ふじのくに森の防潮堤づくり

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ページID1034195  更新日 2024年3月14日

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ふじのくに森の防潮堤づくり袋井市同笠海岸の写真

中遠農林事務所管内の海岸防災林

中遠農林事務所管内には、飛砂を防ぎ農地や住宅を守る目的で、かつてより先人が築いてきた約40kmに及ぶ海岸防災林があります。
その中には、南風や西風を受け流す形で造成された「斜め海岸林」など、後世に伝え、残していきたい景観・技術もあります。

斜め海岸林

管内の海岸線は緩く弧を描いており、掛川市および御前崎市では強く吹く西風を利用して、人工的に斜め砂丘を作り、クロマツを植栽して、斜めに海岸防災林を造成してきました。
この地域の取組は、平成22年に静岡県景観賞を受賞しています。
また、平成26年度には林野庁の”後世に伝えるべき治山”に選定されています。

写真:斜め海岸林

“ふじのくに森の防潮堤づくり”事業概要・取組状況

事業概要

中遠農林事務所管内の遠州灘沿岸にある海岸防災林では、近年、塩害や松くい虫被害等によりマツ林が急速に枯損し、海岸防災林としての機能が著しく低下している箇所が多く、この復旧が課題となっています。
また、平成23年3月11日の東日本大震災をうけ、沿岸部の各市では、津波に対する防災意識が高まってきました。
このような中、「静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013」※1を踏まえ、地域の実情に合った津波に対する防災対策として「静岡モデル」※2の検討を進めてきました。
その結果、静岡モデルの一環として、マツが枯れ、機能が低下した海岸防災林を、災害に対してもより強いものとして再生し、平時には県民の憩いの場を作る“ふじのくに森の防潮堤づくり”を平成26年度から治山事業で開始しました。また、令和元年度から、防災林の一部が残される等の一定要件の下、健全な区間においても機能を強化するための整備が可能となりました。
この治山事業では、

  1. 整備対象区域のマツ林を処理
  2. 市が防災上必要な高さまで盛土(砂丘造成盛土)
  3. 県が苗木をより健全に生育させるために必要な盛土(生育基盤盛土)と植栽

という順序で工事を行い、市と県が連携して、海岸防災林の再生を目指します。

取組状況

中遠農林事務所管内の海岸延長41.7kmのうち、海岸防災林の機能が低下していると判断された22kmを森の防潮堤計画区間としています。令和4年度末で区間の55%にあたる12kmが整備済みとなる見込みです。

表:ふじのくに森の防潮堤づくり 事業実施状況

磐田市福田の森の防潮堤令和4年9月の写真
磐田市福田(令和4年9月撮影)
袋井市東同笠森の防潮堤令和4年9月の写真
袋井市東同笠(令和4年9月撮影)
掛川市大渕森の防潮堤令和4年9月の写真
掛川市大渕(令和4年9月撮影)
御前崎市白羽森の防潮堤令和4年9月の写真
御前崎市白羽(令和4年9月撮影)

地元企業・地域住民との協働

“ふじのくに森の防潮堤づくり”では、先人の知恵や、地域に生育している植生、地域住民との協働により事業を実施しています。

磐田市の地域住民参加の植樹祭

磐田市では、平成29年度から“ふじのくに森の防潮堤づくり”の取り組みとして、地域住民参加の植樹祭を実施しています。
令和6年3月7日に磐田市福田中島地区で「令和5年度海岸防災林卒業記念植樹」を実施し、福田中学校3年生や地元自治会から約150人が参加しました。

磐田市卒業記念植樹に約150名が参加しました
卒業記念植樹に約150名が参加しました
植樹の様子
1本1本丁寧に植えます
植樹状況の全体写真
約330本のクロマツ苗木を植えました
植樹完了の様子
植樹が完了しました

袋井市の地域住民参加の植樹祭

袋井市では、平成28年度から“ふじのくに森の防潮堤づくり”の取り組みとして、地域住民参加の植樹祭を実施しています。
令和5年4月30日袋井市中新田地区で「袋井幸浦の丘プロジェクト植樹会」を実施し、約140人が参加しました。

