令和2年度決算審査及び基金運用状況審査(令和3年度実施)について

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページID1033034  更新日 2023年1月30日

印刷大きな文字で印刷

歳入歳出決算及び基金運用状況審査意見書の概要

地方自治法第233条第2項の規定に基づき審査に付された令和2年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算並びに同法第241条第5項の規定に基づき審査に付された令和2年度定額の資金を運用するための基金の運用状況について審査し、その結果について、令和3年9月10日に知事へ意見書を提出しました。

意見書全文については、次のページをご確認ください。

歳入歳出決算審査意見書(一般会計及び特別会計)の概要

1.審査の対象

令和2年度静岡県一般会計及び11特別会計

2.審査の期間

令和3年8月4日から令和3年9月2日まで

3.審査の方針

令和2年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の審査は、次の点を重点に関係諸帳票、証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査、例月出納検査等の結果も考慮し実施した。

  1. 決算計数は、正確か
  2. 会計事務は、関係法令等に適合して処理されているか
  3. 予算の執行は、議決の趣旨に沿って適正かつ効果的にされているか
  4. 資金は適正に管理され、効率的に運用されているか
  5. 財政は、健全に運営されているか
  6. 財産の取得、管理及び処分は、適正に処理されているか

4.審査の結果

令和2年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の計数については、決算書、同附属書類、関係諸帳票、指定金融機関の現金有高表等を照合審査した結果、正確であることを確認した。

また、財政運営、予算の執行、会計及び財産・資金に関する事務については、一部改善を要する事項も見受けられたが、おおむね適正に行われているものと認める。

5.審査の意見

(1)健全な財政運営の堅持について

歳入決算額は、新型コロナウイルス感染症の影響により県税は減少したものの、国の支援である国庫支出金の増額等により一般会計全体では前年度に比べ14.3%増加した。

県税の決算額は4,568億5,169万3千円であり、前年度決算額4,729億8,427万1千円に対しては、3.4%、161億3,257万8千円の減少であった。これは、消費税率引き上げにより地方消費税が増加したものの、新型コロナウイルス感染症の影響による企業収益の伸び悩み等により法人二税が前年度に比べ223億5,946万1千円減少(対前年度比△15.5%)したほか、令和元年10月施行の税制改正により、自動車取得税が廃止され、県税収入が減少したこと等によるものである。

地方消費税清算金は1,632億7,873万9千円で、前年度決算額1,338億1,658万6千円に対し、294億6,215万3千円(同22.0%)の増加となった。これは、消費税率引上げによるものである。国庫支出金は2,457億6,508万7千円で、前年度決算額1,209億5,701万3千円に対し、1,248億807万4千円(同103.2%)の増加となった。これは、新型コロナウイルス感染症関連事業実施等によるものである。

県債は2,167億5,649万8千円で、前年度決算額1,674億7,875万3千円に対し、492億7,774万5千円(同29.4%)の増加となった。これは、県税収入の減少に伴う減収補塡債の発行や国の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策事業」への対応等に伴うものである。

歳出決算額では、義務的経費については、前年度と比べ扶助費が5.7%増加したが、歳出全体に占める構成比は0.7ポイント減の9.4%となった。義務的経費全体でも1.2%の増加となったが、歳出全体に占める構成比は5.6ポイント減の44.9%となった。

投資的経費については、前年度から16.1%の増加となったが、これは普通建設事業費のうち補助事業費が187億2,729万9千円(20.3%)の増加、単独事業費が59億3,280万7千円(7.5%)の増加となったこと等によるものである。

また、その他経費は新型コロナウイルス感染症関連事業の増加などにより、前年度から31.8%増加し、歳出に占める構成比も38.2%と、5.2ポイント上昇した。

次に、一般会計の県債残高についてであるが、新ビジョンの目標に設定している通常債の残高は、これまで着実に縮減が図られてきたが、前年度末より426億4,562万4千円増加し、1兆6,041億6,628万5千円となり、通常債残高の「上限1兆6,000億円程度」という水準の上限に達している。また、臨時財政対策債の残高は1兆1,660億5,243万5千円となり、前年度末より134億5,258万6千円増加した。

