令和3年度決算審査及び基金運用状況審査(令和4年度実施)

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ページID1046475  更新日 2023年1月30日

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歳入歳出決算及び基金運用状況審査意見書の概要

地方自治法第233条第2項の規定に基づき審査に付された令和3年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算並びに同法第241条第5項の規定に基づき審査に付された令和3年度定額の資金を運用するための基金の運用状況について審査し、その結果について、令和4年9月9日に知事へ意見書を提出しました。

意見書全文

歳入歳出決算審査意見書(一般会計及び特別会計)の概要

1.審査の対象

令和3年度静岡県一般会計及び11特別会計

2.審査の期間

令和4年7月22日から令和4年8月30日まで

3.審査の方針

令和3年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の審査は、次の点を重点に関係諸帳票、証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査、例月出納検査等の結果も考慮し実施した。

  1. 決算計数は、正確か
  2. 会計事務は、関係法令等に適合して処理されているか
  3. 予算の執行は、議決の趣旨に沿って適正かつ効果的にされているか
  4. 資金は適正に管理され、効率的に運用されているか
  5. 財政は、健全に運営されているか
  6. 財産の取得、管理及び処分は、適正に処理されているか

4.審査の結果

令和3年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の計数については、決算書、同附属書類、関係諸帳票、指定金融機関の現金有高表等を照合審査した結果、正確であることを確認した。

また、財政運営、予算の執行、会計及び財産・資金に関する事務については、一部改善を要する事項も見受けられたが、おおむね適正に行われているものと認める。

5.審査の意見

(1)健全な財政運営の堅持について

歳入決算額は、県税の増加や、国の支援である国庫支出金の増額等により一般会計全体では、1兆5,067億7,395万9千円であり、前年度決算額1兆3,779億6,024万4千円に比べ1,288億1,371万5千円、9.3%増加した。

県税の決算額は4,874億3,144万2千円であり、前年度決算額4,568億5,169万3千円に比べ305億7,974万9千円、6.7%の増加となった。これは、輸出関連製造業の企業収益の持ち直し等により、前年度に比べて、法人二税が178億7,104万1千円、地方消費税が84億230万8千円それぞれ増加したことによるものである。

地方消費税清算金は、1,777億3,667万1千円で、前年度決算額1,632億7,873万9千円に比べ144億5,793万2千円、8.9%の増加となった。これは、消費税率引上げの影響及び輸入取引額の増加によるものである。国庫支出金は2,885億1,031万円で前年度決算額2,457億6,508万7千円に比べ427億4,522万3千円、17.4%の増加となった。これは、新型コロナウイルス感染症関連事業の実施等によるものである。

県債は、1,948億8,700万円で、前年度決算額2,167億5,649万8千円に比べ218億6,949万8千円、10.1%の減少となった。これは、県税収入の増加に伴い減収補塡債や退職手当債などの資金手当債の発行を抑制等したものである。

歳出決算額は、その他経費の増加等により一般会計全体では、1兆4,854億3,627万7千円であり、昨年度決算額1兆3,571億6,998万2千円に比べ1,282億6,629万5千円、9.5%増加した。

義務的経費については、前年度と比べ扶助費が3.9%増加したが、歳出全体に占める構成比は0.5ポイント低下して8.9%となった。義務的経費全体でも、0.7%の増加となったが、歳出全体に占める構成比は3.6ポイント低下して41.3%となった。

投資的経費については、前年度から4.9%の減少となった。これは、国直轄事業、県単独事業が減少したこと等によるものである。

また、その他経費は新型コロナウイルス感染症関連事業の増加などにより、前年度から26.0%増加し、歳出に占める構成比も5.8ポイント上昇して44.0%となった。

次に、一般会計の県債残高についてであるが、新ビジョンの目標に設定している通常債の残高は、令和元年度までは着実に縮減が図られてきたが、令和2年度に426億4,562万4千円増加し、1兆6,041億6,628万5千円となり、通常債残高の「上限1兆6,000億円程度」という水準の上限に達した。令和3年度は、資金手当債等の発行を抑制したことから、前年度に比べ10億460万1千円減少したが、1兆6,031億6,168万4千円と引き続き、新ビジョンの目標水準の上限となっている。

