表紙 障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応マニュアル 経営管理部職員局人事課 健康福祉部障害者支援局障害者政策課 P1   目次 目次 1ページ   はじめに 2ページ   第1章 概要 3ページ   第1節 職員対応要領策定の経緯 3ページ   第2節 対象となる障害者 4ページ   第2章 「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮」の基本的な考え方 5ページ   第1節 「不当な差別的取扱い」の基本的な考え方 5ページ 1 「不当な差別的取扱い」の基本的な考え方 5ページ 2 「正当な理由」の判断の視点 5ページ 3 「不当な差別的取扱い」の具体例 6ページ   第2節 「合理的配慮」の基本的な考え方 7ページ 1 「合理的配慮」の基本的な考え方 7ページ 2 「過重な負担」の基本的な考え方 9ページ 3 「合理的配慮」の具体例 9ページ   第3章 相談体制 11ページ   第4章 実務における参考事項 12ページ   第1節 講演会等における留意事項 12ページ   第2節 報告徴収、助言、指導、勧告の権限 14ページ   第5章 障害者、障害者差別解消法に関する参考資料 15ページ   障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法) 15ページ   障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議(衆議院) 21ページ   障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議(参議院) 22ページ   障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 24ページ   障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応要領 35ページ   障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン(一部抜粋) 37ページ P2   はじめに このマニュアルは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)」第10条第1項の規定に基づき策定された「障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応要領」第2条、第3条及び第7条に記載されている「障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応マニュアル」となります。 障害者差別解消法では、 ・「国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。」(第3条/国及び地方公共団体の責務) ・「行政機関等は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自らの設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。」(第5条/社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備) ・「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」、「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」(第7条/行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) ・「地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第7条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領を定めるよう努めるものとする。」(第10条/地方公共団体等職員対応要領) など、多くのことが地方公共団体に求められています。 このマニュアルでは、職員の皆さんが、日常の事務又は事業を行うに当たっての障害者差別解消に関する考え方、具体例及び実務の参考事項等を紹介しています。ここで紹介しているものは、ごく一部のものであり、実際の場面では、皆さんの機転や気配りが必要となってくると思います。 職員の皆さんには、障害者差別解消法の趣旨をご理解いただき、障害者差別解消法第1条にある「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」に、全庁をあげて取り組んでいく必要があります。 なお、このマニュアルは、今後、具体的な事例の積み上げを行い、実際に活用する職員や、県民の皆さんの意見をいただきながら、より良いマニュアルに改善させていきたいと考えています。 P3   第1章 概要   第1節 職員対応要領策定の経緯 1 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の経緯 国連の障害者の権利及び尊厳を保護し、取組を促進する「障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)」は、平成18年12月に採択、平成20年5月に発効しています。 日本は、平成19年9月に署名しましたが、締結に当たっては、まず国内法令の整備に取り組んでほしいとの障害者団体の指摘を受けたこともあり、「障害者基本法」の改正をはじめとする国内法令の整備が進められることとなりました。 このような中、平成23年に「障害者基本法」の改正、平成24年に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の制定が行われました。 そして、改正「障害者基本法」第4条に基本原則として定められた「差別の禁止」を具体化する「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)」が平成25年6月に制定(平成28年4月施行)されました。 2 「障害者差別解消法」の概要 障害者差別解消法は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、国・地方公共団体・民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることによって、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。 具体的には、国・地方公共団体・民間事業者による障害を理由とする差別の禁止、差別を解消するための取組について政府全体の方針を示す「基本方針」の策定、行政機関ごとの職員が適切に対応するための「職員対応要領」の策定等が定められています。 3 「地方公共団体等職員対応要領」の策定 地方公共団体等の職員が適切に対応するために必要な「地方公共団体等職員対応要領」の策定について、法第10条においては、地方分権の趣旨に鑑み、努力義務とされています。 一方、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)(以下「基本方針」という。)」第3−2、3において、対応要領の位置付けとしては、「職員が遵守すべき服務規律の一環」として定められること、対応要領の記載事項としては、「趣旨」、「障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方」、「障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例」、「相談体制の整備」、「職員への研修・啓発」が求められています。 これらのことから、本県においては、知事を訓令者として、本庁全般、出先機関(全般)を訓令先とする「訓令」形式により、「障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応要領(以下「県要領」という。)」を策定しています。 P4   第2節 対象となる障害者 このマニュアルや県要領において対象となる「障害者」は、障害者基本法第2条第1号及び障害者差別解消法第2条第1号で規定されている「障害者」になります。 具体的には、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」となります。 これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるという「社会モデル」の考え方を踏まえているものとされています。 したがって、このマニュアル等で対象とする障害者は、障害者手帳の所持者に限られません。なお、高次脳機能障害(病気や事故の影響により、脳が傷つきその後遺症として、記憶や注意力などが低下し、日常生活に支障をきたす症状。)は精神障害に含まれます。 また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、さらに複合的困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する必要があるとされています。 【社会モデルとは?】 社会モデルとは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける生活のしづらさは、機能障害や疾患などのことを考慮しないで作られた社会の仕組みや社会的障壁に原因があるとする考え方をいいます。 従来は、障害者が日常生活又は社会生活において受ける生活のしづらさは、個人の病気や外傷等(機能障害)に原因がある(医学モデル)と考えられていたため、この生活のしづらさの原因となる機能障害を治療やリハビリ等によって軽減させることが必要であるとし、必要な治療やリハビリ等を施すことに重点が置かれてきました。 しかし、このような施策は、障害者を地域社会から排除する社会環境を作ることへとつながり、その結果、様々な社会の仕組みが障害者の存在を考慮しないで作られることとなりました。 今日では、障害者を地域社会から排除せず、共生する社会(「ソーシャル・インクルージョン」(誰をも排除しない社会))を目指すことが社会福祉の基本理念になっています。国連総会における「障害者権利条約」の採択によって社会モデルの考え方が国際ルールとなっていて、障害者基本法にもこの考え方が取り入れられています。 P5   第2章 「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮」の基本的な考え方   第1節 「不当な差別的取扱い」の基本的な考え方 1 「不当な差別的取扱い」の基本的な考え方 障害者差別解消法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。 ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではありません。 したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たりません。 このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要があります。 2 「正当な理由」の判断の視点 正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。 正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び静岡県の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。 職員は、正当な理由があると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めてください。 P6 3 「不当な差別的取扱い」の具体例 不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなります。 以下のとおり不当な差別的取扱いに該当する具体例を紹介します。これらの具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要があります。 県要領施行後の具体的な事例については、障害者政策課に集約し、随時、当マニュアルに反映させていきます。 (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例) ○障害を理由に窓口対応を拒否する。 ○障害を理由に対応の順序を後回しにする。 ○障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 ○障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ○事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。 ○県の施設及び施設を利用する者に対する著しい損害発生のおそれ、その他のやむを得ない理由がないのに、身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)の同伴を拒む。 P7   第2節 「合理的配慮」の基本的な考え方 1 「合理的配慮」の基本的な考え方 (1)「合理的配慮」とは 障害者権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。 障害者差別解消法は、障害者権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めています。 合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものです。 (2)「合理的配慮」の留意点 合理的配慮は、事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要があります。 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、次の「2 「過重な負担」の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものであります。 さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものであり、合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものであります。 なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要であります。 (3)意思の表明 意思の表明は、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられます。 また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。 なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましいとされています。 (4)「合理的配慮」の個別性、見直しの必要性 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティ(パソコン、WEBページをはじめとする情報関連のハード、ソフトなどを多くのユーザーが不自由なく利用できること)の向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置です。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなります。 