県の財政構造を示す7つの指標を見ると、義務的経費比率、経常収支比率及び実質公債費比率は改善したものの、一般財源等比率、自主財源比率、財政力指数及び将来負担比率は前年度に比べて悪化している。義務的経費比率は44.9%にまで減少したが、これは、扶助費や公債費の増加に対して、その他経費などの新型コロナウイルス感染症関連事業がそれ以上に増加したため、義務的経費比率の構成比が見かけ上減少しているためである。また、将来負担比率は目標値の範囲内を維持しているものの、悪化傾向が続いており、これらは、リーマンショック以来の危機的状況であるともいえる。

財源不足については財政調整用の基金を取り崩すことによりこれを補っているが、取り崩しによる補填額は、令和3年度当初予算編成を踏まえた試算における見込み額120億円に対し、70億円となった。また、この試算の結果、令和3年度には155億円の財源不足が見込まれることとなった。

上記の県債残高の状況、7つの指標の推移や財政調整用の基金の取崩しの状況等を勘案すると、財政状況は実質公債費比率18%未満、将来負担比率400%未満という新ビジョンの目標の範囲を維持しているものの、前年度より一層厳しい状況になっている。

新ビジョンでは令和3年度までに財政調整用の基金に頼らない収支均衡を達成することを目標に掲げてきたが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う県税収入の大幅な減少等による財源不足の拡大により実現は厳しいことから、令和3年度に策定する新しい総合計画にあわせ、歳出構造の見直し、県債残高の縮減策などについて検討を進めることとしている。

検討に当たっては、着実な県債残高縮減、アフターコロナを見据えた歳出の見直し、今まで以上の歳入確保などに努めることで、健全財政の堅持を図られたい。

加えて、国から元利償還金の財源保障があり実質的な地方交付税として扱われているとはいえ、臨時財政対策債の残高が1兆1,600億円を超え、全体の県債残高の41.5%を占めるまでに累増していることから、国に対してはあらゆる機会を活用して、中長期的に安定的な税財源の構築、臨時財政対策債の廃止を含めた改革と償還財源の別枠での確保を強力に働きかけられたい。

(2)収入未済額の縮減への取組について

収入未済額から徴収猶予等の措置をとったものを除いた実収入未済額が、平成22年度の205億6,785万2千円をピークに減少に転じ、令和2年度には81億4,252万2千円と、6割を超えるまで縮減していることについて、その取組は評価できる。

県税関係、県税関係以外のそれぞれの状況は次のとおりである。

(ア)県税関係

県税に税外収入の加算金を加えた実収入未済額は、40億5,838万3千円となり、前年度に比べ16.8%、8億1,699万9千円の減少となり、県税全般で実収入未済額が削減された。特に個人県民税の減少額は5億3,610万6千円となっており、平成24年度から市町と協働で進めてきた特別徴収の徹底など、取組の強化に努めてきたことの成果と考えられる。。

また、個人県民税(均等割・所得割)の収入率は、平成24年度以降の上記取組による滞納繰越額の減少もあって96.6%となり、前年度より0.5ポイント上昇した。収入率の全国順位は、34位と前年度から順位を上げたが、現在も全国平均96.9%は下回っている。県政運営の自主性を保持する上で県税の確保は重要な命題であり、特に個人県民税の徴収については、県職員の市町職員身分併任による短期派遣などにより、引き続き市町と協働での対策を進めるなど、より一層の徴収強化に努められたい。

(イ)県税関係以外

令和2年度の実収入未済額は40億8,413万9千円で、前年度に比べ1.5%、6,158万2千円の減少となった。

未済額の主なものは、中小企業高度化資金貸付事業等特別会計に係る貸付金償還金18億2,607万9千円、平成25年度に発生した不法投棄に係る産業廃棄物原状-12-回復代執行費用返納金7億4,100万6千円のほか、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金、生活保護費返還金、県営住宅に係る公営住宅使用料等などである。

県税関係以外の未収金については、全庁的な観点から部局を横断して対策に取り組む「税外収入債権管理調整会議」を設置し、平成23年度から過年度未収金について、回収目標や整理目標を立て縮減に向けた各種の取組を行っている。令和2年度においては、債権管理マニュアルの活用や債権回収の外部委託の実施等の取組により、実収入未済額が縮減している債権もある一方で、医学修学研修資金返還金、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金など、新規未収金の発生により実収入未済額が増加しているものもあることから、引き続き、収入未済の縮減・解消に努めるとともに、新たな収入未済の発生防止に努力されたい。

