懸念2 生物多様性への影響

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ページID1057514  更新日 2024年10月9日

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県が心配していること

南アルプスには、世界の南限とされる希少動植物が多数存在し、守るべき極めて希少な生態系があります。この生態系は、奥地で人為が及ばず、周辺環境の変化の影響を受けやすく非常に脆弱です。

また、ユネスコエコパークに認定されている自然環境自体が、後世に残すべき貴重な資産であり、これを守ることは国策とも言えます。

静岡県は、リニア中央新幹線のトンネル掘削工事により、河川や沢の流量や水質に変化があった場合に、南アルプスの生物多様性や自然環境に壊滅的なダメージを与えないか、心配しています。

JR東海には、工事を実施する前に、トンネル工事の影響を予測し、できる限り回避・低減する方法を考えるよう求めています。

イラスト:守るべき生物多様性

JR東海との対話の状況

今後の主な対話項目

令和6年2月5日に整理した主な対話項目3区分28項目のうち、生物多様性関連は17項目

県生物多様性部会専門部会において対話を進めています。

1 沢の水生生物等への影響

(1) 適切に順応的管理を行うための事前の生物への影響の予測・評価(保全措置、管理基準等)
(R6.4.12)JR東海は、景観に基づく生息場評価法により、現在あるデータで予測・評価を実施する。沢の上流域調査等の結果が追加されれば、予測・評価を更新する。
(2) 沢の上流域の水生生物等の生息状況の調査や、その結果を踏まえた重要種の確定と指標種の選定
(R6.4.12)沢の上流域調査については、県から大井川上流域マップを提示。今後、安全に調査が可能な箇所について、JR東海と県で詳細を詰めていく。
(3) 必要な調査(季節毎の生物の生息・生育状況の把握など)の工事着手前の実施
(R6.4.12)JR東海は、景観に基づく生息場評価法に必要となるモニタリング項目を、工事着手前段階で実施する。詳細は、今後、県・JR東海・委員で協議する。JR東海は、モニタリング項目間の関係性を整理する。今後、水生生物等に関して新たな情報が把握された場合や代償措置の具体的議論をする場合等においては、必要と認められるモニタリング項目を追加する。
(4) 「流量減少の傾向がみられる沢」の重点的なモニタリング
(R6.4.12)JR東海は、「流量減少が予測されるその他の沢」については、「景観に基づく生息場評価法による予測・評価」や「沢の上流域調査」によって、重要種が確認された場合等において、「流量減少が予測される重点的にモニタリングを実施する沢」と同じモニタリングを実施する。JR東海は、「流量減少が予測されない重点的にモニタリングを実施する沢」については、今後の流量予測の変化等に応じて、「流量減少が予測される重点的にモニタリングを実施する沢」と同じ内容の「モニタリング」・「環境保全措置の検討」を実施する。

2 沢の流量変化

(1) ボーリング調査の実測データを用いた再解析(上流域モデル見直しを含む)
(R6.8.5)専門部会は、現時点では、新たに解析上有効な地質等の情報が得られている状況ではないことを確認したため、再解析は求めない。JR東海は、今後、高速長尺先進ボーリングやコアボーリングによる調査結果と、その結果に対する専門部会委員の意見を踏まえ、調査による実測データを用いた沢の流量減少予測の見直しを行う。

⇒ 対話完了

(2) 上流域モデル(GETFLOWS)により解析できない沢の源流部などの流量変化の予測
(R6.8.5)JR東海は、専門部会に提示した手法を源流部の流量変化を検出・評価する手法として検討する。その上で、検討結果を順応的管理のシナリオに反映させて専門部会に提示し、施工開始前に合意を得る。
(3) 「重要でない断層」と「主要な断層」の区分の科学的根拠
(R6.8.5)専門部会は、現時点で、JR東海が示した「重要でない断層」と「主要な断層」を区分した科学的根拠について、了解する。JR東海は、今後、高速長尺先進ボーリング等の調査結果や、その結果に対する専門部会委員の意見を踏まえ、実測データを用いた沢の流量減少予測の見直しを行う。

 ⇒ 対話完了

(4) 地下水(トンネル湧水)の水量・水質・湧水量や地下水位の観測
(R6.8.5)観測内容、観測の目的、観測値からわかること、及び観測値間の関連性等について、JR東海は、詳細を専門部会委員と詰めていく。JR東海は、その成果を順応的管理のシナリオに反映させる。
(5) モニタリング(トンネル湧水・沢の流量)の具体的な手法(沢の物理的環境に応じた生息・生育地のセグメント設定等)
(R6.4.12)JR東海は、景観に基づく生息場評価法により、現在あるデータで予測・評価を実施する。沢の上流域調査等の結果が追加されれば、予測・評価を更新する。モニタリング結果をどのように回避・低減措置等に反映させ、順応的管理を進めていくのか、JR東海が、速やかに、順応的管理の具体的な手順や方法を、専門部会に提示し、施工開始前に合意を得る。
(6) 突発的な事態への対策(リスク管理)
(R6.4.12)モニタリング結果をどのように回避・低減措置等に反映させ、順応的管理を進めていくのか、JR東海が、速やかに、順応的管理の具体的な手順や方法を、専門部会に提示し、施工開始前に合意を得る。

