1 県政の概要
令和8年6月県議会定例会知事提案説明要旨
【1 県政の概要】
ただいま提出いたしました議案の概要を御説明申し上げますとともに、当面する県政の課題について所信並びに諸般の報告を申し述べます。
はじめに、静岡県内のリニア中央新幹線整備についてであります。
本年3月末に、長きにわたる県専門部会でのJR東海との28項目の対話が全て完了いたしました。その後、県としては、大井川利水関係協議会、県中央新幹線環境保全連絡会議、県環境影響評価審査会など、関係する会議体において、JR東海が今後実施することとなる環境保全措置等の内容や、その実施状況を監視する新たなモニタリング体制などについて報告し、了承をいただいてまいりました。
その上で、現在、JR東海が大井川流域8市2町及び静岡市において、同社が行う環境保全措置等についての説明会を、県職員も同席の上、22回にわたり、順次開催しているところであります。
さらに、先月15日には、県環境影響評価条例に基づき、JR東海から、環境保全措置等の内容を取りまとめた「事後調査報告書」が提出され、現在、県において確認を進めております。盛土規制法、森林法、河川法など各種法令に基づく手続きについても、制度を担当する県及び静岡市とJR東海との間で、必要な調整が行われております。
今後、JR東海が静岡県内のリニア中央新幹線整備に係る本体工事に着手するためには、自然環境保全協定を県との間で締結する必要がありますが、私は、これまでもJR東海に対し、この自然環境保全協定を締結する前提として、地域住民の皆様に対する環境保全措置等の丁寧な説明と、法令手続きの着実な実施を強く求めてまいりました。また、本体工事着手後においても、将来にわたり、「リニア中央新幹線整備」と「大井川の水資源や南アルプスの自然環境の保全」の両立を遺漏なく実施していくことが重要であり、私としては、同社に真摯な対応を引き続き強く求めてまいります。
いずれにしましても、静岡県内のリニア中央新幹線整備を巡る県の対応は、大きな山場を迎えつつあります。知事である私が状況をしっかりと見極め、結論を出す時期等を検討してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、中東情勢への対応についてであります。
米国とイスラエルによるイラン攻撃により始まった原油等の輸入困難な状況は、先行きが見通せない状況となっております。
こうした現状の中、先月、県が実施した事業者調査によると、燃料や原油由来の資材の供給不足や価格高騰といった影響が一段と広がっており、今後の企業活動や県民生活への更なる影響が懸念されます。
このため、今月12日、第2回「中東情勢緊迫化に伴う庁内連絡会議」を開催し、調査結果や国の対応状況について情報共有いたしました。また、国に対しては、県内の状況を説明するとともに、経済産業省に出向き、燃料や石油製品の安定供給と流通の円滑化について要望を行ったところです。
加えて、国の電気・ガス料金の高騰対策の対象にならない、LPガス・特別高圧電力の利用者を支援するため、必要な経費を6月補正予算案に計上し、本定例会にお諮りしております。
引き続き、県民及び事業者の皆様の不安解消を図り、本県経済への影響を最小限にとどめるため、国際情勢や国の対応などを注視しつつ、必要な対策を機動的に講じてまいります。
次に、ウェルビーイングの推進についてであります。
先月27日、県民の皆様の幸福実感を把握する「幸福度に関する県民意識調査」の結果を公表いたしました。
昨年と比較して、県民の皆様の幸福度は男女ともに向上し、県全体の平均値も「6.74」から0.33ポイント上回る「7.07」になりました。また、24の分野別実感につきましても、全ての分野で満足度が上昇するなど、全体として、県民幸福度は向上いたしました。
今後も、県民の幸福実感を重視した政策立案を進め、ウェルビーイングの更なる向上を図ってまいります。
次に、地域未来戦略についてであります。
県では、財政規律と成長投資を両立させる「両利き予算」の一環として、未来への投資による力強い静岡県経済の実現のため、国の成長戦略に呼応し、地域未来戦略を策定することとしております。
具体的には、政府が掲げる17の戦略分野である海洋、光・電子、航空・宇宙、コンテンツなどの次世代産業関連プロジェクトとともに、農林水産業、観光、スポーツなどの多様なポテンシャルを持つ産業も幅広く対象とすることを想定しております。
