懸念1 トンネル湧水による大井川の水資源への影響

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ページID1057492  更新日 2024年10月9日

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県が心配していること

県境付近のトンネル工事による工事中の湧水の大井川水系外への流出(健全な水循環の保全)

静岡県内の断層帯と繋がっている可能性のある山梨県内の断層の図
静岡県内の断層帯と繋がっている可能性のある山梨県内の断層

JR東海は、山梨県内から静岡県境へ向けた高速長尺先進ボーリングを進めています。

県境付近では、静岡県内の断層帯と山梨県内の断層が下で繋がっている可能性があり、山梨県側からの高速長尺先進ボーリングによって、静岡県内の断層帯の高圧の地下水が、山梨県内の断層帯(県境から約300m)を通じて山梨県側に流出するおそれがあることから、大井川水系の健全な水循環(※)への影響を懸念しています。

また、トンネル工事が県境付近に近づくことによる健全な水循環への影響も懸念しています。

イラスト:健全な水循環のイメージ
出典:流域マネジメントの手引き(平成30年7月内閣官房水循環政策本部事務局)

※健全な水循環

「健全な水循環」とは、人の活動及び環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態での水循環をいいます。

生活や産業活動などの人の活動及び自然環境の保全に水が適切に機能するためには、適正な水量や水質が保たれていることが必要であり、工事等により流域の健全な水循環が毀損されないようにすることが重要です。

トンネル工事により河川流量が減少する場合の影響

平均降雨量の推移を表したグラフ
参考:井川地点月別平均降雨量

大井川の河川流量は、降雨量に大きく左右され、梅雨期に増える一方で冬期に減るなど、増大と減少を繰り返すことから、年間を通じて大きく変動します。

これまでも、降雨が少ない時には、取水制限(※)を行ってきました。

大井川の河川流量が減っている期間に、トンネル工事により、更に大井川の流量が減少することで、これまで以上に取水制限の日数が増加し、多様な水利用(生活用水、農業用水、工業用水、発電用水)に影響を及ぼすことを心配しています。

※取水制限

雨が降らずに、川の水が少ないときに、上流のダムに貯めている水がなくならないよう、川から、生活用水、農業用水、工業用水、発電用水など取水する量を減らすことを「取水制限」といいます。

JR東海との対話の状況

対話のポイント

JR東海から示された田代ダム取水抑制案が、影響を回避する保全策として了解できる段階に至ったことなどにより、今後の主な対話は、リスク管理モニタリングの段階に移ることとなります。
 

(1)田代ダム取水抑制案

先進坑がつながるまでの工事期間中、県外流出量と同量を大井川に還元する方策として、JR東海が示した2案のうちの1案が、「田代ダム取水抑制案」です。

田代ダム取水抑制案は、山梨県側から掘削する先進坑が県境を越えて静岡県側の先進坑とつながるまでの期間(10ヶ月と想定)に、静岡県から山梨県へ流出するトンネル湧水量(県外流出量)を計測しつつ、同時期に、東京電力リニューアブルパワー株式会社が管理する田代ダムにおいて、県外流出量と同量を大井川から取水抑制し、大井川に還元する方策です。

令和5年12月、JR東海は、東京電力リニューアブルパワー株式会社と、田代ダム取水抑制案の実施にあたっての基本合意書を締結したことを発表しました。

今後は、田代ダム取水抑制案の実際の運用サイクルやオペレーションの詳細、リスク管理として県外流出量と同量を取水抑制できない状態が継続する場合の対応、突発湧水など不測の事態への対応、取水抑制するための水量が不足する不確実性への対応などについて、地質構造・水資源部会専門部会において確認していきます。

イラスト:工事の一定期間、発電のための取水を抑制し、大井川に還元する方策
<田代ダム取水抑制案(B案)>出典:第12回県地質構造・水資源部会専門部会 資料1

(2)静岡県境に向けたトンネル掘削工事(高速長尺先進ボーリング)

県は、JR東海に対し、高速長尺先進ボーリングにより、新たに静岡県側から山梨県側に水が流出し、健全な水循環に影響を与える可能性があることから、県外に流出してしまう水を大井川水系に戻す方法等を決めてから高速長尺先進ボーリングを進めてほしいと求めていました。

これに対し、JR東海から、令和6年5月13日に開催した第16回地質構造・水資源専門部会において、山梨県内から県境に向けた高速長尺先進ボーリング計画が示され、田代ダム取水停止期間中におけるボーリングの実施に伴う湧水の取扱いなどについて説明がありました。

対話の結果、専門部会として、JR東海が計画しているボーリングは、提示された湧水管理やモニタリングが確実に行われることで、一定のリスク管理がなされるものと、技術的に確認できたとの結論が示されました。

委員からは、「今回決まったことが、確実に実行されることが重要。JR東海は、しっかりと実行できるよう、現場で作業される方も含め徹底をお願いする。」などの意見がありました。

また、岐阜県内で井戸等の地下水位が低下する事象が発生しましたが、6月4日に、本事象を踏まえた追加のリスク対策がJR東海から示され、県専門部会により、JR東海が示した追加の対応を確実に実施することで、より一層リスク管理が強化されることを技術的に確認しました。

6月18日には、山梨県内の県境付近でのボーリング等により、静岡県内の水が山梨県側に流動する可能性があるという本県の懸念を踏まえ、山梨県、JR東海との三者で、ボーリング等の人為的な要因により新たに水が流動する場合は、健全な水循環の回復措置が必要であること等について合意しました。

