人づくりちょっといい話2
平常心を持って子どもの変化に対応する
人間には出会いがあります。
躍り上がりたいほどうれしい言葉の一行が見つかったり、今まで聴いたことがないような素敵な音楽のフレーズに出会ったりすると、そのたびに喜びで心が満たされます。そうかと思うと肉親と生別したり、仲の良かった友達と別れたり、あるいは子どもの学校の成績がどんどん下がってきたとき、どうしても重苦しい気持ちになりますね。そうした時に、自分を失わずにその状況に対応できるでしょうか。これはとても難しいことです。本当に老師さまや禅師さまと言われる人にして初めてできることですね。
ただね、座禅を続けていると、「何が起こっても平然としているよ」と、変化に対してまったく心が動かないのは間違いのようです。
やはり、子どもの学力が落ちてきたときには、一緒になって心配してあげながら、「どうしたらいいんだ」と冷静に考えることが大切だと思うんですね。
学力を上げるということもありますが、もう一つは、その子どもの特性をよくとらえ、プラスに変える工夫をすること。ある課目の学力は落ちても他の学力は上がっているとする。そうすると「この子に向いているのは国語のような表現能力ではないか」、あるいは「算数のような計算能力ではないか」「物理のような推理能力ではないか」と、お父さんお母さんがそういうとらえ方をして、その子の特性を誉めながら引き出してやる。
学力の落ちた課目は「どうして落ちたんだろう、恐らく子どものことだから面白くないから落ちたんだろう。では、この子にとって面白い学問にするためにはどうしたらいいだろう」と考えてみる。一方的に叱るのではなく、子どもが楽しみながら学ぶ方法も探ってみるんですね。
「教育」の「エデュケーション」という言葉と「娯楽」の「エンターテイメント」という言葉を足して「エデュテイメント」という言葉ができています。「教育」プラス「娯楽」ですね。『ポケモン』が世界43カ国でベストセラーになったのは「エデュテイメント」、つまり楽しみながら覚えるという道具として最適だったということですね。
お父さんお母さんの立場になって考えてみますと、平常心を持ちながら、相手(子ども)の状況に巻き込まれないで、相手の状況に対応してどういう手を打っていくか、それをプラスに変えるにはどうするか、工夫し知恵を使うことが大切ではないか。そして、それを人生の仕事のひとつだと考えていただきたい。そのことを、老師や禅師ではなく、私たち凡人の「平常心」の話として皆さんにお伝えしたかったんです。
草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より
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