令和3年6月県議会定例会知事提案説明要旨2

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ページID1011112  更新日 2023年1月13日

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令和3年6月県議会定例会知事提案説明要旨

【2.今後の県政運営】

次に、今後の県政運営についてであります。

新型コロナ危機は、東京一極集中の是正を不可避なものとしました。大都市の過密構造そのものが感染リスクを高めており、東京一極集中を是正し、分散型の国土形成を進めていくことが必要です。この歴史的な転換点は、地方活躍時代への大きな変革のチャンスでもあります。「東京時代から静岡時代へ!」本県は、そのポテンシャルを最大限に活かし、ポストコロナの新しい時代を、先陣をきって切り拓いてまいります。

まず、最優先すべきは、命を守る安全な地域づくりであります。

新型コロナウイルスの克服に向けては、官民の強固な連携の下に、対策の「入口」ともいえる検査体制の強化や医療体制の確保に引き続き注力するとともに、「出口」戦略としての「ワクチン接種」の完遂に全力を傾けてまいります。また、新型コロナ危機の課題と教訓を踏まえ、検査・医療体制の充実など、実効性のある感染症対策の確立を図るとともに、ワクチン・治療薬の国内開発の促進や国と連携した感染症専門病院の設置等についても検討を進めてまいります。

地震・津波、風水害対策等につきましては、南海トラフ地震による想定犠牲者ゼロを目指すほか、近年、激甚化する豪雨災害への対策強化、老朽化する社会資本の長寿命化など、危機管理体制の更なる充実を図り、揺るぎない防災先進県を創り上げてまいります。

次に、地球環境の世紀における、自然環境の保全と経済活動の両立についてであります。

リニア問題につきましては、コロナ禍による社会・生活の激変により、従来の国土づくりの発想も見直されています。需要予測や危機管理などへの疑問が生じ、建設費用が増加する中、リニアの進め方についても一度立ち止まって見直すべき時であると考えます。こうした視点に立ちつつ、JR東海と科学的根拠に基づいた対話を尽くすことで、県民の「命の水」と南アルプスの自然環境をしっかりと守ってまいります。なお、この「命の水」と「自然環境保全」の問題は、富士川流域に堆積する泥の中に化学物質が含まれているとの報道や、特に伊豆地域におけるメガソーラー建設計画と地域の自然環境や生活環境との関係などでも顕在化していることから、地域の理解と協力を得ながら、令和の時代に求められている環境と経済の両立を図ってまいります。

また、「脱炭素社会」の実現につきましては、本年4月に開催された「気候サミット」において、我が国は「2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%減らす」と国際社会に宣言しました。この実現には、徹底した省エネをはじめ、電源構成の見直しや産業構造の転換など、広範な領域で大きな変革が求められます。県においても、本年2月に脱炭素社会の実現を目指す旨を表明しましたが、「脱炭素」は環境、エネルギー問題にとどまらず、国際的な産業競争力に関わる問題であり、今後は、より実効性のある取組を促進していく必要があります。このため、本県の「地球温暖化対策推進本部」を中心に、国などと連携しつつ、2050年の脱炭素社会の実現を長期目標とする新たな実行計画を本年度中に策定してまいります。

こうした自然環境の保全と経済活動の両立や脱炭素社会の実現に向け、真摯に取り組んでいくことで、本県を持続可能な開発目標「SDGs」のモデル県としてまいります。

新しい静岡時代の創造につきましては、浜名湖を中心とする西部地域で「レイクハマナ未来都市構想」を立ち上げ、スタートアップ等の革新的技術を活用し、新たな循環共生圏を創出してまいります。浜松市や湖西市等と連携してMaaS(マース)などの新交通・移動システムの構築や環境重視型の工業エリアの形成など、自然と共生し、資源を循環させる域内循環型の地域づくりに取り組んでまいります。

また、観光業が地域経済を支える伊豆地域では、豊富な温泉資源の持つポテンシャルに着目し、産学官連携の下、新たなオープンイノベーションプロジェクトとして、様々な温泉成分などが人々の健康増進に寄与するメカニズムを科学的に明らかにし、その観光資源としての付加価値を一層高めてまいります。様々な効能を持つ温泉資源のエビデンスを明確化することで、急速に浸透するワーケーションなどの新たな観光需要を確実に取り込んでいく仕組みづくりを伊豆半島全体で構築してまいります。

