人づくりちょっといい話38

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ページID1018574  更新日 2023年1月11日

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自己モニターの大切さ

1980年代、つまり今から20年前にメガヒットし、100万枚以上売れたレコードが何局あったかというと12曲なんです。さて、20年後の今日、メガヒットは何曲かというと30曲なんですよ。すごいですね。どうしてこんなにみんなCDを聴くようになったんでしょう。こういった精神的な偏りが、今の日本人に強く現れているのではないかというんです。その特徴は、周囲が気になって仕方がない。「周りの人は、自分をどう思っているんだろう?」と。そして周囲のことが気になるから、人となるべく争わないで、人が言うことに同調する。それが昂(こう)じていくと、テレビや本に出てくる話というものを安直に信じてしまうんですね。

精神分析というものを始めたのはフロイトという学者です。この人は偉いですよね。だってフロイトという人がいて初めて精神分析ができたんですから、初めてやった人を私は偉い人だと思うんです。このフロイトの時代は、「罪の人」の文化だったんです。「罪の人」の文化というのは、自分の中の葛藤、罪悪感、つまり神との対話とか、若かったときの自分と今の自分との格差、その部分に悩んだんですね。しかし、現在の人はそうではなくて、「悲劇の人」になったんですよ。「悲劇の人」というのはどういうことかというと、周りの人が自分の思い通りにならない。自分はこんなに努力して、自分はこんなに良い仕事をして、自分はこんなに優しいのに、自分はこんなに温かいのに、どうして認めてくれないんだろう、というような不満を持っている。それで、「自分は良いものを持っているのに誰にも評価されない人間だ」といって、自分自身で落ち込んでいくというんですね。だから、周囲の人に気兼ねして、最後は神様をつくってそれにすがったり、逆に自分自身で絶え間なく落ち込んでいく。両方とも間違いなんですね。

それを解消するためにには、結局、外の人たちと付き合ってみて、そしてその中で自分自身を評価してみる。つまり「自己モニター」という癖をつければいいわけですね。そこから先は自分で考えていく。例えば、本を読んでも新聞を読んでもいいんです。そこで、自分自身が考えたことを、「間違えているかなあ。そんなことを発表したら人に笑われるかなあ。」と思っていないで、ごく近くにいる人、あるいは気軽に話せる人に、「ねえねえ、今朝の新聞にこういうことが出ていて、私はこう思ったんだけど、あなたはどう思う?」と聞いて、「それでいいんじゃないの?」と言われる。それが、自己認知になるわけですね。自分自身を知るという方法。そうやって、自分自身をいろいろなものにモニタリングしていって、「ああ、これでよかったんだ」というふうに、自分自身で記録をつけていくと、偏った自分から逃れることができるということなんです。

草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(2002年発行)より

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