新春知事インタビュー/県民だより2023年1月号

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ページID1047804  更新日 2023年1月26日

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イラスト:新春知事インタビュー 富国有徳の「美しい”ふじのくに”」づくり すべての人が主役になる静岡時代への門出 ロゴ

令和5年の幕開けに当たり、今年の県政のビジョンや抱負などについて、フリーアナウンサーの小沼みのりさんが聞きました。

写真:日本平夢テラス 知事と小沼さん
撮影地:日本平夢テラス(静岡市清水区)

コロナ禍でポスト東京時代が本格化

小沼 明けましておめでとうございます。とても素敵なネクタイをしていらっしゃいますね。

知事 気付いてくださってありがとうございます。元旦にふさわしい「門出」のネクタイです。大井川鐵道「門出駅」直結の「KADODEOOIGAWA」(島田市)のオリジナル商品で、緑は「出発、進め」の色でもあります。

小沼 お正月にふさわしい素敵な色です。本日はよろしくお願いいたします。さて、新型コロナウイルス感染症の国内最初の感染者が確認されてから約3年。暮らし方や働き方、人の流れが大きく変わる中、昨年を振り返ってどのように感じられますか。

知事 昨年もコロナ対策に追われました。春の第6波、夏の第7波と続き、秋からは第8波となりました。第7波では、爆発的に感染が拡大したため、「静岡県医療ひっ迫警報」などを発令しました。皆さまのご協力、特に医療従事者のご努力で危機を脱しました。感謝しています。これからも県民の皆さまのご協力のもとウィズコロナの時代に備えます。また、秋の台風15号は主に中・西部に大きな被害をもたらしました。特に清水区は長期間の断水となり、不自由をおかけしました。被害にあわれた皆さまにお見舞い申し上げます。

小沼 そのような状況のもと「東京時代から静岡時代」を掲げた新しい総合計画がスタートしました。

知事 コロナ禍で東京離れが始まりました。本県は移住希望地ランキングで2年連続1位、実際に移住した人は2020年が1398人で過去最高となり、さらに2021年には1868人と過去最高を更新しました。30代前後の子育て世代が移住者の8割以上を占めており、ポスト東京時代への兆しであり、静岡時代の門出の年と捉えています。この機会を生かす計画を「静岡県の新ビジョン 後期アクションプラン」に盛り込んでいます。

写真:静岡県知事
静岡県知事 川勝 平太

東アジア文化都市・文化の顔としての静岡

小沼 2023年は、日本の文化芸術を世界に発信する「東アジア文化都市」の開催都市に本県が選出されました。また、富士山世界遺産の登録から10周年という、本県にとって意味のある一年でもあります。文化、芸術、観光に注目が集まる一年をどのように取り組んでいかれますか。

知事 「東アジア文化都市」は日・中・韓それぞれの文化担当の大臣が、各国から原則一つの自治体を、その国の文化の代表として選びます。東アジア三国の文化行政の中核事業です。2014年に始まり、10年目の節目に本県が選ばれました。今年、静岡が日本の「文化首都」となったことは、富士山の世界遺産登録10周年に花を添えるものです。2013年6月の富士山の登録から現在までで、本県の「世界クラスの資源・人材群」の数は133件となりました。114カ月間で133件ですから、1カ月に1件以上のハイスピードで増えています。世界クラスの実力を発揮してほしいと日本政府が「日本の顔」として本県を選定したのです。富士山の文化的景観・お茶・食・ファッション・温泉・武道・スポーツ・花・ガーデンなど、あらゆる分野で地域の魅力を県内外に発信します。「多彩な文化が花開く“オープンガーデンシアター"ふじのくに」がうたい文句です。

小沼 1月から一年間切れ目なくイベントが開催されるのですね。楽しみにしております。

写真:フリーアナウンサー 小沼さん
フリーアナウンサー 小沼みのり

循環型社会実現へ、モデル県としての役割

小沼 静岡県はSDGsのフロントランナーとして『「SDGs」のモデル県』を掲げています。誰一人取り残さない社会の実現に向け、自然環境を守りながら経済を再生・活性化し、持続的に発展させる取り組みについてお聞かせください。

