Eジャーナルしずおか第251号(抜粋)令和4年9月発行
国際バカロレア
探究モデル校として開校するフレックスハイスクール「志榛地区新構想高校」(仮称)で、国際バカロレア(IB)教育の導入(令和8年度にIB一期生入学)を目指しています。
IBのプログラムを活用して、多様性や自由を尊重する新しい教育の象徴となる県立高校を実現します。
IBについて
IB機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムで、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者を育成することが目的です。
年齢によってプログラムが異なり、「ディプロマ・プログラム」(DP)が高校生を対象にしています。
IBプログラムを導入するためには、IB機構による世界共通の認定を受ける必要があります。
本県のIB導入形態
プログラムデュアル・ランゲージ・ディプロマ・プログラム(DLDP)
6科目中2科目以上を英語、他は日本語で実施。
本県では「IB英語」と「IB数学」を英語で、他を日本語で実施予定。
履修形態選択科目の履修
(個々のニーズに応じて、フルDPと一部科目履修とを選択可能)
フルDPは、海外大学受験に活用可能など国際的通用性を持つ「DP資格」の取得を目指す。
一部科目履修は、一部IB科目を履修するが、「DP資格」の取得は目指さない。
規模
- フルDP:10人
- 一部科目履修(選択):各IB科目10人程度(「IB英語」は10人×3集団)
Q1:IBって英語教育?
答えはNO!
静岡県で導入を目指すDLDPは、英語よりも日本語授業の方を多く実施する予定です。IBは、課題論文、批判的思考の探究等の特色的なカリキュラムや双方向・協働型授業を特徴とし、グローバル化に対応した素養・能力を育成する教育プログラムなので、どんな生徒にも役立ちます。
Q2:IBは海外の大学等への進学希望者向け?
答えはNO!
DP資格を活用して国内大学進学も可能(2022年3月時点で68大学が対応)。また、IBで培った探究学習の成果が総合型選抜にも役立ちます。
Q3:IBを教えるには特別な資格が必要?
答えはNO!
IB機構が主催するワークショップを受講すれば、一般の教員がIB授業を担当できます。教員にとっても世界レベルの探究学習を学ぶチャンス!
Q4:それでも普通の生徒や教員にIBは必要ないんじゃないの?
答えはNO!
IBは先進的な探究学習を特色としており、どの学校でも標準的に実践され始めている探究学習の良い見本となることから、他県の公立校でも導入が進んでいます。なお静岡県では、一部のIB科目の選択履修も可能にすることで、より多くの生徒が先進的な教育を受けられるようにする予定です。
国際バカロレア教育地域セミナーin中日本地区(静岡県内初開催、参加無料)
日時:9月25日(日曜日)10時から15時まで
会場:静岡県庁
主催:文部科学省IB教育、推進コンソーシアム事務局
共催:静岡県教育委員会
協力:国際バカロレア機構
内容:IBに関する講演、分科会IBミニセッション、トークセッション等
対象:IBに関心のある教育関係者ならびに生徒・保護者等
定員:100名(事前申込制)*分科会は約30名定員予定
志榛地区新構想高校(仮称)について
- 校名:未定(9、10月募集予定)
- 開校年度:令和6年度(2024年度)
- 設置場所:現在の金谷高等学校の校地
- 募集定員:160人/年
- 設置学科:普通科
- 教育目標:多様な生き方を尊重し、興味・関心や進路希望に応じた学習によって生徒の持つ能力や個性を伸長させ、社会や地域に積極的に参画し貢献する自立した人材を育成する。
- 特色
多部制単位制の「フレックスハイスクール」で、大学のように自分のペースで通学時間や時間割を決められる。
生徒の興味・関心、進路希望等に応じて多様な科目を選択できる。
現時点での計画であり、変更になる可能性もあります。
実践NOTE499
教科横断的な視点で『つながる』授業づくり
静岡県立藤枝西高等学校 教諭 増田香里
令和4年4月、新教育課程スタート!