袋井市植樹祭集合写真

袋井市植樹の様子の写真

掛川市の地域住民参加の植樹祭

掛川市では、“ふじのくに森の防潮堤づくり”の取り組みとして、地域住民参加の植樹祭を実施しています。
令和6年3月2日に掛川市沖之須の海岸防災林で「潮騒の杜 植樹祭」を実施し、約120人が参加しました。

希望の森づくり植樹祭の横断幕
希望の森づくり植樹祭
開会式の様子
約120名が参加しました
植樹の様子
苗木を丁寧に植えます

しずおか未来の森サポーター企業の取組

「しずおか未来の森サポーター制度」とは、企業等が社会的責任として行う森づくり活動を、県がフィールドの紹介や活動内容の指導・助言、活動状況の情報発信、認定書の交付等を通して支援する制度のことです。

ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社

地元企業であるヤマハモーターパワープロダクツ株式会社と掛川市、県は平成27年12月21日に「しずおか未来の森サポーター制度」に基づき、“ふじのくに森の防潮堤づくり”で第1号となる協定を結びました。
この協定では、ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社が、市民と協力しつつ、ふじのくに森の防潮堤(掛川市沖之須地区)での植栽及び植栽木の維持管理を行うこととしています。
令和3年度に植樹を完了し、令和4年度からは、下刈に取り組んでいます。

写真:掛川市の植樹祭1

写真:掛川市の植樹祭2

写真:掛川市の植樹祭3

株式会社キャタラー

地元企業である株式会社キャタラーと掛川市、県は令和5年1月16日に「しずおか未来の森サポーター制度」に基づき協定を結びました。
この協定では、株式会社キャタラーが、ふじのくに森の防潮堤(掛川市千浜地区)での植栽及び植栽木の維持管理を行うこととしています。
令和5年5月11日に、社員約400名が参加し植樹活動を実施しました。

協定式の様子の写真

社員による植樹活動の写真

森の防潮堤PRの取組

公共イベントなどで、森の防潮堤のPRを行っています。

海のにぎわい創出プロジェクト「海プロフェスタ」(令和4年11月3日)

袋井市東同笠の森の防潮堤(生活環境保全林)及びその周辺において、袋井市の主催する「海プロフェスタ」が開催されました。
その中に設けられた「静岡県ふじのくに森の防潮堤づくり」展示ブースにおいて、静岡県中遠農林事務所と袋井土木事務所は、森の防潮堤や海岸整備に関するパネルを掲示し、イベント参加者へPRしました。

ふじのくに森の防潮堤づくり展示ブースの写真

海プロフェスタ森の防潮堤上の会場写真

森の防潮堤づくりの工事で使われるダンプカー乗車体験の写真

ふじのくに森の防潮堤づくり“施工方法”

工事の主な施工方法や内容について紹介します。

工事の流れ

本事業では、県と市が役割分担しており、まず枯れて機能が低下した防災林を県が伐採します。1.次に市が地域が防災上必要とする高さや幅になるように砂丘造成盛土を行い、2.さらに県がその上に苗木が深く根を張りやすいよう締め固めない生育基盤盛土を2mの厚さで施工し、3.最後にマツなどの植栽や強風や潮風を防ぐ防風工や竹すの設置を行っています。

イラスト:施工イメージ図

写真:施工の流れ

整備区域の伐採

近年の大型台風による塩害で、海岸防災林のクロマツが広範囲に枯損しました。
その後、松くい虫による被害も重なり、機能が低下した海岸防災林について伐採搬出を行っています。(県施工)枯損していない区域については、防災林の機能を損ねない範囲で伐採しています。(市施行)
伐採したマツは、チップ化し、植栽後のマルチング材として利用しています。

写真:伐採作業(伐採前、伐採後)

砂丘造成盛土工

既存の防災林の地盤の嵩上げや土堤を強化するため、各市が防災上必要とする形を定めて盛土を実施しています。(市施工)

写真:盛土(盛土前、盛土後)

生育基盤盛土工

海岸防災林再生のため、植栽する樹木を健全に育成するための盛土を実施しています。(県施工)
この盛土は通常の盛土とは異なり、植栽木の根が伸長しやすいよう締め固めずに施工しています。

