(2)安全・安心な地域づくり(ア)命を守る安全な地域づくり

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ページID1061043  更新日 2024年2月22日

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令和6年2月県議会定例会知事提案説明要旨

【3.人づくり・富づくりを着実に推進する取組】(2)安全・安心な地域づくり

次に、新ビジョンを具体化するための5つの基本となる柱に沿って、主な政策を御説明申し上げます。

第1の柱は、「安全・安心な地域づくり」であります。

まず、能登半島地震を踏まえた地震対策等の強化のうち、速やかに対応できる短期の対策についてであります。

建築物の耐震化につきましては、プロジェクト「TOUKAI-0」により、市町と連携して、木造住宅の耐震診断や耐震補強等の支援をしてまいりました。住宅倒壊による被害を最小化するため、この機会を捉え、テレビCMや新聞などにより高齢者等に重点的な広報を行い、支援制度の活用を促すとともに、住宅の耐震化支援の予算額を充実するなど、より一層取組を加速してまいります。県民の皆様におかれましても、今一度、お住まいの耐震性の確認、家具の固定などをお願いいたします。

次に、木造住宅密集地における火災対策であります。今回の石川県輪島市での大規模火災につきましては、出火要因となる建物内の電気を速やかに遮断することが重要であると指摘されております。このため、市町と連携し、震度5強以上を感知すると自動で電気を遮断する感震ブレーカーの住宅への導入を支援することで、地震火災の発生防止を図ってまいります。

緊急輸送ルートの確保につきましては、今回、能登半島の全域で道路が寸断し、物資輸送や救助作業の妨げになりました。引き続き緊急輸送路における橋梁の耐震化や道路法面の防災対策をはじめ、災害に強い道づくりに取り組んでまいります。特に、伊豆半島では、「命の道」となる伊豆縦貫自動車道路の一日も早い全線開通を目指すなど、より一層の強靱化を進めてまいります。また、発災時において、瓦礫・放置車両の処理等により確実に緊急輸送ルートを確保するため、あらかじめ、国、市町、自衛隊、関係団体等の対応方針等を詳細に確認するなど、一層の連携を図ってまいります。

応急体制の構築につきましては、発災時に孤立集落を迅速に支援するため、医薬品や無線機などの緊急物資を搬送する災害対策用ドローン4機を、新たに各地域局へ配備いたします。また、孤立集落となるおそれのある地域の警察施設2か所に、衛星通信設備を新たに配備するとともに、県警機動隊に衛星通信ができる指揮支援車を導入いたします。発災後の情報収集や通信機能を確保し、早期に救助・捜索活動を行う態勢を整備するなど、初動時の応急対応力の一層の強化に取り組んでまいります。 

避難対策につきましては、市町と協力し、「わたしの避難計画」の普及を加速し、具体的な避難経路を検討してもらうこと等により、県民の皆様のさらなる避難意識の向上を図ってまいります。また、避難生活の質の向上のため、被災者の細かなニーズを把握し、行政や支援団体との調整などを担う「被災者支援コーディネーター」を新たに35名育成してまいります。

次に、中長期の対策であります。今後、国が約10年ぶりに、南海トラフ地震の新たな被害想定をとりまとめ、防災対策推進基本計画を改定する予定であります。これを受けて、本県においても、これまでの地震・津波対策等の成果も踏まえ、被害想定の見直しに着手いたします。国の議論を参考に、時間差をおいて発生する地震や災害関連死などの新たな項目を被害想定に反映するほか、能登半島地震により顕在化した課題への対応も含め、地域防災計画の改定に向けて、今後の対策を見直してまいります。

県民の皆様を大規模地震から守り抜く強い決意を持ち、防災先進県にふさわしい地域づくりを実現すべく、全身全霊で取り組んでまいります。

次に、激甚化する自然災害への対応についてであります。

本県では、令和4年9月の台風15号と、令和5年6月の台風2号に伴う記録的な大雨により、洪水氾濫や土砂崩れが多数発生し、家屋の損壊や浸水をはじめ、河川、道路等の公共土木施設など、県内各地で多くの被害を受けました。

これらの水災害をもたらした豪雨は、気候変動の影響による極端な雨の降り方が、本県においても現実に起きたものであり、これまでの考え方が通用しない、新たなステージに入ったものと危機感を強くしております。

