令和3年度静岡県試験研究10大トピックス

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ページID1025651  更新日 2023年8月9日

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10大トピックスとは

静岡県の産業振興や県民生活の質の向上を目的として様々な試験研究を行っている県の試験研究機関において、特に顕著な成果のあった研究を、「静岡県試験研究10大トピックス」として紹介します。

令和3年度静岡県試験研究10大トピックス

新しい天敵でトマトの害虫を防ぎ、減農薬を実現(農林技術研究所)

課題

写真:タバココナジラミの幼虫

県産トマトは高品質を誇るが、生産者は農薬による防除が難しい害虫タバココナジラミの対策に苦慮している。

農薬のみに頼らない新たな防除技術を確立した。

成果

写真:タバコカスミカメ

天敵タバコカスミカメは数mmの小さいカメムシで、1日に40~50頭のタバココナジラミの幼虫を捕食する。

トマトの栽培初期から、この天敵と、天敵の増殖に適した植物を一緒に栽培施設内へ導入する防除技術を確立した。

本防除体系により殺虫剤の使用回数を半減できることを実証した。

今後の予定

この天敵は市販されているので、誰でも利用可能。

本天敵の利用技術を生産現場に普及していく。

IoTを活用したレタスのリアルタイム生育予測システムを開発(農林技術研究所)

課題

レタスの収穫予測日は、日平均気温の積算値から算出可能である。

予測に必要な温度データは、作業者が農場に出て設置した観測機器から収集し、データ加工を手作業で行うため、負担が大きく、かつ予測がリアルタイムに行われていない。

成果

画面:生育予測システム

データ収集作業の負担軽減とリアルタイム収穫予測を両立した生育予測システムを開発した。

IoT機器を用いて気温を自動取得することで、収穫可能な日を予測できる。

生産者が収穫日をスマートフォンで確認できるほか、平年値との差を表示することで、今年度の生育状況を把握できる。

今後の予定

JA及び法人に対して、本システムの活用を促進する。

本システムは、秋に作付けして年内に出荷する作型にのみ対応しているため、今後はトンネルを被覆した厳冬期出荷型作型の収穫予測精度を向上させ、全ての作型に対応したシステムへと発展させる。

世界初!マーガレットとローダンセマムの雑種「ビジューマム」シリーズの作出(伊豆農業研究センター)

課題

花き類は、色や形など新しい特徴を持ったものが常に消費者から期待されており、産地からオリジナル性の高い新品種の開発が求められている。

また、近年は、暖房用の燃料価格が高騰しており、より低温で栽培可能な品種の育成が望まれている。

成果

写真:ビジューマムローズクオーツ

胚珠培養※の手法を用いて、本県特産のマーガレットとその近縁種で耐寒性の強いローダンセマムとの雑種の作出に世界で初めて成功し、農林水産省の植物分類に「マーガレット種×ローダンセマム種」として新設された。

新品種は従来にない鮮やかな花色でローダンセマムの寒さに強い性質を受け継いでおり、静岡ブランドの確立と無暖房栽培による生産性向上が期待される。

写真:ビジューマムガーネット

公募により「ビジューマム」シリーズと命名し、赤紫花を「ビジューマムローズクオーツ」、赤花を「ビジューマムガーネット」として品種登録を出願した。

胚珠(種子になる部分)を人工培養することで、通常では種子が得られない異種間の交配でも、雑種を作出する技術。

今後の予定

県と契約した生産者団体により、県内限定で生産が始まっており、令和4年中に出荷し、全国で販売される見込みである。

医学用ブタの活用に必須なカラーアトラス"EXPIG-ATLAS"を提供開始!(中小家畜センター)

課題

写真:畜産ブタ

畜産ブタは医学研究に用いられているが、基礎情報が知られていないことから、研究者が新たに利用することが難しい。

成果

写真:解剖カラーアトラス「EXPIG-ATLAS」

畜産ブタをベースに当センターが開発した医学用ブタ「SHIZUOKAEXPIG」を用いて、臓器の構造や血液データなどの基礎情報を豊富に掲載した解剖カラーアトラス「EXPIG-ATLAS」を編集した。

本アトラスの“概要版”では、本動物の由来、飼育方法等、新規ユーザーが求める基本的な情報が入手でき、“各論版”では、CT,MRI画像データ等、より専門性の高い情報が入手できる。

「ふじのくに電子申請サービス」を通じて令和4年4月から研究者に無償提供を開始した。

今後の予定

令和4年5月の学会発表を通じて、利用普及を図る。

本アトラスの活用により、研究者は事前に充分な検討ができることから、実験用動物利用頭数の削減が期待できる。

新開発ブタ用アイソレーターで国内最長期間の飼育に成功(中小家畜センター)

課題

再生医療や異種移植等の先端医療分野で、解剖学・生理学的特徴が人に近いブタを活用するには、人に移植できる衛生水準で、ブタを長期間飼育できるアイソレーターが必要であるが、既存設備には機能面や動物福祉上の課題があった。

成果

写真:ブタ用アイソレーター

開発したブタ用アイソレーターで、国内最長である13ヶ月齢までミニブタを無菌状態で飼育することに成功した。

既存のアイソレーターの課題であった「飼養管理の省力化」「長期飼育」「動物福祉に準拠」の条件を満たした構造で、先端医療産業用途での活用が可能となった。

今後の予定

令和4年度から県内の共同開発企業と販売体制を構築して、速やかな社会実装を目指す。

西伊豆産ヒジキを生み出す伝統製法 鉄分豊富なヒジキを作る方法(水産・海洋技術研究所)

