都市計画制度について
都市計画とは
あなたは、「都市計画」と聞いて何を思い浮かべますか?歴史で習った唐の都・長安やこれを真似て造った奈良の平城京や京都の平安京といった碁盤の目のような整然とした街を造ることでしょうか?また、暫く前に、カザフスタンの新首都を建設するための設計コンペが行われ、日本人建築家の案が採用されたということですが、このような新たな都市を造る「設計」が都市計画でしょうか?
確かに、このように原野を切り開いて新たな街を造っていくことも、都市計画の一つです。しかし、このようなケースは、比較的少なく、通常、私たち県や市町村といった地方公共団体が行っている都市計画は、既に人々が生活をし、また、工場や商店、事務所などの建物が建ち並び社会経済活動が営まれている街を、より住み易く、また、より機能的にしていこうとするものです。
土地利用
市街化区域と市街化調整区域の区域区分による開発行為のコントロールや用途地域などの地域地区による規制や誘導あるいは保全を都市計画では土地利用と呼んでいます。
市街化区域と市街化調整区域(線引き)
現在行われている都市計画の制度は、昭和43年に制定された都市計画法に基づいています。この法律が制定された当時は、高度経済成長期以降、都市部へ人口が集中したため、過密などにより居住環境が悪化したり、道路や公園といった公共施設の整備が伴わないまま都市が無秩序に郊外へ拡大することに対処することを主眼に置かれていました。
そこで、まず一体的な都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定し、この中を市街化区域と市街化調整区域に分けます。そして、この市街化区域の中を重点的、優先的、効率的に整備、開発を行っていくこととしています。
これは、ヨーロッパの都市の旧市街をイメージすると分かり易いかもしれません。自然発生的に形成された集落を主に防衛上の理由からでしょうが、城壁で取り囲み、その内側で、商業や工業などの様々な都市活動が営まれてきました。このため、この城壁の内側では道路は網の目のように行渡り、教会や市庁舎を中心に都市の規模に応じた広場が設けられ、また、区域が限られていることから、5~6階建の建築物が建ち並ぶなど、空間の高度利用が図られています。その一方で、城壁の外側には畑や森林などの豊かな自然環境が広がっています。
開発許可
このように、区域を限定することによって、効率的な市街地の整備を行い、また、土地の有効利用を図る一方で、農地や森林など周辺部の自然環境は守られます。このため、市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域では、一定の条件にあった開発しか行うことが出来ません。
用途地域(色塗り)
都市計画法では、「市街化区域には、少なくとも用途地域を定めるものとする。」とされています。
用途地域の指定については、庭付き1戸建ての家を思い浮かべてください。敷地が都市計画区域で、家が市街化区域、庭が市街化調整区域。家の中には、幾つかの部屋があり、ある部屋は居間、またある部屋は寝室といった具合に、部屋ごとにそれぞれ使い方があると思います。これと同じように、市街化区域の中に部屋を作り、それぞれの部屋ごとの使い方を決めて行くのが用途地域の指定です。
用途地域は、住居系、商業系、工業系の3つに分けられます。住居系では第1種低層住居専用地域や第1種中高層住居専用地域など8種類、商業系は商業地域と近隣商業地域の2種類、工業系は工業専用地域や準工業地域など3種類が有り、合せて13種類に分けられます。
例えば、住居系の第1種低層住居専用地域は、「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。」とされており、住居の環境の悪化をもたらすおそれのある施設の混在を防止し、住居の環境を適切に保護するため、できるだけ住居の専用性を高めることが望ましいという観点から指定されます。
そして、第1種低層住居専用地域では、建物の用途の制限の他、高さの制限、建ぺい率、容積率を定めることとされており、また、必要に応じて敷地面積の最低限度や外壁の後退距離の限度を定めることができます。