さらに、県庁や出先機関の建物の老朽化が進み、今後、各庁舎のあり方が検討の俎上に上がってまいります。コロナ禍で、社会全体にDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が進む中、県民サービスのあり方や職員の働き方についても否応なく変化に直面してまいります。このため、県が担う役割や機能はもとより、各県庁舎のあり方やネット・ゼロ・エネルギー・ビル化なども含め、見直し作業に着手してまいります。

人口減少問題への対応と誰もが活躍できる社会の実現につきましては、コロナ禍により人々の意識や生活様式が大きく変化しております。2020年移住希望地ランキングで本県が全国第1位となりました。昨年度の本県への移住者数は、1,398人、移住相談件数も1万1,604件で、ともに過去最高を記録し、移住した世帯主は20歳から40歳代までの子育て世代が8割強を占めています。引き続き、本県の魅力の発信に注力するとともに、多彩な産業集積による雇用の場の確保や本県出身者の多い32の県外大学との就職支援協定、若い世代のUIターンを促進する「30歳になったら静岡県!」等の施策を積極的に展開し、子育て世代の移住促進を図ってまいります。特に、県外大学との就職支援協定に関しましては、若い女性の県外転出が多いことや、ものづくり県である本県において理工系人材の確保が求められていることから、今後は更に、ターゲットを女子大学や理工系大学に絞った効果的なUIターンの支援策に取り組んでまいります。

また、ふじのくに少子化突破戦略の『新・羅針盤』に基づき、地域特性に応じた少子化対策を、市町と連携してきめ細かく展開していくほか、仕事と子育ての両立支援や保育所の整備支援など、安心して子育てができる地域づくりを進めてまいります。加えて、障害・性別・国籍などの多様性を認め合い、誰もが活躍できる社会、誰一人取り残さない社会を実現してまいります。

人財の育成につきましては、子供たちの教育環境と実学のレベルの一層の向上を図ってまいります。県立高校の普通科改革や、農商工・スポーツ・芸術分野などの実学の奨励、ICTを活用した教育の推進のほか、特別支援教育の充実、県立夜間中学(ナイトスクールプログラム)の整備などを進めてまいります。

医療福祉につきましては、新型コロナ対策に万全を期するとともに、着実に成果が現れつつある「ふじのくにバーチャルメディカルカレッジ」運営事業を中心に、医師の確保と地域偏在の解消を図ってまいります。また、この4月に開学した「静岡社会健康医学大学院大学」における研究成果の地域への還元と高度医療人材等の育成などにより、県民の皆様の健康寿命の延伸につなげてまいります。

県内経済の再生につきましては、新型コロナ危機の教訓を踏まえ、地域主導型の経済政策「フジノミクス」を推進してまいります。山梨県や長野県、新潟県と連携した新しい広域経済圏を形成することで、「バイ・ふじのくに」「バイ・山(やま)の洲(くに)」の施策を積極的に展開し、GDPの5割以上を占める個人消費を喚起してまいります。また、経済のDXを、官民を挙げて推進し、中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けた支援を強化するとともに、医薬品・医療機器産業や次世代自動車産業など、経済成長を牽引するリーディング産業の育成を推進してまいります。さらに、第一次産業の生産現場へのAIやICTなどの先端技術の導入を促進することで、生産性の革新を図り、「農林水産業のルネサンス」を実現してまいります。

スポーツの聖地づくりにつきましては、ラグビーワールドカップ2019(ニセンジュウキュウ)に続き、東京2020(ニーゼロニーゼロ)オリンピック・パラリンピックの本県開催を成功させ、「スポーツ王国・スポーツ立県」としての地位を確立してまいります。県内全域を、サイクリストの憧れを呼ぶ「サイクルスポーツの聖地」として環境づくりを進め、併せてスポーツツーリズムの充実などを図ってまいります。

以上の「今後の県政運営」の主な柱立てを基本に、年度内に新しい総合計画を策定してまいります。“ふじのくに”づくりの指針であり、県民の、県民による、県民のためのマニフェストである「静岡県の新ビジョン」は、2018年度から2027年度までの10年間を計画期間としており、今年度が、最初の4年間の基本計画の最終年度となります。これまでの取組を総括的に評価した上で、残りの期間6年間を、私の4期目の4年間に前倒しして完遂するべく、新たな基本計画を策定し、“ふじのくに”づくりの総仕上げへの道筋を明確なものとしてまいります。

続きまして、今回提出いたしました議案の概要を御説明申し上げますとともに、当面する県政の課題について、所信並びに諸般の報告を申し述べます。