課題

ヒジキの生産が盛んな西伊豆地域では、採取したヒジキを伝統的に漁業者自らが鉄釜を用いて加工している。

本研究では、西伊豆産ヒジキの鉄分量と加工方法の関係について調査し、伝統製法が生み出す付加価値向上の効果を明らかにする。

成果

グラフ:鉄含有量

鉄釜加工した西伊豆地域の製品の鉄分量は平均114.2mg/100gと他産地の10倍以上の高値であった。

鉄釜での加工(煮熟と蒸らし)の時間が長いほど鉄分量も高くなる結果が得られたことから、西伊豆地域の製品の鉄分量が高い要因は、この伝統製法にあることが明らかとなった。

グラフ:むらし時間と煮熟時間

作成した水温分布図は、湖内ノリ養殖業者に配信する「アオノリ養殖場情報」に掲載し、好評を得ている。

今後の予定

鉄分が豊富に含まれていることを示すことで、西伊豆産ヒジキの販売促進に役立てていく。

AIでカツオの漁場”潮目”を予測するモデルを開発(水産・海洋技術研究所)

課題

カツオ一本釣り漁業の効率的な操業のため、漁業者から、科学的根拠に基づいた精度の高い漁場予測モデルの開発を要望されている。

これまで、実際の漁獲位置の水温や塩分などの海況情報を基に漁場を予測するモデルを開発してきたが、カツオの漁場が形成されやすい、水温変化が大きな場所である“潮目”の判別ができず、予測精度の向上が課題となっていた。

成果

イラスト:「カツオ漁場が形成される確率の高い潮目」の位置を予測するモデル

AIの画像認識で、水温情報から「カツオ漁場が形成される確率の高い潮目」の位置を予測する新たなモデルを開発した。

開発したモデルによる漁場予測図を漁業者へ提供したところ「これまでより精度がよく操業に役立っている」などといった高い評価を得ている。

今後の予定

漁場予測図の配信・検証を行い、その結果を基に予測精度の向上を図る。

次世代自動車軽量化のためのCNF複合材の開発(富士工業技術支援センター、工業技術研究所)

課題

部品の軽量化や脱炭素化に向けて、自動車等に広く利用されている樹脂であるポリプロピレン(PP)とセルロースナノファイバー(CNF)の複合化技術が注目されている。

この複合材を成形するには、樹脂に高濃度のCNFを配合した「マスターバッチ」が必要であるが、CNFと樹脂は極めて混ざり難いため、期待する十分な強度が得られなかった。

成果

写真:CNF複合材1

パルプなどの繊維をほぐして微細な繊維(CNF)を製造する特殊なリファイナーを用いて、樹脂との複合化に適したCNFを開発した。


写真:CNF複合材2

CNFをPPに20%配合した複合材の曲げ強さは、PP単体と比べて約1.5倍に向上し、また耐衝撃性は改質材の併用により66%向上した。複雑な形状の部品でも成形性は良好であった。

今後の予定

安価なCNFを用いた付加価値の高い製品開発を支援することで、CNFの産業応用を拡大していく。

IoT推進ラボと大学連携講座による中小企業へのIoT導入を推進(工業技術研究所、沼津工業技術支援センター、浜松工業技術支援センター)

課題

IoTによる生産性の向上や省力化が期待されているものの、静岡県内においては、従業員100人以上の規模の企業でも普及率15%以下とIoT技術の導入が進んでいない。(R3調査)

成果

写真:展示ブース

静岡県IoT推進ラボは、既存の静岡に加え、沼津、浜松の支援センターにサテライトを増設し、12企業の協力により、3会場14ブースの展示をしており、見学者は累計1,300人を超えた。

IoT大学連携講座により、生産現場へのIoT導入を進め、受講26社中17社がIoTによるデータ取得を実現した。

グラフ:人件費・維持費削減

県内企業とIoTのモデル工場化に取り組み、IoT稼働監視システムを現場に実装し、年間100万円の人件費削減を達成するなど、IoT導入効果を数値化した。

今後の予定

公募による展示内容の更新、実習による現場実装支援などを通じ、引き続きIoT技術の普及に取り組む。

設備の稼働監視だけでなく、モノ、ヒトの動きをデジタル化し、データを活用することで、工場全体の生産性を向上させるシステムを開発する。

がん化に関わる酵素FTSJ1の阻害剤を発見 抗がん剤開発へ(環境衛生科学研究所)

課題

イラスト:tRNAによるミス翻訳とがんの関係

FTSJ1という酵素は、体内で正常なタンパク質を作り出すトランスファーRNAを改変し、がん化に関与する。

FTSJ1による改変を阻害する化合物は、これまでにない新しいタイプの抗がん剤となる可能性があり、本酵素を強力に阻害する化合物の創製が望まれてきた。

成果

イラスト:PVZF2001の作用メカニズムと動物試験効果

静岡化合物ライブラリーの登録化合物に対して、FTSJ1阻害活性の測定を実施し、強力な阻害活性を示す化合物(PVZF2001)を見出した。

本化合物が担がんマウスにおいても、腫瘍を消失する効果があることを発見した。

現在、国際特許(出願中)の内容に興味を示した製薬企業とともに創薬開発を進めている。

今後の予定

国立研究開発法人日本医療研究開発機構の「次世代がん医療創生研究事業」に採択されており、臨床試験に向けた創薬開発を製薬企業・共同研究者とともに検討していく

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