<生きがい・地域活性化>それぞれの良さが出会って元気が生まれる ワーカーズ・コレクティブ伊豆・松崎・であい村蔵ら
- 所在地
- 〒410-3611 賀茂郡松崎町松崎319-1
- 代表者名
- 代表理事 青森千枝美
- 電話
- 0558-42-0100
- ファクス
- 0558-42-0100
- 設立
-
平成22年
- 運営人数
- 25名
- 営業時間
-
10時~16時(木曜定休日)
6~7名で交替勤務
- 事業内容
-
古民家を利用した飲食、物品販売、ギャラリースペース運営
(手作り品・農産物・菓子等の製造・委託販売)
町の宝を守って育てる
長い間ここ松崎町に暮らし、愛着も人一倍と言う青森千枝美代表理事は、ある日ひとつの相談を受けた。地元の偉人依田佐二平翁の母堂と奥様が暮らした家でもある古民家が取り壊されて建売住宅になるかもしれないという。その家は役場にも近く町の中心部にあって、なまこ壁の蔵を持つ大切な町の財産だった。その頃青森代表理事自身は、子どもも孫も成長し家業の民宿も終了して、これからは町への恩返しにと、ものづくり介護をコンセプトにした高齢者手作り品の店「ゆめのはな」に取り組んでいた時だった。
なんとかしてこの家を守りたい、町のために生かしたいという思いから、青森代表理事は「ゆめのはな」の仲間や知り合いに声をかけ、家を守る方法を考えた。自分たちで何とかしようと決めた時、仲間の一人がワーカーズ・コレクティブという選択肢を提案した。聞き慣れないこの組織形態について詳しい人が身近にいたことは、偶然の幸運だったかもしれない。メンバーを募り、共同出資・共同経営でここをお店にして、観光客も地元の人も気軽に立ち寄れる場所、高齢者の憩いの場所を作ってはどうかとアイディアが出た。町を元気にする、まちづくりの拠点だ。
方針が決まると、金額の多少はあっても、ぜひ出資したい、ぜひ参加したいという仲間が集まった。
ほとんどが主婦だったが、主婦業の一番忙しい時期は卒業していた。この古民家は、それまで営んでいた自転車屋の内装で歴史的建造物の良さが隠れてしまっていた部分があったため、自分たちも大工さんの指導のもと、ペンキ塗りやくぎ抜きなどできる事には汗を流し、改装した。その結果、土間では手作り品を展示しながら昼食や軽食を提供し、座敷や蔵の2階はギャラリーとして、襖も歴史的資料もそのままに、松崎の歴史と築150年の古民家の風情を楽しんでもらえる空間になった。
ワーカーズ・コレクティブという形
まちづくりや地域活性化のための事業は、全国で行われている。その形態は市民活動(任意団体)だったりNPO法人だったり、株式会社などの営利法人だったりと多様だが、蔵らはワーカーズ・コレクティブを選んだ。珍しい形態ではあるが、蔵らにとって最適だったことは間違いない。
それは、メンバー全員が共通の目的を持ち、それぞれに得意なことを生かして自分のペースで働ける形であるからだ。会社や事業主に雇われて、指示で動くのではない。必要だと思われることを皆で考え、自分にできることをして責任を果たす。食事やおやつの調理、毎日の掃除、経理やパソコンの操作など、それぞれの人生で自然に身につけてきたものを、キャリアとして生かすことができる。
営利目的ではないこともメリットのひとつだ。メンバー自身が高齢にさしかかっても体調や都合に応じて無理のない働き方をすれば、その対価は時間数できちんと分配され励みになる。いくら稼ぐためにどのくらい働かなければ、というプレッシャーはない。60~70歳代中心のメンバーが、無償のボランティアではなく無理のない仕事を楽しく続けていけることの意義は大きい。
良さを形にすれば、人は集まる
蔵ら開業の目的の一つに、高齢者の憩いの場所づくりがあった。年を取り、外出が不自由になっても家の中に閉じこもりがちになってはいけない。蔵らなら、ちょっとの散歩で立ち寄ることができる。
毎食の調理が難しい高齢者でもワンコイン500円で食べられる昼膳。名物のさんまずしや本格カレーも魅力だが、その日その時手に入る地元野菜や海産物を使った日替り定食は、工夫と気遣いにあふれていて、毎日でも通いたくなる原動力だ。店内の手芸品を眺めたり、何気ない世間話をしながらゆっくり過ごせば、松崎の方言で言う「ようじゃ」、おやつの時間だ。伊豆名産の黒米を使った羊羹、まんじゅう、よもぎ団子、汁粉など素朴な味で、また会話が弾む。
地元の人だけではない。伊豆旅行で松崎を訪れた人にとっても、蔵らは気軽に入れて居心地がいい場所だ。青森代表理事によれば、蔵らのお客さんは地元住民と旅行者がちょうど半々くらいとのこと。食事スペースにはボックス席はなく、代わりに置かれた一枚板の長テーブルや白木のカウンター席は、隣り合ったお客さん同士が自然に言葉を交わし、新たな出会いが生まれるようにとの願いを込めたもの。初めて蔵らを訪れた旅行者も、次はここを目当てにやって来る。
蔵らは、ここで働く人それぞれの良さと松崎の良さを生かした交流の場なのである。
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