UD教育UD研究(特に高齢者の視覚)【寄稿日:令和3年1月15日】

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ページID1013464  更新日 2023年1月13日

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静岡文化芸術大学 デザイン学部 教授 小濱朋子 氏

私がUDに関わった最初の一歩は「高齢者の白内障の見え方」を疑似体験するゴーグルの開発である。実際に白内障の患者さんの見え方が再現され、知識や理論だけでなく体感できるツールとして好評で、メーカーや教育、福祉の現場などで広く活用された。

20年余りを経て、超高齢社会が現実となった。「自分が高齢者になった時に気持ちよくすごせる社会をつくりたい」という思いは、当初から続く私のUD活動のモチベーションであるが、残念ながら、今はまだ、そのような社会になっているという実感はない。

確かに、様々な社会のインフラやサービスは整ってきているが、その一方で、人の価値観が多様化し、SDGsが掲げられるなどグローバル化が進み、当初に比べてUDの対象が広がり、とらえにくくなくなってきている印象はある。しかし私たちは、疑似体験ツールに頼らなくても、「超高齢社会の課題」を大なり小なり体感している。「自分自身にとって気持ちいい生活とは何か」を具体的に考え、当事者やその周りの人の気持ちを想像し、実感につながるUDを少しずつでも実践し、積み重ねていくことが必要なのではないだろうか。

大学の授業やワークショップでは、机上の学びだけでなく、自分を見つめ、それを基軸にしつつ、課題や提案を可視化して、どんなに小さなことでも発信するように進めている。正解を明らかにするとか、出来ばえを評価するものではなく、周りとの相違を発見し、共有することに重きを置いている。小さなギャップや思い込みが誤解を招き、大きな隔たりとなり、不快につながる。高齢者になると様々な個性が顕著になる。当事者も周りの人もお互いにストレスがかからないように「多様性を受け入れ、フレキシブルに対応できる素地」をつくること、グローバル視点でそういう資質を育てていくことが、これからのUDにおいて大切だと考えている。たやすいことではないが、手ごたえは結構感じている。これからが楽しみだ。

写真:白内障疑似体験ゴーグル
白内障疑似体験ゴーグル
写真:白内障の見え方
白内障の見え方(右:白内障疑似体験ゴーグルを通して撮影)

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