静岡県障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例をここに公布する。 平成29年3月24日 静岡県知事 川勝平太 静岡県条例第17号 静岡県障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例 目次 前文 第1章 総則(第1条−第7条) 第2章 障害を理由とする差別の禁止(第8条・第9条) 第3章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策(第10条−第24条) 第4章 雑則(第25条) 附則 全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人としての尊厳が重んぜられ、相互に人格と個性を尊重し合い、地域で支え合いながら共に暮らしていける社会こそ、私たちが目指す目標である。 これまで静岡県においては、障害がある者が住み慣れた地域で豊かに安心して暮らすことのできる「魅力ある“ふじのくに”の実現」を目指して、「障害者働く幸せ創出センター」を拠点に、障害がある者が働く幸せを感じられるように就労支援を行うなど、障害がある者の障害の特性や程度、ライフステージに応じた相談体制や支援体制の確保に努めてきた。併せて、地域におけるきめ細かな支援を受けられるように福祉サービスを拡充し、垣根のない福祉を目指す「ふじのくに型福祉サービス」の推進を図るなど、障害がある者の自立と社会参加に向けた支援を充実するとともに、文化や芸術、スポーツを通じて障害がある者の社会参加を進め、障害がある者への理解を深める施策を講じてきた。 また、全国で初めてユニバーサルデザインの理念を県政全般に導入し、その推進に取り組むとともに、静岡県地震対策推進条例に基づき、障害がある者を含めた社会的弱者の視点等に立った防災対策に取り組むなどの障害がある者への先進的な施策を展開してきた。 しかしながら、障害がある者の社会参加が進む中にあっても、今なお障害がある者が、日常生活や社会生活の様々な場において、障害を理由とする差別を受けたり、事物、制度、慣行、観念等の社会的障壁によって、暮らしにくさを感じている実態がある。 そこで、全ての県民が、障害を理由とする差別を身近な課題と捉え、社会的障壁等の除去について、建設的な対話を通じて、障害がある者も障害がない者も互いに理解し合えるようにするための社会的な配慮をさらに進めて、その解決に踏み出し、障害を理由とする差別を解消していくことが必要である。 ここに、障害者の権利に関する条約、障害者基本法及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の理念にのっとり、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する富国有徳の理想郷“ふじのくに”づくりを目指すことを決意し、この条例を制定する。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関し県の責務及び県民等の役割を明らかにするとともに、相談体制の確保、障害者及びその障害に対する理解を深めるための施策その他の障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (3) 障害を理由とする差別 不当な差別的取扱いをすること又は合理的な配慮をしないことをいう。 (4) 不当な差別的取扱い 障害者に対して、正当な理由がなく、障害を理由として、財、サービス、機会の提供等を拒否し、又は当該提供等に当たって場所、時間等を制限し、若しくは条件を付けること等により、障害者の権利利益を侵害することをいう。 (5) 合理的な配慮 障害者の求め(当該障害者が障害によりその意思の表明を行うことができない場合又はその意思の表明を行うことが著しく困難な場合にあっては、当該障害者の意思の表明を代わりに行う者の求め)に応じて、障害者が障害者でない者と同等の権利を行使するために、又は障害者でない者と同等の機会及び待遇を確保するために必要かつ適切な措置を行うことをいう。ただし、社会通念上相当と認められる程度を超えた過重な負担を伴うものを除く。 (基本理念) 第3条 障害を理由とする差別の解消の推進は、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、等しく基本的人権を享有する個人としての尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提に、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。 (1) 全ての障害者は、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 (2) 全ての障害者は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。 (3) 障害があることに加え、女性であること、男性であること、年齢その他の要因が複合することにより特に困難な状況に置かれる場合においては、その状況に応じた配慮がなされること。 (4) 障害及び社会的障壁に係る問題は、障害の有無にかかわらず、全ての県民の問題として認識され、その理解が深められること。 (県の責務) 第4条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。 (県民等の役割) 第5条 県民、事業者(法第2条第7号に規定する事業者をいう。以下同じ。)及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する関係団体(以下「県民等」という。)は、基本理念にのっとり、障害者及びその障害に対する理解を深めるとともに、県又は市若しくは町が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。 2 県民等は、障害者等が合理的な配慮を求めることができる社会環境の実現に寄与するよう努めるものとする。 (県と市又は町との連携) 第6条 県は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を実施する場合にあっては、市又は町と連携するものとする。 2 県は、市又は町が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に必要な情報の提供、技術的な助言その他の必要な措置を講ずるものとする。 (財政上の措置) 第7条 県は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 第2章 障害を理由とする差別の禁止 (県における障害を理由とする差別の禁止) 第8条 県は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由とする差別をしてはならない。 (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第9条 事業者は、福祉、医療、雇用、商業、交通、教育その他の障害者の日常生活又は社会生活に関する分野において、その事業を行うに当たり、不当な差別的取扱いをしてはならない。 2 事業者は、福祉、医療、雇用、商業、交通、教育その他の障害者の日常生活又は社会生活に関する分野において、その事業を行うに当たり、合理的な配慮をするよう努めなければならない。 