静岡県教育委員会

“ふじのくに”の未来を担う「有徳の人」づくり

Eジャーナル第239号(抜粋)令和3年9月発行

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ページID1031411  更新日 2023年1月13日

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「ICT」と「授業」の未来新時代の授業はすぐそこに

県教育委員会では、新時代の授業に対応すべく、小中学校の教員を対象に、GIGA(ギガ)スクールサポート研修を実施しました。研修では、GIGAスクール構想と情報モラル教育についての講義やICTの特性を活用した授業の体験を行いました。グループワークでは自らのICT機器等を用いてICT活用術を紹介したり、悩みや課題を共有したりして、熱い議論が交わされました。

そもそもGIGA(ギガ)スクール構想の実現とは…

Society5.0時代を生きる全ての子供たちの可能性を引き出すために、児童生徒の「1人1台端末」等のICT環境を整備し、個別最適な学びと協働的な学びを実現していくことです。

「情報モラル教育」ではどんなことをすればいいの?

これまでの情報モラル教育では、例えばSNSの炎上や写真による個人の特定及び個人情報の流出、デジタルタトゥーなどが取り挙げられてきました。これからの時代は、上記に加え、1人1台端末をよりよく活用するために必要な、情報モラル教育にも取り組む必要があります。
例えば、共同編集において友人が書き込んだ意見を無断で編集しないこと等のルールについて、子供たちが話し合い活動等を通して主体的に学んでいく取り組み等が考えられます。
(参考資料)令和3年度人権教育の手引き学習例「一人一台端末をよりよく活用しよう」

事例紹介、悩みや課題…みんなで情報共有!!TEACHER’SVOICE

事例紹介

  • 端末の活用に関する取組
    • 子供たちがデジタルデータ資料を「共有」し、グループ内活動でリアルタイムで考えを共有しながら発表資料を作成している。
    • 学校と家庭が、カレンダーアプリで学校行事等を情報共有している。
    • 子供たちが課題を早く解き終わった際には、個々にeライブラリなどで学習を進めることができるようになった。
    • 欠席した子供へ次の日の予定を伝えたり、宿題についてわからなかったことへのコメント対応をしたりすることができる。
    • オンライン授業に取り組んだ。(校内、家庭、院内学級等とつながり、授業配信)
    • 実技の見本をカメラで撮影し、子供1人1人に送信し、見本を見ながら各自が練習している。
    • 授業でアンケートや小テストを行った際、瞬時に集計ができるようになった。その集計結果をすぐに授業に反映し子供たちへの指導・支援に活かしている。
    • Meet、Zoom、クラスルームを利用した生徒会活動を行っている。
  • 教員の働き方改革に関する取組や意見
    • 教職員間で打合せの資料や起案文書を共有することで、ペーパーレス化が進んだ。
    • 学校でのICTを活用したさまざまな実践や教材等を共有できるとよい。

悩みや課題

  • 端末の持ち帰り等のルールについて、児童生徒が主体的に考えたり作成したりする取り組みが必要である。今回の研修で学んだワークシート「1人1台端末をよりよく活用しよう」を活用していきたい。
  • 今回の研修を通して情報モラルの重要性に気づくことができた。学年に応じたモラル教育の内容について検討したい。
  • 児童生徒にICT機器の基本的な操作について指導する時間の確保も必要であり課題となっている。校内で話し合い、取り組みたい。
  • 授業でのアプリケーション活用方法に関しては、校内研修を通して各教員のスキルを上げていく必要があると思う。
  • ICT教育に関するカリキュラムマネジメントが大切である。(小学校から体系的に取り組むことが必要だと思う。
  • トラブルで授業が中断してしまうこともあるが、それを理由にICT活用を進める歩みを止めてはいけない。工夫しながら解決し進めていくべきである。

「ICT」と「授業」の未来新時代の授業はすぐそこにについては以上です。

実践ノート475:生きた教材として

静岡県立沼津城北高等学校 教諭 大胡田裕

授業づくりで心掛けていること

私は沼津城北高校で英語の教員をしています。先天性緑内障のために全盲です。毎日の授業は、晴眼者の同僚とのティームティーチングで行っています。
私が授業づくりで心掛けていることは、生徒たちが進んで考えてみたくなるような問いを投げ掛けることです。生徒たちの思考を促し、彼らの答えに適切なフィードバックを返していくことが、活気ある授業につながるのではと考えています。