また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要です。 (5)業務の委託 事務又は事業の全部又は一部を委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むように努めてください。 委託契約例 (留意事項) 第○条 本事務(又は事業)の履行に当たっては、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条第2項で規定されている合理的配慮について留意すること。 P9 2 「過重な負担」の基本的な考え方 過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。 職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めてください。 ○事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か) ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○費用・負担の程度 3 「合理的配慮」の具体例 合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。 以下のとおり合理的配慮に該当する具体例を紹介します。これらの具体例については、過重な負担が存在しないことを前提としていること、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要があります。 要領施行後の具体的な事例については、障害者政策課に集約し、随時、当マニュアルに反映させていきます。 (1)合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例 ○段差がある場合に、車椅子・歩行器利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする ○車椅子利用者のために可能な限り配架棚の低い所にパンフレットを配架し、又は、配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。 ○目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 ○障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。 ○疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 ○不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 ○災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。 ○障害者から申し出があった場合には、車椅子等の貸し出しを行い、手話通訳者、介添人等の同行に配慮する。 ○視覚障害者に対して誘導(付き添い)を行う。 ○パニック発作が発生した場合に、臨時の休憩スペースを設ける。 ○庁舎内に設置されている多目的トイレを必要に応じて案内する。 (2)合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例 ○筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字、要約筆記、身振りサイン、手書き文字(手のひらに文字を書いて伝える方法)等のコミュニケーション手段を用いる。 ○会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。 ○視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 ○意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード、図解した資料等を活用して意思を確認する。 ○駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 ○書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。 ○比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。 ○障害者から申出があった際に、2つ以上のことを同時に説明することは避け、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避さける、漢数字は用いない、時刻は24時間ではなく午前・午後で表記する等の配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。また、紙等に書いて伝達したり、書面を示す場合には、ルビを付与した文字を用いたり、極力平仮名を用いたり、分かち書き(文を書くとき、語と語の間に空白を置く書き方)を行ったりする。 ○会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害のある委員や知的障害を持つ委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。 ○会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。 ○障害者が多様な手段で問い合わせを行うことができるよう、発表等を行う際には電話番号のみではなくFAX番号等を明記する。 ○ホームページなどでの外部情報の発信の際に、動画に字幕などの文字情報を付す、拡大文字や読み上げソフトの利用に配慮し、テキストデータを付すなどする。 ○パニック状態になったときは、刺激しないように、また危険がないように配慮し、周りの人にも理解を求めながら、落ち着くまで見守る他、場所を提供する。 (3)ルール・慣行の柔軟な変更の具体例 ○順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。 ○立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 P11 ○スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 ○車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○庁舎等の敷地内の駐車場等において、障害者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 ○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作、不随意の発生等がある場合、当該障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。 ○非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 【参考】合理的配慮具体例データ集(内閣府) (http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/)   第3章 相談体制 職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他の関係者からの相談については、健康福祉部障害者支援局障害者政策課で受け付けています。 また、職員が、日常の事務又は事業を行う中での、障害者差別解消についての相談についても、健康福祉部障害者支援局障害者政策課で受け付けています。 その他、平成28年4月以降に設置される、市町の障害者差別解消相談窓口や「みんなの人権110番」(全国共通人権相談ダイヤル 電話 0570 003 110)等でも相談を受け付けています。 P12   第4章 実務における参考事項   第1節 講演会等における留意事項 県民を広く対象とする講演会やイベント等を開催する場合は、障害者差別解消法を念頭において、次のようなことに留意して企画、運営することが必要です。 ○開催会場の確認 ・講演会等の企画段階で、障害者の参加が可能か、エレベーター、多目的トイレ、障害者用駐車場等の有無について確認します。 ○参加の申込み等 ・障害者であることのみを理由に、講演会等の参加を拒否したり、制限したり、条件を付けたりしてはいけません。 ・講演会等の申込書に、次のような表を採り入れ、参加者の希望するサービスを把握しておくと、各種ニーズへの対応を準備することができます。 以下は表です。希望するサービスの一覧(例)を記載しています。 手話通訳 要約筆記 点字資料 磁気ループ 拡大文字資料 ふりがなつき資料 車いす使用者席 身体障害者用駐車場 付き添い者(有・無) 介助者の要否(介助の内容) その他 表は以上です。 【要約筆記】 聴覚障害者に対して、筆記、プロジェクタ又はパソコンを用いて、日本語で話している内容を要約し、日本語の文字として聴覚障害者に伝えるもの。主に第一言語を手話としない中途失聴者・難聴者などを対象とする。 【磁気ループ】 聴覚障害者用の補聴器を、磁界を発生させるワイヤーを輪のように這わせ補助する放送設備のこと。 P13 ○会場内の設営・運営 ・階段や段差がある場合、板などによる簡易スロープを設置するなどの応急措置や係員を配置して、車いすを持ち上げる、杖を使っている人は介助するなどの人的支援を検討します。 ・電源コード、磁気ループなどの敷設などにより、床面に凹凸ができる場合は、養生テープなどで覆い、案内の設置や係員の配置により、注意を促すなどの安全確保を検討します。 ・講演会等において、手話通訳者や要約筆記者を配置する場合は、聴覚障害のある人の座席を前方などの見やすい位置に確保します。 ・手話通訳者や要約筆記者の配置場所は、会場のレイアウト、照明設備の状況やイベント等の内容により決まります。事前に下表の申請先に確認いただくとともに、当日、主催者と手話通訳者・要約筆記者で相談して決めてください。 ・手話、要約筆記対応する場合は、講師、説明者に、ゆっくりとした説明を心掛けるよう依頼します。 ・車いすでの来場が予定される場合は、出入り口に近い場所を広めに確保します。 ○手話通訳者、要約筆記者の派遣、磁気ループの貸出 ・手話通訳等のニーズがあった場合、次のところで対応してくれます。 申請先 団体名 静岡県聴覚障害者情報センター 住所 静岡市葵区駿府町1番70号 静岡県総合社会福祉会館 5階 電話 054 221 1257 ファックス 054 221 1258 電子メール szdi-center@e-switch.jp 派遣に係る費用(平成28年1月現在) 報償 手話通訳1人あたり1時間につき三千百八十円 要約筆記1人あたり1時間につき二千八十円 ※手話通訳、要約筆記の報償の源泉徴収区分については、「課税対象外」となる。 ※通訳者、筆記者へ個別に支払うため、債権者登録等が必要になる。 旅費 公共交通機関の場合 実費 自家用車の場合 1キロメートルにつき十八円 ※旅行諸費は、支給しない その他 ・講演会等の規模、時間等にもよるが、手話通訳は3人、要約筆記は4人の派遣を基本と考える。 ・要約筆記に必要なパソコン、スクリーン、磁気ループ資材一式は、静岡県聴覚障害者情報センターにて、無償で貸し出しをしている。 P14 ○点字の印刷 ・点字の印刷のニーズがあった場合、次のところで対応してくれます。 相談先 団体名 静岡県視覚障害者情報支援センター 住所 静岡市葵区駿府町1番70号 静岡県総合社会福祉会館 2階 電話 054 253 0228 ファックス 054 250 0766 電子メール info@i-center-shizuoka.jp 費用 (参考) ・平成25年度「ふじのくに障害者しあわせプラン(百十二ページ)」 点字翻訳料一式 四万三千円掛ける1.05イコール四万五千百五十円 ・点字名刺(会社名、所属、肩書き、氏名、電話番号) 千円(百枚) その他 (その他の点字対応事業所) ・プラザティンクル(沼津市) 電話 055 963 5718 ・ワーク春日(静岡市) 電話 054 221 1630 ・ウィズ半田(浜松市)電話 053 435 5225   第2節 報告徴収、助言、指導、勧告の権限 障害者差別解消法第12条において、「主務大臣は、第8条(事業者における障害を理由とする差別の禁止)の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」と規定されています。 ただし、障害者差別解消法第22条(地方公共団体が処理する事務)、障害者差別解消法施行令第3条の規定により、各事業法等における監督権限に属する事務が地方公共団体の長等に委譲されている場合には、障害者差別解消法第12条に規定されている主務大臣の権限に属する事務も当該地方公共団体の長等に委譲されているため、各事業法所管部局においても、障害者差別解消のための対応(例えば、ある事業者が、繰り返し、障害者に対する差別に当たるような行為を行い、それによって障害者の権利利益が侵害されているような場合などに、対応指針に定める事項について、事業者に対し、報告等を求める)がある場合があることに留意する必要があります。 また、障害者差別解消法附帯決議(平成25年6月18日参議院内閣委員会)において、「五 本法の規定に基づき、主務大臣が事業者に対して行った助言、指導及び勧告については、取りまとめて毎年国会に報告すること。」とされていることから、各事業法所管省庁から、年次報告を求められるようになります。 P15   第5章 障害者、障害者差別解消法に関する参考資料 ■障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法) 第一章 総則(第一条―第五条) 第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(第六条) 第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置(第七条―第十三条) 第四章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置(第十四条―第二十条) 第五章 雑則(第二十一条―第二十四条) 第六章 罰則(第二十五条・第二十六条) 附則    第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 三 行政機関等 国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体(地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第三章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第七号、第十条及び附則第四条第一項において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。 四 国の行政機関 次に掲げる機関をいう。 イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関 ロ 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうちニの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) ハ 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(ホの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) ニ 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの ホ 国家行政組織法第八条の二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの ヘ 会計検査院 五 独立行政法人等 次に掲げる法人をいう。 