4.リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全

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ページID1011189  更新日 2023年1月26日

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令和4年5月県議会臨時会知事提案説明要旨

【4.リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全】

次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。

国の有識者会議がJR東海に対して行ってきた約1年8か月の助言・指導、議論を総括する「大井川水資源問題に関する中間報告」が取りまとめられたことから、県の地質構造・水資源専門部会を先月26日に開催し、県とJR東海の大井川水資源問題に関する対話を再開いたしました。

今回の専門部会におきましては、有識者会議の大きな論点の一つであった、「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」について、JR東海から、2つの方策が示されました。しかしながら、どちらの方策とも、平成30年10月にJR東海が表明した「トンネル湧水の全量戻し」とは異なるものと受け止めております。

それに加え、JR東海が提示した2つの方策は、多くの関係者の了解を得ることができるのか、渇水期でも成り立つのか、などといった課題が数多く残されております。これらの点について、地元をはじめ県民の皆様の理解と納得が得られるものとなるのか、専門部会において、対話を進めてまいります。

また、本県が整理した「路線計画決定と地質調査の経緯について」により、路線計画決定の過程では、巨摩山地を通過するルートが、地質が脆弱で土被りが大きく、高圧湧水が発生するおそれから回避された一方、南アルプスを通過するルートは、脆弱な地質や高圧湧水発生のおそれについて、考慮されていないことが明らかとなりました。県専門部会においてJR東海が示した地質調査資料におきましても、このルートについて、土被りが大きく、かつ地質が脆い区間では、切羽の崩壊や、大きな地圧によるトンネルの変形、超高圧の大量湧水の発生が指摘されております。路線計画決定の過程において、こうしたことが考慮されていなかったことは大問題であると考えており、JR東海は、決定に至る経緯を丁寧に説明すべきであると考えております。

一方、生態系への影響につきましては、3月24日に、新たに3人の委員を追加して、第9回生物多様性専門部会を開催し、JR東海と、工事に伴う自然環境への影響の回避・低減策等について対話を行いました。

この中で、JR東海から、薬液注入等により、トンネル工事に伴う湧水を低減する方策は示されたものの、自然環境への影響を、適切かつ具体的に回避する方策は示されませんでした。また、委員からは、JR東海の説明は、水生生物にとって、水量減少の影響がどれほど大きいものかの認識が不足している旨の意見やユネスコエコパークへの影響を危惧する旨の意見もありました。

生態系につきましては、地下水位の低下による影響だけでなく、トンネル湧水の排出先の水質変化等による動植物の生息環境への悪影響も懸念され、確実な回避・低減策が示されることが肝要であります。このため、本年1月に、県は、国土交通省に対し、国の有識者会議の開催計画を示すことや、JR東海に対し、生物多様性についての検討を早急に進めるよう指導することを求めていましたが、現在のところ国土交通省からの回答はありません。

引き続き、大井川流域の住民や企業にとっての「命の水」とユネスコエコパークに登録された「南アルプスの自然環境」が、リニア中央新幹線トンネル工事で損なわれることのないよう取り組んでまいります。