知事 本県が進める「富国有徳の美しい“ふじのくに"づくり」の政策は、国連で採択された国際目標のSDGsと重なっています。それを踏まえて、「静岡県をSDGsのモデル県に」を掲げています。地球上には、水が不足し、飢餓が常態で、教育も受けられず、仕事もなく、環境汚染、内乱、戦争などで苦しんでいる国は少なくありません。安全・安心して生活できる日本はSDGsの模範となるべき国です。全国の中で、抜群の「世界クラスの資源・人材群」を持つ本県は、日本代表というにふさわしく、SDGsのモデル地域になりえます。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念の実現は、本県が進める「富国有徳の美しい“ふじのくに"づくり」の人づくり・多文化共生・共生社会と一体のものです。

小沼 脱炭素社会の実現については、本県はかなり高めの目標を設定しています。こちらについてはいかがでしょうか。

知事 目標は2050年のカーボンニュートラルの実現です。地球温暖化の主な原因は石炭・石油などをエネルギー源に使う人間活動から出るCO₂です。鉱物資源への依存を減らすために、例えば、木材を材料とするCNF(セルロースナノファイバー)は鉄より軽くて強く、また、水素は燃やすと水になるので、エネルギー源にできれば循環型社会の実現に役立ちます。先端技術の開発、駿河湾の海洋資源・新素材・新原料の発掘、企業活動の新しい脱炭素の仕組みづくりなど、幅広く支援し、多様な再生可能エネルギーを開発し、脱炭素社会を目指します。

静岡時代の未来を担う「有徳の人づくり」へ

小沼 今後の静岡時代には、未来を担う「有徳の人づくり」が不可欠です。この春からは「県立ふじのくに中学校」が開校するなど、独自の取り組みが動き出します。ふじのくにの人材育成についてお聞かせください。

知事 今年春に開校予定の「県立ふじのくに中学校」は県内初の夜間中学です。義務教育を修了できなかった人、不登校のまま中学校を卒業した人などが、年齢・性別・国籍を問わず、「今、学びたい」と思うときに通えます。学ぶ喜びを実感できる学校づくりを進めます。学才だけでなく、農林水産、ものづくり、最近ではICT技術、そのほかスポーツ・芸術・芸能など、技芸を身につける実学を重視し、県全体として文武芸三道の鼎立(ていりつ)を目指し「才徳兼備」の人材を育成します。

小沼 「静岡社会健康医学大学院大学」博士後期課程の設置も進んでいますね。

知事 二年前に、全国初の社会健康医学の単科の大学院大学が開学しました。病気の治療とは別に、予防と健康寿命の延伸に貢献するプロフェッショナルを育成します。入学希望者が定員を大きく上回り、文科省は博士後期課程の設置を認めました(4月開学)。社会健康医学は病気予防・健康寿命延伸の実践的な医学です。公衆衛生学にゲノム医学・医療ビッグデータ解析などの新領域を加え、県民の病気予防・健康寿命延伸を目指します。本大学院大学を作る際、御指導いただいた本庶佑先生の進言のもと、日本初の総合的医科系の大学院大学へと拡充していきます。

豊かな暮らしの実現に向けたデジタルガーデンシティ

小沼 社会全体のデジタル化が急速に進み、産業構造も大きく変化しています。豊かな暮らしの実現に向けた取り組みについて教えてください。

知事 暮らしに不可欠なのは食です。日本一の食材数を持つ利点を生かした「バイ・シズオカ」を「バイ・ふじのくに」で山梨県へ、さらに「バイ・山の洲」で山梨・長野・新潟県へと広げ、域内の食と観光を楽しむ「ガストロノミーツーリズム」で農林水産業や観光業を励まします。従来の第一次産業に新しい科学技術を投入する、農業のAOI(アオイ)(※➀)、水産のMaOI(マオイ)(※➁)、お茶のChaOI(チャオイ)(※➂)、伊豆の温泉・食・健康のICOIプロジェクトなど、ダイナミックなオープンイノベーションを促進します。山の洲は絶景空間です。ガストロノミーツーリズムで、域内の絶景を観光して料理を味わい、域内の特産物・サービスを積極的に買って、地域の人々を励ます行為は利他で、域内の物・サービスを満喫して自分も幸福になるので自利です。「利他と自利」で幸せをつくるフジノミクスが奏功して、人流・物流が促進され、「生産・消費」の新結合を生みだし、物心ともに豊かな広域経済圏を作りあげます。