写真:機会による盛土作業

写真:生育基盤盛土

防風工

植栽した樹木の初期成長を助け、台風や塩害、飛砂による被害から守るため、県産材の木材を利用した防風工や防風垣(竹す)などを設置しています。

写真:防風工

株式会社ノダによる杭の寄付

植栽した木を海風から守る防風垣(竹す)等を設置していますが、防風垣には、多くの木杭が必要です。県内の森林の9割以上が41年生以上で、杭に適した細丸太(直径6cm)が不足していました。
そこで、県内で県産材を使用した合板を製造している株式会社ノダに合板の材料として使用した後に残る丸太の芯の販売を要望したところ、株式会社ノダから寄付する旨申し出がありました。
平成29年度から令和4年度末までで、8万本を超える寄付をいただいています。
令和3年度には、公益のため一定額以上の私財を寄付した個人又は団体を顕彰する「紺綬褒章」の褒状が授与されました。

写真:木杭の寄付の様子

植栽工

海岸の激しい環境にも適応できるクロマツの他に、地域に生育している広葉樹(潜在自然植生)を植えて、災害に強く、地域の自然と生活環境に調和した海岸防災林の再生を目指します。平成24年に専門家の方々に討議して頂き、遠州灘に適するとされた樹種を植栽しています。
海側植栽:クロマツ、トベラ、マサキ、シャリンバイ
天端植栽:クロマツ、ウバメガシ、ヤブニッケイ、ネズミモチ
陸側植栽:クロマツ、ヒメユズリハ、ヤマモモ、タブノキ、クロガネモチ、ホルトノキ、ヤブツバキ
海風の影響を考慮し、内陸に向けて高木になる木を植栽することで、飛砂・潮害・防風に効果的な森林の形(風衝林型)を作ることを目標としています。
植栽後、生育状況を確認し、現地に適応する樹種を選定しています。今後も引き続き生育状況を調査し、海岸防災林の整備に活かしていきます。

イラスト:風衝林型

写真:植栽工

その他(排水処理等)

海岸防災林の樹木の生育不良になる要因として過度な乾燥や土壌水分の浸透不良が考えられます。
“ふじのくに森の防潮堤づくり”では、過湿に対しては、1.砂丘造成盛土と生育基盤盛土の境に浸透水が滞水するため、盛土内に暗渠を設置、2.地表面の滞水を防止するため、生育基盤盛土の斜面に植生土のう水路を、斜面下部に側溝工(栗石)や浸透桝(流末処理)を設置するなど、速やかに排水を図ることで樹木が健全に育成できるように施工しています。
また、乾燥に対して、枯損したマツ等の枝葉をチップ化し、マルチング材として再利用しています。

写真:暗渠

写真:マルチング1

写真:マルチング2

各市の特徴

各市の特徴について紹介します。

磐田市

完成高さはレベル2津波に対応し、「せり上がり」を考慮して、海抜14.0mとしています。
断面形状は法面勾配3割とし、天端幅5mを管理用道路として使用します。

袋井市

“ふじのくに森の防潮堤づくり”を実施している4市の中で最も長い天端(平場)幅約40~50mを有しています。
高さはレベル2津波に対応した海抜12.0mで実施しています。
背面にもともとあった土堤と生育基盤盛土との間に凹みが出来ないように嵩上を行い、広い天端の中心付近に管理道を作っています。

掛川市

レベル2津波による盛土の浸食を考慮して、天端幅は25m、法面勾配は3割を標準として整備しています。
盛土の高さは海抜12~16mです。

御前崎市

現在はレベル1津波に対しての増強を目的に事業を行っています。
もともとの地形がレベル1津波に対応できる高さ(海抜10.0m以上)がありますが、砂丘造成盛土及び生育基盤盛土を施工することにより、土堤の幅を増厚しています。
また、盛土をした場所には、海岸防災林を再整備するために抵抗性クロマツや広葉樹を植樹しています。
なお、計画区間は整備済ですが、現在レベル2津波についての対応を市で検討しているところです。

各市の標準断面図

海岸防災林便りバックナンバー(平成27年度〜平成30年度)

“ふじのくに森の防潮堤づくり”の取組について報告してきた「海岸防災林便り」のバックナンバーを紹介します。
※発行時点の情報ですので、最新情報は本HPを参照してください。

海岸防災林便り【No.1~23+号外】

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