また、臨時財政対策債の残高は1兆1,983億7,931万4千円となり、前年度末より323億2,687万9千円増加した。

県の財政構造を示す7つの指標を見ると、一般財源等比率、義務的経費比率、経常収支比率、実質公債費比率及び将来負担比率は改善し、自主財源比率及び財政力指数は前年度に比べて悪化した。義務的経費比率は41.3%にまで改善したが、これは、扶助費や公債費の増加に対して、新型コロナウイルス感染症関連事業などのその他経費がそれ以上に増加したため、義務的経費比率の構成比が低下しているためである。

財源不足については財政調整用の基金を取り崩すことによりこれを補っているが、令和3年度の取崩しによる補塡額は、令和4年度当初予算編成を踏まえた試算における見込み額205億円に対し、40億円となった。また、この試算の結果、令和4年度には、387億円の財源不足が見込まれることとなった。

上記の県債残高の状況、7つの指標の推移や財政調整用の基金の取崩しの状況等を勘案すると、財政状況は実質公債費比率18%未満、将来負担比率400%未満という新ビジョンの目標の範囲を維持し、若干の持ち直しの気配は見られるものの、厳しい状況は続いている。

新ビジョンでは、令和3年度までに財政調整用の基金に頼らない収支均衡を目標に掲げてきたが、令和2年度の新型コロナウイルス感染症の影響による県税収入の大幅な減少等により達成が困難となり、令和3年度においても県税収入は増加したものの、達成は出来なかった。また、令和3年度に策定した新ビジョン後期アクションプランでは、このような厳しい財政状況を反映して、現行の財政構造を示す指標を継続することとしている。今後、社会保障関係経費やアフターコロナ対策経費等の増加も見込まれるが、着実な県債残高の縮減、歳出構造の見直し、今まで以上の歳入確保に努めることで、健全財政の堅持を図られたい。

加えて、国から元利償還金の財源保障があり実質的な地方交付税として扱われているとはいえ、臨時財政対策債の残高が1兆1,983億円を超え、県債残高全体の42.1%を占めるまでに累増していることから、国に対してはあらゆる機会を活用して、中長期的に安定的な税財源の構築、臨時財政対策債の廃止を含めた交付金制度に係る改革や償還財源の別枠での確保を強力に働きかけられたい。

(2)収入未済額の縮減への取組について

収入未済額から徴収猶予等の措置をとったものを除いた実収入未済額が、平成22年度の205億6,785万2千円をピークに減少に転じ、令和3年度には77億4,064万7千円と、6割を超えるまで縮減していることについて、その取組は評価できる。

県税関係、県税関係以外のそれぞれの状況は次のとおりである。

(ア)県税関係

県税に税外収入の加算金を加えた実収入未済額は、36億5,923万4千円となり、前年度に比べ3億9,914万9千円、9.8%の減少となり、県税全体で実収入未済額が削減された。特に個人県民税は前年度に比べ4億8,687万6千円、13.4%減少となり、平成24年度から市町と協働で進めてきた特別徴収の徹底など、取組の強化に努めてきたことの成果と考えられる。

また、個人県民税(均等割・所得割)の収入率は、平成24年度以降の上記取組による滞納繰越額の減少もあって96.9%となり、前年度より0.3ポイント上昇した。しかし、現在も全国平均の97.2%を0.3ポイント下回っている。県政運営の自主性を保持する上で県税の確保は重要な命題であり、特に個人県民税の徴収については、県職員の市町への短期派遣など、引き続き市町と協働での対策を進めるなど、より一層の徴収強化に努められたい。