イ 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。ロにおいて同じ。) ロ 法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(独立行政法人を除く。)又は特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、政令で定めるもの 六 地方独立行政法人 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人(同法第二十一条第三号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。 七 事業者 商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (国及び地方公共団体の責務) 第三条 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。 (国民の責務) 第四条 国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。 (社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備) 第五条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。    第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 第六条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。 一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 二 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 P17 3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。 4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。 5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。 6 前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。    第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置 (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) 第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 (国等職員対応要領) 第九条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。 2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。 3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 4 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。 (地方公共団体等職員対応要領) 第十条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第四条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。 2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。 4 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。 5 前三項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。 (事業者のための対応指針) 第十一条 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。 2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。 (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告) 第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。 (事業主による措置に関する特例) 第十三条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の定めるところによる。    第四章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置 (相談及び紛争の防止等のための体制の整備) 第十四条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。 (啓発活動) 第十五条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。 (情報の収集、整理及び提供) 第十六条 国は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、国内外における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。 (障害者差別解消支援地域協議会) 第十七条 国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第二項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。 P19 2 前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。 一 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他の団体 二 学識経験者 三 その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者 (協議会の事務等) 第十八条 協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。 2 関係機関及び前条第二項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。 3 協議会は、第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者及び差別に係る事案に関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。 4 協議会の庶務は、協議会を構成する地方公共団体において処理する。 5 協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。 (秘密保持義務) 第十九条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。 (協議会の定める事項) 第二十条 前三条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。    第五章 雑則 (主務大臣) 第二十一条 この法律における主務大臣は、対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会とする。 (地方公共団体が処理する事務) 第二十二条 第十二条に規定する主務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、地方公共団体の長その他の執行機関が行うこととすることができる。 (権限の委任) 第二十三条 この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、その所属の職員に委任することができる。 (政令への委任) 第二十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。  第六章 罰則 第二十五条 第十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。    附則  (施行期日) 第一条 この法律は、平成二十八年四月一日から施行する。ただし、次条から附則第六条までの規定は、公布の日から施行する。 (基本方針に関する経過措置) 第二条 政府は、この法律の施行前においても、第六条の規定の例により、基本方針を定めることができる。この場合において、内閣総理大臣は、この法律の施行前においても、同条の規定の例により、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた基本方針は、この法律の施行の日において第六条の規定により定められたものとみなす。 (国等職員対応要領に関する経過措置) 第三条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、この法律の施行前においても、第九条の規定の例により、国等職員対応要領を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた国等職員対応要領は、この法律の施行の日において第九条の規定により定められたものとみなす。 (地方公共団体等職員対応要領に関する経過措置) 第四条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、この法律の施行前においても、第十条の規定の例により、地方公共団体等職員対応要領を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた地方公共団体等職員対応要領は、この法律の施行の日において第十条の規定により定められたものとみなす。 (対応指針に関する経過措置) 第五条 主務大臣は、この法律の施行前においても、第十一条の規定の例により、対応指針を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた対応指針は、この法律の施行の日において第十一条の規定により定められたものとみなす。 (政令への委任) 第六条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。 (検討) 第七条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、第八条第二項に規定する社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。 P21 ■障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議(衆議院)(平成25年5月29日 衆議院内閣委員会) 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。 一 本法が、これまで我が国が取り組んできた国連障害者権利条約の締結に向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締結に向け、早急に必要な手続を進めること。 二 基本方針、対応要領及び対応指針は障害者基本法に定められた分野別の障害者施策の基本的事項を踏まえて作成すること。また、対応要領や対応指針が基本方針に即して作成されることに鑑み、基本方針をできる限り早期に作成するよう努めること。 三 対応要領や対応指針においては、不当な差別的取扱いの具体的事例、合理的配慮の好事例や合理的配慮を行う上での視点等を示すこととし、基本方針においてこれらの基となる基本的な考え方等を示すこと。また、法施行後の障害者差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ、不当な差別的取扱いや合理的配慮に関する対応要領や対応指針の内容の充実を図ること。 四 合理的配慮に関する過重な負担の判断においては、事業者の事業規模、事業規模から見た負担の程度、事業者の財政状況、業務遂行に及ぼす影響等を総合的に考慮することとし、中小零細企業への影響に配慮すること。また、意思の表明について、障害者本人が自ら意思を表明することが困難な場合にはその家族等が本人を補佐して行うことも可能であることを周知すること。 五 国及び地方公共団体において、グループホームやケアホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めないことを徹底するとともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと。 六 障害を理由とする差別に関する相談について「制度の谷間」や「たらい回し」が生じない体制を構築するため、障害者差別解消支援地域協議会の設置状況等を公表するなど、その設置を促進するための方策を講じるとともに、相談・紛争解決制度の活用・充実及び本法に規定される報告徴収等の権限の活用等を図ることにより、実効性の確保に努めること。 七 附則第七条に規定する検討に資するため、障害を理由とする差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を図ること。また、同条の検討に際しては、民間事業者における合理的配慮の義務付けの在り方、実効性の確保の仕組み、救済の仕組み等について留意すること。本法の施行後、特に必要性が生じた場合には、施行後三年を待つことなく、本法の施行状況について検討を行い、できるだけ早期に見直しを検討すること。 八 本法が、地方公共団体による、いわゆる上乗せ・横出し条例を含む障害を理由とする差別に関する条例の制定等を妨げ又は拘束するものではないことを周知すること。 P22 ■障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議(参議院)(平成25年6月18日 参議院内閣委員会) 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。 一 本法が、これまで我が国が取り組んできた国連障害者権利条約の締結に向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締結に向け、早急に必要な手続を進めること。また、同条約の趣旨に沿うよう、障害女性や障害児に対する複合的な差別の現状を認識し、障害女性や障害児の人権の擁護を図ること。 二 基本方針、対応要領及び対応指針は、国連障害者権利条約で定めた差別の定義等に基づくとともに、障害者基本法に定められた分野別の障害者施策の基本的事項を踏まえて作成すること。また、対応要領や対応指針が基本方針に即して作成されることに鑑み基本方針をできる限り早期に作成するよう努めること。 三 対応要領や対応指針においては、不当な差別的取扱いの具体的事例、合理的配慮の好事例や合理的配慮を行う上での視点等を示すこととし、基本方針においてこれらの基となる基本的な考え方等を示すこと。