(3)事業繰越の縮減について

翌年度への繰越しの状況は、一般会計で1,035億1,021万円、前年度比139.8%と増加し、特別会計については6億8,416万7千円で、前年度比180.8%と大幅に増加している。

一般会計では、通常分が新型コロナウイルス感染症の影響からくる部品納入遅れ等による執行遅延などにより前年度に比べ17億5,362万2千円増加し、また、追加分(国補正や災害発生に伴う事業の繰越)も新型コロナウイルス感染症関連事業が切れ目なく実施されたことや「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策事業」等国補正予算の増加等により283億3,190万円増加している。

通常分は事業効果を早期に発揮できるよう、関係機関等との十分な調整を行うなど、的確な計画立案及び効率的な予算執行を図り、繰越額の縮減に努められたい。また、追加分は事業の早期着手、早期完了に向けて計画的な事業執行に努められたい。

(4)不用額について

歳出予算における不用額は、一般会計では、367億8,049万5千円で、前年度比204.2%、187億7,063万9千円の増加となっている。また、特別会計では、227億1,710万円で、前年度比232.6%、129億4,926万9千円の増加となっている。

一般会計の内訳の中で増加している主なものは、社会資本整備総合交付金事業費、新型コロナウイルス感染症対策事業費助成などである。

また、特別会計の内訳で増加している主なものは、国民健康保険事業特別会計における保険給付費等交付金等の執行残などである。

令和2年度の不用額は、一般会計、特別会計いずれも前年度の約2倍と大きく上回っている。その中には、新型コロナウイルス感染症関連事業など、2月補正時点の見通しが困難であったため実績と見込みに大きく差が出るなどやむを得ないものもあると思われる。

一方で、当初予算計上事業など、実績を見込むことが可能な事業に関しては財源確保が困難な状況を踏まえ、財源の有効な活用を図るため、予算の適正額の確保と適時・的確な見直しによる不用額の縮減について、当初予算計上時から精度の高い所要経費の見積りを行うとともに、事業の進捗状況を的確に把握した上で補正等を行い、今まで以上に効率的な予算執行に努められたい。

(5)財務会計事務等の適正な執行について

令和2年度定期監査等においては、事務放置による不動産取得税の著しい課税遅延など11件を監査結果として一番重い「指摘」としたほか、業務委託の不適切な契約、例月指導検査における注意事項等の多発等50件を「注意」とした。監査結果は「意見」「指導」を含めると全体で197件、前年度に比べ22件の減少となっている。

しかし、財務会計に関わるものは、101件であり、前年度より51件増加している。これは、重点的に監査したAED(自動体外式除細動器)の管理に関するものが増加したほか、業務委託に係る不適切な事務処理等支出・契約に関するものが多数発生していたものである。

令和2年度から新たな内部統制制度が開始され、各所属で正確な会計事務の大切さを認識し、リスクの選定、実効性のあるチェック機能等の強化を図っており、内部統制制度の推進部局である出納局においても、会計事務指導検査等による指導や財務会計に係る研修等の実施により、適切な事務処理が行われるよう取り組んでいる。

このような中、財務会計の監査結果等が増加していることを踏まえ、担当者の資質の向上だけでなく、組織として事務の適正な執行を確保する体制づくりが重要である。

内部統制制度が有効に働き、適正な事務処理が行われるよう、評価部局、各推進部局間で連携を図りつつ、システムの見直しや組織によるチェック体制の強化など継続的に取り組み、内部統制による適正な会計事務の執行に努められたい。

(6)財産管理等について

財産管理に係る事務については、「指摘」となるような重大な誤りはなかったが、建物の取壊しに係る不適切な事務処理により「注意」となった案件が発生したほか、その他金券類の不適切な管理、AED(自動体外式除細動器)の不適切な管理などの事務処理上の不適切な事例が散見されている。県有財産は、県民の財産であるという意識をもって適切な管理に努められたい。