(イ)県税関係以外

令和3年度の実収入未済額は、40億8,141万3千円で前年度に比べ272万6千円、0.1%の減少となった。

実収入未済額の主なものは、中小企業高度化資金貸付事業等特別会計に係る貸付金償還金17億8,780万7千円、平成25年度に発生した不法投棄に係る産業廃棄物原状回復代執行費用返納金7億4,026万4千円のほか、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金、生活保護費返還金、県営住宅に係る公営住宅使用料等である。

県税関係以外の未収金については、全庁的な観点から部局を横断して対策に取り組む「税外収入債権管理調整会議」を設置し、平成23年度から過年度未収金について、回収目標や整理目標を立て縮減に向けた各種の取組を行っている。令和3年度においても、債権管理マニュアルの活用や債権回収の外部委託の実施等の取組により、実収入未済額が縮減している債権もある。一方で、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金では、長年にわたり、前年度より実収入未済額が増加していることなどから、発生原因の分析と分析結果に基づいた対策を行うことにより、引き続き、実収入未済額の縮減・解消に努めるとともに、新たな収入未済の発生防止に努力されたい。

(3)事業繰越の縮減について

翌年度への繰越しの状況は、一般会計では1,448億8,463万9千円で、前年度に比べ413億7,442万9千円、40.0%と大幅に増加したが、特別会計については5億7,893万3千円で、前年度に比べ1億523万4千円、15.4%減少した。

なお、一般会計では、社会健康医学研究推進事業費が令和3年度から令和8年度までの6年間の継続費として設定され、令和3年度の繰越額(逓次繰越)は、1億2,524万9千円であった。また、事故繰越については、新型コロナウイルス感染症の影響による半導体不足に伴う機器の納入遅延などにより、48億7,564万9千円、前年度に比べ47億819万7千円、2,811.7%増加した。

令和3年度の明許繰越のうち、通常分は、公共関連事業の減少などにより、前年度に比べ18億4,087万9千円、3.8%減少したが、追加分(国補正や災害発生に伴う事業の繰越)は、新型コロナウイルス感染症関連事業が切れ目なく実施されたこと等により383億8,186万2千円、70.1%増加した。

一般会計については、前年度に比べて繰越額が大幅に増加しており、明許繰越のうち通常分については、的確な計画立案及び効率的な予算執行を図り繰越額の縮減に努められたい。追加分については、新型コロナウイルス感染症の発生状況等を踏まえ適時適切に対応願いたい。また、事故繰越については、早期完了に向けて計画的な事業執行に努められたい。

(4)不用額について

歳出予算における不用額は、一般会計では、472億1,429万5千円で、前年度に比べ104億3,380万円、28.4%の増加となった。また、特別会計では、238億6,693万1千円で、前年度に比べ11億4,983万1千円、5.1%の増加となっている。

一般会計の内訳の中で主なものは、新型コロナウイルス感染症対策事業費助成、社会資本整備総合交付金事業費などである。

また、特別会計の内訳で主なものは、国民健康保険事業特別会計における保険給付費等交付金などである。

令和3年度の不用額は、一般会計、特別会計いずれも前年度を上回っている。その中には、新型コロナウイルス感染症関連事業など、2月補正時点の見通しが困難であったため、実績と見込みに大きく差が出るなど、やむを得ないものもあると思われるが、財政の健全化を推進し、財源の有効な活用を図るため、予算の適正額の確保と適時・的確な見直しによる不用額の縮減について、当初予算計上時から精度の高い所要経費の見積りを行うとともに、事業の進捗状況を的確に把握した上で補正等を行い、今まで以上に効率的な予算執行に努められたい。

(5)財務会計事務等の適正な執行について

令和3年度定期監査等において、事務放置による個人事業税の課税漏れなど9件を監査結果として一番重い「指摘」としたほか、業務委託の不適切な事務処理、個人情報を含んだ書類の紛失等20件を「注意」とした。監査結果は「意見」「指導」を含めると全体で114件、前年度に比べ83件の減少となっている。

