令和4年度決算審査及び基金運用状況審査(令和5年度実施)

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ページID1057998  更新日 2023年12月1日

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歳入歳出決算及び基金運用状況審査意見書の概要

地方自治法第233条第2項の規定に基づき審査に付された令和4年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算並びに同法第241条第5項の規定に基づき審査に付された令和4年度定額の資金を運用するための基金の運用状況について審査し、その結果について、令和5年9月11日に知事へ意見書を提出しました。

意見書全文

歳入歳出決算審査意見書(一般会計及び特別会計)の概要

1.審査の対象

令和4年度静岡県一般会計及び11特別会計

2.審査の期間

令和5年7月25日から令和5年8月31日まで

3.審査の方針

令和4年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の審査は、次の点を重点に関係諸帳票、証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査、例月出納検査等の結果も考慮し実施した。

  1. 決算計数は、正確か
  2. 会計事務は、関係法令等に適合して処理されているか
  3. 予算の執行は、議決の趣旨に沿って適正かつ効果的にされているか
  4. 資金は適正に管理され、効率的に運用されているか
  5. 財政は、健全に運営されているか
  6. 財産の取得、管理及び処分は、適正に処理されているか

4.審査の結果

令和4年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の計数については、決算書、同附属書類、関係諸帳票、指定金融機関の現金有高表等を照合審査した結果、正確であることを確認した。

また、財政運営、予算の執行、会計及び財産・資金に関する事務については、一部改善を要する事項も見受けられたが、おおむね適正に行われているものと認める。

5.審査の意見

(1)健全な財政運営の堅持について

歳入決算額は、県税等が増加したものの、地方交付税や県債の減少により、一般会計全体では、1兆4,721億641万6千円となり、前年度決算額1兆5,067億7,395万9千円に比べ346億6,754万3千円、2.3%減少した。
県税の決算額は4,976億5,575万6千円であり、前年度決算額4,874億3,144万2千円に比べ102億2,431万4千円、2.1%の増加となった。これは、輸出関連製造業の企業収益の持ち直しにより、前年度に比べて法人二税が124億5,477万6千円、8.9%増加したことによるものである。
国庫支出金は2,955億8,599万9千円で前年度決算額2,885億1,031万円に比べ70億7,568万9千円、2.5%の増加となった。これは、新型コロナウイルス感染症関連事業の実施等によるものである。
一方、自主財源の増加により地方交付税は、前年度決算額に比べ233億3,144万6千円、11.2%の減少となった。
県債は、1,470億1,000万円で、前年度決算額1,948億8,700万円に比べ478億7,700万円、24.6%の減少となった。これは、税収の増等により臨時財政対策債の発行が抑制されたほか、建設事業、施設整備事業等の投資的経費の水準調整や資金手当債の抑制に取り組んだことによるものである。

歳出決算額は、義務的経費の増加により一般会計全体では、1兆4,474億7,735万9千円であり、前年度決算額1兆4,854億3,627万7千円に比べ379億5,891万8千円、2.6%減少した。
義務的経費については、前年度と比べ決算額が1.7%増加し、歳出全体に占める構成比は1.8ポイント増加の43.1%となった。また、前年度と比べ決算額は、扶助費が3.5%、公債費が3.1%増加し、歳出全体に占める構成比はそれぞれ9.5%、13.1%となった。
投資的経費の決算額については、前年度から7.1%の減少となった。これは、補助事業や国直轄事業が減少したこと等によるものである。
また、その他経費は行政費の減少などにより、前年度から決算額が5.1%減少し、歳出全体に占める構成比も1.1ポイント減少して42.9%となった。