一方で、県では、平成25年度にファシリティマネジメントの実施方針を作成し、「総量適正化」、「施設の長寿命化」、「維持管理経費の最適化」、「施設の有効活用」の4本柱により、経営的な視点から県有施設を総合的に企画・管理・活用する取組を行っている。未利用財産の売却については、平成30年度からの「県有財産の売却計画」において、5か年で55億6,516万8千円の売却を進めていくこととし、令和2年度は、18億7,158万3千円を売却し、売却計画に対する達成率は92.8%であった。未利用財産は境界確定の状況などにより売却時期が変動したり、計画外であっても新たに売却が可能となることもあるため、毎年度、最新の売却対象を整理した上で、今後も計画的かつ積極的に売却を進められたい。

また、今後30年間の建替えや集約化等の管理方針及び対策に要する費用を記載した「個別施設計画(公共建築物)」を令和元年度に策定し、公共建築物の総量適正化と長寿命化の取組を計画的に推進することとし、特に「総量適正化」については、2049年度(R31)までの30年間で公共建築物の15%の削減を目標としている。

令和2年度は、面積で92,667平方メートルを削減し、個別施設計画の管理目標に対する達成率は2.34%となっている。当該目標をできるだけ早期に達成するため、更なる削減に努められたい。

加えて、長寿命化の取組により、建物劣化診断を実施し、今後の中長期維持保全計画の策定につなげていることから、県有施設安全性の確保と財政負担の軽減の両立に努められたい。

基金運用状況審査意見書の概要

1.審査の対象

静岡県立美術博物館建設基金

2.審査の期間

令和3年8月4日から令和3年9月2日まで

3.審査の方針

静岡県立美術博物館建設基金条例の趣旨に従って適正に運用・管理されているか、調書と関係帳簿及び証拠書類等を調査照合し審査を行った。

4.審査の結果及び意見

審査の結果、本基金は適正に運用されており、計数にも誤りはなかった。

静岡県公営企業決算審査意見書の概要

地方公営企業法第30条第2項の規定に基づき審査に付された令和2年度静岡県公営企業の決算を審査し、その結果について、令和3年9月10日に知事へ意見書を提出しました。

意見書全文については、次のページをご確認ください。

静岡県公営企業決算審査意見書の概要

1.審査の対象

  • 令和2年度静岡県工業用水道事業
  • 令和2年度静岡県水道事業
  • 令和2年度静岡県地域振興整備事業
  • 令和2年度静岡県立静岡がんセンター事業
  • 令和2年度静岡県流域下水道事業

2.審査の期間

令和3年8月4日から令和3年9月2日まで

3.審査の方針

令和2年度静岡県公営企業の決算審査は、次の点に重点を置き、関係諸帳票及びその他証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査及び例月出納検査等の結果も考慮し実施した。

  1. 決算報告書及び財務諸表は、地方公営企業法等関係法令に準拠して作成されているか
  2. 決算報告書及び財務諸表は、経営成績及び財務状態を適正に表示しているか
  3. 各事業は、地方公営企業法第3条の経営の基本原則の趣旨に従って運営されているか

4.審査の結果

工業用水道事業ほか4事業の決算報告書及び財務諸表は、いずれも地方公営企業法等関係法令に準拠して作成され、令和3年3月31日現在の財政状況及びその日をもって終了する事業年度の経営成績を適正に表示しているものと認める。

また、一部に厳しい経営状況の事業もあるが、各事業は、地方公営企業の基本原則の趣旨に従い、おおむね適正に運営されているものと認める。

5.審査の意見

(1)工業用水道事業

工業用水道事業は、大口受水企業の利用廃止に伴う給水収益の減少等により、当年度純利益が前年度比1億4,565万8千円(80.9%)の減益となったが、純利益3,441万1千円を確保した。

工業用水道別に見ると、7工業用水道のうち当年度に純損失を計上した工水は、大口受水企業の給水収益の減少の影響を受けた東駿河湾に加え、大口受水企業の利用廃止の影響を受けた富士川の2工水となっている。また、修繕料等の維持管理費の増加などにより純利益が前年度より減少した工水は、静清、中遠、西遠、湖西の4工水である。

