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更新日:令和3年11月10日

教育を受ける権利と公立学校

静岡大学法科大学院教授 根本 猛

憲法26条は、教育を受けることを人権として保障しています。教育を受ける権利は、他の人権とは違い、政府の積極的な活動によって実現される人権です。表現の自由は政府が思想の自由市場に介入しないことによって実現されますが、「皆さん、好きなように教育を受けて下さいね、政府は邪魔せずに黙って見守ってます」では、教育を受ける権利は一般人にとって絵に描いた餅でしょう。政府が学校を造り、施設を整備し、教員を養成することによって初めて実現されます。

また、教育を受ける権利は比較的新しい人権です。19世紀までは、欧米でも教育は、富裕層における家庭教師や私立学校による私事であって、無償の義務教育など存在しませんでした。

教育を受ける権利を支える最も太い柱が公立学校による無償の義務教育であることに異論はないでしょう。憲法26条も、親が子どもに教育を受けさせる義務と義務教育が無償であることを規定しています。

私自身も親としての私も公立学校しか知らないのですが、公立学校には次のような特徴があります。

一番大切なのは、公立学校は誰でもアクセス可能だということです。さまざまな事情で子どもの教育にお金や時間を割けない人たちにも、公立学校は開かれています。親の教育への関心や経済状況によって子どもの教育の機会が左右されてはならないはずです。

このことの裏返しとして、公立学校には実社会と同様、様々な個性をもった児童・生徒がいます。学校で学ぶ子どもは、いつかは社会に出ていかなければなりません。世の中にはいろいろな人もいるのだという、公立学校での体験はきっと役立つでしょう。

また、通学区が比較的小さいので、友だちが近くにいるし、地域の人々からの支援も期待できます。さらに、公立学校教員の多くは優秀で仕事熱心です。もちろんどんな組織にもそうでない人はいますが、この15年ほどの私の経験からはそのように感じます。

にもかかわらず、昨今、小・中学校から私立学校に通わせる、そのための「お受験」が一種のブームのようになり、逆に公立学校で学ばせるのは教育に無関心か経済的余裕がないから、という風潮がみられることは残念です。私立学校にも様々な特長があることはもちろんですが、公立学校の良さと重要性をも見直すべきときではないでしょうか。