特に地場産業に関するプランについては、現実に即した、より実効性の高い戦略となるよう、市町や関係者の皆様などの御意見を丁寧に取り入れてまいります。
なお、本県の計画は、「地域産業成長プラン」として、今夏をめどに第一弾をとりまとめていくことを想定し、作業を進めているところであります。
次に、スタートアップ支援についてであります。
スタートアップが持つ革新的な技術やアイデアを県内企業と融合させるため、ビジネスマッチング「TECH BEAT Shizuoka 2026」を来月23日から25日まで、グランシップで開催いたします。当日は、国内外から集結した約190社のスタートアップによる最先端の技術やサービスの展示のほか、我が国を代表するオピニオンリーダーが登壇するセッションを開催してまいります。
さらに、現在、パリで開催されている欧州最大のスタートアップイベント「Viva Technology 2026」に出展する県内スタートアップ2社を初めて支援するなど、「スタートアップ先進県」を目指した施策を強力に推進してまいります。
また、こうしたスタートアップの活力を、本県産業の基盤である中小企業の底上げや、新事業展開・新分野への進出と融合させることで、地域経済を牽引する中堅企業を創出し、本県の産業基盤のさらなる強化と成長実現につなげてまいります。
次に、次世代エアモビリティについてであります。
県内での「空飛ぶクルマ」の商用運航の実現に向け、本年3月に採択を受けた内閣府の「未来技術社会実装事業」を活用し、国の関係省庁や県、静岡市、浜松市、民間事業者、大学で地域実装協議会を7月に設立するとともに、富士山の景観を活かした観光遊覧や観光拠点間の移動手段などの事業化を目指す共同企業体2社の取組を支援してまいります。
また、今月5日に開催された中部圏知事会議において、航空法に関する関係制度の早期整備や規制緩和などについて提案し、賛同を得ましたので、様々な機会を通じて国への働き掛けを行い、一日も早い商用運航の実現を目指し、取組を加速させてまいります。
次にクルーズ船の誘致についてであります。
本年の県内へのクルーズ船の寄港回数は、清水港を中心に、過去最高となる112回を予定しております。これまで寄港があまり見られなかった伊豆半島についても、「飛鳥3」が今月27日に下田港、8月に松崎港へ初寄港を予定するなど、寄港ニーズが一段と高まっております。
このため、本年3月に、賀茂地域の1市5町と県、関係団体でクルーズ船の誘致や寄港を通じた地域振興等を図ることを目的とした「賀茂地域クルーズ船誘致受入協議会」を設立いたしました。また、同協議会の設立にあわせ、寄港を計画するクルーズ船会社「Rヨット株式会社」との間で、定期的な寄港に向けて、相互協力を確認する連携協定も締結したところです。
世界に誇れる美しい自然や温泉、食に恵まれた賀茂地域のポテンシャルを活かし、地域と一体となって、クルーズ船の誘致活動を強力に推進してまいります。
次に、駿河湾フェリーについてであります。
昨年度の輸送人員は、船体の故障などの影響もあり約4万9千人にとどまり、前年度から3万8千人余りの減少となりました。結果として、大幅な赤字決算が見込まれております。
運航法人は、先月1日には運賃の改定を行うとともに、「ちびまる子ちゃん」とのコラボレーションによる船内装飾、船上での謎解きラリー、イマーシブ体験ツアーなどの誘客策に取り組んでおりますが、現在の収支状況に加え、船体の使用年数の課題もあり、現行のフェリーによる運航体制では、状況の抜本的な改善は難しいと言わざるを得ません。
県としましては、今後の収支見通し、経済効果、県や関係自治体の関わりのあり方など、経営判断の前提となる項目について、まずは整理を行い、運航方法のあり方、継続の是非などの検討につなげてまいります。
次に、旧ヴァンジ彫刻庭園美術館についてであります。
旧ヴァンジ美術館につきましては、昨年11月よりコンセッション方式による公共施設等運営権の事業者選定を進めてきたところ、第一次審査を通過した事業者が駐車場不足や施設老朽化などを理由に辞退する状況となりました。
県としましては、現状を踏まえ、コンセッション方式による事業者選定は困難と判断し、再募集は見送ることといたします。
旧ヴァンジ美術館の活用方法の決定に時間を要している状況については、重く受け止めております。現在、新たな活用方針について内部検討を進めているところであり、供用開始時期の見込みも含め、早急にお示ししてまいります。