次に、一般会計の県債残高について、通常債の残高が1兆5,962億2,649万9千円となり、減収補塡債や退職手当債などの資金手当債の発行を抑制したことから、前年度に比べ69億3,518万5千円減少し、新ビジョン後期アクションプランの目標である「上限1兆6,000億円程度」の水準を維持した。
また、臨時財政対策債の残高は1兆1,846億6,265万5千円となり、前年度末より137億1,665万9千円減少した。
県の財政構造を示す7つの指標を見ると、前年度に比べて自主財源比率、実質公債費比率は改善し、一般財源等比率、義務的経費比率、経常収支比率、財政力指数、将来負担比率は悪化した。
義務的経費比率は、近年新型コロナウイルス感染症関連事業の増加により改善傾向にあったが、令和4年度は、1.8ポイント悪化した。
将来負担比率は、前年度改善に転じていたが、令和4年度は9.1ポイント悪化した。
財源不足については財政調整用の基金を取り崩すことによりこれを補っているが、令和4年度決算における取崩しによる補塡額は、32億円となった。
また、令和4年度決算等を踏まえた今後の財政見通しの試算では、令和5年度に468億円の財源不足が見込まれている。
上記の県債残高の状況、7つの指標の推移や財政調整用の基金の取崩しの状況等を勘案すると、財政状況は実質公債費比率18%未満、将来負担比率400%未満という新ビジョン後期アクションプランの目標の範囲を維持しているものの、たいへん厳しい状況は続いている。
令和4年度からスタートした新ビジョン後期アクションプランでは、令和7年度までに財政調整用の基金に頼らない収支均衡を達成することを目標に掲げている。
しかしながら、今後、一般財源総額の増加が見込めない中で、歳出面では、社会保障関係費や金利上昇に伴う公債費の増加等による義務的経費等の増加が見込まれており、現状のままでは、収支均衡の目標達成は難しい状況にある。全庁的に一層の歳出のスリム化や歳入の確保に取り組むことで、健全財政の堅持を図られたい。
加えて、国から元利償還金の財源保障があり実質的な地方交付税として扱われているとはいえ、令和4年度の臨時財政対策債の残高が1兆1,846億円以上あり、県債残高全体の42%を占めていることから、引き続き、国に対してはあらゆる機会を活用して、中長期的に安定的な税財源の構築、臨時財政対策債の廃止を含めた交付金制度に係る改革や償還財源の別枠での確保を強力に働きかけられたい。

(2)収入未済額の縮減への取組について

収入未済額から徴収猶予等の措置をとったものを除いた実収入未済額は、平成22年度の205億6,785万2千円をピークに減少に転じ、令和4年度には、75億7,408万円と、平成22年度と比べ6割以上減少しており、市町との協働など縮減に向けた様々な取組は評価できる。

(ア)県税関係

県税に税外収入の加算金を加えた実収入未済額は、34億1,149万4千円となり、前年度に比べ2億4,774万円、6.8%の減少となり、県税全体で実収入未済額が削減された。特に個人県民税は、前年度に比べ2億3,449万3千円、7.5%減少となり、平成24年度から市町と協働で進めてきた特別徴収の徹底など、取組の強化に努めてきたことの成果と考えられる。

また、個人県民税(均等割・所得割)の収入率は、平成24年度以降の上記取組による滞納繰越額の減少もあって97.2%となり、前年度より0.3ポイント上昇した。
しかし、現在も全国平均の97.3%を0.1ポイント下回っている。県政運営の自主性を保持する上で県税の確保は重要な命題であり、特に個人県民税の徴収については、県職員の市町への短期派遣など、引き続き市町と協働での対策を進めるなど、より一層の徴収強化に努められたい。

(イ)県税関係以外

令和4年度の県税関係以外の実収入未済額は、41億6,258万5千円で前年度に比べ8,117万2千円、2.0%の増加となった。これは、高濃度PCB廃棄物代執行費用返納金3億6,789万1千円が新規に発生したためである。
実収入未済額の主なものは、中小企業共同施設資金貸付金償還金等14億6,376万1千円、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金等7億6,020万8千円のほか、産業廃棄物原状回復代執行費用返納金、生活保護費返還金、公営住宅使用料等である。
県税関係以外の未収金については、全庁的な観点から部局を横断して対策に取り組む「税外収入債権管理調整会議」を設置し、平成23年度から過年度未収金について、回収目標や整理目標を立て縮減に向けた各種の取組を行っている。令和4年度においても、債権管理マニュアルの活用や債権回収の外部委託の実施等の取組により、実収入未済額が縮減している債権もある。
一方で、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金では、新規の収入未済額の抑制には尽力したものの、総額として前年度を上回る実収入未済額となっていることから、回収業務の専門家と連携を強化する等、効果的な手法を取り入れることで収入未済額の縮減に努力されたい。