また、法施行後の障害者差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ、不当な差別的取扱いや合理的配慮に関する対応要領や対応指針の内容の充実を図ること。 四 合理的配慮に関する過重な負担の判断においては、その水準が本法の趣旨を不当にゆがめることのない合理的な範囲で設定されるべきであることを念頭に、事業者の事業規模、事業規模から見た負担の程度、事業者の財政状況、業務遂行に及ぼす影響等を総合的に考慮することとし、中小零細企業への影響に配慮すること。また、意思の表明について、障害者本人が自ら意思を表明することが困難な場合にはその家族等が本人を補佐して行うことも可能であることを周知すること。 五 本法の規定に基づき、主務大臣が事業者に対して行った助言、指導及び勧告については、取りまとめて毎年国会に報告すること。 六 国及び地方公共団体において、グループホームやケアホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めないことを徹底するとともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと。 七 本法の規定に基づいて行う啓発活動については、障害者への支援を行っている団体等とも連携を図り、効果的に行うこと。 八 障害を理由とする差別に関する相談について「制度の谷間」や「たらい回し」が生じない体制を構築するため、障害者差別解消支援地域協議会の設置状況等を公表するなど、財政措置も含め、その設置を促進するための方策を講じるとともに、相談・紛争解決制度の活用・充実を図ること。また、国の出先機関等が地域協議会に積極的に参加するとともに、本法に規定される報告徴収等の権限の活用等を図ることにより、実効性の確保に努めること。 P23 九 附則第七条に規定する検討に資するため、障害を理由とする差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を図ること。また、同条の検討に際しては、民間事業者における合理的配慮の義務付けの在り方、実効性の確保の仕組み、救済の仕組み等について留意すること。本法の施行後、特に必要性が生じた場合には、施行後三年を待つことなく、本法の施行状況について検討を行い、できるだけ早期に見直しを検討すること。 十 本法が、地方公共団体による、いわゆる上乗せ・横出し条例を含む障害を理由とする差別に関する条例の制定等を妨げ又は拘束するものではないことを周知すること。 十一 本法施行後、障害を理由とする差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ「不当な、差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」の定義を検討すること。 十二 本法第十六条に基づく国の「障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供」に関する措置のうち、特に内閣府においては、障害者差別解消支援地域協議会と連携するなどして、差別に関する個別事案を収集し、国民に公開し、有効に活用すること。 右決議する。 P24 ■障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定) 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第6条第1項の規定に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定する。基本方針は、障害を理由とする差別(以下「障害者差別」という。)の解消に向けた、政府の施策の総合的かつ一体的な実施に関する基本的な考え方を示すものである。 第1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 1 法制定の背景 近年、障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し、平成18年に国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択された。我が国は、平成19年に権利条約に署名し、以来、国内法の整備を始めとする取組を進めてきた。 権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全ての適当な措置を求めている。我が国においては、平成16年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さらに、平成23年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条第2号において、社会的障壁について、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定された。 法は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定された。我が国は、本法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26年1月に権利条約を締結した。 P25 2 基本的な考え方 (1)法の考え方 全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要である。このため、法は、後述する、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、行政機関等及び事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取組を求めるとともに、普及啓発活動等を通じて、障害者も含めた国民一人ひとりが、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促している。 特に、法に規定された合理的配慮の提供に当たる行為は、既に社会の様々な場面において日常的に実践されているものもあり、こうした取組を広く社会に示すことにより、国民一人ひとりの、障害に関する正しい知識の取得や理解が深まり、障害者との建設的対話による相互理解が促進され、取組の裾野が一層広がることを期待するものである。 (2)基本方針と対応要領・対応指針との関係 基本方針に即して、国の行政機関の長及び独立行政法人等においては、当該機関の職員の取組に資するための対応要領を、主務大臣においては、事業者における取組に資するための対応指針を作成することとされている。地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人(以下「地方公共団体等」という。)については、地方分権の観点から、対応要領の作成は努力義務とされているが、積極的に取り組むことが望まれる。 対応要領及び対応指針は、法に規定された不当な差別的取扱い及び合理的配慮について、具体例も盛り込みながら分かりやすく示しつつ、行政機関等の職員に徹底し、事業者の取組を促進するとともに、広く国民に周知するものとする。 (3)条例との関係 地方公共団体においては、近年、法の制定に先駆けて、障害者差別の解消に向けた条例の制定が進められるなど、各地で障害者差別の解消に係る気運の高まりが見られるところである。法の施行後においても、地域の実情に即した既存の条例(いわゆる上乗せ・横出し条例を含む。)については引き続き効力を有し、また、新たに制定することも制限されることはなく、障害者にとって身近な地域において、条例の制定も含めた障害者差別を解消する取組の推進が望まれる。 第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項 1 法の対象範囲 (1)障害者 対象となる障害者は、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者、即ち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」である。これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって、法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれる。 また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する。 (2)事業者 対象となる事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者である。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となる。 (3)対象分野  法は、日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となる。ただし、行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされている。 2 不当な差別的取扱い (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方 ア 法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。 なお、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。 P27 イ したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 (2)正当な理由の判断の視点 正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。行政機関等及び事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 3 合理的配慮 (1)合理的配慮の基本的な考え方 ア 権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。 合理的配慮は、行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 イ 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「(2)過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。 現時点における一例としては、 ・車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境への配慮 ・筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮 ・障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更 などが挙げられる。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。内閣府及び関係行政機関は、今後、合理的配慮の具体例を蓄積し、広く国民に提供するものとする。 なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 ウ 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。 また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。 なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 エ 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備(「第5」において後述)を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 (2)過重な負担の基本的な考え方 過重な負担については、行政機関等及び事業者において、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 ○事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) P29 ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○費用・負担の程度 ○事務・事業規模 ○財政・財務状況 第3 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方 行政機関等においては、その事務・事業の公共性に鑑み、障害者差別の解消に率先して取り組む主体として、不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供が法的義務とされており、国の行政機関の長及び独立行政法人等は、当該機関の職員による取組を確実なものとするため、対応要領を定めることとされている。行政機関等における差別禁止を確実なものとするためには、差別禁止に係る具体的取組と併せて、相談窓口の明確化、職員の研修・啓発の機会の確保等を徹底することが重要であり、対応要領においてこの旨を明記するものとする。 2 対応要領 (1)対応要領の位置付け及び作成手続 対応要領は、行政機関等が事務・事業を行うに当たり、職員が遵守すべき服務規律の一環として定められる必要があり、国の行政機関であれば、各機関の長が定める訓令等が、また、独立行政法人等については、内部規則の様式に従って定められることが考えられる。 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、対応要領の作成に当たり、障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催、障害者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応要領を公表しなければならない。 (2)対応要領の記載事項 対応要領の記載事項としては、以下のものが考えられる。 ○趣旨 ○障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 ○障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 ○相談体制の整備 ○職員への研修・啓発 3 地方公共団体等における対応要領に関する事項 地方公共団体等における対応要領の作成については、地方分権の趣旨に鑑み、法においては努力義務とされている。地方公共団体等において対応要領を作成する場合には、2(1)及び(2)に準じて行われることが望ましい。国は、地方公共団体等における対応要領の作成に関し、適時に資料・情報の提供、技術的助言など、所要の支援措置を講ずること等により協力しなければならない。 第4 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方 事業者については、不当な差別的取扱いの禁止が法的義務とされる一方で、事業における障害者との関係が分野・業種・場面・状況によって様々であり、求められる配慮の内容・程度も多種多様であることから、合理的配慮の提供については、努力義務とされている。このため、各主務大臣は、所掌する分野における対応指針を作成し、事業者は、対応指針を参考として、取組を主体的に進めることが期待される。主務大臣においては、所掌する分野の特性を踏まえたきめ細かな対応を行うものとする。各事業者における取組については、障害者差別の禁止に係る具体的取組はもとより、相談窓口の整備、事業者の研修・啓発の機会の確保等も重要であり、対応指針の作成に当たっては、この旨を明記するものとする。 