠農林事務所管内には、飛砂を防ぎ農地や住宅を守る目的で、かつてより先人が築いてきた約40kmに及ぶ海岸防災林があります。
その中には、南風や西風を受け流す形で造成された「斜め海岸林」など、後世に伝え、残していきたい景観・技術もあります。
・海岸防災林について(PDF:142KB)
管内の海岸線は緩く弧を描いており、掛川市および御前崎市では強く吹く西風を利用して、人工的に斜め砂丘を作り、クロマツを植栽して、斜めに海岸防災林を造成してきました。
この地域の取組は、平成22年に静岡県景観賞を受賞しています。
また、平成26年度には林野庁の”後世に伝えるべき治山”に選定されています。
中遠農林事務所管内の遠州灘沿岸にある海岸防災林では、近年、塩害や松くい虫被害等によりマツ林が急速に枯損し、海岸防災林としての機能が著しく低下している箇所が多く、この復旧が課題となっています。
また、平成23年3月11日の東日本大震災をうけ、沿岸部の各市では、津波に対する防災意識が高まってきました。
このような中、「静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013」※1を踏まえ、地域の実情に合った津波に対する防災対策として「静岡モデル」※2の検討を進めてきました。
その結果、静岡モデルの一環として、マツが枯れ、機能が低下した海岸防災林を、災害に対してもより強いものとして再生し、平時には県民の憩いの場を作る“ふじのくに森の防潮堤づくり”を平成26年度から治山事業で開始しました。また、令和元年度から、防災林の一部が残される等の一定要件の下、健全な区間においても機能を強化するための整備が可能となりました。
この治山事業では、
1.整備対象区域のマツ林を処理
2.市が防災上必要な高さまで盛土(砂丘造成盛土)
3.県が苗木をより健全に生育させるために必要な盛土(生育基盤盛土)と植栽
という順序で工事を行い、市と県が連携して、海岸防災林の再生を目指します。
中遠農林事務所管内の海岸延長41.7kmのうち、海岸防災林の機能が低下していると判断された20.5kmを森の防潮堤計画区間としています。令和2年度末には区間の48%にあたる9.8kmが整備済みとなる見込みです。
“ふじのくに森の防潮堤づくり”では、先人の知恵や、地域に生育している植生、地域住民との協働により事業を実施しています。
磐田市では、平成29年度から“ふじのくに森の防潮堤づくり”の取り組みとして、地域住民参加の植樹祭を実施しています。
平成31年3月23日に磐田市福田地区で実施し、約500人が参加しました。
袋井市では、平成28年度から“ふじのくに森の防潮堤づくり”の取り組みとして、地域住民参加の植樹祭を実施しています。
令和2年2月16日に実施しました。
地元企業であるヤマハモーターパワープロダクツ株式会社と掛川市、県は平成27年12月21日に「しずおか未来の森サポーター制度」に基づき、“ふじのくに森の防潮堤づくり”で第1号となる協定を結びました。
この協定では、ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社が、市民と協力しつつ、ふじのくに森の防潮堤(掛川市沖之須地区)での植栽及び植栽木の維持管理を行うこととしています。
令和元年度は4回目の植樹祭と下刈りに取り組みました。
※しずおか未来の森サポーター制度とは、企業等が社会的責任として行う森づくり活動を、県がフィールドの紹介や活動内容の指導・助言、活動状況の情報発信、認定書の交付等を通して支援する制度のこと。
平成29年度から令和元年度において、事業について地域住民から理解を深めてもらい、協働で進めていくために工事施工地見学会を各地区で開催しました。
手作り紙芝居等を利用した事業説明や施工業者による建設機械乗車体験等を実施しました。
紙芝居「よみがえる中東遠の森~ふじのくに森のぼうちょうていづくり~(PDF:6,171KB)
植樹祭にあわせ、事業の概要や工事内容についてパネル展示を行い、植樹祭に参加した磐田市の地元の企業や地元住民等500名を対象に説明を行いました。
地元親子30名を対象に事業の概要を子ども向けの紙芝居により説明しました。
その後、工事現場で盛土作業の見学とバックホウの乗車体験及びクロマツの苗木の植栽を行いました。子供たちの大半が実際の工事現場を見るのが初めてであり、様々な体験を通して楽しく学んでいる様子でした。
地元親子等15名を対象に事業の概要を紙芝居により説明しました。
その後、バックホウの乗車体験、高所作業者からの現場見学及びマルチング敷均し体験を行いました。
掛川モデル推進協議会の出席者等50名を対象に工事現場で工事概要や施工方法について説明を行いました。
地元親子35名を対象に事業の概要や工事の施工方法について、写真や図を使って説明を行いました。
その後、実際に工事現場で盛土作業の見学や重機の乗車体験を行いました。
