<産業支援>若々しい高齢者が地元企業の潤滑油に 企業組合浜名湖えるだークラブ
- 所在地
- 〒431-0431 湖西市鷲津332-8湖西市商工会館内
- 代表者
- 理事長 大塚隆三
- 電話
- 053-576-0637
- ファクス
- 053-576-3981
- 設立
- 平成10年4月、(任意組合設立)平成7年
- 組合員
- 18名
- 事業内容
- コンサルタント業務(5S(整理・整頓・掃除・清潔・躾)活動進め方講習会、QC(品質管理)講習会、MDL(管理能力開発)講座、新入社員教育講座等、各種講習)、請負業務(帳票・会計処理、事務改善、労務管理、工場管理、監督、ISO9001・ISO14001シリーズ取得支援等)、教育研修業務(研修会の企画運営、講師派遣等
きっかけは国の事情
企業組合浜名湖えるだークラブ発足のきっかけは、平成6年、湖西市商工会が国の年金制度改革に伴う高齢者継続雇用促進事業の推進団体に選ばれたことだった。厚生年金の支給年齢が段階的に引き上げられることになり、定年後の仕事の創出が求められた時期であった。湖西市は自動車を始めとする製造業の一大集積地であり、当時の湖西市商工会には、単に高齢者雇用を呼びかけるだけの推進事業ではなく、実際に自分たちで何かできないかと考える企業OBがいた。日本経済が低成長期に入り、大企業も生き残りに必死になっていた当時、中小企業の経営基盤強化は喫緊の課題であった。そんな時代に定年後の雇用をただ待つだけではいけない、企業OBであることの強みを生かして自ら仕事を創り出し、自分たちの持つ知識や経験を地元の企業で役立てよう、と立ち上がったのである。
メンバーは地元湖西市の企業経営者、各種製造・管理部門の専門家、湖西市に拠点を持つ大企業の管理職経験者などで、平成7年の設立当初は組合員5名の任意団体であった。事務局は湖西市商工会の一角に置き、商工会との協働で企業支援を始めていった。
事務局で仕事の依頼を受け、得意分野を持つ組合員たちそれぞれに仕事を配分する。収入は担当した組合員が8割を受け取り、事務局が2割を運営費に充てる。仕事の分野にもよるが、それぞれが自分のライフスタイルや働きたい量によって仕事をこなし、数万円~30万円程度の収入を受け取るシステムだ。
OBとしての仕事の作法
ここに同組合が標榜する仕事の進め方がある。経験豊かな企業のエキスパートである先輩たちから教えを受けるのは、中小企業の一般社員から見れば敬遠したくなることではないかとも思えるが、この進め方を見ると、第一線を退いたOBならではの作法ともいうべき知恵がある。
それは、上からの教えてやる態度を廃し、現場では同じ作業着で一緒に油にまみれながら作業をし、教えられる側と同じ高さの目線でひとつひとつの理解度や成果を確かめながら共に学ぶという姿勢である。事務所への組合員の派遣は2人1組4時間を一単位としている理由を事務局担当の石田八郎専務理事に尋ねると、「教える方も教わる方も、4時間が集中力の続く一区切りだからです」と答えた後、「年を取るとどうも意地になりやすくて」と笑った。2人1組で時間に制約を設けて仕事をすれば、一人の考え方ややり方でのめり込んでしまうことが防げる。つい熱心になってしまうことが高齢者の特性だとすれば、それを自覚して自らコントロールする方法を講ずるのもまた年の功である。自分の心に定年退職という一線を画すことで、若い人への接し方も、自分自身の律し方にも余裕が生まれ、教えた相手の技術や業績が上がることを自分の喜びにすることができるのだと言う。
教えることは学ぶこと
同組合では、たとえば同じ5S(整理・整頓・掃除・清潔・躾)の指導といっても、組合員それぞれ教え方が違うという。培ってきた知識や経験に基づいてそれぞれが自分なりのテキストを書き上げ、指導の手順、実習の方法などすべて自分で考える。このことは、指導先との相性に適合する度合いを高めるという利点以上に、組合員相互に刺激を与える意味がある。同組合は自分の中にある知識や経験を教えることで整理し組み立て直す場であると同時に、自分とは異なるアプローチ方法やものの見方や考え方と接することで、また新たな経験を作る場でもある。同組合が、単なる高齢者雇用の受け皿というよりも、定年後の生きがいづくり、若さの維持の役割を担っていることもうなずける。
最近は長引く不況の影響で人員削減や非正規雇用化が進み、人を育てる努力は後回しにされる傾向がある。しかし、同組合は、商工会との関係からISOやエコアクション21などの認証取得に有利であり、費用も安く済むという強みもあって、受注量には不安を持っていない。何より、同組合には、地元への愛着と後輩への愛情がある。だから派遣先の若い社員には「上司に言えないことがあったら俺に言えよ」と声を掛けるのだという。組織に余裕がなくなり、若い世代が相談相手に事欠く時代にあって、その役割をさりげなく担ってくれる。
地元商工会との協働ではあるが商工会そのものではなく、行政でもなく、自社の上司でもない。現役の重みが取れ程よく離れた距離の先輩が、生きがいを感じながら知恵と技術を授けてくれる同組合は、年間1,300万円を売り上げているが、その資源は、組合員一人ひとりが職業人として歩んできた人生であり、地元や若い世代に対する愛情なのである。
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