(3)事業繰越の縮減について

翌年度への繰越額は、一般会計では998億8,602万3千円で、前年度に比べ449億9,861万6千円、31.1%と大幅に減少したが、特別会計については17億9,345万8千円で、前年度に比べ12億1,452万5千円、209.8%増加した。
なお、一般会計では、社会健康医学研究推進事業費が令和3年度から令和8年度までの6年間の継続費として設定されており、令和4年度の繰越額(逓次繰越)は、2億593万5千円であった。
令和4年度の明許繰越のうち、追加分(国補正や災害発生に伴う事業の繰越)は、前年度と比べ481億7,505万5千円、51.7%減少したが、通常分は、台風15号に伴う災害復旧業務を優先して行うために工事等を一時中止したことなどにより、前年度に比べ39億3,055万9千円、8.4%増加した。
また、事故繰越については、40億4,084万3千円で、前年度に比べ8億3,480万6千円、17.1%減少した。
明許繰越のうち通常分については、的確な計画立案及び効率的な予算執行を図り繰越額の縮減に努められたい。また、事故繰越については、早期完了に向けて計画的な事業執行に努められたい。

(4)不用額について

歳出予算における不用額は、一般会計では、343億7,428万2千円で、前年度に比べ128億4,001万3千円、27.2%の減少となった。また、特別会計では、97億7,098万8千円で、前年度に比べ140億9,594万3千円、59.1%の減少となった。
一般会計の内訳で主なものは、新型コロナウイルス感染症対策事業費助成、コロナワクチン接種推進事業費助成などである。
また、特別会計の内訳で主なものは、国民健康保険事業特別会計における保険給付費等交付金などである。
令和4年度の不用額は、一般会計、特別会計いずれも前年度を下回っている。不用額の中には、新型コロナウイルス感染症関連事業など、2月補正時点の見通しが困難であったため、実績と見込みに大きく差が出るなど、やむを得ないものもあると思われるが、財政の健全化を推進し、財源の有効な活用を図るため、当初予算計上時から精度の高い所要経費の見積りを行うとともに、事業の進捗状況を的確に把握した上で補正等を行い、引き続き効率的な予算執行に努められたい。

(5)財務会計事務等の適正な執行について

令和4年度定期監査等において、不動産取得税の課税誤りなど10件を監査結果として一番重い「指摘」としたほか、物品購入代金の支払遅延等22件を「注意」とした。監査結果等は「意見」「指導」を含めると全体で140件、前年度に比べ26件の増加となっている。
財務会計に関わるものは、55件であり、前年度より15件増加した。これは、令和3年度に多発した道路占用料の徴収誤りは減少したものの、海岸占用料の算定誤りや河川占用料の不適切な徴収、支出負担行為伺の遅延等が発生したためである。
工事技術関係に関わるものは、11件であり、前年度より6件増加した。これは、建設工事における事務処理や工事計画等において、不適切な事案が多数発生したためである。
令和2年度から新たに内部統制制度が開始され、各所属で財務に関する事務等を対象にリスクを抽出し、事前に不正や間違いの発生を防ぐ仕組み作りに取り組んでいるが、令和4年度の内部統制評価報告書では重大な不備が3件報告されている。
地方自治法の改正を受け、監査業務は、内部統制推進部局が行う検査結果等を活用した監査を実施し、内部統制機関との役割分担を図り、経済性、効率性及び有効性に視点を置いた監査を拡充し、内部統制機関では確認困難な分野に監査資源を投入し、監査の重点化を図ることとしている。
各内部統制推進部局及び内部統制評価部局においては、引き続き内部統制制度が有効に働き、適正な事務処理が行われるよう、連携を図り、システムの見直しや組織によるチェック体制の強化など継続的に取り組み、適正な財務会計事務等の執行に努められたい。