同種の事業が行政機関等と事業者の双方で行われる場合は、事業の類似性を踏まえつつ、事業主体の違いも考慮した上での対応に努めることが望ましい。また、公設民営の施設など、行政機関等がその事務・事業の一環として設置・実施し、事業者に運営を委託等している場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。 2 対応指針 (1)対応指針の位置付け及び作成手続 主務大臣は、個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を作成するものとされている。作成に当たっては、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応指針を公表しなければならない。 なお、対応指針は、事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込まれる合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに限られるものではない。事業者においては、対応指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。 (2)対応指針の記載事項 対応指針の記載事項としては、以下のものが考えられる。 ○趣旨 ○障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 P31 ○障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 ○事業者における相談体制の整備 ○事業者における研修・啓発 ○国の行政機関(主務大臣)における相談窓口 3 主務大臣による行政措置 事業者における障害者差別解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、主務大臣は、特に必要があると認められるときは、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとされている。 こうした行政措置に至る事案を未然に防止するため、主務大臣は、事業者に対して、対応指針に係る十分な情報提供を行うとともに、事業者からの照会・相談に丁寧に対応するなどの取組を積極的に行うものとする。また、主務大臣による行政措置に当たっては、事業者における自主的な取組を尊重する法の趣旨に沿って、まず、報告徴収、助言、指導により改善を促すことを基本とする必要がある。主務大臣が事業者に対して行った助言、指導及び勧告については、取りまとめて、毎年国会に報告するものとする。 第5 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 1 環境の整備 法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要である。 障害者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要である。 2 相談及び紛争の防止等のための体制の整備 障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要であり、相談等に対応する際には、障害者の性別、年齢、状態等に配慮することが重要である。法は、新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を図ることとしており、国及び地方公共団体においては、相談窓口を明確にするとともに、相談や紛争解決などに対応する職員の業務の明確化・専門性の向上などを図ることにより、障害者差別の解消の推進に資する体制を整備するものとする。内閣府においては、相談及び紛争の防止等に関する機関の情報について収集・整理し、ホームページへの掲載等により情報提供を行うものとする。 3 啓発活動 障害者差別については、国民一人ひとりの障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられることから、内閣府を中心に、関係行政機関と連携して、各種啓発活動に積極的に取り組み、国民各層の障害に関する理解を促進するものとする。 (1)行政機関等における職員に対する研修 行政機関等においては、所属する職員一人ひとりが障害者に対して適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、法の趣旨の周知徹底、障害者から話を聞く機会を設けるなどの各種研修等を実施することにより、職員の障害に関する理解の促進を図るものとする。 (2)事業者における研修 事業者においては、障害者に対して適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、研修等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、障害に関する理解の促進に努めるものとする。 (3)地域住民等に対する啓発活動 ア 障害者差別が、本人のみならず、その家族等にも深い影響を及ぼすことを、国民一人ひとりが認識するとともに、法の趣旨について理解を深めることが不可欠であり、また、障害者からの働きかけによる建設的対話を通じた相互理解が促進されるよう、障害者も含め、広く周知・啓発を行うことが重要である。 内閣府を中心に、関係省庁、地方公共団体、事業者、障害者団体、マスメディア等の多様な主体との連携により、インターネットを活用した情報提供、ポスターの掲示、パンフレットの作成・配布、法の説明会やシンポジウム等の開催など、多様な媒体を用いた周知・啓発活動に積極的に取り組む。 イ 障害のある児童生徒が、その年齢及び能力に応じ、可能な限り障害のない児童生徒と共に、その特性を踏まえた十分な教育を受けることのできるインクルーシブ教育システムを推進しつつ、家庭や学校を始めとする社会のあらゆる機会を活用し、子供の頃から年齢を問わず障害に関する知識・理解を深め、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人であることを認識し、障害の有無にかかわらず共に助け合い・学び合う精神を涵養する。障害のない児童生徒の保護者に対する働きかけも重要である。 ウ 国は、グループホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して、周辺住民の同意を求める必要がないことを十分に周知するとともに、地方公共団体においては、当該認可等に際して、周辺住民の同意を求める必要がないことに留意しつつ、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うことが望ましい。 P33 4 障害者差別解消支援地域協議会 (1)趣旨 障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者にとって身近な地域において、主体的な取組がなされることが重要である。地域において日常生活、社会生活を営む障害者の活動は広範多岐にわたり、相談等を行うに当たっては、どの機関がどのような権限を有しているかは必ずしも明らかではない場合があり、また、相談等を受ける機関においても、相談内容によっては当該機関だけでは対応できない場合がある。このため、地域における様々な関係機関が、相談事例等に係る情報の共有・協議を通じて、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止の取組など、地域の実情に応じた差別の解消のための取組を主体的に行うネットワークとして、障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができることとされている。協議会については、障害者及びその家族の参画について配慮するとともに、性別・年齢、障害種別を考慮して組織することが望ましい。内閣府においては、法施行後における協議会の設置状況等について公表するものとする。 (2)期待される役割 協議会に期待される役割としては、関係機関から提供された相談事例等について、適切な相談窓口を有する機関の紹介、具体的事案の対応例の共有・協議、協議会の構成機関等における調停、斡旋等の様々な取組による紛争解決、複数の機関で紛争解決等に対応することへの後押し等が考えられる。 なお、都道府県において組織される協議会においては、紛争解決等に向けた取組について、市町村において組織される協議会を補完・支援する役割が期待される。また、関係機関において紛争解決に至った事例、合理的配慮の具体例、相談事案から合理的配慮に係る環境の整備を行うに至った事例などの共有・分析を通じて、構成機関等における業務改善、事案の発生防止のための取組、周知・啓発活動に係る協議等を行うことが期待される。 5 差別の解消に係る施策の推進に関する重要事項 (1)情報の収集、整理及び提供 本法を効果的に運用していくため、内閣府においては、行政機関等による協力や協議会との連携などにより、個人情報の保護等に配慮しつつ、国内における具体例や裁判例等を収集・整理するものとする。あわせて、海外の法制度や差別解消のための取組に係る調査研究等を通じ、権利条約に基づき設置された、障害者の権利に関する委員会を始めとする国際的な動向や情報の集積を図るものとする。これらの成果については、障害者白書や内閣府ホームページ等を通じて、広く国民に提供するものとする。 (2)基本方針、対応要領、対応指針の見直し等 技術の進展、社会情勢の変化等は、特に、合理的配慮について、その内容、程度等に大きな進展をもたらし、また、実施に伴う負担を軽減し得るものであり、法の施行後においては、こうした動向や、不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例の集積等を踏まえるとともに、国際的な動向も勘案しつつ、必要に応じて、基本方針、対応要領及び対応指針を見直し、適時、充実を図るものとする。 法の施行後3年を経過した時点における法の施行状況に係る検討の際には、障害者政策委員会における障害者差別の解消も含めた障害者基本計画の実施状況に係る監視の結果も踏まえて、基本方針についても併せて所要の検討を行うものとする。基本方針の見直しに当たっては、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。対応要領、対応指針の見直しに当たっても、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。 なお、各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨や、技術の進展、社会情勢の変化等を踏まえ、適宜、必要な見直しを検討するものとする。 P35 ■障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応要領 静岡県訓令乙第4号 本庁 出先機関 障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応要領を次のように定める。 平成28年3月30日 静岡県知事 川勝平太 障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応要領 (目的) 第1条 この要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、静岡県職員(非常勤職員、臨時職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第2条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。以下同じ。)を理由として、障害者(障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。以下同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別に定める「障害を理由とする差別の解消に関する静岡県職員対応マニュアル(以下「マニュアル」という。)」に留意するものとする。 (合理的配慮の提供) 第3条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。これに当たり、職員は、マニュアルに留意するものとする。 (管理者の責務) 第4条 職員のうち、課長級以上の地位にある者(以下「管理者」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を図るため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。 一 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その管理する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 二 障害者及びその家族その他の関係者(以下「障害者等」という。)から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 三 合理的配慮の必要性が確認された場合、その管理する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 管理者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。 (懲戒処分等) 第5条 職員が、障害者に対し不当な差別的取扱いをし、又は過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮を怠った場合においては、その態様等によっては、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、これに対し懲戒処分等に付すことがある。 (相談体制の整備) 第6条 職員による障害を理由とする差別に関する障害者等からの相談等に的確に対応するため、健康福祉部障害者支援局障害者政策課に相談窓口を置く。 2 相談等を受ける場合は、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファクシミリ、電子メールに加え、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 3 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用するものとする。 4 第1項の相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。 (研修・啓発) 第7条 障害を理由とする差別の解消を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行うものとする。 2 新たに職員となった者に対しては、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに管理者となった職員に対しては、障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修を実施する。 3 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害者に適切に対応するためマニュアル等により、意識の啓発を図る。 附則 この訓令乙は、平成28年4月1日から施行する。 