 

三者合意資料

山梨県内から県境を越えてボーリングを実施することについて、大井川利水関係協議会が了解しており、また県専門部会において一定のリスク管理がなされるものと技術的観点から確認されていることから、9月17日に、県としても了解できるものと判断し、その旨をJR東海に回答しました。

加えて、県専門部会で示されたリスク管理等を確実に実施すること、不測の事態が発生した場合は速やかに報告し、その対応について協議会の了解を得ることなどについて、JR東海に真摯な対応を求めました。

今後は、ボーリングの結果を踏まえた先進坑、本坑の掘削におけるリスク管理等について、JR東海と対話を進めてまいります。

静岡県中央新幹線環境保全連絡会議 地質構造・水資源部会専門部会

県は、南アルプスにおけるリニア中央新幹線トンネル工事が大井川水系の水資源等に及ぼす影響を科学的根拠に基づき明らかにするため、地質学、水工学や地下水学などの専門家を委員とした「地質構造・水資源部会専門部会」を設置し、JR東海と対話を行っています。

大井川利水関係協議会

大井川水系の水資源の確保及び水質の保全という目的のもと、平成30年8月に、県と流域の関係者を会員とした大井川利水関係協議会を設立しました。

リニア中央新幹線整備における大井川水系の水資源の確保及び水質の保全のため、会員は相互に対等な立場で、協議会規約に基づき、JR東海との連絡、調整及び交渉は「静岡県中央新幹線対策本部」を通じて行い、一体となって取り組んでいます。

リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議

国土交通省は、令和2年4月、これまで県とJR東海で行われてきた議論等を検証し、その結果を踏まえ、国土交通省がJR東海に対して具体的な助言、指導等を行っていくことを目的として、有識者会議を設置しました。

第1回(令和2年4月27日)から第13回(令和3年12月19日)までの約1年8か月、大井川の水資源問題について、科学的・工学的な観点から議論が行われ、その議論を総括した「大井川水資源問題に関する中間報告」がとりまとめられました。

大井川の概要・水利用の状況

大井川は、静岡県中部に位置し、その源を静岡県、長野県、山梨県の3県境に位置する間ノ岳〈標高3,190m〉に発し、静岡県中央部を南北に貫流しながら、島田市付近から広がる扇状地を抜け、その後駿河湾に注ぐ、流域面積1,280平方キロメートル、幹川流路延長168kmの一級河川です。

大井川の水は、流域の8市2町において、水道、農業、工業、発電の用水に利用されています。

農業用水として、流域の約1万2千haの農地の水源として供給され、中でも、県下のお茶の生産量の約5割を占める牧之原台地の水源となっています。 

また、大井川流域の企業は、表流水を工業用水として利用しているだけでなく、約400の企業が約900本の井戸を掘り地下水を利用しています。

ビールや酒造メーカー、製紙や発電など、様々な事業者が大井川の水に深く依存しています。

地図:大井川水系図

大井川水資源問題にかかる対話の経緯

2013.9

JR東海が、環境影響評価準備書で、南アルプストンネル工事により、大井川の流量が毎秒2m3/s(※)減少すると予測

※約60万人の生活用水に相当

2014.3

(知事意見)

県は、環境影響評価準備書に対する知事意見で、トンネル湧水の全量を戻すことを求める

 JR東海:トンネル湧水による河川流量の減少分は特定できるため、減少分だけ戻す

 (全量戻しは不要)

 静岡県:河川流量の減少分は特定できない。単純にトンネル湧水全量を戻すべき

2017.4

県は、事後調査報告書(H29.1)に対する知事意見で、トンネル湧水全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すことを早期に表明することを求める

2018.10

(知事意見から4年半後)

JR東海が、原則としてトンネル湧水の全量を大井川に流す措置を実施することを表明

2019.1

基本認識が一致したため、県は、「地質構造・水資源」「生物多様性」の2つの専門部会を設置

2019.8

JR東海が、先進坑がつながるまでの工事期間中、山梨、長野両県へトンネル湧水が流出し、一定期間は水を戻せないことを表明

2019.9

県が、「引き続き対話を要する事項」(47項目)を取りまとめ

トンネル湧水の全量戻しが前提であることを認識するよう求める

2020.4

JR東海への助言・指導等を目的に有識者会議を設置

県は、47項目全てを議論するよう求める

2021.12

有識者会議が「大井川水資源問題に関する中間報告」をとりまとめ

2022.4

JR東海が、先進坑がつながるまでの工事期間中、県外流出量と同量を大井川に戻す方策として、田代ダム取水抑制案を検討することを公表

県は、地質構造・水資源部会専門部会でJR東海との対話を再開

2023.10

JR東海が、田代ダム取水抑制案の実施案を提示

2023.11

JR東海が示した田代ダム取水抑制案の実施案を、大井川利水関係協議会が了解

2023.12

田代ダム取水抑制案の実施について、JR東海と東京電力RPが基本合意

2024.6

静岡県、山梨県、JR東海の三者で、掘削工事等により新たに流動することになる水の流れが課題であり、健全な水循環の回復措置が必要であること等について合意

2024.9

県境を越えて高速長尺先進ボーリングを実施することについて、大井川利水関係協議会が了解

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