人づくりちょっといい話40
ガキ大将全国大会をすすめる
例えば「ベーゴマ」や「メンコ」といった、子どもの言葉がありますね。私たちは「メンコ」といっていたのですが、東北では、打つときに「パチッ」と音がするから「パッチ」というんです。全国的に違うんですね。
ベーゴマ同士をぶつける土俵がありますが、今は、プラスチックできれいにできたものが売られています。ご存知ですか?昔は空きのみかん箱を立てまして、その上に古いゴザを敷いて、そこへ霧を吹いたんです。ベーゴマのお尻が滑らないように。そうやって遊んだんですね。全部子どもが開発したんですよ。すごい知恵だと思いませんか?
『こども風土記』(柳田国男著、角川書店、1960年)の中にはいろいろな楽しい話がありますが、こういうことが全国的に共通してあったんだな、と思ったことがあります。
戦前の農村には、モグラがものすごく多かったらしいですね。昔は肥桶というものがありましたが、その肥桶の腹を棒で擦ると、キーキーキーと音がします。あの音を、モグラが大嫌いだということで、農村ではどこでもその音を立てて、モグラを地面から追い出したといいます。
また、モグラというのは、どういうわけかナマコの匂いが大嫌いなんだそうです。そこで、買ってきたナマコを引っ張って畑中を走り回ると、モグラが「参った」と出てくるんですね。ナマコのことをトウラゴともいいますが、東北ではその代わりにトウラ、すなわちたわしを引いたところもあったそうです。
このような例が全国にたくさんあるといいます。人々はモグラに対して悩んでばかりいないんですね。何かのきっかけで、モグラがナマコを嫌いだととう知恵をつかむんです。このような知恵が、殺虫剤や駆除剤ができることによってどんどん消えていった。今の方が便利で効率的なのでしょうが、文化や伝統は消えていくわけです。
それから、子ども組というものが昔は随分たくさんできていました。面白いことに、日本全国あらゆるところで15歳の子どもが「親玉」や「大将」と呼ばれていたんですよ。
そういう文化を何とかして伝えていく必要があるのではないか。その中でも殊に必要なのは、子どもが自主的につくったグループの中で育っていき、自分たちの言葉や、自分たちの遊びを開発していくということ。いじめなどが起こったときに、どうやったら抑止できるか、いじめに対してどんな制裁を与えるか、そういう組織人間の初歩的な知恵を身に付けるということが大事なんですね。そう、ガキ大将全国大会なんかどうです。
草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(2002年発行)より
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