スルガベイ・シミュレータを活用した研究支援について
駿河湾における生態系の保全及び持続的な利活用に関する研究を促進するため、県では、「森は海の恋人」水の循環研究会(R元~R3)で構築した、陸域から流入する栄養塩物質等と駿河湾における植物プランクトン生産量の関係性を推定する「(愛称)スルガベイ・シミュレータ」(以下、「シミュレータ」という。)を活用を希望する研究を募集します。
令和5年度スルガベイ・シミュレータを活用した研究の募集
スルガベイ・シミュレータとは
陸域から海域まで駿河湾流域全体を包括して水循環を再現し、植物プランクトン生産を定量的に推定することができるシミュレーションモデルです。
このシミュレータは、「陸域モデル」と「海域モデル」の2つのモデルにより構成されており、「陸域モデル」で河川や地下水量や栄養塩物質の含有量を計算し、その結果を「海域モデル」に受け渡し、植物プランクトン生産量などを推定します。
なお、「陸域モデル」は、株式会社地圏環境テクノロジーが開発したソフトウェア「GETFLOWS」、「海域モデル」は、国立研究開発法人港湾空港技術研究所が開発したソフトウェア「伊勢湾シミュレータ」を適用しています。
また、「陸域モデル」と「海域モデル」は、更にそれぞれ以下のとおり2つのモデルで構成されます。
陸域モデル
- 流出解析モデル
-
降雨等の気象条件を受け、陸域の水循環や水収支を推定するモデル
河川水や地下水の数量を計算して、「陸域物質循環モデル」や「海洋流動モデル」に計算結果を受け渡します。
- 陸域物質循環モデル
-
「流出解析モデル」の結果に、自然や社会からの栄養供給をあわせて、陸域の栄養塩物質等の循環を推定するモデル
河川水や地下水の栄養塩物質等の供給量を計算して、「低次生態系モデル」に計算結果を受け渡します。
海域モデル
- 海洋流動モデル
-
「海洋流動モデル」の計算結果と黒潮等の外洋条件を受けて、駿河湾の海水の流動を推定するモデル
海域の潮流、海流、水温、塩分を計算して低次生態系モデルにその結果を受け渡します。
- 低次生態系モデル
-
「陸域物質循環モデル」「海洋流動モデル」の計算結果を受けて、駿河湾の栄養塩物質等と植物プランクトンの関係を推定するモデル
モデル全体のアウトプットとして駿河湾の生物生産の状況を推定します。
モデル間のデータ受け渡しイメージ
シミュレータ(海域モデル)計算格子
海域モデルは、駿河湾全体(南北約140km、東西約120km)を対象に次のメッシュ構造で演算ししています。
水平方向:1km格子
鉛直方向:上層20m:1〜4m間隔、20〜200m:5〜25m間隔、200m以深:50〜1000m間隔
各モデルで作成できるデータ(入出力データ一覧)
【陸域】流出解析モデル
- 入力データ
- 降水量・蒸発散量・土地利用、土地被覆・地下地質・地下水揚水量・河川取水量 ・下水処理量、施設の普及率 等
- 出力データ
- 河川流量・地下水位・湧水量・流線・水収支・海域への水の流出量 等
【陸域】陸域物質循環モデル
- 入力データ
- 下水処理区域・下水処理人数・非下水処理人数・家畜種数・家畜頭数・水田面積・畑地面積・森林面積・市街地面積 等
- 出力データ
- 総窒素濃度(河川水)・総リン濃度(河川水)・総窒素濃度(地下水)・浮遊砂濃度(河川水)・海域への総窒素の流出量・海域への総リンの流出量・海域への浮遊砂の流出量 等
【海域】海洋流動モデル
- 入力データ
- 「流出解析モデル」の出力データ・気象条件・地形・水深条件・沖合境界条件
- 出力データ
- 流向・流速・水位(潮位)・水温・塩分
【海域】低次生態系モデル
- 入力データ
- 陸域物資循環モデルの出力データ・日射量・地形水深条件・沖合境界条件
- 出力データ
- 植物プランクトン現存量(炭素量:molC/m3)・植物プランクトン余剰窒素量(窒素量:molN/m3)・植物プランクトン余剰リン量(リン量:molP/m3)・動物プランクトン現存量(炭素量:molC/m3)・好気性細菌現存量(炭素量:molC/m3)・原生動物現存量(炭素量:molC/m3)・懸濁態有機炭素(POC:炭素量:molC/m3)・懸濁態有機窒素(PON:窒素量:molN/m3)・懸濁態有機リン(POP:リン量:molP/m3)・溶存態有機炭素(DOC:炭素量:molC/m3)・溶存態有機窒素(DON:窒素量:molN/m3)・溶存態有機リン(DOP:リン量:molP/m3)・オルトリン酸態リン(PO4:リン量:molP/m3)・アンモニア態窒素(NH4:窒素量:molN/m3)・亜硝酸態窒素(NO2:窒素量:molN/m3)・硝酸態窒素(NO3:窒素量:molN/m3)・ケイ酸(SiO2:ケイ素量:molSi/m3)・溶存第一鉄(Fe:鉄量:molFe/m3)・水酸化第二鉄(FeOH3:鉄量:molFe/m3)・溶存酸素(DO:酸素量:molO2/m3) 等
シミュレータの表現(再現性の確認事例)
シミュレータの計算結果と実測値を比較して再現性を確認した結果の一例を掲載します。
全ての再現性の確認結果は「森は海の恋人」水の循環研究会のページ「資料3、4」に掲載しています。
シミュレータ計算結果はフリーの図化ソフトGMT(The Generic Mapping Tools)を使用して作図
2015年の水温・塩分濃度(調査船の観測データとシミュレータ計算結果の比較)
表層の塩分濃度にばらつきが見られるが、計算値と観測地が概ね一致している
2018年7月クロロフィルa(衛星観測データとシミュレータ計算結果を比較)
クロロフィルaの分布範囲は概ね再現されているが、濃度の整合には課題がみられた。
モデルの動作環境(計算機スペック)
使用した計算機の環境は以下のとおりで、1年分の計算に概ね20日要しました。
以下の動作環境以外では動作しない可能性があります。(AMD社製のCPUでは計算結果にエラーがでることが確認されています)
ハードウェア
- CPU
-
Intel(R)Xeon(R)CPU _E5-2687W
- 並列計算
-
30Core
- ネットワーク
- InfiniBand
ソフトウェア
- OS
-
Linux CentOS release6.5
-
コンパイラ
- intel
- MPI
-
open-mpi-1.6.4
- 記述言語
-
fortran90
このページに関するお問い合わせ
くらし・環境部環境局環境政策課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-2421
ファクス番号:054-221-2940
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