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更新日:令和3年11月10日

触れ合いから生まれる理解

静岡県手をつなぐ育成会会長 小出 隆司

静岡県手をつなぐ育成会は、知的に障がいのある人の保護者で組織され、「すべての人が地域で安心して暮らせる社会の実現」をテーマとして活動を行っています。そして、上部団体の全日本育成会は、国際育成会連盟にも参加しており、そこでは「インクルージョン・ジャパン」と呼ばれております。これは、障がいのある人が差別や排除を受けることなく、そしてすべての人が多様な価値を認められる豊かな社会の構築を理念とすることを示しております。

人々が地域で暮らすことはあたり前のことですが、多くの障がいのある人が地域で暮らすことを意識しだしたのは、最近のことなのです。

知的に障がいのある人たちは、生活様式や家族形態が急速に変わった戦後社会の高度経済成長期においても、家族が抱え背負うか、施設の中での生活が続いておりました。そのような時代に、知的に障がいのある我が子を学校で学ばせたいと親たちが立ち上がったのが育成会の始まりでした。その活動によって学校に特殊学級ができていきましたが、就学猶予はその後も続きました。養護学校(現在の特別支援学校)が義務化となり、重い知的に障がいのある子どもたちも学校で教育ができるようになったのは、つい30年ほど前の昭和54年でした。就学が猶予されていた子どもたちの教育は、主に施設の中で行われており、歴史ある知的障害施設の名前に学園がついているのはその名残です。昭和50年代以降、養護学校で知り合った親たちは、力を合わせて学校を卒業した子どもたちの日中活動の場を求めて、多くの小規模作業所を立ち上げました。このように多くの知的に障がいのある人たちは、学齢期から成人になっても健常な人たちと触れ合う機会が乏しいままで日常生活を送ってきました。

しかし、障がいのある人たちが、地域で安心して暮らす社会にするためには、学齢期の分離教育から、障がいのある子どもを受け入れるインクルーシブ教育への仕組を作ることが大切です。人生で一番多感な時期がそこにあるからです。障がいのあるなしにかかわらず生きるための力を身につけるためには、幼い時から同世代の人たちやいろいろな人たちとかかわる機会を持つことが大切ではないでしょうか。そして、障がいのある人たちと触れ合って成長した人たちは、困難な場面にある人に自然と手を差し伸べることができるのです。

障がいがあることが不幸ではなく、街に出られないことが不幸なのです。道路に段差がなく、点字ブロックがあることも必要ですが、心の壁を取り除き、障がいのある人を自然に受け入れる差別感のない“心のバリアフリー”が大切です。