あなたの「富士山物語」(「富士山」の見える部屋/髙橋琴枝)

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページID1019331  更新日 2023年1月13日

印刷大きな文字で印刷

「富士山」の見える部屋/髙橋琴枝

主人の転勤に伴い、三十年住み慣れた横浜を離れ、御殿場市に住んで早や十数年になる。東京本社より小山町にある事業所に転属となり、三年半ほど勤務し、定年を迎えた。サラリーマンにとって「定年後は何処に住みたいか」と多くの家庭で、夢をもって語られているのではないだろうか?御殿場は「日本一の富士山」の街として、観光地であり、避暑地でもあることに、先ず満足。

当時、人口八万五千余名の街の中心地に、一三八号のバイパスが完成し、ファミレス、スーパー、クリニック、ホテル等、沢山つくられ数年の間に見違えるほど、綺麗で便利な街に変身した。「「終の住処」をここに決めよう」と、余り迷うことなく、社宅より持ち家としての家探しとなった。戸建てには因習に煩われそうで住みにくい。あくまでもトラベラーズの感覚で住みたい。又、高齢になってくると、マンション生活が楽であるだろうと思われた。

「二の岡」の一隅に、レンガ造りの五階建てマンションがあった。殆どの部屋が契約済みで、既に入居が始まっていたが、二、三空いている様子に

「富士山の見える部屋が、空いていたら見せて下さい。」

と主人。

「キャンセルされた部屋がありましてね。」

案内された四階の部屋のリビングから、大きな富士山が、バッチリ見えていた。主人は私を見た。私はコクンと頭を下げた。

「ここに決めます!」

こうして、富士山を朝夕眺めながらの生活が始った。平成九年五月のことである。

四季折々の富士山の写真が、このリビングからのものだけでも数えきれない。ゆったりとした大きな富士山を眺めていると、日頃の悩みやストレスが小さなものに思えてくる。当初、三分の二位見えていた姿が、現在、眼の前の「けやき」の林が数メートル成長し、僅か頭の部分だけが見えるようになって、非常に残念で、残念で仕方のない毎日である。

このページに関するお問い合わせ

スポーツ・文化観光部文化局富士山世界遺産課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3746
ファクス番号:054-221-3757
sekai@pref.shizuoka.lg.jp