<文化・生涯学習>市民の学びを支えるのは市民清見潟大学塾
- 所在地
- 〒424-0817静岡市清水区銀座9-11(事務局)
- 代表者
- 塾長 斉藤建
- 電話
- 054-367-3588
- ファクス
- 054-367-3599
- 設立
- 昭和59年
- 運営人数
- (事務局)事務局長1名、専任事務2名
- 事業内容
- 静岡市清水区内の生涯学習交流館(公民館)にて講座開設、単発のセミナー、講演会等
市民主体による塾の運営
各地で取り組まれている生涯学習の多くは、行政が主体となり場所・講師・期間を決めるサービスであり、参加者はその受け手になることが多い。しかし、旧清水市、現在の静岡市清水区で生まれた清見潟大学塾は、昭和59年の設立当時から生涯学習と市民活動との協働による独自の運営方法で、26年間に延べ参加者が累計52,000人を超える実績を築き上げてきた。
清見潟大学塾とは、教育機関でも学術機関でもなく、身近な公民館で行われるカルチャー講座の集合体であり、教えたいと自ら名乗りを上げた人々が学びたいという市民に教える、清見潟大学塾いわく“大学ゴッコ”のシステムである。市民が教えたいことを教えているため受講料は破格に安く、1回当たりに換算すると500円である。これに運営費として年間1,000~1,500円を別途支払い、事務経費に充てている。講師も事務局に受講者1人につき数百円の運営費を支払う。事務局が行うのは、講師の募集掲載や大学塾の趣旨を徹底するための講師オリエンテーション、受講申し込みの受付、新聞の編集、講座の場所配分と日程調整といった講座全体に共通する分野のみで、ひとつひとつの講座の内容や教え方に関することは講師自身がすべて考え、工夫する。受講者名簿の作成・管理、受講料の集金、出欠管理、修了証の発行などもすべて講師の仕事であり、参加する市民が清見潟大学塾全体の運営負担を分け合っているのである。
行政が生涯学習事業を行う場合、企画にも講座内容の管理にも人員と費用が必要であり、講師の選定・資格審査に手間と時間を割くことになる。他から講師を招けば謝金も必要となる。しかし、清見潟大学塾は、旧清水市が公的事業として設立した当初から市民が教え市民が学ぶスタイルを確立しており、現静岡市は講座の開催場所となる生涯学習交流館を無償で使用してよいという合併前の約束を守る他には、運営に関わっていない。現在の清見潟大学塾は公的な役割を担う任意団体であり、講師総会・理事会によって自主運営されている。事務局の職員は、講師兼任の事務局長の他、専任で働くスタッフはわずか2名で、年間100講座以上、受講者2,000人以上の生涯学習システムが、行政にとっても清見潟大学塾自身にとっても最少の費用で賄われていることになる。
教えたい、学びたいがしのぎを削る
市民による運営とはいえ、お金を徴収しているからには、講師や講座の質は確保しなければならない。そこで取り入れたのが受講者が講座を淘汰する市場原理の決まりである。講師に名乗り出ても、まずは受講者募集時の短い講座紹介記事で市民にアピールし、最低10人の申し込みを得なければ開講ができない。開講した後も、最初の2ヶ月以内に受講者から請求があれば全額返金のうえ解約されてしまう。いわゆるクーリングオフである。講師が市民だからといっても、教え方がわかりにくい、内容がつまらない等々、講座に費やすお金や時間が損だと判断されれば受講者は去っていく。そして単年度が終わった後、継続・新規含めてまた10人以上の受講者を集めることができなかった場合は、その講座はそこで閉鎖されるのである。
意欲の高い講師は、教えるために必死になって考える。テキスト作り、受講生との接し方、時間配分など、自分ひとりの中に知識や技能を蓄えていた時とは別のスキルを培っていく。講師は教えることによって新たな学びを得、受講者は学ぶことによって講師に新たな視点を教える。そのように磨き上げられた講座は学びたい市民の意欲をさらに強くする。講師にも受講者にも原則的には年齢制限がないため年若い講師もいるが、教えたい程のレベルに達している人々であるから中高年以上の講師が多く、受講者もまた仕事や子育てが一段落した世代が多い。結果的に清見潟大学塾は中高年層の社会参加、生きがいづくりに一役買っているのだが、この成功は講師役の市民が自ら学ぶという側面によるところが大きいといえるだろう。
時代に合わせて市民の知恵を
渥美事務局長は、「清見潟大学塾が発足した当時に比べ、現在の日本はさらに超高齢社会が進み、国も自治体も財政は厳しくなっており、清見潟大学塾の自主性を支えてきた小さな運営が今後も可能なのか、時代は不確定になっている。市民が教え市民が学ぶスタイルを貫いても、公民館の改廃があったりして活動の場が制約されれば、運営に大きな支障が出る。継続のための費用をさらに合理化し、活動の効果をアピールして行政と協働し続けるのか、行政から真に独立して必要な費用を自主的に生み出すために事業化するのか。あるいは、これまでの清見潟大学塾がそうしてきたように、両者をミックスした独自のアイディアで、どこにもないシステムを生み出していくのか。歴史ある清見潟大学塾も、新しい出発点を迎えるかもしれない」と自身の思い描く清見潟大学塾の今後の展望を語ってくれた。
とことん学んで、ちょっと臥せって、あっさり死ぬとは清見潟大学塾創設当時からの理念である。超高齢社会を生きる市民が、とことん学ぶ期間が延びたことをどう生かすか、それぞれが学んだことを地域社会にどう還元するかが今まさに問われているのだという。
清見潟大学塾が地域にあることの意義を市民・行政がともに考え、市民が生き生きと学び教える伝統を次代にも繋げていくことを期待したい。
このページに関するお問い合わせ
経済産業部商工業局商工振興課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-2181
ファクス番号:054-221-2349
ssr@pref.shizuoka.lg.jp