1 県政の概要
令和7年6月県議会定例会知事提案説明要旨
【1 県政の概要】
ただいま提出いたしました議案の概要を御説明申し上げますとともに、当面する県政の課題について所信並びに諸般の報告を申し述べます。
はじめに、米国の関税措置への対応についてであります。
米国による自動車等への追加関税措置が発動されてから2か月半が経過しました。現在、日米両政府による交渉が行われているものの、未だ合意には至っておらず、日本経済の先行きが不透明な状況となっております。
これまで2回にわたり開催した、「米国関税対策連絡会議」や県内企業への訪問調査において、価格高騰による売上げの減少や賃上げへの影響など、今後の経済動向に危機感を抱く御意見を数多くいただいております。
こうした状況を踏まえ、当面の対応として、関税の影響を受ける県内事業者への対策をパッケージとしてとりまとめました。
まずは、県制度融資の融資枠の拡大や、融資要件の緩和など、資金繰り支援を強化いたします。また、関税の影響を踏まえ、業態転換や新事業展開等に取り組む事業者への支援や、専門家派遣による相談対応のほか、適切な価格転嫁に向けた働き掛けを強化してまいります。
国の電気・ガス料金の高騰対策の一環として実施するLPガス・特別高圧電力利用者への支援などと合わせ、必要な経費を6月補正予算案に計上し、本議会にお諮りしております。
引き続き、事業者の不安解消を図り、本県経済への影響を最小限にとどめるため、今後の国の対策などを注視しつつ、必要な対策を機動的に講じてまいります。
次に、人口減少社会への対応についてであります。
このほど厚生労働省が発表した人口動態統計において、昨年の本県の合計特殊出生率は1.19と過去最低になり、少子化に歯止めがかからない状況であります。こうしたことから、当面の間、人口減少は着実に進んでいくとの認識の下、人口減少への適応対策を進めていく必要があります。
このため、部局横断的なプロジェクトチームを設置し、65歳以上の人口が最大となる2040年頃を見据え、子育て、教育、医療・介護、インフラなどの各政策分野の将来像と施策の基本的な方向性を示す「2040基本指針(仮称)」を策定することといたしました。
人口減少を前提として、地域の持続可能性や県民の皆様のウェルビーイングの維持・向上に向けて、長期的な視野に立って施策の方向性を検討してまいります。
次に、行財政改革についてであります。
少子高齢化による人口減少、AI等を活用したDXの急速な普及など、様々な時代の変化の中、行政経営のあり方を見直していくため、本県の中長期的な行政経営の方向性を議論していただく「静岡県行政経営戦略会議」を新たに設置いたしました。
委員には、自治体経営や公民連携、企業会計等の専門家、東部・中部・西部の県内各地域を代表する経営者の皆様に御参加いただき、民間の視点から御意見をいただくこととしております。
今月3日に開催した第1回会議では、今後の財政運営をテーマに討議をし、本県の厳しい財政状況について、県や関係機関、県民の皆様と認識を共有し、中期財政計画に沿った着実な見直しを進めるべきとの御意見をいただきました。
今後、資産経営のあり方や行政の生産性向上などを含めて、年内に御提言をいただき、行財政改革を着実に進めてまいります。
次に、地震・津波対策の推進についてであります。
今年3月、国はこれまでの防災対策の進捗状況や最新の知見等を踏まえ、南海トラフ巨大地震に対する新たな被害想定を公表し、これに対する対策については、今後改定する国の防災対策推進基本計画に反映されると伺っております。
これを踏まえ、県においては、これまでの地震・津波対策の進捗状況等を反映した第5次地震被害想定を令和8年度中の公表を目指して策定してまいります。
また、被害想定の見直しと並行し、国の防災対策推進基本計画の改正などを踏まえ、地震・津波対策アクションプログラムを常に見直すことで、市町との連携の下、地震・津波対策を着実に推進してまいります。
次に、産業活力の創出についてであります。
将来、本県産業を支える企業の育成にあたっては、国内外のスタートアップが持つ革新的な技術やアイデアを県内企業と融合させることが重要となります。
このため、過去最大規模となる170社を超える国内外のスタートアップと、県内企業とのビジネスマッチング「TECH BEAT Shizuoka 2025」を来月24日から26日まで、グランシップで開催いたします。当日は、新技術やアイデアの紹介、県内企業との商談のほか、静岡の未来を担う学生や子どもたちが、最先端のテクノロジーに触れる機会も提供してまいります。
次に、次世代エアモビリティについてであります。
次世代エアモビリティの先進導入地域を目指すため、機体開発に必要となる実証フィールドの提供と利活用に向け、県内において、試験飛行場6ヶ所、試験飛行用航路3本を選定するとともに、県・市町、関連企業等を構成員とするコンソーシアムを新たに設置いたしました。
今後は、機体開発に向けた実証実験や、空飛ぶクルマの部品受注を後押しするビジネスマッチングの開催などにより、地域企業の参入支援を図り、次世代エアモビリティ産業を中心とした関連産業の着実な発展につなげてまいります。
次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