第1種低層住居専用地域での用途の制限により、住宅地に騒音や振動、大気汚染などの公害を引起すような工場や、辺りの風紀を乱すような風俗関連施設やパチンコ屋・麻雀店などの遊戯施設が立地することを防ぎます。また、用途と併せて高さの制限が掛けられることから、住宅に用いられる建築物でも日照や眺望の妨げとなるような高層マンションを建てることもできません。このように閑静な住宅地としての環境が守られます。
また、最低敷地の制限を行うことにより一定規模以下への宅地の分割が出来なくなることから宅地の狭小化を防ぐことが出来ますし、道路や隣地からの外壁の後退距離を定めることにより、建物が隣接し、窓を開けるとすぐ隣の家の壁があるといったことも防ぐことが出来ます。このように、良好な住宅地としての環境を整えることも出来ます。
地域地区
第1種低層住居専用地域のような用途地域の他にも都市計画には、様々な地域、地区又は街区を定めることが出来ます。
例えば、バブル期前後から街の中心の商業地域などでは、商業・業務ビルが建ち並ぶ一方で、住宅は無くなり、定住者の減少によって小学校などの存続が難しくなってしまいました。このような地区に中高層階住居専用地区の指定をすることによって、建物の低層階部分は商業・業務に利用し、中高層部分には住宅を確保することが出来ます。この中高層階住居専用地区は、ベースとなっている商業地域という用途地域の制限にその地区の特色に合ったように上乗せして制限を行う制度で、特別用途地区といいます。
また、人の出入りが多く建物が密集している街の中心の繁華街などでは、火災による延焼の危険が高くなります。このような区域では、防火地域の指定をすることによって、建物を鉄筋コンクリートなどによる耐火構造とすることを義務付けることができます。
この他、樹林地や水辺地などの良好な自然景観などは都市の環境を守り、また、都市住民に対して快適性を与えます。このような地区を保全し、利用していくためには風致地区を指定しています。
これらの地域、地区又は街区を総称して地域地区といいます。地域地区には6類型30種類あります。
都市施設
また、都市計画法では「市街化区域については、少なくとも道路、公園及び下水道を定めるもの」とされています。この道路や公園、下水道を都市施設といいます。都市施設にはこの他学校や図書館などの教育文化施設、病院や保育所などの医療施設や社会福祉施設も含まれます。
土地利用では、部屋の使い方を決めましたが、都市施設は、部屋の使い勝手をよくするために必要なものを定めます。例えば、台所であれば流しやガスレンジ、食器棚が必要でしょうし、寝室であれば、ベッドやスタンドといった具合にそれぞれ部屋の利用目的により必要なものがあると思います。また、人によっては居間にステレオは欲しいけれどテレビはいらないということもあるでしょう。このように、都市として必要な施設を将来において必要な規模で定めます。
都市部への急激な人口や産業の集中と自動車交通の発達は、慢性的な渋滞を生み出し、無秩序な郊外の宅地開発が、擦れ違うことも困難な細街路を多く造り出す代りに野原や樹林地などの緑を喪失させ、また、生活排水などの垂れ流しにより、小川やセセラギはドブ川となってしまいました。このような都市化の弊害に対処するために良好な都市環境を整えるために必要なものが都市施設です。
そして、都市として最低限必要な施設が、道路と公園、そして下水道ということです。
道路の整備により渋滞の解消や快適な歩行空間を確保することが出来ますし、公園は子供達の遊び場となったり、スポーツ・レクリエーションの場、あるいは動植物の生息の場ともなります。また、下水道を整備することにより、川には魚が戻り、また、トイレが水洗になることによって、衛生的な生活をすることができます。
道路
一口に道路といっても都市計画で定める道路には、それぞれ色々な役目を持っています。例えば利用者を自動車あるいは歩行者に限定したり、また、その目的が都市と都市を結ぶことであったり、都市の背骨のような役割をする道路であったり、地域内での交通を処理することであったり。
都市計画法上、道路には、自動車専用道路、幹線街路、区画街路又は特殊街路の4種類があります。第2東名自動車道は自動車専用道路ですし、国道1号線をはじめとする国道や主な県道・市町村道は幹線道路として都市計画決定されています。
