人づくりちょっといい話42

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページID1018563  更新日 2023年1月11日

印刷大きな文字で印刷

受け継がれていく教え

戦前からよく読まれていて、私も30年くらい前に「この本は読んでおけよ」と先輩から薦められた中国の本をご紹介したいと思います。呂新吾(りょしんご)という人の『呻吟語(しんぎんご)』という本です。とても面白い言葉がたくさん出てくるのですが、「世教」という言葉を取り上げてみたいと思います。

呂新吾という人は、明の時代の学者なのですが、1536年から1618年まで、つまり16世紀から17世紀の初めを生きた人です。長生きをして、83歳で亡くなっています。39歳で国家公務員試験に合格しました。昔の中国の国家公務員試験は、ものすごく難しかったんですよね。「進士」といいますが、その試験に合格したわけです。彼は、「し資せい性ろ魯どん鈍なれども、ちょう澄しん心たい体にん認の人」だったらしい。「本質的には鈍いけれど、非常に集中力があり、体を通じて、経験したことをしっかりと覚える人」という意味です。

彼は、国家公務員試験を通って、行政官として地方へ行きました。県知事のようなものです。そこで3、4年行政官をして、また都に帰ってくるわけですが、彼が地方行政官として治めた土地は、明の時代が終わり清の時代になっても、「お嫁さんを貰うならあそこから貰え」「お婿さん探しをするのなら、あそこでお婿さんを探せ」と言われるぐらい、人心が良くなったというんですね。

彼は、「政治を行う上で一番大切な問題というのは、「世教」というもの、世の中に受け継がれていく教えというものを、政府も、地域社会に住む人も、みんなが力を合わせてつくり、そしてそれが失われないようにしていくことではないか」と言っています。

昔から、禅のお坊さんは「一花は開く、天下の春(一つの花が開けば、天下に春が一斉にやって来る)、一波は動かす、四海の波(一つの波が動けば、海全体の波が動き出す)」ということを言いました。この「一波は動かす、四海の波」の「波」というものを、「祈り」といってもよいし、「思いやり」といってもよいし、「老人介護」といってもよいし、「地域社会の伝統」といってもいい。そういった波を見つけて、「あのまちに行くとみんなが挨拶をするよ」とか、「みんながニコニコしてるよ」など、何か特色をもったまちづくりが、学校の総合時間などを中心としてできていくというのは、素晴らしいことだと思うんですよね。

インドのタゴールというすてきな詩人が、「子どもと接するのに私心がなく、偏らず、彼らを花のように愛することができる。そういう国の国民ですね。日本人というものは、子どもを愛しているんだなと私は思いました」という詩を作っています。いいでしょう?こんな社会をつくってみたいものですね。

草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(2002年発行)より

このページに関するお問い合わせ

スポーツ・文化観光部総合教育局総合教育課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3304
ファクス番号:054-221-2905
sougouEDU@pref.shizuoka.lg.jp