人づくりちょっといい話41
ミッション・ステイトがまちをつくる
緒方虎三郎先生という素敵な教育学者がいらっしゃいます。この人が、「子どもを高い所に結び付けろ」と面白いことを言うんです。親鸞(しんらん)なら親鸞、ゲーテならゲーテ、あるいは、そのまちの伝説、何でもいいですよ。程度の高い話、物語に子どもを結び付けるんです。
そのために、ご紹介したい本があります。森信三先生を中心とする教育研究会の方々がお作りになった「偉人伝」という本で、日本の偉人14人と、外国の偉人7人、21人が2つの箱に入っています。やさしい本ですから子どもにそれを読ませて、お父さん、お母さんと一緒に、「ああ、中江藤樹って偉かったんだね」という話をしていく。そういうことが必要なんです。親も子も1日1時間、あるいは2日に1時間、3日に1時間でもいいですから、一緒に高いところに自分たちを結び付けてみる。これを私は提案したいですね。
そうすると何が起こるのか。世界中の人が共通して持っている「ミッション・ステイト」という言葉があります。これはキリスト教にもありますし、イスラム教、仏教にもありますが、あらゆる宗教の基礎になっているものは「ミッション・ステイト」です。「ああ、私の存在というのは人の役に立っているんだろうか?」ということです。
自分自身の振り返りが多い人は、精神上のエリートだといえますね。「自分自身の”ミッション・ステイト”、自分自身の社会的役割を僕は果たしているのだろうか。僕の右隣、左隣の人に対して、何をしていたんだろうか」ということをいつでも考えながら、みんなと一緒に進んでいく。そういった感覚の高い人間、知的なものと情的なものが非常によくバランスの取れた人間が必要なんだと思うんです。
これから総合学習が始まります。これは、裁量権が非常に高く、自由にどうやってもいいのですが、「ミッション・ステイト」、それから知と情のバランス、それを考えたプログラムを打ち出せる地域社会、学校社会と、「自由に生徒を遊ばせればいいんじゃないの?」といってその時間を無為に使ってしまう地域社会、学校社会。これは3年後には差がつきますね。
そうやって差がついたときにどうしたらいいのか。これは次の人づくりのテーマではないかと、つくづく思っているんです。学校間の差がある時代はありました。今度はそうではなくて、地域社会、つまり空間で差がついてしまう。これは一体どのようにしたら解決できるのでしょうか。どうぞ、皆さんもお考えになってください。
「偉人伝」=『ものがたり伝記シリーズ』(寺田一清編、不尽叢書刊行会)
草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(2002年発行)より
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