富士山の文化と自然
富士山と文化
富士山は文化財です。
富士山はその秀麗な姿が、わが国の象徴として崇高されてきた名山として欠くことのできないものであるとして、文化財保護法により昭和27年10月7日に自然的名勝(山岳)として名勝に指定され、同年11月22日には特別名勝に指定されました。
これに加え、信仰の山としても歴史的・学術的に高い価値があり、平成23年2月7日に富士山頂及び富士山周辺にある富士山信仰の関連施設及び関連遺跡等が、一括して国の史跡(史跡富士山)に指定されました。さらに、平成24年1月24日、平成24年9月19日に登山道の一部等が史跡富士山に追加指定されています。
富士山を取り巻く指定文化財
富士山及びその周辺には歴史的・文化的に高い価値を持つ多様な文化財が残されています。
富士山を取り巻く県内5市町(富士市、御殿場市、裾野市、富士宮市、小山町)の指定文化財は238件あります。その内訳は富士山本宮浅間大社本殿など国指定文化財が32件、富士浅間曼荼羅図、村山浅間神社境内地にあるイチョウや大スギ、冨士浅間神社(須走浅間神社)境内地のハルニレなど県指定文化財53件、市町指定文化財153件です。(件数は平成27年4月1日現在)
富士山と信仰
古来、火山活動を繰り返す富士山は神仏が宿る山として畏れられ、山麓から山頂を仰ぎ見て崇拝する「遥拝」の対象であり、繰り返す噴火を鎮めるために、富士山に対する遥拝所として各地に浅間神社が建立されました。
噴火活動が沈静化する平安時代後期になると、富士山は日本古来の山岳信仰と外来の仏教が習合した修験道の道場として、多くの修験者が厳しい修行を行う山岳霊場へと変化していきました。
室町時代後半には、修験者に導かれた一般庶民の「登拝」(信仰登山)も行われるようになりました。
江戸時代には、各地に富士講と呼ばれる講が多数組織されたことにより、富士山信仰が盛んとなり、大勢の登山者でにぎわいました。富士講は、戦国時代終わりに人穴富士講遺跡で修行した長谷川角行を開祖と仰ぐ信仰集団ですが、この富士講が公式の登山口とした吉田口(北口)からの登拝は盛んになりました。
江戸の富士講の人々は、御師(富士山に登拝する人々を宿坊に泊まらせ潔斎して、富士信仰の道を説き、祈祷を行う人)の家に泊まり、登山の無事を祈るため、浅間大社にお参りし、あるいは神楽や稚児舞を奉納し、登拝をしました。
明治時代には女性の登山も解禁となり、登山道の整備も進み観光登山が盛んとなり大勢の登山者で賑わいを見せました。
現在も多くの登山者が山頂などで御来光を拝み、噴火口周囲を一周するお鉢巡りを行うなど、富士山への信仰心は今に引き継がれています。
富士山と芸術
富士山は、その美しい姿から、絵画や文学など様々な創作活動の題材となってきました。
8世紀に編纂された日本最古の和歌集『万葉集』にも富士山が詠まれた作品があり、『竹取物語』、『伊勢物語』などの古典作品や、松尾芭蕉や与謝蕪村の俳句、夏目漱石や太宰治の作品にも取り上げられてきました。「富士山」、「羽衣」など謡曲のモチーフにもなっています。
平安時代になると、絵画の世界にも登場するようになり、室町時代後期には(伝)雪舟「富士三保清見寺図」、江戸時代初期には狩野探幽「富士山図」など富士山絵画の定型が作り出されました。
富士山は、葛飾北斎の『富嶽三十六景』や歌川広重の『不二三十六景』、『東海道五拾三次』などの浮世絵にも描かれ、それを見たモネやゴッホなどのヨーロッパの画家にも影響を与えました。
近代では、「群青富士」で知られる横山大観などが多くの作品を残しています。
このように、富士山は現代に至るまで、時代を超えて芸術的活動と密接な関わりを持ち、人々に感銘を与えています。
富士山と自然
富士山は、標高3,776mの日本の最高峰を誇る独立成層火山です。
標高が増すごとに山腹の傾斜面の勾配も増し、美しい円錐形を描いています。
南側の山麓は駿河湾の海浜にまで及び、海面から山頂まで傾斜面が連続する成層火山として、世界的にも有数の高さを誇ります。
その優麗な美しさは私たちの心を捉え、日本人だけでなく訪れる世界の人々も魅了しています。
富士山の植物と生物
富士山に生育記録のある植物種は、日本に生育する植物種(シダ類以上)の約半数近くを占める2,000種余りがあり、このうち、貴重種・重要種(稀少種・分布限界種などを含む)とされるものは430種を数えます。また、フジアザミ、フジハタザオなど富士の名を冠し、富士山に多く見られる種もあります。
多様な自然環境を持つ富士山では、多くの生物を見ることができます。哺乳類では、特別天然記念物のニホンカモシカやニホンリスをはじめ約40種類、鳥類は、ウソやホシガラスなど100種類以上が記録されています。昆虫類では、ヤマキチョウなど蝶類約120種、トンボ類約10種類などが記録されています。
富士山の地下水と湧水
富士山に降った雨や雪解け水は富士山の地下水を涵養し、一部は湧泉となって地表に流出しています。西麓では富士宮市の白糸ノ滝、東麓では三島溶岩流末端や柿田川周辺の湧泉が知られています。北麓では忍野村の忍野八海、南麓では富士宮市の富士山本宮浅間大社の湧玉池など豊富な湧水群が数多くあり、それらの水は上水・工業用水・農業用水など多方面に利用されています。
このページに関するお問い合わせ
スポーツ・文化観光部文化局富士山世界遺産課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3746
ファクス番号:054-221-3757
sekai@pref.shizuoka.lg.jp