第35回リアル野球盤協会
第35回
誰もが楽しめるニュースポーツを展開する「リアル野球盤協会」
こんにちは。静岡県中部地域局です。
地域活動に取り組む方々や、イノベーションを起こしている企業にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんが元気になる情報をお届けします。
第35回となる今回は、島田市金谷地区を発祥の場として、体力に関係なく誰もが楽しめるニュースポーツ「リアル野球盤」を、全国に広めている「リアル野球盤協会」会長の鈴木久雄様にインタビューしました。
リアル野球盤のはじまり
私(鈴木会長)は、現在76歳で、勤務していたメーカーを退職してから大分経つのですが、リアル野球盤を着想したのは、1998年にメーカーの製品開発部に所属していたときのことでした。
それは40歳代の時、会社の「脱本業」の方針もあって、今まで経験したことのなかった製品開発部に配属され、多孔質金属材料の製作・用途開発等に携わりました。そこで、モノづくりの楽しさを味わったり、異業種交流会に参加して新たな出会いの素晴らしさを覚えました。
リアル野球盤を着想したのは、その頃におじいさんとおばあさんがつまらなそうに黙って散歩(ウォーキング)をされていたのを見て、『楽しみながら運動できたらいいのになー』と思ったのがきっかけで、子供のころ楽しんだ卓上の野球盤を、実際に人が動いてプレーできたらどうかと連想が拡がりました。いざ、製品開発部で取り組もうと意気込んだ時にバブル景気が弾け、残念ながら会社方針は「本業回帰」となり、リアル野球盤は私の胸の中にお蔵入りとなりました。
その後、50歳代の時間が空いた際に、リアル野球盤の具体的な構想を育ててきました。試作品を作り、試技をする一方、創業塾で学び、リアル野球盤普及活動のビジネスプランを作り、コンテストに応募しました。これがなんと最優秀賞を受賞。この御縁で、産学交流センターの方の紹介を受けて、静岡デザイン専門学校に相談し、頂いたアドバイスによって、主材料に発泡樹脂を使うことを決めました。
ビジネスプランコンテストの大切な御縁が、もう一つあります。SOHOしずおか主催の「団塊創業塾」にパネラーとして招かれたことをきっかけに、『定年退職した時にこの活動を誰もやっていなかったら自分でやろう』と決めました。その決意を実現すべく、創業塾終了後も受講生と共に「団塊創業塾OB会」立ち上げに尽力し、「NPO法人静岡団塊創業塾」に皆で育成・発展させることができました。当塾の皆さんとは、今でも共に活動しています。
60歳で定年退職し、リアル野球盤普及活動を個人事業としてスタートしたのが2009年1月でした。
乞われて金谷コミュニティ委員会という、金谷地区の活性化に取り組む団体の役員になり、地域のためにできることを考えながら活動してきました。
退職から8年が経ったところで、島田市役所から依頼を受けて、島田市産業支援センター(通称「おびさぽ」)の初代センター長を、3年間務めました。ここでは、相談にいらっしゃった方が、「来て良かった」と喜んで帰っていただけるように努めました。この心の持ち方は、現在も私の中に生きています。
さて、リアル野球盤は、ピッチャーがスロープからボールを転がし、それを打席のバッターが打ち返します。打ち返されたボールの行方で打撃結果が決まります。配置された「アウト」、「ホームラン」 等の標的に当たれば表示に従い、どこにも当たらなかったらボールが止まったところ(内野に止まればアウト、内野を越せばヒット)で判定、内野安打もあります。また イスに座った外野守備の人がイスからお尻を離さず タモ状の用具で打球を掬えばアウト というような判りやすいルールになっています。 アウト以外は体力にあった方法で出塁します。足が弱い方が出塁した時はベース上に置いたイス座ります。
ボールはスロープを転がすことから比較的コントロールが安定しており、お年寄りや子どもでも打ち返すことができます。そして打球の行方次第で意外な結果が待っていますので、車椅子の方がホームランを打つこともあります。ホームランが出ると、参加者全員で拍手をしたり、ベンチのナインとハイタッチを交わして笑顔がはじけ、大変盛り上がります。
ルール詳細はこちらです。
https://realykb.jimdofree.com/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB/
リアル野球盤がつなぐ人の輪
好評を得たリアル野球盤を、2010年に協会を立ち上げて仲間と共に広めていくことにしました。誰でもプレーできるニュースポーツということで、介護予防や、ひきこもりがちの高齢者の、社会参加を促すきっかけとして活用していただけるようになりました。また、プレーする方の年齢も問わないため、子どもと年配の方の混成チームで世代間交流が進む手段ともなりました。
