モンゴル国ドルノゴビ県との上下水道技術交流

概要

静岡県生活排水課は、平成23年7月に友好協定を締結したモンゴル国ドルノゴビ県からの要請を受けて、平成24年度から26年度まで一般財団法人自治体国際化協会（以下、「クレア」という。）の助成制度を活用し、また、平成27年度から29年度は独立行政法人国際協力機構（以下、「JICA」という。）の受託業務により、同県の水環境（生活環境）の改善及び保全を目指す事業を実施しています。

交流計画と目的

ドルノゴビ県では、県都のサインシャンド郡において過去に下水処理施設が建設されましたが、適正な維持管理がなされなかったことにより施設が損壊し機能が停止したほか、県内他地域においても簡易的な汚水処理しか行われないなど、市街地の生活排水が適正に処理されていないため、生活環境の悪化や水源の汚染が懸念されています。
こうしたことから静岡県では、現地技術者の下水道施設の運転・管理を中心とした技術力の向上と同県民の水環境に関する知識や意識の向上を図る必要があると判断し、これらの推進を図るため静岡県職員等技術者の派遣とドルノゴビ県から技術研修員の受入れを実施しています。

交流の経緯

平成23年7月

静岡県とドルノゴビ県は、友好的互恵・互助の精神に基づいて積極的に経済、観光、文化、教育、環境保護などの広範囲な分野における交流と協力を行うこととして友好協定を締結

平成23年7月

静岡県生活排水課は下水道について、ビジネス訪問団としてモンゴル国県民交流団に同行

平成24年1月

ドルノゴビ県企画政策部知事室エンクジャルガル・エルデネボルド氏が静岡県海外技術研修生受入制度により来静。同氏からサインシャンド郡の上下水道事情の改善に関し技術的な協力を依頼される。

平成24年3月

クレア事業での認定を受ける。（平成24年度～25年度分）

平成24年度

派遣2回、受入1回

• 平成24年度　報告書 （PDF 266.0KB）

平成25年度

派遣2回、受入1回

• 平成25年度　報告書 （PDF 649.5KB）

平成26年3月

クレア事業での認定を受ける。（平成26年度分）

平成26年度

派遣1回、受入1回

• 平成26年度　報告書 （PDF 773.8KB）

平成27年4月

JICA「草の根技術協力事業（地域活性化特別枠）（ドルノゴビ県の下水道運営能力向上プロジェクト）」を申請

平成27年6月

JICA事業が採択される。（平成27年～29年）

平成27年度

派遣1回

• 平成27年度　報告書 （PDF 779.8KB）

ドルノゴビ県の状況と課題

ドルノゴビ県は、モンゴル国南部の中国国境に接する県で、県庁所在地のサインシャンド郡は、人口が約2万人、県内政治、経済、文化の中心です。同郡中心部には、モンゴル国の民主化前にロシアの援助によって上下水道施設が整備されましたが、民主化に伴いロシアからの援助が打ち切られるとともに、施設の維持管理も行われなくなりました。
上水道は漏水が非常に多く、塩素消毒も不十分な状況です。また、生活排水は適切に処理されておらず、地下水への汚染が懸念されます。

中心部から離れると上下水道は整備されておらず、一般住民に下水道のイメージが定着していないため、住民への上下水道を中心とした水環境についての教育や啓発が必要であると考えられます。

またザミンウード郡は、ドルノゴビ県の最南端に位置する中国国境の街で、人口は約2万人です。同郡では3,000t/日の汚水処理能力を持つ下水処理場が新たに建設されましたが、運転管理の技術や経験が蓄積されておらず、現状では適切な下水道運営が難しいと考えられます。

一方、ドルノゴビ県や周辺地域では豊富な地下資源の開発プロジェクトが国家規模で進められており、今後サインシャンド郡およびザミンウード郡周辺では、著しい人口増加が見込まれています。このため同県ではより一層の環境改善及び保全が必要と考えられます。

課題解決の方法

ドルノゴビ県の水環境に関する課題や必要性を把握・分析し、「水環境の改善および保全」という目標を達成するために、静岡県では

• 下水道運営能力の技術支援
• 下水道技術に関する人材の育成
• 地域住民への水環境に係る啓発活動

という3つの目標を掲げました。

まず、下水道運営能力の技術支援として、ドルノゴビ県や静岡県の下水処理施設を利用した技術研修や実務指導により、下水処理施設の運転管理の質を高めます。

次に、下水道技術に関する人材の育成として、講義や視察を中心とした受入れ研修と現地でのセミナーや技術指導により、ドルノゴビ県技術者の技術力の向上を目指します。

最後に、地域住民への水環境に係る啓発活動として、ドルノゴビ県に派遣した職員等が、小中学生や地域住民に対しセミナーやワークショップを実施することにより、一人ひとりの水環境に係る知識や意識の向上を目指します。

これら3つの取り組みによりドルノゴビ県の環境への負荷の軽減を図り、持続的な「水環境の改善および保全」を目指していきます。