(6)財産管理等について

財産管理に係る事務については、生乳の誤廃棄(同種事案の再発)により「指摘」となった案件が1件発生したほか、モバイルパソコンの不適切な管理や物品台帳の未作成など事務処理上の不適切な事例も散見されている。県有財産は、県民の財産であるという意識をもって適切な管理に努められたい。
一方で、県では、平成26年度にファシリティマネジメントの基本方針を作成し、「総量適正化」、「施設の長寿命化」、「維持管理経費の最適化」、「施設の有効活用」の4本柱により、経営的な視点から県有施設を総合的に企画・管理・活用する取組を行っている。とりわけ、「総量適正化」に向けた未利用財産の売却については、平成20年度から5年度ごとに県有財産の売却計画を策定し未利用地の売却を進めており、平成25~29年度については、67億4,653万4千円を売却した。平成30~令和4年度については、計画最終年度である令和4年度に12億5,202万6千円を売却し、売却額累計69億7,029万円、当初計画額に対する達成率は125.2%となった。しかし、令和3年度の変更計画額に対しては、売れ残りや入札に至らないといった積み残し物件が残存していることから達成率は87.1%となった。
今後も県有財産の最適化を推進し、令和5~9年度の売却計画の目標値を達成できるよう、積極的な売却に努められたい。
また、今後30年間の建替えや集約化等の管理方針及び対策に要する費用を記載した「個別施設計画(公共建築物)」を令和元年度に策定し、公共建築物の総量適正化と長寿命化の取組を計画的に推進することとし、「総量適正化」については、令和31年度までの30年間で公共建築物の15%の削減を目標としている。
令和4年度は、面積で24,522平方メートルを削減し、個別施設計画の管理目標に対する達成率は累計で3.6%減となっている。当該目標を達成するため、引き続き、計画的な削減に努められたい。加えて、長寿命化の取組により、建物劣化診断を実施し、今後の中長期維持保全計画の策定につなげていることから、県有施設の安全性の確保と財政負担の軽減の両立に努められたい。

基金運用状況審査意見書の概要

1.審査の対象

静岡県立美術博物館建設基金

2.審査の期間

令和5年7月25日から令和5年8月31日まで

3.審査の方針

静岡県立美術博物館建設基金条例の趣旨に従って適正に運用・管理されているか、調書と関係帳簿及び証拠書類等を調査照合し審査を行った。

4.審査の結果及び意見

審査の結果、本基金は適正に運用されており、計数にも誤りはなかった。

静岡県公営企業決算審査意見書の概要

地方公営企業法第30条第2項の規定に基づき審査に付された令和4年度静岡県公営企業の決算を審査し、その結果について、令和5年9月11日に知事へ意見書を提出しました。

意見書全文

静岡県公営企業決算審査意見書の概要

1.審査の対象

令和4年度静岡県工業用水道事業
令和4年度静岡県水道事業
令和4年度静岡県地域振興整備事業
令和4年度静岡県立静岡がんセンター事業
令和4年度静岡県流域下水道事業

2.審査の期間

令和5年7月25日から令和5年8月31日まで

3.審査の方針

令和4年度静岡県公営企業の決算審査は、次の点に重点を置き、関係諸帳票及びその他証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査及び例月出納検査等の結果も考慮し実施した。

  1. 決算報告書及び財務諸表は、地方公営企業法等関係法令に準拠して作成されているか
  2. 決算報告書及び財務諸表は、経営成績及び財務状態を適正に表示しているか
  3. 各事業は、地方公営企業法第3条の経営の基本原則の趣旨に従って運営されているか

4.審査の結果

工業用水道事業ほか4事業の決算報告書及び財務諸表は、いずれも地方公営企業法等関係法令に準拠して作成され、令和5年3月31日現在の財政状況及びその日をもって終了する事業年度の経営成績を適正に表示しているものと認める。