P37 ■障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン(一部抜粋) 以下では、厚生労働省が、障害者差別解消法の規定に基づき、平成27年11月に厚生労働大臣決定した、福祉分野における事業者が障害者に対し不当な差別的取扱いをしないこと、また必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載した「障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン」の「障害特性に応じた対応について」等の一部を抜粋しています。 ○障害特性に応じた対応について 障害者と接する際には、それぞれの障害特性に応じた対応が求められます。以下に、代表的な障害特性と対応時に配慮すべき事項について簡単にまとめています。 このほか、障害児については、成人の障害者とは異なる支援の必要性があります。子どもは成長、発達の途上にあり、乳幼児期の段階から、個々の子どもの発達の段階に応じて一人ひとりの個性と能力に応じた丁寧に配慮された支援を行う発達支援が必要です。また、子どもを養育する家族を含めた丁寧かつ早い段階からの家族支援が必要です。特に、保護者が子どもの障害を知った時の気持ちを出発点とし、障害を理解する態度を持つようになるまでの過程においては、関係者の十分な配慮と支援が必要です。 また、医療的ケアを要する障害児については、配慮を要する程度に個人差があることに留意し、医療機関等と連携を図りながら、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、適切な支援を行うことが必要です。   視覚障害(視力障害・視野障害) 〔主な特性〕 ・先天性で受障される方のほか、最近は糖尿病性網膜症などで受障される人も多く、高齢者では、緑内障や黄斑部変性症が多い ・視力障害:視覚的な情報を全く得られない又はほとんど得られない人と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる人に大きく分けられる (全盲、弱視といわれることもある) *視力をほとんど活用できない人の場合、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握している *文字の読みとりは、点字に加えて最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンで行うこともある(点字の読み書きができる人ばかりではない) *視力をある程度活用できる人の場合は、補助具を使用したり文字を拡大したり近づいて見るなどの様々な工夫をして情報を得ている ・視野障害:目を動かさないで見ることのできる範囲が狭くなる 「求心性視野狭窄」見える部分が中心だけになって段々と周囲が見えなくなる。遠くは見えるが足元が見えず、つまづきやすくなる  「中心暗転」周囲はぼんやり見えるが真ん中が見えない。文字等、見ようとする部分が見えなくなる ・視力障害、視野障害の状況によって、明るさの変化への対応が困難なため、移動などに困難さを生じる場合も多い 〔主な対応〕 ・音声や点字表示など、視覚情報を代替する配慮 ・中途受障の人では白杖を用いた歩行や点字の触読が困難な人も多いため留意が必要 ・声をかける時には前から近づき「○○さん、こんにちは。△△です。」など自ら名乗る ・説明する時には「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」などと具体的に説明 ・普段から通路(点字ブロックの上等)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障害者が使用しているものの位置を変えないなど周囲の協力が不可欠 ・主に弱視の場合、室内における照明の状況に応じて、窓を背にして座ってもらうなどの配慮が必要 P39 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 自分のタイミングで移動したい(視覚障害@) 全盲の視覚障害者Aさんは、地域の福祉センターを訪問する際、案内看板等が見えず単独で行くことができませんでした。しかしセンター入り口付近にガイドボランティアが配置され、手助けが必要な人に一声かけてくれるようになったことから、付き添いがなくても一人で通うことができるようになりました。 また併せて、エレベーターや階段の手すりにも点字シールを表示することになり、ガイドボランティアと離れていても、自分のタイミングで移動することが可能になり、御本人の気持ちもとても自由になりました。 対応例2 アンケートも多様な方法で(視覚障害A) アンケートを取る際に、印刷物だけを配布していました。すると、視覚障害の方から、電子データでほしいと要望がありました。電子データであればパソコンの読み上げソフトを利用して回答できるからとのことでした。 紙媒体という画一的な方法ではなく、テキストデータでアンケートを送信し、メールで回答を受け取るという方法をとることで、視覚障害の方にもアンケートに答えてもらえるようになりました。   聴覚障害 〔主な特性〕 ・聴覚障害は外見上わかりにくい障害であり、その人が抱えている困難も他の人からは気づかれにくい側面がある ・聴覚障害者は補聴器や人工内耳を装用するほか、コミュニケーション方法には手話、筆談、口話など様々な方法があるが、どれか一つで十分ということではなく、多くの聴覚障害者は話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせるなど使い分けている ・補聴器や人工内耳を装用している場合、スピーカーを通じる等、残響や反響のある音は、聞き取りにあまり効果が得られにくい ・聴覚の活用による言葉の習得に課題があることにより、聴覚障害者の国語力は様々であるため、筆談の場合は、相手の状況にあわせる 〔主な対応〕 ・手話や文字表示、手話通訳や要約筆記者の配置など、目で見てわかる情報を提示したりコミュニケーションをとる配慮 ・補聴器や人工内耳を装用し、残響や反響のある音を聞き取ることが困難な場合には、代替する対応への配慮(磁気誘導ループの利用など) ・音声だけで話すことは極力避け、視覚的なより具体的な情報も併用 ・スマートフォンなどのアプリに音声を文字に変換できるものがあり、これらを使用すると筆談を補うことができる 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 研修会等での配慮(聴覚障害@) 聴覚障害者(2級)のAさんは、ある研修会に参加することとなりました。事務局から研修担当者には、Aさんは聴覚障害があるので配慮するよう伝えていましたが、研修担当者はAさんは補聴器を付けていたので問題ないと思い、特段の配慮もなく研修が進められ第1日目が終わってしまいました。Aさんは、補聴器をつけていても、すべて聞き取れる訳ではないことを事務局に相談したところ、次回以降、手話通訳者か要約筆記者(ノートテイク)で対応してくれることとなりました。 対応例2 呼び出し方法の改善(聴覚障害A) 聴覚障害者(発語可能・4級)のBさんは事務手続きのため、受付を済ませ呼び出しを待っていましたがなかなか呼ばれませんでした。受付に、呼ばれていないことを申し出ると、「名前を呼びましたが、返事がありませんでした」とのことでした。音声による通常の呼び出ししか行われなかったためです。 その後、事務局は対応を検討し、聴覚障害のある方には、文字情報などでも呼び出しを伝え、手続きに関するやりとりに関しても筆談等で対応することとしました。 P41   盲ろう(視覚と聴覚の重複障害) 〔主な特性〕 ・視覚と聴覚の重複障害の人を「盲ろう」と呼んでいるが、障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられる(視覚障害、聴覚障害の項も参照のこと) <見え方と聴こえ方の組み合わせによるもの> @全く見えず聴こえない状態の「全盲ろう」 A見えにくく聴こえない状態の「弱視ろう」 B全く見えず聴こえにくい状態の「盲難聴」 C見えにくく聴こえにくい状態の「弱視難聴」 <各障害の発症経緯によるもの> @盲(視覚障害)から聴覚障害を伴った「盲ベース盲ろう」 Aろう(聴覚障害)から視覚障害を伴った「ろうベース盲ろう」 B先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症する「先天性盲ろう」 C成人期以後に視覚と聴覚の障害が発症する「成人期盲ろう」 ・盲ろう者がそれぞれ使用するコミュニケーション手段は、障害の状態や程度、盲ろうになるまでの経緯、あるいは生育歴、他の障害との重複の仕方によって異なり、介助方法も異なる ・テレビやラジオを楽しんだり本や雑誌を読むことなどもできず、家族といてもほとんど会話がないため、孤独な生活を強いられることが多い 〔主な対応〕 ・盲ろう者関係機関に相談し、対応に関する助言を受ける ・障害の状態や程度に応じ視覚障害や聴覚障害の人と同じ対応が可能な場合があるが、 同様な対応が困難な場合が多く、手書き文字や触手話、指点字などの代替する対応や移動の際にも配慮する ・言葉の通訳に加えて、視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝える (例)状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)など 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 盲ろう者とのコミュニケーション(盲ろう者) 盲ろう者であるAさんは、通訳・介助者を同伴し、パソコン訓練を実施する施設に相談に行きましたが、盲ろう者との特殊なコミュニケーション方法である「手書き文字」「点字筆記」「触手話」「指点字」ができる職員がいないとの理由で受け入れを断られてしまいました。 後日、Aさんは通訳・介助者を同伴して盲ろう者関係機関に相談したところ、「Aさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設側に伝えたらよいのでは。」との助言を受け、あらためて、Aさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設に説明した結果、施設側も理解を示し、前向きに受け入れる方向で話が進展しました。   構音障害 〔主な特性〕 ・話す言葉自体を聞き取ることが困難な状態 ・話す運動機能の障害、聴覚障害、咽頭摘出などの原因がある 〔主な対応〕 ・しっかりと話を聞く ・会話補助装置などを使ってコミュニケーションをとることも考慮する P43   失語症 〔主な特性〕 ・聞くことの障害 音は聞こえるが「ことば」の理解に障害があり「話」の内容が分からない 単語や簡単な文なら分かる人でも早口や長い話になると分からなくなる ・話すことの障害 伝えたいことをうまく言葉や文章にできない 発話がぎこちない、いいよどみが多くなったり、誤った言葉で話したりする ・読むことの障害 文字を読んでも理解が難しい ・書くことの障害 書き間違いが多い、また「てにをは」などをうまく使えない、文を書くことが難しい 〔主な対応〕 ・表情がわかるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短いことばや文章で、わかりやすく話しかける ・一度でうまく伝わらない時は、繰り返して言ったり、別のことばに言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示したりすると理解しやすい ・「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると理解しやすい ・話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなる *「失語症のある人の雇用支援のために」(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター)より一部引用 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 話すことの障害(失語症) 失語症(発語がうまくできない)のAさんが、買い物に行きましたが、自分の欲しいものを探すことができませんでした。店員にどこにあるのか尋ねようとしましたが、欲しいものをうまく伝えられず、時間が経過するばかりでした。 店員は、Aさんが言葉をうまく話せないことがわかったため、「食べ物」、「飲み物」、「日用品」等と的を徐々に絞って確認していく方法をとったところ、Aさんの欲しいものが判明し購入することができました。   肢体不自由 ○ 車椅子を使用されている場合 〔主な特性〕 ・脊髄損傷(対麻痺又は四肢麻痺、排泄障害、知覚障害、体温調節障害など) ・脳性麻痺(不随意運動、手足の緊張、言語障害、知的障害重複の場合もある) ・脳血管障害(片麻痺、運動失調) ・病気等による筋力低下や関節損傷などで歩行が困難な場合もある ・ベッドへの移乗、着替え、洗面、トイレ、入浴など、日常の様々な場面で援助が必要な人の割合が高い ・車椅子使用者にとっては、段差や坂道が移動の大きな妨げになる ・手動車椅子の使用が困難な場合は、電動車椅子を使用する場合もある ・障害が重複する場合には、呼吸器を使用する場合もある 〔主な対応〕 ・段差をなくす、車椅子移動時の幅・走行面の斜度、車椅子用トイレ、施設のドアを引き戸や自動ドアにするなどの配慮 ・机アプローチ時に車椅子が入れる高さや作業を容易にする手の届く範囲の考慮 ・ドア、エレベータの中のスイッチなどの機器操作のための配慮 ・目線をあわせて会話する ・脊髄損傷者は体温調整障害を伴うことがあるため、部屋の温度管理に配慮 ○ 杖などを使用されている場合 〔主な特性〕 ・脳血管障害(歩行可能な片麻痺、運動失調) ・麻痺の程度が軽いため、杖や装具歩行が可能な場合や、切断者などで義足を使用して歩行可能な場合は、日常生活動作は自立している人が多い ・失語症や高次脳機能障害がある場合もある ・長距離の歩行が困難であったり、階段、段差、エスカレーターや人ごみでの移動が困難な場合もあり、配慮が必要 〔主な対応〕 ・上下階に移動するときのエレベータ−設置・手すりの設置 ・滑りやすい床など転びやすいので、雨天時などの対応 ・トイレでの杖おきの設置や靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮 ・上肢の障害があれば、片手や筋力低下した状態で作業ができる配慮 P45 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 建物の段差が障壁に(肢体不自由@) 車椅子を使用している身体障害者(1級)Aさんが、外出中、建物に入ろうとすると大きな段差があり立ち往生してしまいました。 スタッフに協力をお願いしてみると、段差を車椅子で乗り越える手伝いを申し出てくれました。介助のお陰で、無事に建物に入ることができました。 対応例2 障害への理解が深まれば(肢体不自由A) 座骨部に褥瘡(床ずれ)発生を繰り返している脊髄損傷者Bさん。褥瘡は、長時間座位を保持していることが原因で発生していました。褥瘡悪化による手術で数ヶ月単位の入院を繰り返していました。 納期がせまっており長時間作業をしなければならない場面でも、時間調整や褥瘡予防できる姿勢を確保するため途中で休憩をとることなど周囲の理解と協力を得ることで、褥瘡の発生をおさえ、入退院を繰り返すことなく生活することが可能になりました。 対応例3 施設での電動車椅子による自立移動(肢体不自由B) 重度の脳性麻痺であるCさんは、介助用車椅子を使用し、施設職員や家族の介助による移動が主でした。リハビリテーションセンターにおいて、施設での電動車椅子による自立移動が可能か検討したところ、座位保持装置や特殊スイッチを装備・使用した電動車椅子で安全に施設内を移動できることがわかりました。 