また、年間実給水量を見ると、7工水の合計で前年度比8,829千立方メートル(5.3%)減少した。今後も受水企業の利用廃止や事業規模の縮小、節水技術の向上等により、給水収益が減少する可能性があることに加え、老朽化する施設等の大規模な更新が必要となり、さらに厳しい経営状況が見込まれる。

このような状況の中、「水道施設更新マスタープラン」に基づく「第5期長期修繕・改良計画」を踏まえた平成30年度から10年間の経営の基本計画である「経営戦略(第4期中期経営計画)」に基づき、計画的に事業を実施している。

また、中堅・若手職員を中心とした「課題解決型タスクフォース」により、電力調達の改善、浄水場発生土の有効活用など、積極的なコスト削減や収益確保に取り組んでおり、その成果を県内市町等と共有し、コスト削減や収益増大に寄与するため、「創意工夫・コスト削減事例集」として公表している。

こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)」に基づいて、経費節減に取り組み、新たに創設した工業用水利用促進インセンティブ制度を活用し、新規顧客開拓に積極的に取り組むなど、更なる経営基盤の強化に努められたい。

また、「第5期長期修繕・改良計画」及び「第3期耐震計画」に基づき、着実に施設更新や耐震化を進められたい。

  1. 急速に経営悪化した東駿河湾と富士川工水については、両工水の再編を含めた施設の効率的な運用について検討しているが、令和4年度の事業統合と料金改定に向け、ユーザーとの合意形成、関係機関との協議等を進め、できる限り早期に一体的な運用によるコスト削減と工業用水の安定供給を果たせるよう事業を進められたい。

特に、富士川工水では、大口顧客の利用廃止等により給水収益が前年度と比較し約5割減少しており、給水収益を回復させるための顧客開拓に一層努められたい。

  1. 柿田川工水と駿豆水道の中央処理装置の整備に併せて、施工と維持管理の一括発注(ビルドメンテナンス)を行ったように民間的手法の導入を拡大させるなど、今後も「課題解決型タスクフォース」を中心に業務改善に取り組まれたい。
(2)水道事業

水道事業は、当年度純利益が前年度比9,505万5千円(8.1%)の減益となった。

3水道事業のいずれも純利益を計上したが、榛南及び遠州は前年度より純利益が減少した。年間実給水量については、駿豆及び榛南は減少したが遠州は増加しており、当年度の3水道の合計実給水量は、前年度比1,203千立方メートル(1.6%)の増加となった。

黒字経営が継続しているが、今後、人口減少等の影響による水需要の低下や管路等の大規模更新を行うに当たっての費用の増加が見込まれている。

また、最近、全国で想定を超える規模での自然災害が多発し、甚大な被害が発生している。水道事業は県民の生活を支える公共インフラであることから、災害発生後も速やかに安全・安心な水を供給することが求められている。

こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)」に基づき、施設整備費の縮減、運営コストの削減など、更なる経費削減に取り組むとともに、受水市町の水需要等による経営環境の変化に対応できるよう、市町の意見を踏まえて計画の見直しを図られたい。
  2. 「第5期長期修繕・改良計画」及び「第3期耐震計画」に基づき、施設の効率的な更新や耐震化を計画的に進めるとともに、受水市町と連携した訓練等を充実させるなど、災害や事故等の緊急事態に対応できる体制の確保に努められたい。
  3. 駿豆水道と柿田川工水の中央処理装置の整備に併せて、施工と維持管理の一括発注(ビルドメンテナンス)を行ったように民間的手法の導入を拡大させるなど、今後も「課題解決型タスクフォース」を中心に業務改善に取り組まれたい。
(3)地域振興整備事業

地域振興整備事業は、レディーメード方式により整備した「富士山麓フロンティアパーク小山」の最終区画が分譲され、セミ・オーダーメード方式により整備した「藤枝高田」のA工区の引渡しが完了するなど順調に進んでいる。前年度同様に土地売却収益を出し、当年度は1億2,731万7千円の純利益をあげた。

また、「藤枝高田」のB工区は令和3年度の引渡しを予定しており、同じくセミ・オーダーメード方式により整備を進めている「富士大淵」については、計画に沿って施工中である。

