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更新日:令和2年10月28日

暮らしの中の障害者の人権を考える

社会福祉法人富士旭出学園 理事長 山川 忠洋

人権とは、人間らしく幸せに暮らす権利であり、尊い生命そのものであります。その生命そのものの人権が時と場合によって、ないがしろにされております。海外を旅した障害当事者の人たちから異口同音に聞くエピソードの中に、視線を背中に感じる日本と、普通に対面し、困った時にのみ、積極的に心温かく支援してくれた諸外国の経験を何度も伺い、人権意識や感覚の違いを痛感いたします。

先頃、内閣府によって発表された人権擁護に関する世論調査によれば、国内の人権問題で関心のある分野として障害者を挙げた人が44%で最も多かったそうです。現在わが国の障害のある方々の総数は約710万人とされ、総人口比約5.5%ですが、人々は障害のある人たちのことを、漸次、他人事でなく身近に感じるようになってきたようです。しかし障害者は不適切用語だといいながら、今でも大多数を占める国民は健常者という表現に違和感を持たないことも不思議です。しかも障害者とは、他の人たちと異なったニーズを持つ特別な人ではなく、違いがあるとすれば、通常の人間的ニーズを満たすのに特別な支援が必要な普通の人たちのことです。一方、誰も例外なく、100%死ぬ必然があるように、障害についても同様、今、障害があるかないかの違いだけです。

最近、障害のある人たちに関心を持つ人が多くなってきたことは,喜ぶべきことですが、地域で安心できる生活を可能にするためには、まだ様々なバリアがあります。そのバリア(物理的、制度的、情報的、精神的等)をなくしていくためのバリアフリー対策も積極的に進められておりますが、これらのバリアは誰が作ったのでしょうか。言うまでもなく、私たち人間が作っているのです。それならば、今の社会が障害のある人たちにとって、住みにくいのは、私たちが彼らに迷惑をかけている部分が少なからずあることを認識せざるを得ません。

私たちは、何よりも人権が尊重される共生社会を目指しているのですから、人権尊重をキーワードに、人権は個性や多様性や違いを認め合うことから始まることを考え、私たちは身近なバリアフリーから取り組むことではないでしょうか。そして他者の人権を守ることが結果的には自分の人権を守ることになり、自分の人権が守られている時には、自分以外の人々の尽力によることを思い起こすことが大切です。所詮、障害の有無を問わず、人権は人間が人間として幸せに暮らしていくための基本的人権であり、かけがえのない一人ひとりにもたらされた尊い命であることを肝に銘じて生きていきたいと思います。