そうしてリアル野球盤は徐々に広まっていきました。例えば、愛知県西尾市が「ガバメントピッチ」という地域課題と、ヘルスケア企業等を結びつけるイベントで、高齢者の居場所に男性の参加が少ないという課題があることを知り、リアル野球盤を提案したところ、採用して頂きました
2013年には、東日本大震災の被災地である福島県郡山市といわき市に、リアル野球盤の用具の寄贈とプレーの仕方を伝えて来ました。この活動の際には、クラウドファンディングで多くの方から支援をいただき、感謝しております。
また、中部電力株式会社の社会貢献活動にリアル野球盤が採用され、企業のCSRにも活用される広がりを見せました。
驚いたことに、コロナ禍前の一時期、プロ野球の埼玉西武ライオンズと、北海道日本ハムファイターズの地域貢献活動にリアル野球盤が採用され、ホームページで紹介してくれたこともあり、日本全国での広がりにつながりました。
リアル野球盤で使用する用具の一部は、障害者の方が働く作業所に発注していました。コロナ禍で現在は状況が変わってしまいましたが、そういった側面からも社会貢献につながればと考えたのです。
用具の納入先は、各地の社会福祉協議会が1/4を占め、プロ野球球団(主に福祉施設等に寄贈)が1/5で続くなど、お年寄り・体の不自由な方から、子どもたちにも児童館でプレーしてもらうなど、興味を持ってもらっています。プレーするだけでなく、例えば清水小島小学校の4年生の皆さんがリアル野球盤の用具を自作し、福祉施設に持参して自分たちの作った道具で喜んでもらう体験をしてくださったこともありました。
島田市の牧の原自治会では、3歳から95歳の方まで、年齢幅にしてなんと92歳の方々が揃った、3世代交流リアル野球盤大会を開催しました。最初は親御さんに付き添われてプレーしていた幼児が、2打席目からはひとりで積極的に挑戦し ホームランを打ったり、これは別の体験会でしたが 杖をついていた参加者の方が、ホームランを打って気分が高揚し、杖を会場に忘れて元気に歩いて帰ったのに気づき「忘れ物がありました!」と追いかけた などという場面に遭遇し、リアル野球盤が皆さんに喜んでもらえて良かったと思います。
2015年から毎年1回リアル野球盤の大会を開始し、コロナ禍だった2020年と2021年を除いて、毎年9月頃に開催しています。本年(2024年)は、第8回目となり、9月29日に金谷体育センターで16チームによる大会を開催を計画しています。ゲストには、元西武ライオンズの石毛さんが来てくださり、楽しいトークで会場を盛り上げてくださいます。沢山の方の御参加をお待ちしています。
広がるリアル野球盤と、今後の夢
リアル野球盤は、私の予想を超えた多くの方の御支持と評価をいただき、様々な賞をいただきました。
・2007年 第5回SOHOしずおかビジネスプランコンテスト 「最優秀賞」
・2011年 第11回 しずおかユニバーサルデザイン大賞 推進活動の部 「優秀賞」
・2015年 島田市新市誕生10周年記念事業に、「リアル野球盤静岡県大会in島田」が採用(以降年1回、「リアル野球盤大会」として継続開催)
・2022年 令和3年度 コミュニティ活動賞「奨励賞」
・2022年 第10回 スポーツ振興賞「経済産業省商務・サービス審議官賞」
・2023年 令和5年度 エイジレス章(様々な分野で活躍する高齢者として、鈴木会長が内閣府から受章)
こうした評価をいただけたことは、望外の喜びであり、とても貴重な体験でした。「せっかくやるなら、できることを楽しくやりたい」と心がけて進んできたところ、いい出会いに恵まれ 進めてくることができました。仲間も増えました。
会社勤めの頃は、限られた人間関係の中で日々を送っていましたが、地域と関わるようになった今では、その時よりもはるかにネットワークが広がり、日々を楽しく過ごしています。私は団塊の世代ですが、同世代の方に、「まだ遅くありません、色々チャレンジできますよ」とメッセージを送りたいと思います。
現在、リアル野球盤は24都道県に導入されていますが、私は全都道府県での導入を目標に頑張りたいと思っています。やがて、日本各地で大会が開かれるようになるとうれしいですね。
島田市金谷地区の、ここが好き!
島田市の金谷地区は、年配の方と若い方の垣根が低く、世代を越えてつながりやすい気質があると感じています。
また、この地には知られていない良い場所があると思います。大先輩の知識を、地域の財産として残す取組も金谷コミュニティ委員会の活動の一環として行っていますが、例えば京都のような見事な竹林の奥に、屈曲した地層がはっきりと観察できる横臥褶曲があるのを知って、驚かされたり・・・。
他にも、アイデアコンテストがきっかけで認定された「日本夜景遺産」の牧の原公園など、いい場所やものを提案したくてうずうずしている人が沢山いると感じています。この地域には、まだまだ眠っている力が存在していると思います。
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