新教育課程が始まるにあたり、今回の学習指導要領の改訂で目指していることは何かを自分なりに整理してみました。私が捉えたキーワードは『自分』『つながる』『未来』です。私はこのことを、先行実施で取り組んできた「総合的な探究の時間」(本校では「総合的な探究の時間」を「究タイム」と呼んでいます。以下「究タイム」と表記します。)でも実感しました。
究タイム(総合的な探究の時間)での学び
究タイムでは、社会や身の回りで起きていることを自分事として捉え、自分で課題を見つけ、協働的に学びを進めながら、課題解決に向かいます。この過程で生徒は、自分と他者、自分と地域や社会など、様々なつながりを実感し、未来を拓く力を身に付けていきます。初めは、担当者の私も分からないことだらけでした。それでも先生方や市役所の方、大学の先生など、たくさんの力を借りて少しずつ前に進んできました。苦しいこともありましたが自分の成長を感じ、ワクワクする瞬間は何にも代えがたく、生徒にもこの気持ちを味わわせてあげたい!と思いました。
各教科等の学びを支える「話すこと・聞くこと」の指導
学習効果を最大に引き出すカギは、教科横断の視点でそれぞれの学びがつながることです。私は「現代の国語」で、まず「話すこと・聞くこと」の力を付けたいと考えました。各教科等で「主体的・対話的で深い学び」を実践している今、この力は生徒の学びの基盤となると考えたからです。自分の考えを話し、相手の考えを聞き、伝え合って有意義な話合い活動をするために、「話合いカード」を作ってみようと考えました。
カードは3種類、青は進行、黄色は質問、桃色は反論や違う意見を述べるための言葉が書かれています。生徒はここだ!というタイミングでカードを出し、ゲーム感覚で楽しみながら、質問や反論、要点の整理等が自然にできる仕掛けです。やってみると、生徒はいつも以上に相手の話をよく聞かなければカードを使えないことに気が付き、カードの言葉を意識しながら自分の考えを具体的に話そうという意識も芽生えたようでした。
『つながる』意識が未来を変える!
授業で身に付けた力がどのような場面で発揮されるのか。学びがどのようにつながって、どんな未来につながるのか。学びと学び、人と人、学校と地域など、たくさんのつながりを意識することで、大きな可能性が生まれます。周囲の先生方とつながって、温かい勇気をもらいながら新しい授業づくりに励んでいきたいと思います。
実践NOTE499は以上です。
実践NOTE500
防災教育の充実と防災体制の整備 視覚障害児の安全な避難
静岡視覚特別支援学校 教諭 落合将之
本校は、視覚に障害のある幼児童生徒が通う学校です。静岡県教育委員会の研究指定を受けて、弱視児や全盲児が、どうしたら自分の身を守り、安全に避難できるか、学校や地域の防災体制をどう整備していけば良いかを学校全体で考えてきました。
1.命を守る防災教育の充実
「自分の命を守る」
中学部の総合的な学習の時間では、「この場所で、地震がおきたら?」という質問に対して、「本で頭を守る」、「セラピーマットが使える」などの返事が返ってきました。身近なもので自分の身を守ることへの意識が高まってきました。
「音がする方向に!」
これまでグラウンドに避難することが当たり前と考えていました。しかし、視覚障害児にとっては、「近くで声がする場所(方向)」、「普段使っている場所」が、迅速かつ安全に移動できると考え、アドバイザーの助言を受けて、一時避難場所を同じフロアの廊下に変更しました。「あそこにいけば!」という目安を立てて避難できるようになりました。
「1秒でも早く!」
緊急地震速報を聞いて1秒でも早く各自の行動に移す「シェイクアウト訓練」を行いました。各クラスでも練習を重ねました。全盲の児童は、いろいろな音の中で、「必要な情報を整理する」、また、一早く「手すりの位置を確認する」など、繰り返しの訓練の中で何をすればいいかを考えることができるようになりました。
2.防災体制の整備
地域の方やアドバイザーから、「人のつながり」について意見をいただきました。どうつながりを持たせ、どう連携していけばよいか検討し、体制を整えました。
3.保護者との連携
家庭で用意した非常食を親子で試食する「参加型体験活動」を実施しました。食べるために必要な道具の不足に気づいたり、友達の非常食を参考にしたりするなど、一人一人が考え、伝え合うことができました。
今後につなげる
幼児童生徒は1秒でも早く行動する力や判断力の向上が見られるとともに、訓練においても落ち着いて避難できる場面が増えました。今後も、学校や家庭、地域が連携し、さらなる安全のための防災教育を進めていきたいです。
実践NOTE500は以上です。
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