5月23日の県の生物多様性専門部会や、6月2日の県の地質構造・水資源専門部会において、JR東海の対策において課題となっていた事項についての確認が行われるとともに、要対策土の処理についても対話に着手いたしました。
これにより、主な対話項目28項目のうち10項目が完了し、水資源編については対話が完了いたしました。残る18項目についても鋭意対話を進めてまいります。
引き続き、リニア中央新幹線の建設と、大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全の両立を図るため、JR東海とスピード感を持ちつつも、丁寧な対話を進めてまいります。
次に、富士山の登山者への対応についてであります。
富士山の価値の保全と登山者の安全確保を目的とした「静岡県富士登山条例」が先月9日に施行されました。今夏の新たな登山規制の実施に向け、入山料の徴収や、現地受入体制の整備、規制内容や事前登録システム「静岡県FUJI NAVI」の周知広報など、登山規制が円滑に導入できるよう準備を進めております。
また、富士山の閉山期における登山など、ルールを守らない登山者の遭難事故を契機とした山岳遭難の救助費用の有料化につきましては、山梨県と歩調を合わせながら検討を進めております。
一方、こうした事案は全国的な問題でもあることから、国において課題整理を行い、費用負担を含めた救助のあり方を検討するよう、知事会等を通じて国へ提案・要望してまいります。
次に、中国との交流についてであります。
今月2日から5日にかけて、知事就任後初めて浙江省を訪問いたしました。王浩書記と面会し、トップ同士の関係を構築したほか、富士山静岡空港の就航促進に向け、上海線を週4往復運航する中国東方航空本社を訪問し、トップセールスを行ってまいりました。
また、浙江省は中国有数のスタートアップ集積地であることから、この分野での交流を促進するため、浙江大学と静岡大学、静岡県立大学とのスタートアップ交流等に関する覚書に調印いたしました。
今後は、2年後の友好提携45周年に向け、両県省の交流を一層進めてまいります。
次に、観光・交流の拡大についてであります。
本年1月から3月までの本県の外国人延べ宿泊客数は、前年同期比で13.5%増加し、順調に推移しております。今後も、さらなる需要拡大に向け、外国人富裕層を対象としたガストロノミーツーリズムの強化やナイトコンテンツの充実、本県滞在の受け皿となる高級ホテルの誘致などに注力し、旺盛なインバウンド需要を確実に取り込めるよう戦略的に取り組んでまいります。
富士山静岡空港の令和6年度の搭乗者数は、前年度に比べて約12万人増の63万3千人となり、過去最高を記録した令和元年度の約86%まで回復いたしました。
利活用拡大の鍵となる国際線は、ソウル線を運航するチェジュ航空が今月1日から便数を倍増して、午前、午後各1往復となったことに加え、来月17日から青島航空による青島線が、週1 往復で就航するなど路線が拡大しております。
今後は、中国、台湾などの運休路線の再開や東南アジアの新規路線の開設に取り組むなど、富士山静岡空港株式会社や市町、関係団体等と連携して、空港の利活用の拡大に努めてまいります。
次に、医師確保に向けた大学との連携についてであります。
医師の確保につきましては、医療関係者と協力して、医学修学研修資金制度を活用した就業や定着を進めるとともに、偏在解消に向けた取組を加速いたします。
地域の医療提供体制を確保するためには、医師の養成や派遣を行う大学との持続的な関係構築が重要となりますことから、まずは3月に、浜松医科大学と地域医療提供体制の確保に向けた連携協定を締結いたしました。
また、東部地域の医療提供体制や医師確保に中心的な役割を担っている順天堂大学とも連携協定を締結すべく、現在調整を進めております。
協定の締結により、大学との連携をこれまで以上に強固なものとすることで、地域医療に貢献する医師の確保と人材育成を進め、地域医療提供体制の確保につなげてまいります。
次に、新県立中央図書館の整備についてであります。
昨年11月の入札不調の後、再入札に向けて準備を進めてまいりましたが、当初の計画から財源の見通しが大きく変わることが明らかとなりました。
こうした状況を踏まえ、一旦立ち止まって整備方針を見直すことにいたしました。東静岡地区にふさわしい施設を目指し、デジタル技術の進展などの社会情勢の変化や、関係の皆様の御意見も踏まえながら、年内を目途に方向性を示せるよう、庁内に部局横断的なプロジェクトチームを立ち上げ検討を進めてまいります。
次に、遠州灘海浜公園篠原地区の整備についてであります。
野球場の規模・構造や県、浜松市、民間の役割分担を検討する、遠州灘海浜公園(篠原地区)利活用推進協議会を、今月12日に開催いたしました。
協議会では、民間事業者から利活用に関する提案を広く求めるための公募方針などが確認されました。この方針について、本議会の常任委員会において御議論をいただき、公募を実施していきたいと考えております。
引き続き、県議会や県民の皆様の御意見を伺いながら、多くの県民の皆様に愛され、県西部のスポーツの拠点としてふさわしい施設となるよう、検討を進めてまいります。