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更新日:令和3年11月10日

あえていま ― 犯罪者の人権について

弁護士 齋藤 安彦

犯罪を犯した者が厳しくその責任を追及され、刑罰を科される必要があることは当然です。どのような理由があっても犯罪が許されるなどということはありません。これは、刑事裁判等において犯罪者の弁護をする弁護士も全てこのように考えております。

最近、特に犯罪被害者の保護とからめて、犯罪者の人権が守られることに疑問が投げかけられ、特定の重大事件の弁護活動をしている弁護士が非難されるなどの事態も起こっております。犯罪被害者が保護され、できる限りその被害の回復がされ、その人権が保障されるべきであることは当然ですし、また過去においてこの保護保障が必ずしも十分ではなかったことは大いに反省し、改善すべきです。

しかし、犯罪被害者が保護されるべきことと、犯罪者の人権が守られることとは全く何の関係もありません。犯罪者の人権が守られることによって、犯罪被害者の保護がないがしろにされる等ということはありません。

そもそも犯罪者の人権が守られるというのはどういうことなのでしょうか。これは、犯罪の捜査においても、裁判においても適正、適法な手続が保障されるということなのです。

過去において、犯罪捜査の際に拷問等違法な行為が行われ、裁判においてその違法が何ら問題にされることなく有罪にされてしまったこと等もあります。また、犯罪については、国民のどのような行為が犯罪になり、その犯罪にどのような刑罰が科せられるのかがあらかじめ明確に法律で定められていなければなりません(これを「罪刑法定主義」といいます。)。極端に言えば、時の権力者がその時の気分によって何が犯罪になるかを勝手に決められるとしたら、国民はどのような行動をしたらいいか分からず、結局自由に行動することができなくなります。このことは、犯罪の捜査や裁判においても同じことが言えます。つまり、捜査や裁判の際に適正、適法な手続が保障されないとしたら、時の権力者がその気に入らない者を犯罪者にでっち上げ、拷問等を加えて自白させ、裁判でも有罪にさせることができることになります。このようなことが許されるとしたら、やはり国民は時の権力者の意に反するような行動をすることができなくなります。

以上のとおりであり、犯罪者に対する刑事の捜査や裁判手続が適正、適法になされること、つまり犯罪者の人権が保障されるということは、結局は、国民全ての自由、人権を保障することにほかならないのです。