さらに、工業用地開発可能性調査に対する助成や技術的支援などによる開発候補地の掘り起こしを市町と連携して進め、令和元年度に創設した「セミ・レディーメード」方式等による事業化を推進している。

こうした状況を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「富士大淵」については、令和4年度に富士市への引渡しができるよう、計画に沿った事業の推進に努められたい。
  2. 「セミ・レディーメード」方式は新たな取組であるため、市町との連携強化を図り、事業の推進に努められたい。

また、新たな工業用地の開発に当たっては多彩な用地造成方式を活用し、市町と密接に連携しながら、企業ニーズに対応した工業用地等の供給を進められたい。

(4)静岡がんセンター事業

静岡がんセンターは、本県がん対策の中枢を担う高度がん専門医療機関であり、令和2年4月には全床開棟して615床となった。また、令和2年3月に、厚生労働大臣からがんゲノム医療中核拠点病院の指定を受け、がんゲノム医療に取り組み、本県におけるがんゲノム医療の中核として、治験・臨床試験、研究の推進やがんゲノム医療に関わる人材の育成に、大きな期待が持たれている。

令和2年度の病院事業は、新型コロナウイルス感染症の影響で収支が悪化し、平成26年度以来6年ぶりの赤字となった。研究所事業の損失を含めた全体では、損失が大幅に増加し、6億3,430万3千円の純損失となり、未処理欠損金も増加している。

経営指標も悪化しており、病床利用率が81.6%と、前年度に比べ、9.5ポイント低くなっている。

また、医師については、定数200人であるところ、令和2年度末は154人となっており、46人不足している。

こうした点を踏まえ、次のとおり意見を述べる。

  1. 病院事業は、近年、「新公立病院改革プラン」(以下「プラン」という。)に基づき、経営改善に取り組んだ結果、黒字を継続していたが、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で経営が大幅に悪化しており、赤字となった。一方で、プランの数値目標の一部は達成されていないため、引き続き経営戦略会議等による検証を行い、効率的な病院経営に取り組まれたい。

本プランは令和2年度が最終年であり、新しいプランの策定が望まれる。国の指針が示された後には、早急に策定し、今まで以上に健全な経営に取り組まれたい。

  1. 過年度未収金は、前年度に比べ509万1千円増と2年連続して増加しており、累計で1億992万円と多額となっている。コロナ禍で支払いが困難な患者が増えているとのことであるが、患者本位のもと、患者に寄り添ったきめ細かい対応による未収金発生の未然防止と円滑な未収金の早期回収に努められたい。
  2. 本県におけるがんゲノム医療中核拠点病院として、治験・臨床試験、研究の推進やがんゲノム医療に関わる人材の育成において、大きな役割を果たすことが期待されていることから、必要な医師等の早期確保対策に努められたい。
(5)流域下水道事業

流域下水道事業は、平成31年4月から公営企業会計へと移行し、令和2年度の純利益は、8億2,299万8千円となった。

施設の老朽化による更新需要の増大や人口減少等、流域下水道事業を取り巻く経営環境の変化に対応するための中長期的な見通しに立った経営の基本方針や取組、投資財政計画を定めた「静岡県流域下水道事業経営戦略」(以下本頁において「経営戦略」という。)を令和3年2月に策定しており、この経営戦略の計画的かつ着実な実施が求められている。

こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 令和3年度は、令和4年度以降の浄化センターの維持管理における包括民間委託の契約(以下本頁において「包括民間委託契約」という。)内容を検討する時期に当たるため、経営戦略に基づき、以下の点において運営コストの縮減等による経営基盤の強化に向け取り組まれたい。
    • 包括民間委託契約に関し、入札の競争性を高める等コスト縮減に向けた取組
    • 経営戦略で示されている浄化センターの電力調達の競争入札導入等、コスト縮減に向けた取組
  2. 平成31年3月に策定した「ストックマネジメント計画」に基づき、下水道の施設・設備について、点検調査や診断の結果により施設・設備の健全度を把握しながら計画的な修繕・更新を進め、事業費の平準化と施設の長寿命化を進められたい。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビ株式会社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

監査委員事務局監査課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-2927
ファクス番号:054-221-3566
kansaka@pref.shizuoka.lg.jp