当初、施設側が電動車椅子移動による安全性の確保について懸念していましたが、リハビリテーションセンター担当職員による実地確認や使い方の指導により安全な移動が可能であることが理解され、その結果、施設内で本人の意思により自由に移動することが可能となりました。 対応例4 脳卒中の後遺症があるが、働くことを希望する方への支援(肢体不自由C) 50歳代で脳梗塞(脳卒中の種類の1つ)を発症し、入浴、更衣、屋外の外出などに介助が必要であることから、日中自宅に閉じこもりがちであるが、今後、働くことを希望しているDさん。本人の残存能力を踏まえ、更衣や外出練習などを提供する通所リハビリテーションに通うことになりました。訓練により、就労に向けて活動するための機能が向上し、地域の就労継続支援事業所に通うことで社会参加できるようになりました。   高次脳機能障害 交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害。身体的には障害が残らないことも多く、外見ではわかりにくいため「見えない障害」とも言われている。 〔主な特性〕 ・以下の症状が現れる場合がある 記憶障害:すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりする 注意障害:集中力が続かなかったり、ぼんやりしていてしまい、何かをするとミスが多く見られる。二つのことを同時にしようとすると混乱する。主に左側で、食べ物を残したり、障害物に気が付かないことがある 遂行機能障害:自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てられない 社会的行動障害:ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい。こだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢できない。思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりする 病識欠如:上記のような症状があることに気づかず、できるつもりで行動してトラブルになる ・失語症(失語症の項を参照)を伴う場合がある ・片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害を持つ場合がある 〔主な対応〕 ・本障害に詳しいリハビリテーション専門医やリハ専門職、高次脳機能障害支援普及拠点機関、家族会等に相談する ・記憶障害 手がかりがあると思い出せるので、手帳やメモ、アラームを利用したり、ルートマップを持ち歩いてもらうなどする 自分でメモを取ってもらい、双方で確認する 残存する受傷前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅周囲では迷わず行動できるなど) ・注意障害 短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩を取るなどする ひとつずつ順番にやる 左側に危険なものを置かない ・遂行機能障害 手順書を利用する 段取りを決めて目につくところに掲示する P47 スケジュール表を見ながら行動したり、チェックリストで確認する ・社会的行動障害 感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る 予め行動のルールを決めておく 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 メモを活用して行き違いを防止(高次脳機能障害) 高次脳機能障害のAさんに、先ほど伝えたことを忘れて勝手な行動をしていると注意したところ、聞いていなかった、知らないと逆に怒り出してしまいました。Aさんは普段、難しい言葉を使ったり、以前のことをよく覚えている方なので、高次脳機能障害の特性を知らない周囲の人は、Aさんはいい加減な人だと腹を立てて、人間関係が悪化してしまいました。 高次脳機能障害者は受傷前の知識や経験を覚えている場合が多いのですが、直近のことを忘れてしまいがちであるという説明を受け、周囲の人は、障害の特性であることを理解することができました。また、口頭で伝えたことは言った、言わないとトラブルのもとになりやすいので、メモに書いてもらい、双方で確認するようにしたら、トラブルがおきなくなりました。   内部障害 〔主な特性〕 ・心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、肝機能、HIVによる免疫機能のいずれかの障害により日常生活に支障がある ・疲れやすく長時間の立位や作業が困難な場合がある ・常に医療的対応を必要とすることが多い 〔主な対応〕 ・ペースメーカーは外部からの電気や磁力に影響をうけることがあるので注意すべき機器や場所などの知識をもつ ・排泄に関し、人工肛門の場合、パウチ洗浄等特殊な設備が必要となることへの配慮 ・人工透析が必要な人については、通院の配慮 ・呼吸器機能障害のある方は、慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があることを理解し、息苦しくならないよう、楽な姿勢でゆっくり話をしてもらうよう配慮 ・常時酸素吸入が必要な方は、携帯用酸素ボンベが必要な場合があることを理解   重症心身障害・その他医療的ケアが必要な者 〔主な特性〕 ・自分で体を動かすことができない重度の肢体不自由と、年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害が重複している ・殆ど寝たままで自力では起き上がれない状態が多い ・移動、食事、着替え、洗面、トイレ、入浴などが自力ではできないため、日常の様々な場面で介助者による援助が必要 ・常に医学的管理下でなければ、呼吸することも栄養を摂ることも困難な人もいる ・重度の肢体不自由や重度の知的障害はないが、人工呼吸器を装着するなど医療的ケアが必要な人もいる 〔主な対応〕 ・人工呼吸器などを装着して専用の車椅子で移動する人もいるため、電車やバスの乗降時等において、周囲の人が手伝って車椅子を持ち上げるなどの配慮が必要 ・体温調整がうまくできないことも多いので、急な温度変化を避ける配慮が必要 P49   知的障害 〔主な特性〕 ・概ね18歳頃までの心身の発達期に現れた知的機能の障害により、生活上の適応に困難が生じる ・「考えたり、理解したり、読んだり、書いたり、計算したり、話したり」する等の知的な機能に発達の遅れが生じる ・金銭管理、会話、買い物、家事などの社会生活への適応に状態に応じた援助が必要 ・主な原因として、ダウン症候群などの染色体異常、または先天性代謝異常によるものや、脳症や外傷性脳損傷などの脳の疾患があるが、原因が特定できない場合もある ・てんかんを合併する場合もある ・ダウン症候群の場合の特性として、筋肉の低緊張、多くの場合、知的な発達の遅れがみられること、また、心臓に疾患を伴う場合がある 〔主な対応〕 ・言葉による説明などを理解しにくいため、ゆっくり、ていねいに、わかりやすく話すことが必要 ・文書は、漢字を少なくしてルビを振る、文書をわかりやすい表現に直すなどの配慮で理解しやすくなる場合があるが、一人ひとりの障害の特性により異なる ・写真、絵、ピクトグラムなどわかりやすい情報提供を工夫する ・説明が分からないときに提示するカードを用意したり、本人をよく知る支援者が同席するなど、理解しやすくなる環境を工夫をする 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 作業能力を発揮するための一工夫(知的障害@) Aさんは、作業能力はあるけれど、不安が強くなると本来の作業能力が発揮できなくなってしまいます。Aさんの担当は清掃作業。1フロアーを一人で担当するように任されていましたが、広い範囲を一人で任されることに不安を感じ、本来の作業能力を発揮できずミスが増えていました。 作業量は変えずに2フロアーを2人で担当する様にしたところ、Aさんの不安が減少し、本来の能力を発揮できるようになり、ミスも減りました。 対応例2 対人コミュニケーションに困難を抱える若者の就労支援(知的障害A) Bさんは、高校を中退後、一時アルバイトを経験したものの、すぐに辞めてしまってからは就労から遠ざかった生活を続けていました。軽度の知的障害が疑われ、対人コミュニケーションに課題を抱えるBさんは、以前、アルバイト先の上司から強く叱責を受けたことで、すっかり自信と意欲を失っていたのです。 生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関は、すべての書類にルビを振り、また、Bさんが理解するまで繰り返し丁寧な説明を行うなど、Bさんの社会参加に向けて粘り強い支援を行いました。並行して、就労支援員がBさんの特性に理解のある職場の開拓をすすめました。その結果、アルバイト経験があり、本人の関心の高い飲食業界において、就労訓練事業として週3日、3時間程度の就労から始めることになりました。現在も、自立相談支援機関がBさん本人と就労先双方へのフォローを行いながら就労の継続を支援しています。 対応例3 一人暮らしの金銭管理をサポート(知的障害B) 一人暮らしをしながら地域の作業所に通うCさんは、身の回りのことはほとんど自分でできますが、お金の計算、特に何を買うのにいくらかかるのかを考えて使うのが苦手なため、日常の金銭管理をしてくれる福祉サービス(日常生活自立支援事業)を利用することになりました。 生活支援員と必要なお金について1週間単位で相談し、一緒に銀行に行ってお金を下ろし、生活することになりました。買い物のレシートをノートに貼ることもアドバイスをうけ、お金を遣い過ぎることがなくなりました。また、お金がどれくらいあるのか心配なときは、支援員さんに聞けば分かるので安心とCさんは話しています。 P51   発達障害 ○自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム) 〔主な特性〕 ・相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強い ・見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しが立つ時はきっちりしている ・大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労しているが、それが芸術的な才能につながることもある。 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫(「○○をしましょう」といったシンプルな伝え方、その人の興味関心に沿った内容や図・イラストなどを使って説明するなど) ・スモールステップによる支援(手順を示す、モデルを見せる、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつにするなど) ・感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整を行う(イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所を衝立などで区切る、クーラー等の設備のある部屋を利用できるように配慮するなど) ○学習障害(限局性学習障害) 〔主な特性〕 ・「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力しているのに極端に苦手 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・得意な部分を積極的に使って情報を理解し、表現できるようにする(ICTを活用する際は、文字を大きくしたり行間を空けるなど、読みやすくなるように工夫する) ・苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減する、柔軟な評価をする ○注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害) 〔主な特性〕 ・次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・短く、はっきりとした言い方で伝える ・気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルール提示などの配慮 ・ストレスケア(傷つき体験への寄り添い、適応行動が出来たことへのこまめな評価) ○その他の発達障害 〔主な特性〕 ・体の動かし方の不器用さ、我慢していても声が出たり体が動いてしまったりするチック、一般的に吃音と言われるような話し方なども、発達障害に含まれる 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・叱ったり拒否的な態度を取ったり、笑ったり、ひやかしたりしない ・日常的な行動の一つとして受け止め、時間をかけて待つ、苦手なことに無理に取組まず出来ることで活躍する環境を作るなど、楽に過ごせる方法を一緒に考える P53 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 コミュニケーション支援機器を用いた就労訓練(発達障害@) 発達障害のAさんは、就労訓練サービスを利用しています。挨拶、作業の終了時、作業中に必要と思われる会話(「おはようございます」「さようなら」「仕事が終わりました」「袋を持ってきてください」「紐を取ってください」「トイレへ行ってきます」「いらっしゃいませ」「100円です」等)をVOCA(会話補助装置)に録音し、伝えたいメッセージのシンボル(絵・写真・文字)を押してコミュニケーションをとるようにしたことで作業に集中することができ、休みなく事業所へ通う事ができるようになりました。 対応例2 個別の対応で理解が容易に(発達障害A) 発達障害のBさんは、利用者全体に向けた説明を聞いても、理解できないことがしばしばある方です。そのため、ルールや変更事項等が伝わらないことでトラブルになってしまうことも多々ありました。 そこで、Bさんには、全体での説明の他に個別に時間を取り、正面に座り文字やイラストにして直接伝えるようにしたら、様々な説明が理解できるようになり、トラブルが減るようになりました。 対応例3 本人が安心して過ごすための事前説明(発達障害B) 発達障害のCさんは、就労継続支援事業を利用していますが、広い作業室の中で職員を見つけることが出来ない方でした。職員に連絡したくても連絡できず、作業の中で解らないことや聞きたいことがあってもそれが聞けず、不安や混乱が高まっていました。 そこで、来所時にあらかじめCさんに職員の場所を図で示したり、現地を確認する、ユニフォームの違いを伝えるなど、職員をみつけるための手がかりを知らせておくようにしたら、Cさんは安心して作業に集中できるようになりました。 対応例4 苦手なことに対しては、事前のサポート(発達障害C) 発達障害のDさんは文字の読み書きが苦手であり、様々な手続きの際、書類の記入欄を間違えたり、誤字を書いてしまったりして、何回も書き直さなければなりませんでした。 そこで、Dさんの相談を受けている職員は、「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼って示す」「書類のモデルを作成して示す」「職員が鉛筆で下書きする」などを試したところ、書類作成を失敗する回数が少なくなりました。   