第3章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策 (静岡県障害者差別解消支援協議会) 第10条 法第17条第1項の規定に基づき、静岡県障害者差別解消支援協議会(以下「協議会」という。)を設置する。 2 協議会は、法第18条第1項に規定する事務のほか、次に掲げる事務を行うものとする。 (1) 事業者が不当な差別的取扱いを行った事案及び合理的な配慮をするよう努めなかった事案(以下これらを「対象事案」という。)について、助言又はあっせんを行うこと。 (2) 障害を理由とする差別の解消を図るため、障害者の日常生活又は社会生活において特に配慮すべき事項に関する協議を行うこと。 3 協議会は、法第17条第1項に規定する関係機関のほか、次に掲げる者で構成する。 (1) 障害者、その家族その他の関係者が組織する団体を代表する者 (2) 障害者の福祉に関する事業に従事する者 (3) 学識経験者 (相談への対応) 第11条 何人も、県に対し、障害を理由とする差別に関する相談をすることができる。 2 県は、前項の規定により相談を受けたときは、その内容に応じて次に掲げる対応をするものとする。 (1) 相談者に対して、必要な助言又は情報提供を行うこと。 (2) 相談に係る当事者間の必要な調整を行うこと。 (3) 関係行政機関へ必要な通報その他通知を行うこと。 (相談員の配置等) 第12条 知事は、前条第2項各号に掲げる対応をする者として、相談員を置くことができる。 2 相談員は、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。相談員でなくなった後も同様とする。 (助言又はあっせんの申立て) 第13条 障害者は、自己に対する対象事案の解決を図るため、知事に対し、協議会による助言又はあっせんを求める旨の申立てをすることができる。 2 障害者の家族その他の関係者は、本人に代わって前項の申立てをすることができる。ただし、当該申立てをすることが本人の意思に反することが明らかである場合は、この限りでない。 3 第1項の申立ては、第11条第1項の相談を経た後でなければすることができない。 (事実の調査) 第14条 知事は、前条第1項の申立てがあったときは、当該申立てに係る事実の調査を行うものとする。 2 知事は、必要があると認めるときは、相談員に、前項の調査の全部又は一部を行わせることができる。 3 第1項の調査を行う職員及び前項の規定により調査を行う相談員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。 (助言又はあっせん) 第15条 知事は、第13条第1項の申立てがあった場合において、当該対象事案の解決を図るために必要があると認めるときは、協議会に対し、当該対象事案の当事者に対する助言又はあっせんを行うよう求めるものとする。 2 協議会は、前項の規定により助言又はあっせんを行うよう求められたときは、当該対象事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うものとする。 3 協議会は、前項の助言又はあっせんのために必要があると認めるときは、当該対象事案の関係者に説明又は資料の提出を求めることができる。 4 協議会は、当該対象事案の関係者が前項の規定による説明若しくは資料の提出の求めに正当な理由がなく応じないとき又は当該求めに対し虚偽の説明若しくは事実と異なる内容の資料の提出を行ったと認めるときは、知事に対しその旨を通知するものとする。 (勧告) 第16条 協議会は、前条第2項の規定によりあっせんを行った場合において、当該対象事案に関し、不当な差別的取扱いを行った者又は合理的な配慮をするよう努めなかった者(以下「対象事案該当者」という。) が正当な理由がなく当該あっせん案を受諾しないときは、当該対象事案該当者に対し、必要な措置を執るよう勧告することを知事に対して求めることができる。 2 知事は、前項の規定による求めがあった場合において、必要があると認めるときは、当該対象事案該当者に対して、必要な措置を執るよう勧告することができる。 第17条 知事は、第15条第4項の規定による通知があったときは、当該通知に係る者に対し、必要な措置を執るよう勧告することができる。 (公表) 第18条 知事は、第16条第2項の勧告を受けた者が正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。 (意見の聴取) 第19条 知事は、第16条第2項又は第17条の規定による勧告をしようとする場合には、あらかじめ、期日、場所その他必要な事項を示して、当該勧告を受ける者又はその代理人の出席を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、当該勧告を受ける者又はその代理人が正当な理由がなく意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わずに当該勧告をすることができる。 2 前項の規定は、前条の規定による公表に準用する。 (県民の理解及び関心の増進) 第20条 県は、障害者及びその障害に対する理解が深まることにより障害を理由とする差別が解消されることの重要性に関する県民の理解及び関心が増進されるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。 (1) 障害者及びその障害に関する正しい知識を県民が習得するために必要な施策 (2) 障害者及びその障害に関する正しい知識の普及及び啓発を行うために必要な施策 (3) 障害者と障害者でない者との交流の機会の拡大及び充実を図り、その相互理解を促進するために必要な施策 (文化芸術活動) 第21条 県は、障害者が文化芸術活動に参加することができる機会を確保するとともに、障害者と障害者でない者が共に文化芸術活動に参加することができる機会を提供することにより、その相互理解が促進されるよう努めるものとする。 (障害者スポーツ) 第22条 県は、障害者のスポーツを振興し、及び障害者がスポーツに参加することができる機会を確保するとともに、障害者と障害者でない者が共にスポーツに参加することができる機会を提供することにより、その相互理解が促進されるよう努めるものとする。 (表彰等) 第23条 知事は、障害者及びその障害に対する理解を深めることにより障害を理由とする差別を解消するための取組に関し顕著な功績があると認められる者に対して、その功績を公表し、及び表彰することができる。 (障害を理由とする差別の解消の推進に関する県民会議) 第24条 県は、障害を理由とする差別の解消の推進に関し、広く県民の意見を反映し、県民と一体となって これを実施するため、障害者、その家族及び障害者の福祉に関する事業に関する団体その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する関係団体、県民並びに事業者が参加する障害を理由とする差別の解消の推進に関する県民会議を開催するものとする。 第4章 雑則 (規則への委任) 第25条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 附 則 1 この条例は、平成29年4月1日から施行する。 2 知事は、少なくとも3年ごとに、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。