財務会計に関わるものは、40件であり、前年度より61件減少した。これは、令和2年度に重点的に監査したAEDの管理に関するものが減少したことなどによる。一方、道路占用料の徴収誤り等、同一の誤りが継続的に発生した。

工事技術関係では、令和3年度から、建設工事現場等における第三者事故の発生については、本庁に対して意見を発出することとし、個々の事務所に対しては監査結果を出さないこととしたため、監査結果等(指摘等)の件数は大幅に減少した。一方、合理的な理由がないにもかかわらず単独随意契約を締結していた不適切な契約事務手続が複数発生した。

令和2年度から新たに内部統制制度が開始され、各所属で財務に関する事務等を対象にリスクを抽出し、事前に不正や間違いの発生を防ぐ仕組み作りに取り組んでいるが、令和3年度の内部統制評価報告書では重大な不備が1件報告されている。

地方自治法の改正により、監査業務は、内部統制制度が有効に働き、適正な事務処理が行われることを前提に、より本質的な監査実務に人的、時間的資源を振り向け、効率性、有効性を高めていくこととしている。そこで、内部統制制度が有効に働き、適正な事務処理が行われるよう、評価部局、各推進部局間で連携を図り、システムの見直しや組織によるチェック体制の強化など継続的に取り組み、適正な財務会計事務等の執行に努められたい。

(6)財産管理等について

財産管理に係る事務については、「指摘」となるような重大な誤りはなかったが、豚熱ワクチンの不適切な管理により「注意」となった案件が発生したほか、不用品処分調書の未作成などの事務処理上の不適切な事例も散見されている。県有財産は、県民の財産であるという意識をもって適切な管理に努められたい。

一方で、県では、平成26年度にファシリティマネジメントの基本方針を作成し、「総量適正化」、「施設の長寿命化」、「維持管理経費の最適化」、「施設の有効活用」の4本柱により、経営的な視点から県有施設を総合的に企画・管理・活用する取組を行っている。未利用財産の売却については、平成30年度からの「県有財産の売却計画」において、5か年で55億6,516万8千円の売却を進めていくこととされている。当該計画は、毎年度末に見直されているが、令和3年度末において見直された計画によれば、80億146万6千円の売却を行うこととなっている。令和3年度は、5億5,129万円を売却して、平成30年度からの売却額累計は57億1,826億4千円となった。

未利用財産は境界確定の状況などにより売却時期が変動したり、計画外であっても新たに売却が可能となることもあるため、最新の売却対象を整理した上で、計画最終年度である令和4年度中に計画した売却が達成することができるよう、積極的に売却を進められたい。

また、今後30年間の建替えや集約化等の管理方針及び対策に要する費用を記載した「個別施設計画(公共建築物)」を令和元年度に策定し、公共建築物の総量適正化と長寿命化の取組を計画的に推進することとし、「総量適正化」については、2049年度(令和31年度)までの30年間で公共建築物の15%の削減を目標としている。

令和3年度は、面積で25,504平方メートルを削減し、個別施設計画の管理目標に対する達成率は累計で2.98%となっている。当該目標を達成するため、引き続き、計画的な削減に努められたい。

加えて、長寿命化の取組により、建物劣化診断を実施し、今後の中長期維持保全計画の策定につなげていることから、県有施設安全性の確保と財政負担の軽減の両立に努められたい。