精神障害 ・精神障害の原因となる精神疾患は様々であり、原因となる精神疾患によって、その障害特性や制限の度合いは異なる ・精神疾患の中には、長期にわたり、日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態が続くものがある ・代表的な精神疾患として、統合失調症や気分障害等がある ・障害の特性もさまざまであるため、積極的に医療機関と連携を図ったり、専門家の意見を聴くなど、関係機関と協力しながら対応する ○統合失調症 〔主な特性〕 ・発症の原因はよく分かっていないが、100人に1人弱かかる、比較的一般的な病気である ・「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られている ・陽性症状 幻覚:実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。なかでも、自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い 妄想:明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと。誰かにいやがらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想などがある ・陰性症状 意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる 疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる  入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となる  など ・認知や行動の障害: 考えがまとまりにくく何が言いたいのかわからなくなる  相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない  など 〔主な対応〕 ・統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要がある ・薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する ・社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守る ・一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心掛ける ・一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心掛ける ・症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとったり、速やかに主治医を受診することなどを促す P55 ○気分障害 〔主な特性〕 ・気分の波が主な症状としてあらわれる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ ・うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる ・躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でも出来ると思い込んで人の話を聞かなくなったりする 〔主な対応〕 ・専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する ・薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する ・うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する ・躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談する ・自分を傷つけてしまったり、自殺に至ることもあるため、自殺などを疑わせるような言動があった場合には、本人の安全に配慮した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す ○依存症(アルコール) 〔主な特性〕 ・飲酒したいという強い欲求がコントロールができず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで身体的、社会生活上の様々な問題が生じる ・体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラなどの離脱症状が出る ・一念発起して断酒しようとしても、離脱症状の不快感や、日常生活での不安感から逃れるために、また飲んでしまう 〔主な対応〕 ・本人に病識がなく(場合によっては家族も)、アルコール依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人・家族・周囲が理解する ・周囲の対応が結果的に本人の飲酒につながってしまう可能性があるため、家族も同伴の上で、アルコール依存症の専門家に相談する ・一度断酒しても、再度飲酒してしまうことが多いため、根気強く本人を見守る ○てんかん 〔主な特性〕 ・何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作がおきる ・発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある 〔主な対応〕 ・誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導の下に内服治療を行うことで、多くの者が一般的な生活が送れることを理解する ・発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なので、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しない ・内服を適切に続けることが重要である。また、発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談する ○認知症 〔主な特性〕 ・認知症とは、単一の病名ではなく、種々の原因となる疾患により記憶障害など認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態である ・原因となる主な疾患として、 アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病など)がある ・認知機能の障害の他に、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状(徘徊、不穏、興奮、幻覚、妄想など)がある 〔主な対応〕 ・高齢化社会を迎え、誰もが認知症とともに生きることになる可能性があり、また、誰もが介護者等として認知症に関わる可能性があるなど、認知症は皆にとって身近な病気であることを理解する ・各々の価値観や個性、想い、人生の歴史等を持つ主体として尊重し、できないことではなく、できることに目を向けて、本人が有する力を最大限に活かしながら、地域社会の中で本人のなじみの暮らし方やなじみの関係が継続できるよう、支援していく ・早期に気付いて適切に対応していくことができるよう、小さな異常を感じたときに速やかに適切な機関に相談できるようにする ・BPSDについては、BPSDには 、何らかの意味があり、その人からのメッセージとして聴くことが重要であり、BPSDの要因として、さまざまな身体症状、孤立・不安、不適切な環境・ケア、睡眠や生活リズムの乱れなどにも目を向ける ・症状が変化した等の場合には、速やかに主治医を受診し、必要に応じて専門機関に相談することなどを促す P57 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 薬が効くまでの時間をもらえると(精神障害) Aさんは、精神障害当事者としての経験を活かして、福祉サービス事業所でピアサポーターとして活動しています。しかし、月に一度位は幻聴が出現することがあり、Aさんは活動に支障が出ることをとても心配していました。職員に相談すると、「普段はどうしているのですか?」と質問され、Aさんは頓服薬を飲んで1時間位静養すると治まってくると説明しました。すると、「ご自分で対処できるならそうして下さい」「症状があっても、工夫をしながら活動を続けられるといいですね」「他の利用者の励みになるのだから気にする必要はないと思います」と言われて、幻聴が出た時は頓服が効くまで静養できることになりました。その後、Aさんは、ピアサポーターとして自信を持ちながら、安心して活動を続けています。   難病 〔主な特性〕 ・神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病など様々な疾病により多彩な障害を生じる ・常に医療的対応を必要とすることが多い ・病態や障害が進行する場合が多い 〔主な対応〕 ・専門の医師に相談する ・それぞれの難病の特性が異なり、その特性に合わせた対応が必要 ・進行する場合、病態・障害の変化に対応が必要 ・排泄の問題、疲れやすさ、状態の変動などに留意が必要 ・体調がすぐれない時に休憩できる場所を確保する 〔障害特性に応じた具体的対応例〕 対応例1 色素性乾皮症(XP)児の保育所における対応(難病) 遮光対策が必要な疾病である色素性乾皮症患児のAちゃんは、紫外線対策がなされていない保育所に入所することは困難です。 入所を希望する保育所と話し合った結果、UVカットシートを保育室等の窓ガラスに貼ること、紫外線を遮断するため窓は常時閉鎖しておくのでエアコンをとりつけること、日光に当たってしまった際の対応策などを保育所側に十分把握してもらったうえで、他の保育園児・保護者への説明も十分行うことで疾病に対する理解を得て、安心して保育所に通うことができるようになりました。 対応例2 自己コントロール力をつけるために (障害児@) 自閉症スペクトラム(発達障害)のAさんは知的にはかなり高い児童ですが、ちょっとした思い込みや刺激が元で、トイレや空室に長時間(長い場合は10時間近く)急に籠もってしまうことが多くありました。 そこで、不適応を起こしそうになった場合(「起こす前」がポイント)に、事前に決めておいたルールに基づいて(例えば何色かのカードを用意し、イエローカードを見せたら事務室でクールダウンする、レッドカードであったら個別対応の部屋に行きたい等)自らがサインを出して対応方法を選択する経験を繰り返し積むことで、徐々にカードを使用せずに感情の自己コントロールができるようになってきました。約半年ほどで不適応を示すことが殆どなくなり、生活が安定しました。 対応例3 日常生活動作を身につけるために(障害児A) 保育所に通う発達障害児のBちゃんは、靴をそろえる、トイレにしっかり座るといった日常生活の動作の一部が十分に身についていません。言葉による説明よりも、視覚情報による説明の方が伝わりやすいため、これらの動作の順番を具体化した絵を作成し、必要に応じて見せるようにしています。また、話しかける際にも、顔を見ながら、穏やかに静かな声で話しかけるようにしています。 P59 対応例4 介護老人保健施設での対応(高齢者@) 様々な障害があっても生活がしやすいように、点字ブロック、車いす用のトイレ、入所者用の居室階へ行くためのエレベーターの設置などを行いました。また、聴覚障害のある入所者とコミュニケーションを図れるよう部屋に筆談用の用具を置くなどの配慮を行っています。 対応例5 特別養護老人ホームにおける対応(高齢者A) 特別養護老人ホームにおいて地域交流活動を行う際、ボランティアのAさん(視覚障害者)が資料や小道具を作ろうとしましたが、パソコンでの作業に手間取ってしまいました。そこで、施設は、職員や他のボランティアの人が共同して作成することに加え、施設で導入していた音声認識ソフトや点字付きキーボードを利用してもらうことによって、Aさんが作業しやすい環境を作るように働きかけました。 対応例6 デイサービスを利用する前の交流(高齢者B) Bさん(精神障害者)は、要介護認定を受け、介護保険のデイサービスを利用することとなりました。しかし、家族から、Bさんは、知らない人と接することが苦手でありデイサービスのような人が集まる場に行くことは、精神的な負担が大きいのではないか、と心配の声が寄せられていました。 そこで、デイサービスの職員は、いきなりデイサービスを利用するのではなく、まずはBさんの自宅で交流を重ね、Bさんと親しくなることにしました。その後、Bさんは親しい職員がいることで、安心してデイサービスの場に通うことができるようになりました。 〔障害者に関するマーク〕 以下は図です。障害者に関するマークを記載しています。 ・障害者のための国際シンボルマーク 所管:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 ・身体障害者標識 所管:警察庁 ・聴覚障害者標識 所管:警察庁 ・盲人のための国際シンボルマーク 所管:社会福祉法人日本盲人福祉委員会 ・耳マーク 所管:一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 ・ほじょ犬マーク 所管:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 ・オストメイトマーク 所管:公益社団法人日本オストミー協会 ・ハート・プラスマーク 所管:特定非営利活動法人ハート・プラスの会 「H26年版 障害者白書」(内閣府)より 図は以上です。 〔コミュニケーション支援用絵記号の例〕 以下は図です。コミュニケーション支援用絵記号の例を記載しています。 ・絵記号の例 わたし あなた 感謝する 助ける ・絵記号による意思伝達の例 朝起きたら、顔を洗って歯を磨いてください。 「H26年版 障害者白書」(内閣府)より 図は以上です。 P61 〔身体障害者補助犬とは〕 「身体障害者補助犬」は、目や耳や手足に障害のある方の生活をお手伝いする、「盲導犬」・「聴導犬」・「介助犬」のことです。  身体障害者補助犬法に基づき認定された犬で、特別な訓練を受けています。 補助犬の種類 ○盲導犬 目の見えない人、見えにくい人が街なかを安全に歩けるようにサポートします。障害物を避けたり、立ち止まって曲がり角を教えたりします。ハーネス(胴輪)をつけています。 ○介助犬 手や足に障害のある人の日常の生活動作をサポートします。物を拾って渡したり、指示したものを持ってきたり、着脱衣の介助などを行ないます。“介助犬”と書かれた表示をつけています。 ○聴導犬 音が聞えない、聞こえにくい人に、生活の中の必要な音を知らせます。玄関のチャイム音・FAX着信音・赤ちゃんの泣き声などを聞き分けて教えます。“聴導犬”と書かれた表示をつけています。 補助犬の同伴については、「身体障害者補助犬法」で、人が立ち入ることのできるさまざまな場所で受け入れるよう義務づけられています。「犬だから」という理由で受け入れを拒否しないでください。 補助犬の同伴を受け入れる義務がある場所 ・国や地方公共団体などが管理する公共施設・ 公共交通機関(電車、バス、タクシーなど) ・不特定かつ多数の人が利用する民間施設−商業施設、飲食店、病院、ホテルなど ・事務所(職場)−国や地方公共団体などの事務所−従業員50人以上の民間企業 補助犬の同伴を受け入れる努力をする必要がある場所 ・事務所(職場)−従業員50人未満の民間企業 ・民間住宅 補助犬の受け入れ施設の方へ ●補助犬は、ユーザーの指示に従い待機することができるので、特別な設備は必要ありません。 ●補助犬の同伴を受け入れる際に他のお客様から苦情がある場合は、「身体障害者補助犬法」で受け入れ義務があること、補助犬の行動や健康の管理はユーザーが責任をもって行なっていることを説明し、理解を求めてください。 ●補助犬が通路をふさいだり、周りのにおいを嗅ぎ回ったり、その他、何か困った行動をしている場合は、そのことを補助犬ユーザーにはっきり伝えてください。 ●補助犬を同伴していても、補助犬ユーザーへの援助が必要な場合があります。補助犬ユーザーが困っている様子を見かけたら、まずは声をかけたり、筆談をしたりコミュニケーションをとってください。