人づくりちょっといい話32
本当の学歴社会が始まった
あと7年経つと2009年ですが、2009年になりますと大学の入学志願者と大学の収容数が全く一致してしまうんです。つまり、志望した人は全員大学へ入学するというわけです。今、高校に行く子が約96%。ほとんど高校へ入学する“高校全入”なのですが、今度は“大学全入”という時代がやってくるわけなんです。これは国として慶賀すべきことであるのか。あるいは大学生の学力低下ということが問題になっている現在、そんなにたくさんの子が大学を出てもしょうがないじゃないか、ということなのか。
それに対応して、大学の方はどんどん統合を進めています。なぜかといいますと、今まで国公立大学は国が財政的にすっかり丸抱えでやっていたわけですし、私学の場合も国から補助金が出ているわけですが、「もうそういうことはやめます。大学を独立法人にしてください」ということで、大学自体が経営をしなければならなくなりました。すなわち、国公立の大学でもつぶれるということがあり得るんですね。そのために、体質強化、基盤強化をする意味で、方々の大学が一緒になって統合を進めているという状態です。
また、もう一つ大学が打っている手があります。今の大学4年ぐらいの学力では、とても時代の変化にはついていけない。つまり、時代がますます高度化していくわけですね。ですから、各大学がほとんどといっていいぐらいに大学院を設ける。大学院を出ないとものにならないという時代にしようとしつつあるんです。
子どもの選択ということもあるわけですが、とにかく2009年をきっかけとして、私たちがこの高度成長経済の中でつくってしまった、進学体系の何番目に自分の子どもを入れるかというような、大量生産主義と裏腹になっている教育体系というものは、意味をなくしつつあるわけです。だから今までのような体系の学校を出ることが世の中に役立つのか。私は、「ここで日本がようやく再生するな」という感じがします。
「学校を出たから学歴がある」という考え方は、もう通用しなくなりますね。つまり、今まで学歴があるということは、学校歴のことだったのですが、実は、学歴というのは学びの歴史であって、その人間が自分で問題を見つけ、どのくらい問題を考え、そのために勉強したかということなんです。自学自習の時間が学歴であって、学校歴ではないんですね。ようやくその本当の意味の学歴というのが、振り返られる時代になってきたというわけです。これからの日本は真面目に勉強のことを考える人にとっては万々歳です。
草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(2002年発行)より
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