<地域活性化>ふるさとで夢を持って生きる NPO法人夢未来くんま
- 所在地
- 〒431-3641 浜松市天竜区熊1976-1
- 代表者
- 理事長 大石顥
- 電話
- 053-929-0636
- ファクス
- 053-929-0625
- 設立
- 昭和63年6月
- 会員数
- 520名
- 事業内容
- 地場産品の加工販売、食堂での地元料理提供、高齢者福祉、地域イベント・環境保全活動等
中山間地コミュニティビジネスの源流
中山間地におけるコミュニティビジネスとして全国的に有名なNPO法人夢未来くんまは、県内の先駆けとして平成12年6月にNPO法人を設立したが、活動の起源はさらに古く、昭和30年代からの農村生活改善運動まで遡る。農村生活改善運動とは、生活改善普及員の働きかけにより、農村の住民、特に女性たちがグループを作り、自分たちの生活を取り巻く問題点を自らで発見し、現在ある手段や資源を使って自分たちの力で改善に導く活動である。その手法には現在のコミュニティビジネスに通じる部分があり、事実、同NPO法人が運営する道の駅くんま水車の里の駅長である金田三和子副理事長は、当時の固い結束力が現在の活動の基盤になったと語る。高度経済成長期になり、農村生活改善運動が終了した後も、公民館活動での味噌作りなど、グループの結束と地域活性化への意欲はますます盛んになった。金田副理事長は急速な過疎化が地域全体の問題となった時、このままふるさとが埋もれてしまうことを見過ごせないと、食品の加工所を作って地元の食文化や味などを地域外の人に知ってもらう活動を提案した。協議を重ね、地区全戸の参加により熊地区活性化推進協議会が結成されると、天竜市役所(当時)の応援を得ることができ、財産区の資金を出資してもらった。加えてふるさと活性化事業の助成金を得て昭和63年に食品加工施設くんま水車の里、食事処かあさんの店が稼動したのである。
味噌作りやそば打ちはともかく、家の外で働いたことなどなかった農家の主婦にとって、接客やイベントでの呼び込みなどは難しかったという。しかし、同時に、自分たちが作ったものをお金を出して買ってもらう、喜んでもらうという体験は、この活動に参加した主婦たちを大いに勇気づけた。美味しいそばを提供するために本格的なそば職人に習いに行ったり、何度も工夫して品質向上に努めた。そんな取り組みが話題を呼び、平成元年には農林水産祭むらづくり部門で天皇杯を受賞した。
みんなのために水車は回る
同NPO法人は、くんま水車の里、かあさんの店での売上と、活動を支援する行政のアドバイスや補助金で、そば打ち体験などの交流施設ふれあいの家やほたるを見る会など、新たな設備を整え活動を広げていった。問題が起きればそのつど皆で話し合って解決することを繰り返しながら、同NPO法人は地域の核として成長していった。
やがて、大きな収益をあげるまでに成長した同NPO法人は、ふさわしい器と新しい役割を負うことになった。平成12年、熊地区の成人すべてを会員とするNPO法人となって会計を明確化し、収益事業と非営利事業とを効率的に組み合わせることができる体制を整えた。くんま水車の里、かあさんの店、物産館ぶらっとを擁する水車部で得られた利益を、しあわせ部の高齢者福祉、いきがい部の地域活動、ふるさと部の環境保全など各分野の地域活動に使っている。
まるで里の中心におかれた水車が回るように、地域の人が働き、地域に人を呼び、地域の産物を売り、地域の人々が恩恵を受けるという循環が生まれたのである。
くんま水車の里がそこにある意味
あの水車でそば粉を挽くのですか、と加工部門の高橋薫さんに聞くと、笑って「水車は調整が難しくて、今は粉挽きには使いません」と言う。ではなぜ水車を、と更に尋ねると、金田副理事長が「加工所と店を作った時、私たちのシンボルとして真ん中に水車を置きたかったから」と答えてくれた。
長い間、農村部や中山間地では女性が外で働く機会も習慣もなく、社会の中で何かの役に立ったり、価値を生み出すなどとは考えたこともなかったが、くんま水車の里に携わることによって働くことの喜びや苦労、社会と繋がる意味を知り、努力と結束で大きな成果を上げてきたという。このことが熊地区の女性たちの目を外に向かわせ、地域の一員として地域を思い、行動することを当たり前にした。山の農家のかあさんに何ができる、と遠巻きに見ていた男性たちも、生き生きと働く妻や母を見て、進んで協力してくれるようになった、と高橋さんは振り返る。
もちろん四半世紀に及ぶ活動をもってしても、過疎化という根本的な問題が解決されたわけではなく、活動メンバーの高齢化も進んではいる。しかし、くんま水車の里はこの地域で生きる人々に多くの恩恵をもたらし、先駆者として他の地域の活動にも大きな影響を与えてきた。何より、くんま水車の里は、この地に生きる人々が地域の問題と向き合い、常に未来を見て、より良い地域づくりへの挑戦を続けてきたという証しなのである。
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