2020 グッドデザインしずおか
審査員長 総評
今回は特に、様々な問題解決としての、バリエーション豊かなデザインが寄せられました。さりげなく富士山の形を擬えた粋瓦:SUIGAシリーズ「粋月」、新しい花火の形に刀鍛冶師の名を与えた「義助」、災害大国日本における最重要課題、防災グッズに取り組んだ「でるキャップ」などは、こんな形があったのか!という新しい形、デザインの提案でした。また、知られざる特産品「伊豆産天草」を再発見させてくれた「河童のプリンとミルクかんてん」は、ほっこりと手に取りたくなる、やさしい味とデザインです。そして何より、コロナ禍において問題解決に取り組んだ「モノ」や「コト」も、今年ならではの特徴です。
書類審査では、なかなかわかりにくかったものも、実物を見て、手に取ると、それぞれに味わいがあり、使ってみたいと思わせる魅力があり、作者自身の熱を取り込んだ「モノ」や「コト」である事を実感しました。インターネットやバーチャルな事象が増えてくる中で、唯一確かな手触りであり、手ごたえです。これが「ものづくり」です。選出されたものもそうでないものも、これからユーザーの手の中でさらに「育まれていく」ことでしょう。
静岡文化芸術大学 デザイン学科長 和田 和美