基金運用状況審査意見書の概要

1.審査の対象

静岡県立美術博物館建設基金

2.審査の期間

令和4年7月22日から令和4年8月30日まで

3.審査の方針

静岡県立美術博物館建設基金条例の趣旨に従って適正に運用・管理されているか、調書と関係帳簿及び証拠書類等を調査照合し審査を行った。

4.審査の結果及び意見

審査の結果、本基金は適正に運用されており、計数にも誤りはなかった。

静岡県公営企業決算審査意見書の概要

地方公営企業法第30条第2項の規定に基づき審査に付された令和3年度静岡県公営企業の決算を審査し、その結果について、令和4年9月9日に知事へ意見書を提出しました。

意見書全文

静岡県公営企業決算審査意見書の概要

1.審査の対象

令和3年度静岡県工業用水道事業
令和3年度静岡県水道事業
令和3年度静岡県地域振興整備事業
令和3年度静岡県立静岡がんセンター事業
令和3年度静岡県流域下水道事業

2.審査の期間

令和4年7月22日から令和4年8月30日まで

3.審査の方針

令和3年度静岡県公営企業の決算審査は、次の点に重点を置き、関係諸帳票及びその他証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査及び例月出納検査等の結果も考慮し実施した。

  1. 決算報告書及び財務諸表は、地方公営企業法等関係法令に準拠して作成されているか
  2. 決算報告書及び財務諸表は、経営成績及び財務状態を適正に表示しているか
  3. 各事業は、地方公営企業法第3条の経営の基本原則の趣旨に従って運営されているか

4.審査の結果

工業用水道事業ほか4事業の決算報告書及び財務諸表は、いずれも地方公営企業法等関係法令に準拠して作成され、令和4年3月31日現在の財政状況及びその日をもって終了する事業年度の経営成績を適正に表示しているものと認める。

また、一部に厳しい経営状況の事業もあるが、各事業は、地方公営企業の基本原則の趣旨に従い、おおむね適正に運営されているものと認める。

5.審査の意見

(1)工業用水道事業

工業用水道事業は、給水収益は減少したが、未利用地売却による特別利益を計上し、当年度純利益が前年度より3億1,573万2千円(917.5%)の増益となり、純利益3億5,014万4千円を確保した。

工業用水道別に見ると、7工業用水道のうち、給水収益が減少した、ふじさん(富士川)、ふじさん(東駿河湾)の2工水は赤字を計上した。

ふじさん(富士川)は、各給水先への実給水量は前年度より増加したが、令和2年度に利用廃止した大口受水事業者分の基本料金が大幅に減少したことにより、給水収益は減少した。また、静清は委託料等の維持管理費の増加などにより純利益が前年度より減少した。

また、年間実給水量を見ると、7工水の合計で前年度より63千立方メートル増加したものの、5工水で減少した。今後も産業構造の変化、節水技術の向上等により、給水収益が減少する可能性があることに加え、老朽化する施設等の大規模な更新が必要となり、さらに厳しい経営状況が見込まれる。

このような状況の中、「水道施設更新マスタープラン」に基づく「第5期長期修繕・改良計画」を踏まえた平成30年度から10年間の経営の基本計画である「経営戦略(第4期中期経営計画)」に基づき、計画的に事業を実施してきたが、その後の経営環境の変化に対応するため、経営戦略の改訂を行った。

また、中堅・若手職員を中心とした「課題解決型タスクフォース」により、浄水発生土の有効活用と減量対策、施工と維持管理の一括発注(ビルドメンテナンス)などによる積極的なコスト削減や工業用水利用促進インセンティブ制度等を活用した収益確保に取り組んでいる。

こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、新たな管路整備手法の導入等による抜本的改革を進め、新規顧客開拓等による収益確保、電力使用量や浄水発生土処分費の削減等による運営コストの削減により収支改善を目指し、更なる経営基盤の強化に努められたい。
    また、「第5期長期修繕・改良計画」及び「第3期耐震計画」に基づき、着実に施設更新や耐震化を進められたい。
  2. 急速に経営悪化した東駿河湾と富士川工水については、急速に経営悪化した富士川と東駿河湾工水については、令和4年3月に両事業を統合し、「ふじさん工業用水道」とするとともに、令和4年4月分から料金改定を行った。令和11年度の本格的な一体的水運用の開始を目指しているが、一体的な運用によるコスト削減と工業用水の安定供給を果たせるよう事業を進められたい。
    また、給水収益を回復させるため、企業誘致と連携した顧客開拓に一層努められたい。
(2)水道事業