また、道路の持つ機能からは、主要幹線道路、幹線道路、補助幹線道路、区画道路の4種類に分けられます。主要幹線道路は、都市間交通や通過交通を大量に処理するための高水準の規格の道路です。幹線道路は、都市全体に網状に配置、都市の骨格及び日常生活圏の単位である近隣住区の外郭を形成する比較的高水準の規格の道路になります。補助幹線道路は、幹線道路に囲まれた地区内での主要な交通路となり、幹線道路の交通を地区内に集散させる役割を担います。そして、区画道路は、沿道宅地へのサービスを目的としています。
都市内の道路が、歩行者や自転車、自動車など様々な利用者の様々なニーズに応え、良好な市街地の環境を形成するのに役立つためには、この異なる機能を持つ道路を体系的に組み合せることが必要となります。皆さんの中には、幹線の込んでいるからということで、抜け道として住宅地の中を通って行く人もいるかもしれませんが、海外では、住宅地にそのような車が入り込まないように、住宅街に袋小路を設けている例もあります。
公園
阪神・淡路大震災では、避難地や避難路、延焼の防止など公園の持つ都市防災に果す機能に改めて注目されましたが、この他、日常の子供達の遊び場、若いカップルの語らいの場、ファミリーのレクリエーションの場、老人の憩いの場など様々な利用者に対して多様な役割を果しています。また、海外の例では、ニューヨークのセントラルパークやパリのリュクサンブール公園などのようにその都市のシンボルとなるようなものもあります。
公園は、都市計画法上、街区公園、近隣公園、地区公園、総合公園、運動公園、広域公園、特殊公園の7種類に分けられます。街区公園や近隣公園、地区公園は、主に歩いて行ける程度の範囲に住んでいる人達に利用されることを想定して造られます。
総合公園は、主として一の市町村の区域内に居住する者を対象に、休息や鑑賞、散歩、遊戯等総合的な利用に供することを目的としています。浜松市の馬込川河口にある遠州灘海浜公園や藤枝市に藤の花が奇麗な蓮華寺池公園などがあります。
運動公園は、都市住民全般を対象として主に運動の用に供することを目的としています。県内では、沼津市の愛鷹山麓に愛鷹運動公園、清水市の有度山麓にJ・リーグ清水エスパルスのホーム・スタジアムとしても利用されている日本平運動公園などがあります。
広域公園は、一の市町村の区域を超える広域の利用に供することを目的とする公園で、袋井市と掛川市に跨る小笠山にサッカーの2002年ワールドカップの会場となる小笠山総合運動公園や富士市の富士山麓に静岡県富士山こどもの国などがあります。
特殊公園は、主として風致の享受の用に供することを目的とする風致公園や動物公園、植物公園、歴史公園その他特殊な利用を目的とする公園です。風致公園としては舞阪町の浜名湖沿岸に弁天島公園があり、歴史公園としては静岡市の登呂公園や浜松市の蜆塚公園などがあります。
下水道
下水道には、大きく分けて三つの役割があります。現在、川の汚れの原因の8割は、台所や風呂などから出る家庭雑排水によるといわれています。そこで、この汚水を集めてきれいにすることによって、川や湖、海などが汚染されることから防げます。
また、各家庭に下水道がつながると、汲み取り便所が水洗トイレになるため、生活環境を衛生的なものに改善することができます。
そして、もう一つは、市街地からの雨水の排除です。かつては、都市部でも表面に土の部分がかなりあり、地下に沁み込んでいく割合もかなりあったのですが、最近では、街中がアスファルトやコンクリートで覆われてしまったため、降った雨は、一気に溢れ出してしまいます。そこで、この雨水を街中から川へ速やかに排除することによって浸水を防ぎます。
以前は、合流式といって、汚水と雨水を一つの管に集めて下水処理場へ送っていましたが、一度大雨が降ると下水処理場が満杯となってしまうため、最近では、汚水と雨水を別々の管で集め、汚水は下水処理場に送り雨水は直接川に放流する分流式によって整備が進められています。