生徒たちの意外な答え

5月のある授業では、再生医療で視力を取り戻した男性についての記事を読み、その後「もし将来、大胡田の目が見えるようになったとしたら、何を見せたいですか?」と問いかけてみました。全盲の教員に教わっている生徒たちがどのような答えを書いてくれるのか、私にとっても初めての試みだったのでとても楽しみでした。グループワークの後、最終的に残った答えは以下の3つになりました。

  1. 鏡(大胡田先生がハンサムだと知ってほしいから)
  2. 私たちの顔(自分たちのことをよく知ってほしいから)
  3. 上野動物園のサルたち(かわいいから)

なんとなく「テレビ」や「漫画」という答えを予想していた私にとっては、彼らの答えはどれも意外で、その場ではうまくリアクションができませんでした。「驚いたなあ。そんなふうに考えてるんだ」と言うのが精いっぱいでした。しかし、後から振り返ってみると、特に2.の「私たちの顔」という答えは、本当の意味で目が見えない人の気持ちを分かっているからこそ出てくる答えではないかと思います。「私にはみんなの表情は見えないから、言葉や音で反応を返してほしい。分かったふりはしないでほしい」といつも言っていたことが、彼らに響いていたのかもしれないと思うと、何とも言えないうれしさで胸がいっぱいになります。

生きた教材として

私は視覚に障害のある教員として、障害の有無を超えて助け合える社会を思い描くための、生きた教材になりたいと考えています。目が見えないことで不自由を感じたり悔しい思いをしたりすることはありますが、教職はそれにも増して大きなやりがいと喜びをもたらしてくれる仕事です。今後もさまざまな実践を積み上げ、共生社会実現の一翼を担えるよう精進してまいります。

実践ノート475は以上です。

実践ノート476:児童生徒の生活を支える体づくり運動「からだづくりシート」の作成と活用を通して

静岡県立清水特別支援学校 教諭 松見育子

「教室体育」って!?

「体育やるよ。机と椅子を廊下に出して」屋根や窓に当たる雨の音と共に各教室から教員の声が聞こえてきます。体育館や運動場が使用できずに場所が制限されると、本校では各学部・学年のそれぞれの教室(特別教室も含む)で体育を行っています。
限られた時間、スペース、そして特別に準備する物がなくても最大限の運動量や強度を発揮することのできる運動が求められます。

本校独自の「からだづくりシート」

本校の「からだづくりシート」は、学習指導要領の体の「柔らかさ」、「巧み」な動き、「力強い」動き、動きを「持続」する能力、の4つのカテゴリに分け構成されています。
児童生徒の実態に合わせてそれぞれの動きを大きく3段階で構成することで、小学部から高等部までの児童生徒が活用できるシート34ページがファイリングされています。
シートには、体育の主活動の前に、その運動に必要な体づくり運動を短時間で行い、次の活動につながる補助・補強運動が可能となる動きが盛り込まれています。
例えばボール運動では、「巧み」な動きの項目にボールフィーリングを扱い、ボール運動の前にボールに慣れる補助運動が行えます。また、器械運動では、「力強い」動きの項目に上肢の運動として姿勢の保持(腕立ての姿勢で静止する)を扱うことで、前転の動きで体の支持につながる補強運動が行えるようになっています。
各学部で、「からだづくりシート」の項目を体育活動の年間指導計画に位置付け、各単元で効果的に扱うことができるように全校で活用し取り組んでいます。

先生たちはアイデアの宝庫

特別支援学校の教員は、アイデアに溢れ、その都度個々に合わせた教材教具、場の設定などたくさんのモノを日々の授業で工夫し、生み出しています。
先生たちが生み出すアイデアも「宝」、児童生徒のこれまでの運動履歴と、積み上げられ身に付いたさまざまな力も「宝」です。
児童生徒と教員の学校全体で作り上げていく「からだづくりシート」の活用で、12年間のつながりと連続性を持って長期的、継続的指導を行っていくことが実現できます。
「からだづくりシート」の活用から2年目、児童生徒の身体の変化、運動の効果、それらが生活の中でどう生かされるのか、発揮されるのはこれからです。児童生徒の生活を支える体づくりを共に育んでいくよう努めていきたいと思います。

実践ノート476は以上です。

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教育委員会教育政策課
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