こうした自然災害に対応し、国、県、市町、民間企業、住民等の流域のあらゆる関係者が、主体的に対策に取り組む「流域治水」をより一層推進し、水災害に強い地域の実現を目指すことが重要であります。このため、県内全域で流域治水の取組を加速させる、重点的かつ緊急的な対策を取りまとめました。

本県は、地区ごとのリスク分析等に基づいて浸水被害対策を実施する、本県独自の「水災害対策プラン」を策定し、これに基づく取組を進めております。まず、このプランの対象について、近年の浸水実績に基づき、14地区から21地区に拡大いたしました。その上で、これら全ての地区において、プランに定めた、ソフト・ハードの両面からなる浸水被害対策を、集中的かつ前倒して実施することにより、当初想定していた目標達成までの期間を短縮し、約10年間で、床上浸水被害の解消などを実現してまいります。

具体的には、河川の氾濫を減少させるため、河川改修や放水路の整備、樋門・樋管等の自動化、雨水貯留浸透施設の整備をしっかりと進めてまいります。また、被害の軽減や、早期復旧・復興を可能とするため、市町と連携した河川監視カメラの設置や、広域的な被災情報を迅速に把握する仕組みづくりに着実に取り組んでまいります。

こうした取組に必要となる経費を令和6年度当初予算案に盛り込み、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」とあわせて、水災害に強い県土をつくってまいります。

次に、盛土対策についてであります。

盛土規制法への対応につきましては、本年度、法に基づく規制区域を指定するための基礎調査を実施いたしました。国の要領に基づき調査を行った結果、盛土等がされた場合に、人家等に危害を及ぼす可能性のあるエリアとして、県内全域が抽出されました。この結果をもとに、規制区域指定に向けて、市町や隣接県とも調整を図りながら、手続きを進めてまいります。

県盛土等の規制に関する条例につきましては、熱海市伊豆山地区の土石流災害を受け、速やかに実効性のある盛土規制に取り組むため、国に先行して施行したものであります。条例には、災害防止と生活環境の保全という2つの目的があり、昨年、全国一律の基準で災害防止を図る盛土規制法が施行されたことから、災害防止のための規制は、盛土規制法により行うことといたします。土壌汚染の防止など生活環境保全の規制は、建設発生土の不適正処理対策が強化されている状況等を踏まえ、規制の合理化を図るなど、県議会をはじめ、事業者や県民の皆様の御意見も伺いながら見直しを検討してまいります。

逢初川土石流災害に係る行政対応の再検証につきましては、関係法令の所管課長等からなる庁内検証委員会において、県議会から御提言いただいた論点の検証を進めてまいりました。

この結果、今回の災害の最大の原因である逢初川源頭部の不適切な盛土行為に対し、県と熱海市が連携し厳正に対処することが重要であったことが再度確認されるとともに、今回検証の対象とした法令は、盛土行為に直接的に効果を及ぼすものではないため、この法令の運用によっては、今回の土石流災害の発生を抑止することは難しかったとの結論に至りました。

ただし、その中においても、逢初川源頭部における盛土行為の初期段階において、盛土行為に起因すると思われる伊豆山港の水の濁りの情報が、関係者で共有されていなかったことが明らかになりました。そのほか、関係の個別法令ごとの行政対応において、もっと対応できたのではないかという点も見受けられましたので、今回の検証作業を通じ、関係者間の情報共有と連携などが最も重要であると改めて認識したところであります。検証結果の詳細につきましては、本議会の各常任委員会において、御報告してまいります。

次に、防疫先進県への取組についてであります。

新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行しましたが、新たな感染症が発生するリスクは、今後も変わりません。将来発生し得るパンデミックに備え、平時からの備えが重要であります。このため、本県の防疫体制の司令塔機能を担う「ふじのくに感染症管理センター」において、医療機関等と病床確保や発熱外来の実施に関する協定を本年9月末を目途に締結するなど、感染症流行時に備えた医療提供体制を整備してまいります。

また、感染症流行時に適切な医療や相談が受けられるよう、医療人材の育成や情報プラットフォームの構築などを進め、感染症対応力を強化してまいります。