懸念1 トンネル湧水による大井川の水資源への影響

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ページID1057492  更新日 2024年3月7日

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県が心配していること

県境付近のトンネル工事による工事中の湧水の大井川水系外への流出(健全な水循環の保全)

静岡県内の断層帯と繋がっている可能性のある山梨県内の断層の図
静岡県内の断層帯と繋がっている可能性のある山梨県内の断層

JR東海は、山梨県内から静岡県境へ向けた高速長尺先進ボーリングを進めています。

県境付近では、静岡県内の断層帯と山梨県内の断層が下で繋がっている可能性があり、山梨県側からの高速長尺先進ボーリングによって、静岡県内の断層帯の高圧の地下水が、山梨県内の断層帯(県境から約300m)を通じて山梨県側に流出するおそれがあることから、大井川水系の健全な水循環(※)への影響を懸念しています。

また、トンネル工事が県境付近に近づくことによる健全な水循環への影響も懸念しています。

イラスト:健全な水循環のイメージ
出典:流域マネジメントの手引き(平成30年7月内閣官房水循環政策本部事務局)

※健全な水循環

「健全な水循環」とは、人の活動及び環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態での水循環をいいます。

生活や産業活動などの人の活動及び自然環境の保全に水が適切に機能するためには、適正な水量や水質が保たれていることが必要であり、工事等により流域の健全な水循環が毀損されないようにすることが重要です。

トンネル工事により河川流量が減少する場合の影響

平均降雨量の推移を表したグラフ
参考:井川地点月別平均降雨量

大井川の河川流量は、降雨量に大きく左右され、梅雨期に増える一方で冬期に減るなど、増大と減少を繰り返すことから、年間を通じて大きく変動します。

近年では、冬期の渇水時には、毎年のように取水制限(※)を行っています。

大井川の河川流量が減っている期間に、トンネル工事により、更に大井川の流量が減少することで、これまで以上に取水制限の日数が増加し、多様な水利用(生活用水、農業用水、工業用水、発電用水)に影響を及ぼすことを心配しています。

※取水制限

雨が降らずに、川の水が少ないときに、上流のダムに貯めている水がなくならないよう、川から、生活用水、農業用水、工業用水、発電用水など取水する量を減らすことを「取水制限」といいます。

JR東海との対話の状況

対話のポイント

JR東海から示された田代ダム取水抑制案が、影響を回避する保全策として了解できる段階に至ったことなどにより、今後の主な対話は、リスク管理モニタリングの段階に移ることとなります。
 

(1)田代ダム取水抑制案

先進坑がつながるまでの工事期間中、県外流出量と同量を大井川に還元する方策として、JR東海が示した2案のうちの1案が、「田代ダム取水抑制案」です。

田代ダム取水抑制案は、山梨県側から掘削する先進坑が県境を越えて静岡県側の先進坑とつながるまでの期間(10ヶ月と想定)に、静岡県から山梨県へ流出するトンネル湧水量(県外流出量)を計測しつつ、同時期に、東京電力リニューアブルパワー株式会社が管理する田代ダムにおいて、県外流出量と同量を大井川から取水抑制し、大井川に還元する方策です。

一方、田代ダム取水抑制案の実施案について、基本スキームは示されましたが、実際の運用サイクルやオペレーション、冬期に発電所を停止する場合の対応に関する東京電力リニューアブルパワー株式会社との協議結果は、具体的に示されていません。

また、リスク管理として、県外流出量と同量を取水抑制できない状態が継続する場合の対応、突発湧水など不測の事態への対応、取水抑制するための水量が不足する不確実性への対応についても対話が必要です。

これらについては、今後、地質構造・水資源部会専門部会において確認していきます。

イラスト:工事の一定期間、発電のための取水を抑制し、大井川に還元する方策
<田代ダム取水抑制案(B案)>出典:第12回県地質構造・水資源部会専門部会 資料1

(2)静岡県境に向けたトンネル掘削工事(高速長尺先進ボーリング)

県は、JR東海に対し、高速長尺先進ボーリングにより、新たに静岡県側から山梨県側に水が流出し、健全な水循環に影響を与える可能性があることから、県外に流出してしまう水を大井川水系に戻す方法等を決めてから高速長尺先進ボーリングを進めてほしいと求めています。

これに対し、JR東海は、県境から300mまでの区間は慎重に削孔を行うとし、ボーリングにより新たに静岡県側から山梨県側に水が流出していると判断される場合には、山梨県、静岡県等の関係者間で協議を行い、協議の結果水を戻すこととなった場合には、方法や時期についても山梨県、静岡県等の関係者間で協議し、理解の得られた方法で戻すと説明しています。(R5.8 第15回専門部会 資料4-2 p51~53)