次に、風水害対策についてであります。
今月2日から3日の台風6号に伴う大雨により、被災された皆様に対しまして衷心よりお見舞いを申し上げます。
県では、2日の台風接近前に「災害警戒本部」を立ち上げ、全庁的な情報共有体制のもと、大規模な災害の発生に備えました。また、先月29日から始まった、新しい防災気象情報を初めて運用するケースとなったため、今回の運用を市町と検証し、国や市町と連携して、更なる周知に努めるとともに、自分自身がいつ、どこに避 難するかを確認できる「わたしの避難計画」の作成を促進し、避難の実効性を高めるよう取り組んでまいります。
さらに、風水害から県民の皆様の生命、財産を守るため、先月31日に国や県、市町をはじめ、地域の水防団や消防団など約650名の参加のもと、天竜川の洪水被害を想定した「総合水防演習」を実施いたしました。また、来月15日に自衛隊や警察、市町等と連携して「風水害合同対処訓練」を行い初動対応を再確認するなど、平時から万全の備えを進めてまいります。
次に、富士山の登山者への対応についてであります。
今年の富士山の開山は、山梨県側の吉田ルートと合流する須走ルートの開山日を7月1日に、その他のルートは7月10日とし、それぞれ同日から登山規制を開始いたします。
また、円滑な規制の実施に向け、入山手続アプリ「静岡県FUJINAVI」の更なる周知広報に取り組み、昨年の8割をさらに超えるよう取り組んでまいります。
なお、課題となっている閉山期間中の無謀な登山対策につきましては、山梨県とともに検討を進めてまいります。
次に、公立高校の教育改革についてであります。
先月15日、文部科学省の「高等学校教育改革促進事業」に、浜松工業高校、焼津水産高校、沼津東高校、静岡中央高校の4校が採択されました。
今後、この4校を中心に協力校を含め、大学や産業界と連携を進め、スタートアップ人材や地域産業の即戦力人材の育成を行うとともに、遠隔授業の実施体制を強化し、学びの選択肢の保障を充実するなど、公立高校の一層の魅力向上に向けた改革に取り組んでまいります。これらの取組に必要な経費につきましては、6月補正予算案に計上し、本定例会にお諮りしております。
あわせて、2040年を見据えて公立高校改革を推進するため、大学や産業界からも幅広く御意見を伺いながら、本県の具体的な高校教育改革の指針となる実行計画を今年度中に策定してまいります。
次に、新県立中央図書館の整備についてであります。
新県立中央図書館の整備につきましては、昨年12月に取りまとめた「見直しの方向性」に沿って、現在、基本構想の改定を進めているところです。改定に向け、図書館関係者や学識経験者で構成する有識者会議を設置し、先月21日に第1回の会合を開催いたしました。
会合では、図書館の基本コンセプトとして、「全県へのサービス充実が最優先である」ことや、「今の県立図書館の良さを引き継ぐことが重要である」などの御意見をいただきました。今後、有識者会議を重ね、市町との連携や蔵書方針等について議論を深め、県として9月を目途に基本構想の改定案を取りまとめてまいります。
次に、子育て世帯への食料支援についてであります。
近年の食料品価格の高騰は、子育て世帯の生活に大きな影響を与えています。県が令和6年度に実施した調査では、「必要な食料品を購入できなかったことがある」と回答した子育て世帯は6.6%に上り、支援を求める声が増えています。
このため、先月12日より、企業版ふるさと納税の制度を活用し、県外企業から寄附された食料品を生活に困窮する子育て世帯に配布する取組を開始いたしました。あわせて、配布の際に各種支援制度の情報提供や相談窓口への橋渡しを行うなど、包括的な支援につながるよう取り組んでまいります。
次に、不登校のこどもへの支援についてであります。
県内の小中学校における令和6年度の不登校児童生徒数は11,904人で、12年連続で最多を更新し、その要因は複雑化しております。
今年度、知事部局と教育委員会、市町等が連携し、不登校のこどもや保護者を伴走支援する人材の育成や、実効性ある支援体制の整備などの実証事業を焼津市において実施いたします。この事業では、福祉の専門家等が参画して、不登校児童生徒の自立のためのアウトリーチ型支援を行うなど、地域と連携した体制づくりに取り組んでまいります。
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