静岡県教育委員会

“ふじのくに”の未来を担う「有徳の人」づくり

Eジャーナルしずおか第247号(抜粋)令和4年5月発行

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ページID1031404  更新日 2023年1月13日

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静岡県教員育成指標を改訂しました

「有徳の人」を育み、誰一人取り残さない教育を実現するため、生涯を通じて学び続け、子供たちの伴走者として夢の実現へと導く教員の育成を目指す

改訂の趣旨

平成29年に策定された静岡県教員育成指標は、学習指導要領や令和3年1月中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」、「静岡県教育振興基本計画」などを踏まえ、令和4年度に改訂しました。

活用方法

「教員等育成指標活用のための補助資料」に掲載

自己の教職キャリアをデザインするための目標設定

短期目標(単年度で達成したい目標)

年度初め等に、身に付けたい資質能力を明確にする。

中期目標(数年後までに達成したい目標)

次のキャリアステージで求められる資質能力も見据えた上で、チャレンジしたいことを明確にする。

長期目標(退職までに達成したい目標)

自己の教職キャリアを見通したとき、自らの理想の教員像を追求し続けるための目標を設定する。

学校組織(校内研修等)での活用

「教員は学校で育つ」という言葉があるように、全ての教育活動を通して、児童生徒と一緒に教員も育っていることに着目し、学校の実態に合わせた組織的な活用を進める。

個人での活用事例 それぞれの立場で

  • 教育活動の中で自分が求められている姿を具体的にイメージする。
  • 教員人生を見通して、主体的・継続的に学び続ける。

静岡県教員育成指標(副校長、教頭、主幹教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭等)

静岡県教員育成指標

採用時

  • 教育に対する真摯な姿勢を持つとともに、求められる資質能力の基盤を形成しようと努める。

基礎・向上期

  • 他者との関わりや仕事上の経験を経て、教員としての資質能力の向上を目指す。
  • 様々な学校の異動を経験する中で、視野を広げる。

充実・発展期

基礎・向上期に身に付けた力に加え、

  • 自らの立場や役割を自覚して学校運営に参画し、ミドルリーダーとしての資質能力の向上を目指す。
  • 教員としての幅をさらに広げ、自己の強みを確かなものにする。

深化・熟練期

充実・発展期に身に付けた力に加え、

  • 指導的な立場として、学校運営のサポート役や校内の人材育成の推進役を務めるとともに、専門性をより深め、自らの描いた理想とする教員像の実現を目指す。
  • 学校運営をリードする立場として、組織的に教育活動を推進する体制を構築する。

教育的素養・総合的人間力

  • 教職人生を通して、教育者としての使命感、倫理観・人権意識、社会性、教育に対する誇りを持ち、新しい知識・技能を学び続け、子供への共感・理解や教育的愛情の涵養、信頼関係の構築を図っている。
  • 教職人生を通して、真摯に学び続ける姿勢と自律心、変化を恐れない積極性とリーダーシップを持ち、広い視野と社会環境への理解を基に地域社会と関わり、豊かな人間性の向上を図っている。
  • 「才徳兼備」の人づくりを担う一人として、常に児童生徒の模範となるよう行動している。

授業力

授業づくりに関わる力

教科領域専門性/児童生徒の実態把握/授業構想・授業展開/個に応じた指導/ICT・教育データを活用した指導/評価・改善など

採用時

  • 学習指導要領の趣旨を踏まえ、指導内容や指導方法(ICTを活用した指導方法含む)について理解し、実践しようとしている。

基礎・向上期

  • 児童生徒の実態把握を的確に行い、主体的・対話的で深い学びを実現するため、個別最適な学びや協働的な学びのある授業を実践している。
  • 幼小中高の学びの継続性及び教科等横断的な視点を持った授業を実践している。
  • 各教科等と地域の人的・物的資源をつなげ、学習成果を高める授業を構想し、ICTを効果的に活用し展開している。

充実・発展期

  • 児童生徒個々の特性に合わせ、主体的・対話的で深い学びを実現するため、個別最適な学びや協働的な学びのある授業、幼小中高の学びの継続性と教科等横断的な視点を持った授業の実践を深めている。
  • 専門性を高めるために得意分野の伸長を図り、同僚に対する指導・助言を行っている。
  • 地域の人的・物的資源を有効活用し、高い学習効果を上げる授業を構想し、ICTを効果的に活用し展開している。

深化・熟練期

  • 変化を恐れない積極性とリーダーシップを持ち、授業力向上のための体制づくりに参画している。
  • 自己の確かな実践に基づき、学校・家庭・地域の実態や特性等を踏まえ、児童生徒の資質能力を伸ばすためにICTの効果的な活用等、必要な指導計画の策定とその実践をリードしている。
  • 同僚に的確な指導・助言を行い、効果を上げている。