また、一部に厳しい経営状況の事業もあるが、各事業は、地方公営企業の基本原則の趣旨に従い、おおむね適正に運営されているものと認める。

5.審査の意見

(1)工業用水道事業

工業用水道事業は、動力費等の維持管理費の増加などにより経常損失が増加したが、未利用地売却による特別利益を計上し、当年度純利益が前年度より4億4,950万6千円(128.4%)の増益となり、純利益7億9,965万円を確保した。
工業用水道別に見ると、6工業用水道のうち、柿田川、ふじさん(富士川、東駿河湾)、静清の3工水は赤字を計上し、中遠、湖西の2工水は純利益が前年度より減少した。
また、年間実給水量を見ると、ふじさん(富士川)、静清以外は減少しており、6工水合計で483万3千立方メートル減少した。今後も水需要の減少や節水技術の向上等により、給水収益が減少する可能性があることに加え、老朽化する施設等の大規模な更新が必要となり、さらに厳しい経営状況が見込まれる。
このような状況の中、「水道施設更新マスタープラン」に基づく「第5期長期修繕・改良計画」を踏まえた平成30年度から10年間の経営の基本計画である「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づき、計画的に事業を実施している。
また、中堅・若手職員を中心とした「課題解決型タスクフォース」により、浄水発生土の有効活用と減量対策、デマンドレスポンス契約による動力費削減等によるコスト削減や遊休資産売却等による収益確保に取り組んでいる。
こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、積極的な経営革新に取り組み、管路近傍事業所への調査や企業誘致との連携による情報収集や工業用水利用促進インセンティブ制度の積極的な活用により、新規顧客を開拓する等、収益確保を進めるとともに、浄水発生土処分費や動力費の削減等による運営コストの削減により収支改善を目指し、更なる経営基盤の強化に努められたい。また、「第5期長期修繕・改良計画」及び「第3期耐震計画」に基づき、着実に施設更新や耐震化を進められたい。
  2. 急速に経営悪化した富士川と東駿河湾工水については、令和4年3月に両事業を統合し、「ふじさん工業用水道」とするとともに、令和4年4月分から料金改定を行った。また、令和11年度の本格的な一体的水運用の開始を目指し、令和6年度から新たに設置するポンプ場の設計・施工に加え、浄水場等の運転・維持管理への包括的民間委託の導入を進めている。一体的な運用によるコスト削減や工業用水の安定供給を果たせるよう事業を進められたい。
(2)水道事業

水道事業は、給水収益の減少や動力費等の維持管理費の増加などにより経常利益が減少し、当年度純利益が前年度より4億6,818万7千円(44.4%)の減益となった。
3水道事業のいずれも純利益を計上したが、すべての水道で前年度より減少した。
年間実給水量については、3水道すべてで減少しており、当年度の3水道の合計実給水量は、前年度より161万立方メートル(2.1%)の減少となった。
黒字経営が継続しているが、今後、人口減少等に伴う水需要の低下による施設規模の適正化や管路等の大規模更新を進めるに当たり、費用の増加が見込まれている。
また、水道事業は県民の生活を支える公共インフラであることから、災害発生後も速やかに安全・安心な水を供給することが求められている。
こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、積極的な経営革新に取り組み、浄水発生土処分費や動力費の削減等による運営コストの削減により、健全経営の維持に努められたい。また、AIによる塩素の適正注入率制御や管路台帳の3次元モデル化に取り組んでいるが、今後も新たな技術の導入可能性を検討し、DXの推進に努められたい。さらに、「第5期長期修繕・改良計画」及び「第3期耐震計画」に基づき、施設の効率的な更新や耐震化を計画的に進めるとともに、関係機関と連携し、災害や事故等の緊急事態に対応できる体制の維持に努められたい。
  2. 榛南水道と静岡県大井川広域水道企業団が運営する大井川広域水道について、令和4年3月に締結した基本協定書に基づき、同年9月に実施協定書を締結した。現在、令和11年4月を目途とする統合に向け、関係者間で施設整備、費用負担、資産譲渡等について協議を進めているが、統合による将来の更新費用や維持管理コストの削減、契約水量と使用水量の乖離の解消など、受水地域にとって統合によるメリットが活かされるよう事業に取り組まれたい。
(3)地域振興整備事業

