令和7年9月定例会意見書(令和7年10月9日可決)
医療機関等における経営環境の改善を求める意見書
本文
国が定める公定価格により経営する医療機関や介護事業所においては、物価高騰や賃金上昇の影響を価格に転嫁することができず、経営に大きな打撃を受けている。例えば病院においては、令和6年度診療報酬改定前後で比較すると、医業利益が赤字の病院の割合は64.8%から69.0%に増加し、各種補助金を含めた経常利益が赤字の病院の割合は50.8%から61.2%に増加するなど、依然として厳しい経営状況に追い込まれており、今年に入り閉院が相次いでいる。
加えて、高齢化の更なる進行により、今後も高齢の患者や利用者の増加が見込まれることから、地域医療・介護提供体制の維持は危機的状況となっている。
このような状況を改善するためには、まずは社会保障財源を安定的に確保した上で、経営環境の改善を図る必要がある。
こうした中、令和7年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」では、賃金上昇や物価高騰への対応が盛り込まれたが、医療機関等の著しく逼迫した経営状況を踏まえると、補助金等による早期の適切かつ機動的な対応が必要であり、また、令和8年度予算編成に向けては基本方針に沿った着実な対応が不可欠である。
よって国においては、早期に、医療機関等における経営環境の改善を図るため、下記の事項に取り組むよう強く要望する
記
- 近年、大きく増加している消費税に加え、所得税、法人税などの増収分を、新たに安定的な財源として医療・介護分野に活用する仕組みを構築すること。
- 物価高騰や賃金上昇、更には技術革新に適切に対応し得るよう、本年度補正予算での措置を講ずるとともに、令和8年度予算において、高齢化の伸び分に加え、経済・物価動向等を的確に反映した社会保障予算を確実に確保すること。
- 医療機関等の経営基盤の安定を図り、医療・介護業界においても他産業並みの賃上げが可能となるよう、診療報酬及び介護報酬については期中改定も視野に入れ、賃金・物価の上昇分を確実に反映させること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月9日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 厚生労働大臣
米の安定供給と食料安全保障の強化を求める意見書
本文
令和6年から7年にかけて発生した、いわゆる「令和の米騒動」は、日本の米需給の急激な逼迫、価格高騰、飼料用・加工用米への転換政策のひずみ、更には政府備蓄米の限界など、我が国の食料安全保障の脆弱性を浮き彫りにした。
長年にわたる減反政策や水田の転換が、いざというときの米の生産回復力を著しく損ない、加えて農業者の高齢化と離農の進行が国内生産力の減退に拍車をかけている。
令和5年度における日本の食料自給率はカロリーベースで約38%にとどまり、主要穀物の多くを輸入に依存している。こうした状況下において地政学的リスクの高まり、異常気象による世界的な農業不安定化、更には輸送網の混乱等が懸念されており、我が国における安定的な食料供給体制の再構築は喫緊の課題となっている。
よって国においては、米の安定供給と食料安全保障の強化を図るため、下記の事項に取り組むよう強く要望する。
記
- 政府主導により主食用米の計画的生産・備蓄・需給調整を行う制度設計を進めること。その際、地域や経営規模の多様性に応じた柔軟な仕組みとし、過度な生産制限や負担増を避けること。
- 水田の主食用米生産への支援を強化するとともに、耕作放棄地の再活用を推進すること。あわせて販売先確保や流通網の整備など、小規模農家の販路支援と大規模農家の市場競争力向上を両立させる施策を講じること。
- 生産コスト高騰に対応した直接支払い制度や若手農業者への支援を拡充し、農業を持続可能な産業として再構築すること。特に規模拡大を阻害しない制度設計とし、後継者育成に資する支援を行うこと。
- 政府備蓄米を戦略的に拡充し、有事・需給逼迫時における的確な放出・配分ルールを明確化すること。その際、民間在庫や流通在庫も含めた総合的な供給体制を整備し、地域間の偏在や混乱を防ぐこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月9日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 農林水産大臣
自動車関係諸税の抜本的見直しを求める意見書
本文
令和7年度与党税制改正大綱では、自動車関係諸税の見直しに当たっての基本的考え方として、「日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望等を踏まえるとともに、『2050年カーボンニュートラル』目標の実現に積極的に貢献できるものでなければならない。」、「公平・中立・簡素な課税のあり方について、中長期的な視点から車体課税・燃料課税を含め総合的に検討し、見直しを行う。」とされている。
今年度に入り、燃料課税については与野党間で議論が進んでいるが、車体課税及び利用に応じた負担の適正化に向けた課税の枠組みについては「令和8年度税制改正において結論を得る」とされていることから、今後議論が進む見込みとなっている。
自動車は地方において住民の日常の移動手段として欠かせないことから、自動車の保有に係る税負担の増加は受け入れられるものではない。とりわけ過疎地域などにおいては高齢者等の移動手段の確保は極めて重要な課題となっており、仮に日常の移動距離が長く、利用に応じて負担増となる走行距離課税のような制度を導入した場合には、政府が進める地方創生にも逆行し、地方と都市部との不公平感の増大につながる。
また、現在日本の自動車産業は米国による追加関税措置や中国等によるEV戦略の影響により厳しい経営環境に置かれており、国内の雇用と日本経済全体への影響が懸念される状況となっている。
よって国においては、令和8年度税制改正において、自動車が生活必需品である地方の自動車ユーザーの負担を軽減するとともに、地方で多くの雇用を生んでいる自動車関連産業が雇用を維持し、国際競争力を高めることができる内容となるよう、自動車関係諸税の抜本的見直しを行うことを強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月9日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 経済産業大臣
スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置拡充を求める意見書
本文
文部科学省の調査によると、全国における令和5年度の小中学校の不登校児童生徒数は、過去最多の約35万人となり、11年連続の増加となった。本県においても11,742人と過去最多となっている。また、不登校児童生徒は年間30日以上の欠席者が該当するが、不登校傾向にある児童生徒も増加している現状がある。
こうした中、国は複雑かつ多様な問題を抱える児童生徒やその保護者を支援するための方策の一つとして、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる教育相談体制の充実を図ってきた。
しかしながら、約35万人の不登校児童生徒のうち、学校内外の専門機関等で相談・指導を受けていない児童生徒が約13万4千人となっていることから、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの更なる配置による教育相談支援の充実が必要であり、また、校内教育支援センターはもとより校外教育支援センターの児童生徒、保護者の教育相談にも確実に対応できるよう配置が必要である。
よって国においては、児童生徒のケアをはじめ、保護者、教職員等への相談支援体制の充実に向け、児童生徒や保護者が望む教育相談に対応するため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充に必要な財源を十分に確保するよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月9日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 文部科学大臣
事前復興まちづくり計画の策定支援を求める意見書
本文
近年、首都直下地震、南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等の大規模地震やそれに伴う津波被害、激甚化・頻発化する豪雨災害などの大規模災害への備えがますます重要になっており、本県においても甚大な被害が想定される。
大規模災害が発生すると、市街地等が壊滅的な被害を受けた被災市町村は住宅等の再建やインフラの復旧、事業再建等に向け復興まちづくり事業に取り組む必要があり、早期の復興まちづくり計画の策定、事業着手、事業完了が求められる。このため、事前に人口減少や少子高齢化など今後の社会情勢を考慮し、復興後に想定される居住人口や産業規模等に見合った復興まちづくりの目標や実施方針を検討しておくことは、被災後における復興まちづくりの方針・計画の早期策定が可能となり、より良い復興を実現するために重要な取組である。
令和5年7月、国土交通省は地方公共団体向けに事前復興まちづくり計画の策定に焦点を当てた「事前復興まちづくり計画検討のためのガイドライン」を策定した。地方公共団体の復興事前準備の取組状況は、令和6年7月末時点で着手率が約67%となり、取組は一定程度定着してきていると考えられるものの、その多くが復興体制や復興手順の検討にとどまっているのが現状である。
被災後に迅速な復興まちづくりを行うためには、平時から災害発生時を想定し、事前に体制と手順の検討、建物や土地利用状況など復興に必要なデータの整理、復興まちづくりの目標の検討などを行い、地域住民との合意の下、事前復興まちづくり計画を策定しておく必要がある。
よって国においては、事前復興まちづくり計画策定を行う地方公共団体に対し、防災・安全交付金の交付や、技術的助言などの支援を強化するよう強く要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月9日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 国土交通大臣
厚生年金への地方議会議員の加入を求める意見書
本文
少子高齢化や人口減少など社会を取り巻く環境が厳しさを増し、住民のニーズや地域の課題が多様化・複雑化する中、地方議会の果たすべき役割と責任は、ますます重要となっている。また、地方議会においては、投票率の低下や無投票当選の増加、議員の性別や年齢構成の偏り、議員の成り手不足などの課題を抱えている。こうした中、多様な人材の地方議会への参画を促進するため、令和5年5月に改正地方自治法が施行され、地方議会の役割や議員の職務等が法律上明確化されたところである。
しかしながら、地方議会議員の身分と生活保障に関する法制度は未整備で、現在、地方議会議員という資格では、厚生年金に加入することができないため、議員退職後の経済的不安が大きく、これが議員の成り手不足の一因となっている。地方議会議員が厚生年金に加入できるようになれば、会社員等が議員に転身しても切れ目なく社会保障制度を継続することができ、家族の将来や老後の生活を心配することなく議員に立候補し、議員活動を続けることができる環境が整備される。一方、地方自治体の財政状況が厳しさを増している中、新たな公費負担を伴うものであり、厚生年金の財政基盤を強化する必要があることから、国民の理解を得る必要がある。
この問題は、我が国の地方自治を守るという視点からも地方議会が一丸となって取り組むべきものである。
よって国においては、住民自治の根幹を成す地方議会として、多くの住民の声を集約し多様な人材が参画するための環境整備を図るため、国民の理解を得た上で、厚生年金への地方議会議員の加入のための法整備を早急に実現するよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月9日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 厚生労働大臣
- 内閣官房長官
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