水道事業は、当年度純利益が前年度より1,907万円(1.8%)の減益となった。

3水道事業のいずれも純利益を計上したが、遠州は前年度より純利益が減少した。

年間実給水量については、駿豆及び榛南は減少したが遠州は増加しており、当年度の3水道の合計実給水量は、前年度より84千立方メートル(0.1%)の増加となった。

黒字経営が継続しているが、今後、人口減少等に伴う水需要の低下による施設規模の適正化や管路等の大規模更新を進めるに当たり、費用の増加が見込まれている。

また、水道事業は県民の生活を支える公共インフラであることから、災害発生後も速やかに安全・安心な水を供給することが求められている。

こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、新たな管路整備手法の導入等による抜本的改革を進め、電力使用量や浄水発生土処分費の削減等による運営コストの削減により、健全経営の維持に努められたい。
    また、「第5期長期修繕・改良計画」及び「第3期耐震計画」に基づき、施設の効率的な更新や耐震化を計画的に進めるとともに、関係機関と連携し、災害や事故等の緊急事態に対応できる体制の維持に努められたい。
  2. 榛南水道と静岡県大井川広域水道企業団が運営する大井川広域水道について、統合を目指す基本協定を令和4年3月に締結した。
    現在、関係者間で令和11年4月を目途とする統合に向けた協議を進めているが、統合による将来の更新費用や維持管理コストの削減、契約水量と使用水量の乖離の解消など、受水地域にとって統合によるメリットが活かされるよう事業を進められたい。
(3)地域振興整備事業

地域振興整備事業は、セミ・オーダーメード方式により整備した「藤枝高田」のB工区の引渡しが完了するなど順調に進んでおり、前年度同様に土地売却収益を出し、当年度は1億2,508万1千円の純利益をあげた。

また、同じくセミ・オーダーメード方式により整備を進めている「富士大淵」については、計画に沿って施工中であり、令和4年度の引渡しを予定している。

企業局では、従前、レディーメード方式により工業用地を先行造成しており、バブル崩壊後、売れ残り用地を抱えて造成単価を割り込む価格での分譲を進め、多額の赤字を計上した。平成14年度以降は、あらかじめ企業からの受注を受けるオーダーメード方式により事業を実施し、投下資金を確実に回収しながら売れ残り用地の処分を進めてきた。その後、東日本大震災の発生や新東名高速道路の開通など社会経済状況の変化等に対応するため、レディーメード方式による造成をモデル的に再開し、「富士山麓フロンティアパーク小山」を整備した。また、レディーメード方式とオーダーメード方式の双方のメリットを併せ持つセミ・オーダーメード方式による用地造成の仕組みを整備し、「藤枝高田」、「富士大淵」を整備している。さらに、令和元年度には比較的財政規模の小さな市町でも大規模な工業用地の造成が行えるセミ・レディーメード方式を創設し、多彩な造成方式による工業用地の造成に取組んでいる。

現在、市町への工業用地等開発可能性調査に対する助成や技術的支援などによる開発候補地の掘り起こしを進め、セミ・レディーメード方式等による事業化を推進している。

こうした状況を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、工業用地等の造成に当たっては、市町と連携して積極的に開発候補地の掘り起こしを進めるとともに、アフターコロナにおける用地需要に対応できるよう、企業局資金を活用したセミ・レディーメード方式等の多彩な造成方式により、多様な企業ニーズに対応した工業用地等の供給を進められたい。
    また、新たな用地造成等の事業化に当たっては、財政負担リスクをあらかじめ慎重に判断したうえで、社会経済情勢の変化を見定め、経営の健全性を確保し、効果的な事業執行に努められたい。
  2. 「富士大淵」については、令和4年度に富士市への引渡しができるよう、計画に沿った事業の推進に努められたい。
(4)静岡がんセンター事業

