<まちづくり・地域活性化>人を繋ぐ発想でまちを創る NPO法人東海道・吉原宿
- 所在地
- 〒417-0051 富士市吉原2-11-8
- 代表者
- 代表理事 佐野荘一
- 電話
- 0545-51-8233
- ファクス
- 0545-51-8233
- 設立
- 平成15年
- 運営人数
- 60名(平成22年10月現在)
- 事業内容
- 空き店舗を利用した創業支援、活性化イベント企画運営、市民活動センター指定管理等
商店街活性化を自由な立場で
富士市の吉原商店街は、江戸時代から東海道の宿場町として栄えた商業のまちだ。しかし、全国の多くの商店街がそうであるように、吉原商店街においても車社会の進行・都市機能の郊外化などにより、人通りが減少し、空き店舗が目立つようになっていた。吉原商店街では早くからまちの活性化に取り組み、行政への提言なども行ってきたが、商店街は多様な事業を展開する個々の事業主の集まりであり、利害調整や取り組みへの温度差など、迅速な意思決定や共通認識が得にくいという問題が起きてきた。そこで平成15年、商店街組織とは別に、佐野荘一代表理事を中心とする若手有志や市民を巻き込んだ、まちおこしのためのNPO法人東海道・吉原宿が設立された。以来、シャッターアート、Tシャツグランプリ、高校生チャレンジショップ吉商本舗など、まちづくりのビジネスを展開し、その活動の意義は、経済産業省(チャレンジコミュニティ創成プロジェクト認定、がんばる商店街77選他)だけでなく、厚生労働省(若者の人間力を高めるための国民運動実施団体選出)、文部科学省(みんなの専門高校プロジェクト推進校)など多方面で認められている。
ところで、NPO法人を設立した理由について佐野代表理事は、「これからまちづくりをしていこうという時に、法人格を取るのは当然だと思っていました。事業を始めれば当然大きく育てることを目指しますし、融資や投資、会計といった要素を抜きにしては考えられません。NPO法人にしたのは、当時の法制上、設立が簡単で運営負担の少ない形だったからです」と語る。もともと商業者であり、法人格取得の必要性を熟知したうえで各法人形態の長所短所を勘案し、あえて事業型NPO法人を選択したのである。商店街の復興と発展を目指すなら、まずその活動自体が事業として成立し、商業育成の場とならなければならない。こうして同NPO法人は商業の土壌を耕すことから出発していった。
商店街で、点と点とを繋ぐ
同NPO法人の代表的な活動は、チャレンジ事業と呼ばれる空き店舗を利用した新規創業支援だ。現役高校生が駄菓子屋の仕入れから販売まで自主的に運営する吉商本舗、フェアトレードとコミュニティカフェのプレアーテ、就労支援施設で作られた商品を販売する「こまものやヨラボ」、商店街で見落とされがちな2階以上のスペースを活用する吉原まちなかチャレンジオフィス(Y-MICS)など、こんなことをやってみたい、こんなことをやったらどうだろう?と発想する人を支援し、一生懸命商売をする心を育てている。意欲のある若者が商店街に新風を吹き込み、若者と商店街との接点ができる。吉商本舗に関わる学生などは少しずつ入れ替わっていくが、商店街に関わる人数そのものを増やしていくことで次世代に繋げている。
また、商店街に人を呼び、人と繋がる仕掛けとして、イベントの企画運営にも力を入れている。中心部にある駐車場で若者がダンスパフォーマンスを繰り広げるヨシワラ・パフォーマンス・オブ・ドリームズ(yPod)や、まちなかでの音楽祭よしわらジュークボックス、夜に営業する飲食店の協力で、独身男女300名が商店街そのものを会場として行うヨシワラ・ワクワク・合コン・プロジェクト(YWGP)、商店街の中をチケット制ではしご酒をして回る吉原バルなど、商店街の楽しさを演出し、人と商店街を結びつけていくイベントである。
チャレンジショップやまちなかイベントという個々の点が互いに繋がり合えば、面や層となって人を動かす原動力になる。それは、商店街が昼間の1階店舗だけのものでなく、夜も裏通りもそこに住む人をも含めた、生きたまちだという考えに基づいている。「宿場町は、もともと商売をするところです。人が行き交い、モノやお金が動き、文化や歴史が作られていく場所でした。いまその機能が薄まっているとすれば、弱い部分を補うこと、つまり、まちに関わる人を増やし、商売を始め、繋がりをつくることで商店街が再生されていくのではないでしょうか」と語る佐野代表理事は、自らツイッターやフェイスブックで情報発信を行い、点と点とを繋いでいる。
商店街から市民活動支援へ
同NPO法人のもう一つの事業は、市民活動の中間支援施設を運営することである。静岡市にある県のふじのくにNPO活動センターや富士市の市民活動支援施設富士市民活動センター・コミュニティfを運営し、自らの活動のノウハウを利用して、まちづくり、コミュニティビジネス、ボランティア活動などを行う市民の支援を行っている。行政からの業務委託や指定管理などは、限りある財源の中で公的な責任を負い、何もかも自由にすることはできないが、それでも決まりきったことだけを事務的に踏襲するのではなく、求められる役割は何か、何が市民にとって役に立つことなのかを日々考え、次々と自主企画を打ち出している。「市民活動やまちづくりに関しては、現場で実際に活動している我々が一番よくわかっています」と胸を張る佐野代表理事は、その経験とアイディアを吉原商店街からさらに広げて生かしていく。全国から視察の申し込みが絶えない同NPO法人は視察受け入れ自体にもノウハウがあり、情報発信をも事業化しうる存在として、商店街の枠を越え、より多くの人々に役立つ仕事を展望している。
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