生徒指導力

児童生徒理解を深め、健やかな成長を支援する力

児童生徒理解/学級経営/生徒指導(ICT・教育データの活用)/特別支援教育/ユニバーサルデザインの視点の共有/人権教育/キャリア教育/SDGs/保護者・地域・外部と連携した指導/グローバル人材の育成など

採用時

  • 児童生徒の発達等に関する知識を得ることや、多様な児童生徒と接する経験を持つことなどを通して、児童生徒理解に努めるとともに、人権尊重の意識を深めている。

基礎・向上期

  • 児童生徒一人一人に寄り添い、個々の特性に応じた発達を促すとともに、発達段階に即して好ましい人間関係をつくれるよう、地域や外部関係者と連携して支援している。
  • 保護者等との信頼関係を基盤とした個に応じた指導・支援に取り組んでいる。
  • 特別支援教育の対象となる児童生徒一人ひとりに応じた指導計画を作成するとともに、合理的配慮を踏まえた的確な指導を行っている。

充実・発展期

  • 児童生徒一人一人を取り巻く環境を的確に捉え、理解を深めるとともに、よりよい集団づくりを促進し、個々の資質能力を最大限発揮させるための環境づくりに努めている。
  • 外部機関と連携し、主体的・組織的に生徒指導に取り組んでいる。
  • 特別支援教育に関わる専門性を高めるとともに、自らの実践を通して、同僚への指導・助言を行っている。

深化・熟練期

  • 児童生徒一人一人について、教職員相互の理解・支援を促進するために組織や地域・外部関係者に働き掛け、学年・学校全体として生徒を支援する機能の充実を図っている。
  • 外部機関と連携して組織的な生徒指導を推進し、指導・助言を行っている。
  • 児童生徒の社会的自立を目指す特別支援教育について、組織的に教育活動の改善を図っている。

教育業務遂行力

授業力、生徒指導力以外の専門的な力

様々な教育課題(社会の変化、継続的な業務改善、校務におけるICT・教育データ活用等)への対応/管理(安全対策、保健管理栄養・衛生管理)など

採用時

  • 教員の仕事の全体像を認識し、教育に携わる者として、社会の変化や様々な教育課題等について関心と知識を持っている。

基礎・向上期

  • 様々な教育課題に対応するため必要な知識・技術を習得し、実践するとともに、常に改善意識を持って取り組んでいる。
  • 常に安全確保に取り組み、危険を察知した際の報告・連絡・相談、事故等への対応、再発防止の実施が迅速にできている。

充実・発展期

  • 様々な教育課題を速やかに把握し、率先・協働して改善・解決するとともに、同僚への指導・助言を行っている。
  • 危険を予測した未然防止の取組、事故等への適切な対応、事後の検証と再発防止が、同僚と協働して組織的にできている。

深化・熟練期

  • 様々な教育課題に対して模範となる実践を行うとともに、学校全体を見据えて、魅力ある学校づくりを推進している。
  • 危険の未然防止や事故等の再発防止のための体制整備を組織的に推進するとともに、適切な指導・助言を行っている。

組織運営力

組織目標を達成するために必要な力

対話・協働・信頼/コミュニケーション・ファシリテーション/課題解決、危機管理/コミュニティ・スクール活用/ICT・教育データ活用/人材育成など

採用時

  • 組織の一員としての自覚と責任、自ら進んで課題を発見し解決しようとする姿勢、聴く力や読み解く力などコミュニケーション力を身に付けている。

基礎・向上期

  • 組織の一員として、学校経営計画の実現に向け、他の教職員と協働して自らの役割に課せられた責任を果たしている。
  • 組織運営について先輩教職員から学ぶとともに、後輩のよき相談役となっている。

充実・発展期

  • 学校経営計画の実現のための取組を、ミドルリーダーとして同僚に働き掛けて協働的に進めている。
  • 教職員間の信頼に基づき、多様な意見を尊重して、リスク回避に努め、組織的な学校改善を推進している。

深化・熟練期

  • 学校運営上の課題を適時・的確に分析し、その解決のために指導的な立場で参画している。
  • チームとしての学校として協働的な組織体制・信頼体制の構築を主導的に推進している。危機管理を徹底させている。
  • 人材育成の重要性を踏まえ自らの経験・スキルを率先して後進に伝えている。

ホームページには「教員育成指標」「校長育成指標」「教員等育成指標活用のための補助資料(養護教諭・栄養教諭・幼稚園等教員に関する資質能力)」等を掲載しています。ぜひご覧ください。