また、下水道は、上水道と共に市町村固有の事務とされており、個々の市町村が単独で事業を行うことから単独公共下水道といいますが、幾つかの市町村が共同で下水処理を行った方が効率的な場合があります。このような時は、それぞれの市町村を結ぶ幹線となる管渠と下水処理場を県が整備をする流域下水道があります。静岡市と清水市を対象とした静清流域下水道など4つの流域下水道があり、5つの下水処理場があります。
都市計画法第53条の許可
都市施設は、特に必要があるときは、都市計画区域外においても定めることができます。例えば、第2東名自動車道の予定ルートの一部は都市計画区域外にありますが、これを都市計画区域内だけ都市計画決定しても県土を東西に貫く幹線としての機能が発揮されません。このようなとき、都市計画区域外についても都市施設の都市計画決定を行います。
都市施設が都市計画決定された区域内に建物を建てるときには、県知事の許可を受けなければなりません。これは、都市計画では、20年先を見通した中で10年後に必要なものを定めていくため、都市施設が都市計画決定されたからといって、必ずしも直ちに事業が行われる訳ではありません。そこで、事業が行われるまでの間、その区域の使用を認めるもので、いざ道路や公園として整備されるとき、移転や除却が容易な建物であれば許可されます。これを通常53条の制限あるいは53条の許可といいます。
市街地開発事業
市街化区域には、少なくとも用途地域と道路、公園及び下水道を定めるものとされていますが、さらに、「市街化区域において、一体的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域について」は、市街地開発事業を定めることとされています。市街地開発事業には、土地区画整理事業や市街地再開発事業などがあります。
土地区画整理事業
土地区画整理事業は、未利用地が多く残り都市基盤が整っていない区域を、良好な市街地にするために、道路、公園、河川などの公共施設の整備とともに宅地の区画形状を整える事業です。一般の公共事業のような用地買収方式によらず、事業により、区域内の土地の利用価値が増加する範囲内で、権利者が公共施設用地等を生み出すために必要な土地を公平に供給(減歩)するという仕組みを持った事業です。この事業は、計画的に市街地形成を実現する上で有効かつ最良の方法であるので、「都市計画の母」と呼ばれています。
市街地再開発事業
土地区画整理事業が、一般に郊外の未利用地が多く残された地域で行われるのに対して、市街地再開発事業は、低層で老朽化した建物が密集し、公共施設の不足などにより、生活環境が悪化している市街地において行われます。敷地の共同利用や高度利用を図ると共に建築物の不燃化を行うことにより、道路や駅前広場等のオープンスペースを確保して、快適で安全な街につくりかえる事業です。土地区画整理事業が減歩・換地という平面的手法であるのに対し、市街地再開発事業は、関係権利者の従前の土地、建物等に関する権利を再開発ビルの床等に関する権利に変換する立体的な整備手法です。
土地利用、都市施設、市街地開発事業が都市計画の3本柱と呼ばれています。
地区計画
この3本柱は、都市全体を見渡した中で必要に応じて定めていきますが、地区ごとの住まい方のルールを定めていくものとして地区計画があります。
地区計画では、地区の整備イメージを定めるだけの緩やかなものから、道路や公園などの公共施設の配置や建築物等の敷地、構造、土地利用上の制限等を詳細に定め、建築物については、建築基準法に基づく条例により厳格に担保するものまであり、極めて幅広い運用が可能となっています。
地区計画の使い方には幾つかあります。例えば、道路や公園など基盤整備の整った地区に壁面の後退や敷地面積の最低規模など建て方のルールを定めることによって居住環境を良好に整えることができます。逆に基盤が未整備の地区に予め区画道路や緑地の位置を決めることによって、劣悪なミニ開発やバラ建ち的スプロールを防ぐことができます。また、建物の形態や意匠について制限することによって良好な街並みを保全することもできます。
地区計画は、土地所有者や権利者などの関係者の合意や意見反映を基本として策定されることから、今後の住民参加型のまちづくりの手法として、益々重要になると考えられています。
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