3 回避・低減措置及び代償措置

(1) 薬液注入による自然環境への影響の把握方法、具体的なリスク管理
(R6.4.12)JR東海は、回避・低減措置については、薬液注入以外の工法もあるが(ないわけではないので)、まずは薬液注入から検討を始める。また、薬液注入も複数あるので、複数の薬液注入の事例、薬液注入以外の工法の事例を集め専門部会に提示する。
(2) 椹島より上流(本流河川)の流量減少に対する具体的な保全措置、モニタリング計画
(3) 生物への影響を予測し、「損なわれる環境の『量』と『質』を評価」した上での、「それに見合う新たな環境の創出」等の環境保全措置
(R6.8.5)JR東海は、専門部会から提案された「代償措置等の基本的な考え方」を踏まえて、次回以降、具体的な代償措置等を提案する。

4 高標高部の湧水と地下水のつながり

(1) 千枚小屋付近の1年中枯れない湧水箇所周辺及びそれと同様な状況を示す湧水箇所周辺における湧水や植物への水分の供給経路に関する断層、破砕帯や地形、地質との関連性

5 大井川本流の水質・水温の変化による底生生物等への影響

(1) 水の濁りについて、底生動物の無被害濁度を超えない、安全な管理基準値の設定
(2) 水温について、生物への影響が懸念されない、安全な管理基準値の設定
(3) 底生生物等への影響の回避・低減措置と、その有効性の検証及び、仮に対応が不十分な場合の追加措置

静岡県中央新幹線環境保全連絡会議 生物多様性部会専門部会

県は、南アルプスにおけるリニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの自然環境や生態系に及ぼす影響を科学的根拠に基づき明らかにするため、関連する動植物や生態リスク評価などの専門家を委員とした「生物多様性部会専門部会」を設置し、JR東海と対話を行っています。

リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議(環境保全有識者会議)

生物多様性や自然環境の保全については、国土交通省が設置した「環境保全有識者会議」において議論が進められました。

環境保全有識者会議では、リニア中央新幹線のトンネル掘削工事により、河川や沢の流量や水質に変化があった場合に、沢やその周辺の生物、高標高部のお花畑などにどのような影響があって、その影響をどのように小さくするかについて議論されました。

県では、県の生物多様性部会専門部会の委員から意見を伺い、会議の中で議論してほしいことや疑問点などについては、意見を出してきました。

12月7日に、環境保全に関してのこれまでの議論の内容がとりまとめられた「リニア中央新幹線静岡工区に関する報告書(令和5年報告)~環境保全に関する検討~」が公表されました。

報告書では、トンネル掘削による生態系への影響を最小化するため、順応的管理で対応することなどが示されました。

しかし、県としては、順応的管理を行っていくために必要な工事実施前の調査・予測が十分に実施されていないなど、今後も議論が必要な課題が残されていると考えています。

今後、国の報告書を踏まえ、環境影響評価が適切に実施されるよう、生態系への影響の予測・評価、モニタリング、リスク管理など、具体的な実施方法についてJR東海との対話を進めてまいります。

国報告書の主なポイント

(1) 沢の水生生物等への影響と対策

  • 大井川上流部の沢の流量変化が予測された。
  • 「順応的管理」により環境への影響を最小化する方向性が示された。

(2) 高標高部の植生への影響と対策

  • 高標高部の植物群落は、深部地下水の水位が変化したとしても、影響が及ぶ可能性は低いと予想された。

(3) 地上部分の改変箇所における環境への影響と対策

  • トンネル湧水を河川に放流した時の水の濁り、水温が予測された。

【まとめと今後に向けた提言】

  • JR東海の進め方は適切であると判断できる。
  • 国は、科学的・客観的な観点から、対策が着実に実行されているか等について、継続的に確認することを検討するべき。
  • JR東海は、環境保全措置、モニタリング等の対策に全力で取り組むと共に、地域の関係者との双方向のコミュニケーションを十分に図ることが重要である。
写真:南アルプス高標高部のお花畑
南アルプス高標高部のお花畑

生物多様性とは

生物多様性とは、多くの種類の生物が存在し、それがさまざまな形でつながり合っていることをいいます。

私たち”ヒト”もその生物の一つであり、ほかの生物とつながりながら生きています。

私たちの生活は、この生物多様性からもたらされるさまざまな恵みによって支えられています。

イラスト:生物多様性のバランス
出典:<改訂版>ふじのくに生物多様性地域戦略[2018ー2027]

ユネスコエコパークに登録された南アルプスは、高山植物やライチョウなど氷河期由来の希少な動植物が生育・生息する世界の南限であり、豊かな自然環境を育んでまいりました。

私たちは、この南アルプスの豊かな自然環境が育む生物多様性を守り、後世へ確実に引き継いでいかなければなりません。

関連情報

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