【教育政策課】

実践ノート491:端末の活用で重ねる試行深まる思考 数学の教科指導におけるICT機器の活用

静岡大学教育学部附属島田中学校 教諭 稲熊紀昭

Chromebookは文房具

GIGAスクール構想により、小中学校に一人一台端末が配備されました。前任校の焼津市立大村中学校では、令和3年度から本格的にChromebookを活用し始めました。校内ICT活用推進リーダーであった私は、とにかくさまざまな場面で積極的に端末を使うことを意識しました。活用する場を増やすことで、生徒にとってChromebookは特別な道具なのではなく、「文房具」のように常に傍らにあって活用するものにしたいと考えました。

写真:筆者

ピンチがチャンスに

昨年9月、コロナ禍による休業に伴い、生徒たちの学びの機会を保証しようとさまざまなアイデアを考えました。その一つがGoogle社の会議アプリケーション『meet』を活用した双方向型の授業です。結果的にこのことで校内における端末の活用が進みました。

写真:オンライン授業中の教室

個々で考えた方法で課題解決に迫る生徒たち

1年生の『データの活用』では、「焼津市の人口は多いのか」という課題に対し、生徒たちはおのおのの方法でデータの分析を始めます。静岡県内の全市町の人口を調べる生徒、人口密度を調べる生徒、分析するデータの範囲を静岡県全域や中部地方、県内の市のみで考える生徒など、端末を活用することで、インターネット上のデータを参照して、生徒は個々に追究を進めることができました。集めたデータを度数分布表やヒストグラムにまとめる生徒は、統計ソフト『statlook』*を活用しました(*静岡大学松元新一郎教授作成)。生徒たちは階級の幅をいろいろな値に設定しより傾向が見つかりやすい形を探っていました。ノートにいくつも度数分布表を書かなくても、最適なものを見つけやすくなりました。

写真:生徒が作成した度数分布表とヒストグラム

これからのICT機器活用

今後、生徒用デジタル教科書やMEXCBTの運用に伴い、授業のデジタル化は一層進んでいきます。授業でICT機器を「使うこと」にとどまらず、「主体的・対話的で深い学び」の充実のために、さらに効果的に活用していきたいと思います。

写真:Chromebookを使用する生徒たち

実践ノート491は以上です。

実践ノート492:「やりたい!」の実現のために

三島市立北幼稚園 教諭 金崎えり子

誰にでもわかりやすい保育を

どんな苦手さがある子も、クラスのみんなと同じように「やりたい!」を感じるためには、どの子にもわかりやすい保育の工夫は欠かせません。また、行事への取り組み方ひとつで、子どもたちの「やりたい!」が大きく変わってきます。園外保育の時には「行先までの地図」を、運動会の時には「子どもたち用のプログラム」を必ず作成します。どんな苦手さがある子も、主体的に取り組むことができるためのものでもあります。

どの子も目を輝かせて見入り、家庭で色を塗ったり、保護者の方と気づいたことを書き込んだりして当日を迎えます。私が子どもたちに与えるものはただのきっかけに過ぎません。そのきっかけを得て、子どもたちがどう感じたのか、どう行動するのか毎回とても楽しみでなりません。

写真:子どもたち用の運動会のプログラム

写真:子どもたちが小学校に向けて書いた手紙

一人の「やりたい」を大切に

園から徒歩で約1時間かかるお寺に園外保育に行く1週間前、教師特製の地図を見ながら一人の男児が「お兄ちゃんの学校通る!」と気づきました。お兄ちゃんに会いたいな、そんな思いが膨らんで「手紙を書く」という行動につながりました。一人の「やりたい」がクラス皆に伝わった瞬間でした。皆で意見を出し合い、手紙が完成。この時には子どもたちの顔は充実感であふれ、ワクワクが止まらない様子。当日、なんと手紙を見た校長先生、教頭先生、そして男児のお兄ちゃんが小学校の前で待っていてくれたのです。クラス皆がとても喜び、間違いなく心が動いたことを感じた出来事でした。

写真:金槌をつかって野菜の看板づくり

充実感の先に

幼稚園でたくさんの「やりたい!」をかなえてきた子どもたちは、さまざまな力を発揮してくれます。その充実感は小学校での学びの芽にもつながると考えられます。また子どもたち自身の自己肯定感を高めることにもなります。
ですが充実感を得られたらゴールではありません。今後も充実感の先に感じるであろう、子どもたちのさまざまな気持ちを見守り支えながら、丁寧な質の高い保育を心掛けたいと思います。

写真:筆者

実践ノート492は以上です。

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