人づくりちょっといい話30

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページID1018550  更新日 2023年1月11日

印刷大きな文字で印刷

挨拶は心の定期預金

中村諭先生という方がいらっしゃいます。この先生は教員生活31年のうちの23年間を、崩壊寸前の学校ばかりに教諭、教頭、学校長として派遣されました。中村先生は、「組織や集団の秩序を回復したいと思ったら、一番最初にすることは挨拶じゃないか。当たり前のことだ。」といって、学校で生徒の顔を見るたびに、「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」「元気?」などと言い続けるんですね。

最初は、生徒の方が変な顔をして、そっぽを向いて足早に去っていきます。そのときに「こら、待て。」おまえは何で挨拶をしないんだ?」と言ってはいけないというんですね。そうではなく、それでもニコニコして「おはようございます」と言い続ける。「挨拶は心の定期預金だ」と言うんですね。「必ず相手の心に積み重なっていく。相手は気持ちの負担を感じて、小さい声で『おはようございます』と応えるようになる。」というんです。

中村先生の赴任された学校は、宝塚市内の中学校で、この20年間の犯罪件数が、毎年市内でナンバーワンという学校だったんです。それが、挨拶を続けていくことですっかり穏やかな学校になって、よその人が校門を入って来ても、「こんにちは」と生徒の方が挨拶をするような学校になったといいます。

中村先生に転任の時期が来て、いよいよ学校を去ることになりました。最後の卒業式で、代表が謝恩の辞を述べるのですが、途中で自分が感極まってしまって、全くのアドリブになってしまうんですね。少し読んでみます。「数え切れないほど言い争いをして、先生には迷惑を掛けてしまいました。でも、それも俺の中ではめっちゃ良い思い出になりました。先生の方も『良い思い出ができた』ということにしておいてください。これからも、俺みたいな問題児が現れるかもしれないけど、挫けずに頑張ってください」と言うんですね。その後、今度は生徒会長が立ち上がって「僕たちの気持ちです。先生、どうぞ受け取ってください。」と言うんです。「何だろう?」と思って立っていると、ピアノの前に生徒が座って『仰げば尊し』を黙って弾き、学生の大合唱が始まった。もちろん、先生も生徒もボロボロ泣いてしまったそうです。(中略)「一波は動かす、四海の波」、ひとつの波が動けば、海の波は動くんですよね。何もしないで、「言葉つきが乱暴だ」「すぐキレる」「危ない」というだけで、子どもたちに対して距離感を持ってしまう。それが一番の大きな問題なんです。なぜ大人が踏み込んでいかないのでしょうか。そうやって、分かってくれる子、つまり、お互いに心を交換できる子を増やしていくことによって、つっぱっていた子が、「つっぱっていてもつまんねえよな。」と、必ず応えてきます。根っからの悪い子なんていないんですよ。私はそこをもう一度考えてみたいという気がします。

草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(2002年発行)より

このページに関するお問い合わせ

スポーツ・文化観光部総合教育局総合教育課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3304
ファクス番号:054-221-2905
sougouEDU@pref.shizuoka.lg.jp