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2006年の夏、日本・ネパール国交樹立50周年記念と遠隔地の小学校の女性教員を養成するセンター「さくら寮」の完成を祝うために、私はネパールを訪問しました。ヒマラヤの大自然の中で生活している世界でも最貧国といわれるネパール。帰国してからなぜかこの国がとても懐かしく思えたのです。それは、30年間ネパールで苛酷な生活をしてきた一人の日本女性との出会いのためでした。彼女は、丘陵山岳地帯の傾斜地で、自然農法・ネパール農法をもとに、農業の改良、普及、生活改善等を指導する傍ら、村の農業用水路、上水道、道路、学校等の整備、NGO・NPOの活動の手伝いや交流等の受入れなど精力的に活動をしています。環境が厳しい中での生活と活動の話には、強烈な印象を受けました。
多くの民族がいっしょに住んでいる多民族国家ネパールの基本理念は、「みんな違う」ということです。民族が違うということは、風俗・習慣・言葉が違うということで、外国人といっしょに暮らしていることと同じです。ネパールは「みんな違う」が基本になるので「貴方は、あなた。私は、わたし。」と、はっきりと自己主張をしなくては認められないのです。違う相手を理解した上で自分を認めてもらうことが多民族国家の基本理念です。
ネパールで家族とは大家族のことを言います。大家族が生活を支えているのです。つまり、三世代、四世代がいっしょに住み、泣き、笑い、怒り、悲しみ、喜びを共有し合い、困ったときはみんなで助け合う。そして先祖を尊び、敬い、お年寄りを大事にします。これらは、部族の歴史を学ぶことにつながっているのです。
昔から「苦労しなければ安らぎは得られない」という考え方があります。物がなければ、ないなりの生活をすればよいのです。ネパールには「ないことの幸せ」があります。「豊かだけれど貧しい生活、貧しいけれど豊かな生活。これは物と心のバランスではないでしょうか」という彼女の言葉が、心にしみました。
経済的にも物質的にも恵まれた生活をしていると、逆境が豊かな人間性をはぐくんでいることがあるのを、とかく忘れがちです。お互いに違いを認め合い、尊重し合って豊かな心で過ごしたいものです。