静岡がんセンターは、本県がん対策の中核を担う高度がん専門医療機関であり、令和2年4月には全床開棟して615床となった。また、令和2年3月に、厚生労働大臣からがんゲノム医療中核拠点病院の指定を受け、本県におけるがんゲノム医療への取組において、中心的な役割を果たしており、治験・臨床試験や研究の推進、がんゲノム医療に関わる人材の育成に、大きな期待が持たれている。

令和3年度の病院事業は、令和2年度に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響により、2年連続の赤字となった。研究所事業の損失を含めた全体では、前年度よりも改善したが、2億3,526万8千円の純損失となり、未処理欠損金も増加している。

経営指標は改善し、病床利用率が86.1%と、前年度に比べ、4.5ポイント高くなっている。

過年度医業未収金は、前年度に比べ567万円増と3年連続して増加しており、累計で1億1,559万1千円と多額となっている。

また、医師については、定数200人であるところ、令和3年度末は161人となっており、39人不足している。

こうした点を踏まえ、次のとおり意見を述べる。

  1. 病院事業は、平成28年度から令和2年度まで5年間の「新公立病院改革プラン」に基づき、経営改善に取り組んだ結果、令和元年度までは黒字を継続していたが、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で経営が悪化し赤字となり、令和3年度も前年度に引き続き赤字となった。一方で、新たなプランの策定準備も始まっており、旧プランの数値目標の一部は達成されていないため、引き続き経営戦略会議等による検証を行い、効率的な病院経営に取り組み、早期に病院事業の黒字化を図っていただきたい。
    また、新たなプランの策定に当たっては、今回の新型コロナウイルス感染症の教訓を踏まえつつ、国から示されたガイドラインに配慮し、新たに追加された医師の働き方改革への対応や新興感染症に備えた平時からの取組などを含め、引き続き経営強化を図るとともに公立病院としての役割を果たすことができるよう進めていただきたい。
  2. 過年度医業未収金について、コロナ禍で支払いが困難な患者が増えているとのことであるが、患者本位のもと、患者に寄り添ったきめ細かい対応による未収金発生の未然防止と早期回収に努められたい。
  3. 本県のがん治療の中核的な病院としての役割を果たすため、不足している医師の確保について引き続き努められたい。また、研究所を中心に行われているプロジェクトHOPEの研究成果を基に、民間企業等との連携による検査サービスの提供や将来の臨床に役立つ新技術の開発を進めるなど、その成果を可能な限り県民に還元するよう努められたい。
(5)流域下水道事業

流域下水道事業は、施設の老朽化による更新需要の増大や人口減少等、事業を取り巻く経営環境の変化に対応するため、平成31年4月から公営企業会計へと移行しており、令和3年度の純利益は、6億7,636万8千円となった。

財務諸表の作成により、経営・資産の状況を明確に把握できることとなり、中長期的な見通しに立った経営の方針や投資、財政の基本計画である「静岡県流域下水道事業経営戦略」を令和3年2月に策定しており、同経営戦略の計画的かつ着実な実施が求められている。

こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 平成31年3月に策定した「ストックマネジメント計画」に基づき、下水道施設について、計画的な修繕・更新を進めているところであるが、引き続き、点検調査や診断の結果により施設の健全度を把握し、必要に応じて同計画を見直しながら、事業費の平準化と施設の長寿命化を進められたい。
  2. 下水道施設は県民の生活や生命に関わる重要なライフラインであることから、地震、豪雨等の自然災害により、下水道機能が失われることがないよう、施設の計画的な耐震化・耐水化の推進に努められたい。
  3. 当事業は5市3町からの負担金を主な財源としていることから、引き続き、電気使用料の削減等による維持管理費の縮減に取り組み、効率的な事業運営を進めることで、市町の負担軽減に努められたい。

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