小沼 デジタルガーデンシティの形成も進んでいますね。

知事 ガーデンシティの原点は幕末日本の城下町の景観です。開港後に来日したヨーロッパ人が江戸城下をガーデンシティと形容しました。町民は花見や植木を楽しんでおり、大名は大名庭園を持っていました。城下全体が清潔で、水と緑が豊かで、ばい煙で薄汚れた大都市ロンドンと比べると、まるでガーデンのようだと思ったのです。その後、イギリスでは人工的にガーデンシティをつくりました。それを日本人が「田園都市」と訳しました。現代日本の東京はすっかりビルの森に変貌しました。しかし、コロナ禍でテレワークが普及し、地方でも仕事ができるので、働き方・暮らし方が変化し、仕事を変えないまま本県に移住する人や、拠点を本県に移す企業が増えてきました。本県の交通インフラは整っており、光ファイバーも整備されています。コロナ禍によってデジタル化が一気に進み、ガーデンシティは本県のたたずまいそのものですから、デジタルガーデンシティの理想郷になりえます。地域資源を保全・活用し、次世代に継承する活動を行う「ふじのくに美しく品格のある邑づくり」として登録された邑は、県内に現在150もあります。大自然を借景とし、自然の恵みを享受し、富士山から感動を得られる本県は、いわば大きな公園です。デジタル化がさらに整うと便利さが増し、本県はいわば風景の画廊でありガーテンシアターです。

県民の安全・安心を守る危機管理への取り組み

小沼 南海トラフ巨大地震や集中豪雨など自然災害が懸念されています。県民の安全・安心を守るための危機管理について、県の取り組みを教えてください。

知事 一昨年の熱海土石流災害を受けて日本一厳しい盛土条例を作りました。併せて県内をくまなくチェックしました。南海トラフ巨大地震の備えとしては、過去10年間に想定犠牲者の8割減少を目標に地震・津波対策アクションプログラムを進めてきました。次の10年で犠牲者の最小化を図り、避難所の環境改善に取り組み、被災しても県民の命と財産を守れるよう、安全・安心に生活できる地域社会の実現を目指します。集中豪雨対策は「流域治水」の考えで強靭化を図ります。河川のしゅんせつや堤防の整備などとともに、雨水貯留機能の拡大を図り、流域の人々との協働によりソフト・ハード両面で安全対策に取り組みます。リニア工事については、昨年6月に、本県が主張している「水資源・自然環境の保全」が閣議決定され、与党公約・期成同盟会決議に盛り込まれました。静岡県内も含む「山梨工区」には、JR東海の調査によって巨大かつ膨大な水を含んでいる破砕帯があることがわかっています。「山梨工区」の高速長尺先進ボーリングは、本県内の破砕帯の水を抜く工事の一環となりますので、要注意です。水流出のリスクを払拭するようにJR東海と真摯に対話を続けます。

小沼 ありがとうございます。県民の皆さまへのメッセージをお願いします。

知事 今年の本県は、政府公認の「文化の顔」として、独自の「オープンガーデンシアター」で文化力を発揮します。「日本の文化首都」の静岡県の門出であり、「文化の顔」は風土と県民です。一人一人がかけがえのない人生の主役です。誰もが幸福に生きられるよう、いざ、ともに、素晴らしい日本の理想郷「ふじのくに」を創っていきましょう。

写真:知事と小沼さん

  • ※(1)AOI(アオイ):先端技術の活用による農業の飛躍的な生産性向上と関連産業のビジネス展開を推進するプロジェクト。アグリ(A)オープン(O)イノベーション(I)の頭文字をとってAOIプロジェクト。
  • ※(2)MaOI(マオイ):海洋産業の振興と海洋環境の保全を両立する「Blue Economy(持続可能な海洋経済)」の世界的な拠点形成を目指すプロジェクト。マリン(Ma)オープン(O)イノベーション(I)の頭文字をとってMaOIプロジェクト。
  • ※(3)ChaOI(チャオイ):観光業者や食品事業などのさまざまな業種の協働による静岡茶の新たな価値の創造と需要の創出を支援するプロジェクト。茶(Cha)オープン(O)イノベーション(I)の頭文字をとってChaOIプロジェクト。

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