地元住民45名を対象に事業の概要や工事の施工方法について、写真や図を使って説明を行いました。その後、工事現場で盛土作業の見学とバックホウの乗車体験及びクロマツの苗木の植栽を行いました。
工事の主な施工方法や内容について紹介します。
本事業では、県と市が役割分担しており、まず枯れて機能が低下した防災林を県が伐採します。1.次に市が地域が防災上必要とする高さや幅になるように砂丘造成盛土を行い、2.さらに県がその上に苗木が深く根を張りやすいよう締め固めない生育基盤盛土を2mの厚さで施工し、3.最後にマツなどの植栽や強風や潮風を防ぐ防風工や竹すの設置を行っています。
近年の大型台風による塩害で、海岸防災林のクロマツが広範囲に枯損しました。
その後、松くい虫による被害も重なり、機能が低下した海岸防災林について伐採搬出を行っています。(県施工)枯損していない区域については、防災林の機能を損ねない範囲で伐採しています。(市施行)
伐採したマツは、チップ化し、植栽後のマルチング材として利用しています。
既存の防災林の地盤の嵩上げや土堤を強化するため、各市が防災上必要とする形を定めて盛土を実施しています。(市施工)
海岸防災林再生のため、植栽する樹木を健全に育成するための盛土を実施しています。(県施工)
この盛土は通常の盛土とは異なり、植栽木の根が伸長しやすいよう締め固めずに施工しています。
植栽した樹木の初期成長を助け、台風や塩害、飛砂による被害から守るため、県産材の木材を利用した防風工や防風垣(竹す)などを設置しています。
植栽した木を海風から守る防風垣(竹す)等を設置していますが、防風垣には、多くの木杭が必要です。県内の森林の9割以上が41年生以上で、杭に適した細丸太(直径6cm)が不足していました。
そこで、県内で県産材を使用した合板を製造している株式会社ノダに合板の材料として使用した後に残る丸太の芯の販売を要望したところ、株式会社ノダから寄付する旨申し出がありました。平成29年度から令和2年度までに、約6万本が寄付されています。
海岸の激しい環境にも適応できるクロマツの他に、地域に生育している広葉樹(潜在自然植生)を植えて、災害に強く、地域の自然と生活環境に調和した海岸防災林の再生を目指します。平成24年に専門家の方々に討議して頂き、遠州灘に適するとされた樹種を植栽しています。
海側植栽:クロマツ、トベラ、マサキ、シャリンバイ
天端植栽:クロマツ、ウバメガシ、ヤブニッケイ、ネズミモチ
陸側植栽:クロマツ、ヒメユズリハ、ヤマモモ、タブノキ、クロガネモチ、ホルトノキ、ヤブツバキ
海風の影響を考慮し、内陸に向けて高木になる木を植栽することで、飛砂・潮害・防風に効果的な森林の形(風衝林型)を作ることを目標としています。
植栽後、生育状況を確認し、現地に適応する樹種を選定しています。今後も引き続き生育状況を調査し、海岸防災林の整備に活かしていきます。
海岸防災林の樹木の生育不良になる要因として過度な乾燥や土壌水分の浸透不良が考えられます。
“ふじのくに森の防潮堤づくり”では、過湿に対しては、1.砂丘造成盛土と生育基盤盛土の境に浸透水が滞水するため、盛土内に暗渠を設置、2.地表面の滞水を防止するため、生育基盤盛土の斜面に植生土のう水路を、斜面下部に側溝工(栗石)や浸透桝(流末処理)を設置するなど、速やかに排水を図ることで樹木が健全に育成できるように施工しています。
また、乾燥に対して、枯損したマツ等の枝葉をチップ化し、マルチング材として再利用しています。
各市の特徴について紹介します。
完成高さはレベル2津波に対応し、「せり上がり」を考慮して、海抜14.0mとしています。
断面形状は法面勾配3割とし、天端幅5mを管理用道路として使用します。
“ふじのくに森の防潮堤づくり”を実施している4市の中で最も長い天端(平場)幅約40~50mを有しています。
高さはレベル2津波に対応した海抜12.0mで実施しています。
背面にもともとあった土堤と生育基盤盛土との間に凹みが出来ないように嵩上を行い、広い天端の中心付近に管理道を作っています。
レベル2津波による盛土の浸食を考慮して、天端幅は25m、法面勾配は3割を標準として整備しています。
盛土の高さは海抜12~14mです。
現在はレベル1津波に対しての増強を目的に事業を行っています。
もともとの地形がレベル1津波に対応できる高さ(海抜10.0m以上)がありますが、砂丘造成盛土及び生育基盤盛土を施工することにより、土堤の幅を増厚しています。
また、盛土をした場所には、海岸防災林を再整備するために抵抗性クロマツや広葉樹を植樹しています。
なお、計画区間は整備済ですが、現在レベル2津波についての対応を市で検討しているところです。
平成27年度から“ふじのくに森の防潮堤づくり”の取組について随時報告している「海岸防災林便り」のバックナンバーを紹介します。
※発行時点の情報ですので、最新情報はFacebookや本HPを参照してください。
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