地域振興整備事業は、セミ・オーダーメード方式により整備した「富士大淵」の引渡しが完了し、前年度同様に土地売却収益を出したが費用が収益を上回ったため、経常損失となり、特別損益を加えて当年度は894万9千円の純利益をあげた。
また、オーダーメード方式により整備を進めていた「浜松坪井バイオマス発電施設関連」については、整備が完了し、令和5年度の引渡しを予定している。
その他、「牧之原萩間」については令和4年10月に、「長泉東野」については令和5年1月に、それぞれ企業局、市町、事業者の3者で基本協定を締結し、事業に着手している。
さらに、市町への工業用地等開発可能性調査に対する助成や技術的支援などによる開発候補地の掘り起こしを進め、セミ・レディーメード方式等による事業化を推進している。
こうした状況を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、工業用地等の造成に当たっては、市町と連携して積極的に開発候補地の掘り起こしを進めるとともに、セミ・レディーメード方式等の多彩な造成方式により、多様な企業ニーズに対応した工業用地等の供給を進められたい。また、効率的な施工方法や経費削減に向けた創意工夫に取り組み、経営の健全性を確保しつつ効果的な事業執行に努められたい。
  2. 「浜松坪井バイオマス発電施設関連」については、令和5年度に事業者への引渡しができるよう、計画に沿った事業の推進に努められたい。また、「牧之原萩間」、「長泉東野」についても計画に沿った事業の推進に努められたい。
(4)静岡がんセンター事業

静岡がんセンターは、本県がん対策の中核を担う高度がん専門医療機関であり、令和2年4月には全床開棟して615床となった。また、令和2年3月に、厚生労働大臣からがんゲノム医療中核拠点病院の指定を受け、本県におけるがんゲノム医療への取組において、中心的な役割を果たしており、治験・臨床試験や研究の推進、がんゲノム医療に関わる人材の育成に、大きな期待が持たれている。
令和4年度の病院事業は、医業収益の増加など、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復傾向がみられるが、光熱水費の高騰による経費の増などにより、3年連続の赤字となった。研究所事業の損失を含めた全体でも、3億7,686万7千円の純損失となり、未処理欠損金も前年度より増加している。
経営指標は改善しており、病床利用率が88.6%と、前年度に比べ、2.5ポイント高くなっている。
過年度医業未収金は、前年度に比べ718万3千円増と4年連続して増加しており、累計で1億2,277万4千円となっている。
また、医師については毎年充足が進んでいるが、定数200人であるところ、令和4年度末は177人となっており、23人不足している。
こうした点を踏まえ、次のとおり意見を述べる。

  1. 病院事業は、令和2年度以降、3年連続の赤字となった。令和4年度の総収入は、患者数の増加等により回復の傾向がみられるが、一方で総支出は、光熱水費の高騰などにより、収入を上回る経費の増加となり、純損失は、前年度と比べて増加している。運営コスト削減による収支改善を目指し、今後も効率的な病院経営に取り組み、病院事業の黒字化を図っていただきたい。
  2. 過年度医業未収金について、コロナ禍の影響による患者本人や家族の収入減少により、支払いが困難な事例が増えているとのことであるが、患者本位のもと、患者に寄り添ったきめ細かい対応による未収金発生の未然防止と、早期回収に努められたい。
  3. 本県のがん治療の中核的な病院としての役割を果たすため、引き続き不足している医師の確保に努められたい。また、研究所を中心に行われているプロジェクトHOPEの研究成果を基に、民間企業等との連携による検査サービスの提供や将来の臨床に役立つ新技術の開発等を進めるなど、その成果を可能な限り県民に還元するよう努められたい。
(5)流域下水道事業

流域下水道事業は、施設の老朽化による設備更新の増大や人口減少等、事業を取り巻く経営環境の変化に対応するため、平成31年4月から公営企業会計へと移行している。
財務諸表の作成により、経営・資産の状況を明確に把握できることとなり、中長期的な見通しに立った経営の方針や投資、財政の基本計画である「静岡県流域下水道事業経営戦略」を令和3年2月に策定しており、同経営戦略の計画的かつ着実な実施が求められている。そして令和4年度の純利益は、4億7,017万6千円となった。
こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。

  1. 経営戦略では、令和4年度まで耐震対策事業を集中実施することとなっている。県民の生活や生命に関わる重要なライフラインである下水道施設は、地震や豪雨等の自然災害発生時でも被害を最小限にとどめる必要がある。このことから、施設の速やかな耐震化・耐水化工事の完了に努められたい。
  2. 耐震対策事業終了後は、引き続き「ストックマネジメント計画」に基づき事業費の平準化と施設の長寿命化を図っていくことから、財務体質の強化を念頭に、健全な事業執行に努められたい。
  3. 当事業は5市3町からの負担金を主な財源としていることから、引き続き、効率的な事業運営による維持管理費の縮減を図り、市町の負担軽減に努められたい。

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