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今、社会の中でマイナス要因が複雑に絡んだいじめの問題や幼い子どもへの虐待事件が、次から次へと後を断ちません。どうしてこんなに多いのでしょうか。
どんなに時代が変わろうとも、子どもはかけがえのない社会の宝に違いありません。それなのに新聞やテレビで全国各地からの悲しい、痛ましいニュースが報道されるたびに、私はいつもやりきれない気持ちで一杯になります。
これは「少年の主張全国大会」で特別賞を受賞した、ある中学3年生の少年の話です。
少年は5年生の時にいじめにあいます。ちょっと他の子の机をさわると「うわぁ、机がとける。机がとける」と言われました。このようないじめがその後もとめどもなく続いていきました。
そして、宿泊訓練の日、宿舎でカレーを食べていたとき隣の子のスプーンを包んでいた紙が落ちたので、少年がそれを拾って落とした子に渡してやろうとすると、「うわぁ、紙が腐る。紙が腐る」と言われたのです。少年は涙があふれて止まらずひざが震え、何も言えなくなってしまいました。
ところが、近くにいた他のクラスの子が数人来て声をかけてくれ、隣の子に「どこが腐っているんだよ。言ってみろよ!」「二度と言うなよ」と言って、少年を守ってくれたのです。それ以来、彼らはよそのクラスだけど声をかけ遊び仲間に入れてくれたりして、少年をいじめから救ってくれたのです。
少年は彼らとの出会いがなかったら、今僕はこの世に存在しなかったと思うと語っています。あの温かい手をさしのべ、声をかけてくれた数人の『友情』が、いじめのどん底にいた精神的苦痛の重みから、少年を救い出してくれたのです。
そして少年は、『とける』『腐る』この言葉は過去の自分を苦しみ続けた最低のもの。『友情』これは過去の自分を救ってくれ、現在の自分を築いてくれた大切なもので、彼らから人のために勇気を出して行動してくれることがどんなに温かいかということを学んだと語っています。
このようにいじめは絶対に許されない行為であり人間として恥ずべき行為です。いじめは、力の弱い子どもや真面目に努力する子ども、周囲に流されないタイプの「異質」と見える子どもなどを標的にしがちだと言われています。
よく「いじめられる子ども側にもそれなりの理由がある」と言われますが、『静岡県版家庭教育手帳』によると、「それは全くの間違いであり、悪いのはいじめる子どもであ
る」と記され、私も全く同感でそのように考えています。
また、いじめる子どもの中には、親から暴力や強いプレッシャーを受けるなど、家庭でも学校でも居場所がない子どもが多いとも言われています。子どもが楽しめるものを見つけ、温かく心が満たされるように大人が配慮するなど、いじめをしない心の環境づくりが大切です。
優しさを失った社会をとり戻すことが、今、私たち大人に問われているのではないでしょうか。