一方、JR東海からは、高速長尺先進ボーリングの工程が明確に示されておりません

引き続き、流出してしまう水を戻す方法や高速長尺先進ボーリングの工程等について、地質構造・水資源部会専門部会で対話を進めていきます。

静岡県中央新幹線環境保全連絡会議 地質構造・水資源部会専門部会

県は、南アルプスにおけるリニア中央新幹線トンネル工事が大井川水系の水資源等に及ぼす影響を科学的根拠に基づき明らかにするため、地質学、水工学や地下水学などの専門家を委員とした「地質構造・水資源部会専門部会」を設置し、JR東海と対話を行っています。

大井川利水関係協議会

大井川水系の水資源の確保及び水質の保全という目的のもと、平成30年8月に、県と流域の関係者を会員とした大井川利水関係協議会を設立しました。

リニア中央新幹線整備における大井川水系の水資源の確保及び水質の保全のため、会員は相互に対等な立場で、協議会規約に基づき、JR東海との連絡、調整及び交渉は「静岡県中央新幹線対策本部」を通じて行い、一体となって取り組んでいます。

国の有識者会議

国土交通省は、令和2年4月、これまで県とJR東海で行われてきた議論等を検証し、その結果を踏まえ、国土交通省がJR東海に対して具体的な助言、指導等を行っていくことを目的として、有識者会議を設置しました。

第1回(令和2年4月27日)から第13回(令和3年12月19日)までの約1年8か月、大井川の水資源問題について、科学的・工学的な観点から議論が行われ、その議論を総括した「大井川水資源問題に関する中間報告」がとりまとめられました。

大井川の概要・水利用の状況

大井川は、静岡県中部に位置し、その源を静岡県、長野県、山梨県の3県境に位置する間ノ岳〈標高3,190m〉に発し、静岡県中央部を南北に貫流しながら、島田市付近から広がる扇状地を抜け、その後駿河湾に注ぐ、流域面積1,280平方キロメートル、幹川流路延長168kmの一級河川です。

大井川の水は、流域の8市2町において、水道、農業、工業、発電の用水に利用されています。

農業用水として、流域の約1万2千haの農地の水源として供給され、中でも、県下のお茶の生産量の約5割を占める牧之原台地の水源となっています。 

また、大井川流域の企業は、表流水を工業用水として利用しているだけでなく、約400の企業が約900本の井戸を掘り地下水を利用しています。

ビールや酒造メーカー、製紙や発電など、様々な事業者が大井川の水に深く依存しています。

地図:大井川水系図

大井川水資源問題にかかる対話の経緯

2013.9

JR東海が、環境影響評価準備書で、南アルプストンネル工事により、大井川の流量が毎秒2m3/s(※)減少すると予測

※約60万人の生活用水に相当

2014.3

(知事意見)

県は、環境影響評価準備書に対する知事意見で、トンネル湧水の全量を戻すことを求める

 JR東海:トンネル湧水による河川流量の減少分は特定できるため、減少分だけ戻す

 (全量戻しは不要)

 静岡県:河川流量の減少分は特定できない。単純にトンネル湧水全量を戻すべき

2017.4

県は、事後調査報告書(H29.1)に対する知事意見で、トンネル湧水全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すことを早期に表明することを求める

2018.10

(知事意見から4年半後)

JR東海が、原則としてトンネル湧水の全量を大井川に流す措置を実施することを表明

2019.1

基本認識が一致したため、県は、「地質構造・水資源」「生物多様性」の2つの専門部会を設置

2019.8

JR東海が、先進坑がつながるまでの工事期間中、山梨、長野両県へトンネル湧水が流出し、一定期間は水を戻せないことを表明

2019.9

県が、「引き続き対話を要する事項」(47項目)を取りまとめ

トンネル湧水の全量戻しが前提であることを認識するよう求める

2020.4

JR東海への助言・指導等を目的に有識者会議を設置

県は、47項目全てを議論するよう求める

2021.12

有識者会議が「大井川水資源問題に関する中間報告」をとりまとめ

2022.4

JR東海が、先進坑がつながるまでの工事期間中、県外流出量と同量を大井川に戻す方策として、田代ダム取水抑制案を検討することを公表

県は、地質構造・水資源部会専門部会でJR東海との対話を再開

2023.10

JR東海が、田代ダム取水抑制案の実施案を提示

2023.11

JR東海が示した田代ダム取水抑制案の実施案を、大井川利水関係協議会が了解

2023.12

田代ダム取水抑制案の実施について、JR東海と東京電力RPが基本合意

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